今週のヘッドライン: 2025年02月 4週号
埼玉県西部の武蔵野台地に広がる三富(さんとめ)新田では、平地林の落ち葉を堆肥にして野菜作りに利用する「武蔵野の落ち葉堆肥農法」が市民参加で実践されている。三芳町の三富落ち葉野菜研究グループは、江戸時代から300年以上続く伝統を守ろうと、冬の体験イベントとして落ち葉掃きを催しており、県内だけでなく隣県からも参加者が集う。代表の井田和宏さん(58)は「落ち葉堆肥農法が世界農業遺産に認定されたことで、興味を持ってくれる人が増えた。交流を深めながら伝統を守り、次世代へつないでいきたい」と話す。
農林水産省は14日、買い戻し条件付きで売り渡す政府備蓄米の数量を21万トン(玄米換算、以下同)とすると発表した。2024年12月末時点の全農など大手集荷業者の集荷量が前年同期に比べ20万6000トン少ないことなどを踏まえた。入札は年間5000トン以上の仕入れ実績があるなど一定の条件をクリアした集荷業者を対象に3月上旬に実施する。店頭から米が消えた昨夏の"令和の米騒動"以降、集荷競争の過熱に伴い米価が急騰する中、江藤拓農相は同日の会見で「正常でない(取引の)状態を正常な状態に戻す」と強調し「必要があれば、さらに数量を拡大する」と述べた。
農林水産省は20日、食料・農業・農村政策審議会畜産部会を開き、新たな酪農および肉用牛生産の近代化を図るための基本方針(次期酪肉近)の骨子案を示した。目指す方向性には(1)生乳や牛肉の需要に応じた生産の推進による需給ギャップの解消(2)生産コストの低減・生産性の向上(3)国産飼料の生産・利用の拡大を通じた輸入飼料依存度の低減(4)環境負荷低減などの取り組みの推進――を提起した。
NOSAIかごしま(鹿児島県農業共済組合)では、主に園芸施設共済加入者を対象に土壌診断サービスを無料で行い、施設園芸の経営安定に長年貢献している。2023年度は2492件を実施した。NOSAI職員が農家の圃場に出向き専用器具を用いて土壌を採取。土壌酸度(pH)や陽イオン交換容量(CEC)、交換性陽イオンなど11項目を診断する。損害防止事業の一環として1987年から続く取り組みだ。
ジャージー牛を飼養し、生乳からチーズや飲むヨーグルトなどを製造・販売する、群馬県桐生市新里町の「MOUMOU(モーモー) PARADISE(パラダイス)」代表の小林友那さん(21)。消費者と交流しながら酪農の魅力を知ってもらおうと奔走している。牧場やキッチンカーで販売する乳製品は好評で、固定客をつかみはじめている。
農林水産省は14日、鳥獣害対策の事例報告などを行う「全国鳥獣被害対策サミット」を開き、被害防止や捕獲を効率化する資材が展示された。情報通信技術(ICT)や小型無人機(ドローン)を活用した資材を紹介する。
【山口支局】「地域に入っていくことで、皆さんがどのようなものを求めているか分かります。いろいろなアイデアをつないで形にしていくことは、エンジニアとしての腕の見せどころ」と話す下関市の六車浩二(むぐるまこうじ)さん(67)。エンジニアとしてキャリアを積んできた経験と技術を生かし、デジタル版地域おこし協力隊(市内のスマートシティを推進する隊員)として着任。鳥獣害対策用システムの開発、ドローン(小型無人機)やセンサー機器を活用した農地管理などスマート農業の推進に取り組む。
〈写真:開発したシカ威嚇システムは、水鉄砲機能を持つほか、スプリンクラーとしても利用でき、水もまける〉
【香川支局】国産アボカドの生産が増える中、土庄町の大川浩史さん(63)は2024年から出荷し始め、ふるさと納税の返礼品に採用されたほか、個人売りを行っている。「ゆくゆくは小豆島ブランドとして確立、流通させていきたい」と意気込む。
〈写真:「収穫時期を過ぎた樹上に果実を数個残し、果皮や味がどのように変わるか試しています」と大川さん〉
【三重支局】耕作放棄地の解消と国産ニンニクの生産拡大を目指し「伊賀ニンニクプロジェクト」が始動した。伊賀地域を新たな産地とすることを目標に、根端培養による苗の安定供給と生産拡大に取り組む。
このプロジェクトを推進するのは、伊賀市の「植物バイオテック伊賀」の松山竜也(たつや)代表(22)。現在、耕作放棄地を含む1ヘクタールでニンニクを栽培しながら将来的な生産拡大の基盤を整えている。
〈写真:ニンニクの鱗片(種球根)から根端を採取する松山代表(左)〉
【石川支局】野菜農家の宮﨑秀明さん(75)と妻の弘美さん(71)は、金沢市平栗の山間地80アールでタケノコを栽培している。収穫期は生鮮品を、収穫期を過ぎると加工した塩蔵品を市内の直売所で販売する。
〈写真:「懐かしさや目新しさで、いろいろな方に手に取ってもらえてうれしい」と宮﨑さん夫妻〉
【広島支局】大崎上島町のかんきつ農家・石井克典さん(40)は、2023年2月に「合同会社141Lemon」を設立し、同町のふるさと納税返礼品として、自身が栽培するレモンで「レモンサワーにあう冷凍カットレモン」を製造する。
〈写真:「日当たりと水はけが良い園地の見極めが大事」と石井さん〉
▼確定申告の時期を迎えた。この時期になると食卓に帳簿や領収書を広げ、そろばんを脇に置いて1週間ほどかけて青色申告の書類をまとめていた父親の姿を思い出す。まめな性格ではなかったので、申告書類の作成以前に、領収書と毎月の収支など1年分の帳簿整理に時間がかかっていたようだ。
▼申請を終えると父親は、果樹の剪定(せんてい)に出る2週間ほどの間に日帰り温泉や1、2泊の湯治を楽しんでいた。この冬の大雪で、山中に多い湯治宿は雪に覆われているだろう。世間から離れ、気持ちをリフレッシュするにはよい環境かも。
▼環境省は、温泉入浴に加え、周辺の自然や歴史、文化などを楽しむ滞在型のプランを「新・湯治」と名付け、温泉地の活性化を図っている。リフレッシュや健康長寿の場として、温泉地の魅力を引き上げる。
▼昨今は、仕事やプライベートの情報管理はパソコンやスマートフォンに集約され、メールや交流サイト(SNS)の確認などで気持ちを休める時間がない。湯治と割り切れば、何もしない時間も作れるはず。電源を切って出かけてみてはどうか。