「おいしい空気、おいしい水、おいしい米と野菜、農山村の景色を縁側で味わってほしい」と話す、福島県西会津町奥川の株式会社キノコハウスの代表・佐藤昭子さん(56)。自宅の縁側を生かして店舗を増築し、コーヒーやホットケーキなどを提供する「縁側カフェ」を2月14日にオープンした。夫の時男さん(59)、双子の娘の4人で運営する。菌床シイタケを生産していたが、原発事故に伴い、生産自粛を余儀なくされた。ホームページやブログなどを通じて西会津の魅力を世界中に発信し、福島のイメージ回復に努めていく。
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縁側カフェを訪ね、玄関の家紋入りのれんをくぐると、「よくこらったなし(いらっしゃいませを意味する会津弁)」と書いた木の看板がある。昭子さんと娘の渡部晋子さん(28)、五十嵐修子さん(28)が笑顔で迎えてくれた。縁側に暖炉と客席を設け、利用客が多い日は居間も解放する。
メニューは4種類あり、ご縁と縁側をかけて、メニュー表にはコーヒー600縁、ハーブティー500縁、ホットケーキ700縁、おかゆセット800縁(1縁=1円)と書く。おかゆセットは自家産「コシヒカリ」を提供。付け合わせの漬物や総菜は近隣の女性から買っている。「地域の素材を使った伝統食を提供したい。地域でお金が動くことが大切」と昭子さん。
同じ杉山集落に住む佐藤澄(すみお)さん(80)=水稲50アール=が訪れ、コーヒーを注文する。ゆっくりと抽出する間に香りが広がってくる。澄さんは「アイデアを出して過疎化を止めないといけない。若い夫婦がカフェを始めて魅力的な集落となり、訪れた人から住みたいと思う人が出てきてほしい」と期待する。
(3面・暮らし)
〈写真:注文を受けコーヒーとホットケーキを作る昭子さん(左)と晋子さん〉