今週のヘッドライン: 2025年02月 2週号
農林水産省は、2027年度からの水田政策の検討を開始する。1月31日に示した見直しの方向性では、水田を対象に戦略作物の本作化を支援する「水田活用の直接支払交付金」(水活)について、水田・畑に関わらず作物ごとの生産性向上などを支援する政策に転換すると明記。27年度以降は、交付要件の「5年に1度の水張り」は求めない。25年と26年も土壌改良材の使用など連作障害を回避する取り組みを条件に水張りしなくても交付対象とする。水田政策は、稲作を中心に営まれてきた地域農業の骨格を支えてきた。食料安全保障の確保の実現に向け、生産現場の実情を踏まえ、地域農業の将来が展望できる施策の構築が求められる。
農林水産省は4日、2024年の農林水産物・食品の輸出額は前年比3.7%増の1兆5073億円と発表した。12年連続で前年を上回り、過去最高を更新。ただ、日本産水産物の輸入を規制している中国・香港向けは前年を下回った。江藤拓農相は閣議後会見で「政府目標(25年に2兆円)の達成は高いハードルかもしれないが、不可能なものではない」と述べ、輸出先国の市場に応じた産地づくりなどを推進する方針を強調した。
農林水産省は1月31日、2025年度の国家貿易による乳製品の輸入枠数量を生乳換算で13万7千トンと、世界貿易機関(WTO)で輸入を約束した最低数量(カレントアクセス)にとどめると発表した。品目別内訳は、需要が低迷する脱脂粉乳は750トン以内とし、ホエイは4500トン以内、バターオイルが140トン以内、バターは8千~約1万トン。業務用を中心に堅調なバターの需要に対応する。指定団体と乳業メーカーで交渉中の乳価に予断を与えないことも考慮した。
日本農業法人協会は先ごろ、全国から若手農業者など200人超を集め、第14回「次世代農業サミット」を都内で開いた。初日は畑作、施設園芸、畜産の3経営者による講演とパネルディスカッションが行われ、人材確保や商品のブランド化など参加者の質問に答えながら意見交換した。発言要旨を紹介する。
弟が生産する「コシヒカリ」で米粉パンを製造・販売している、富山県魚津市友道の「米工房Jasmine(ジャスミン)」代表の小林由紀子さん(43)。移動販売を含めて2007年から米粉製品づくりに携わる草分け的存在で、固定客をつかみ地元に根付いている。さらに農林水産省の「農業女子プロジェクト」の支援を活用して昨年12月、米粉菓子と冷凍食パンを香港に輸出。日本の米粉製品の魅力を世界に広げようと動き始めた。
九条ネギを専門に年間延べ18ヘクタール生産する京都府木津川市の株式会社あぐり翔之屋〈しょうのや〉は、降雨量や気温、圃場ごとの草丈や出荷量などの記録を作付け計画や肥培管理に生かし、周年の安定出荷を図っている。森上翔太代表(38)は「気象や生育など感覚的な判断を数字にしていくことが技術力になる。作業者への指標にしていきたい」と強調する。事務所横には気象観測の装置を設置し、降雨量や気温推移から、ネギの生産量が落ちやすい夏や冬の対策に反映。結果を検証して販売先からの信頼確保や技術向上につなげる考えだ。
【静岡支局】「光センサーによるワサビ内部の障害の判定は、世界初の取り組みで、とても楽しい」と話すのは、伊豆市地蔵堂にあるイリヤマナカの飯田訓司(さとし)さん(49)。江戸時代から200年以上続くワサビ農家で、父の茂雄さん(81)と共に最高峰品種といわれる「真妻」を0.8ヘクタール栽培する。
光センサーによる内部障害の判定技術は、根茎に近赤外線の光を照射することで、透過する光量を数値化し、墨入病や変色など内部障害の有無を確かめるもの。「せっかく買ってくださった方を、黒い内部でがっかりさせたくない」という思いから、2022年にワサビでは世界初となる実用化にこぎ着けた。
内部障害が判定されなかった根茎だけを出荷。質の高いものを提供することができるという。光センサー判定後に出荷するワサビを「真妻光」として、24年に商標を登録した。
〈写真:光センサーでワサビの内部を確認する飯田さん〉
【広島支局】県立世羅高等学校(世羅町)農業経営科の3年生が、授業の一環で、広島市の中心部にある平和大通りで都市養蜂に取り組む。
都市養蜂とは、都市部のビルの屋上などでミツバチを飼育し、蜂蜜を採取する取り組みのこと。
同高校は、周辺地域の活性化や街路樹の保護を目指す地域住民らのグループから依頼を受け、2023年度に活動を始めた。
24年度は3年生6人が同年5月から6月の間、大通り沿いにあるビルの屋上に巣箱を四つ設置。通りにはクロガネモチなど蜜を多く含む街路樹が立ち並び、2カ月間で150キロを超える蜂蜜を採取した。
〈写真:作業をする生徒。坂村拓実さん(18)と作田彪(さくだひょう)さん(18)は防護服について「着ると暑くて大変」と話す〉
【石川支局】「耕作放棄地を無くし、これからも規模拡大していきたい」と話すは、珠洲市馬緤町(まつなぎまち)の金田司さん(35)。春ブロッコリー5アールと秋冬ブロッコリー1.5ヘクタール、カボチャ1.5ヘクタールの栽培に取り組んでいる。
〈写真:「能登で農業を頑張りたい」と話す金田さん〉
【山形支局】東根市神町の西村里紗(にしむらさおり)さん(46)は、自家栽培した果物を使用した焼き肉のタレ「さおりんごのタレ」を製造・販売し、人気を集めている。
里紗さんは夫の淳志さんと営む西村果樹園で、サクランボ90アール、「ラ・フランス」70アール、リンゴ20アールを栽培。生食の出荷規格外品となった果実を使い、冬場やイベント前にタレ作りを行っている。
〈写真:ベースとなる調味料にすりおろしたリンゴを加えたさおりんごのタレ〉
▼青森県りんご協会が会員農家に発行する「りんごニュース」は、年明け以降の紙面に大きな赤い文字を印刷し「まずは樹体の雪下ろしを!!」「枝の掘り上げ 融雪剤散布急げ!!」と雪害対策を呼びかけている。
▼強い寒気の影響で、今冬は日本海側を中心に大雪が続く。降雪地帯の果樹は、降った雪の重みによる枝折れのほか、雪解けに伴う沈降圧が枝を巻き込む融雪期の被害も多発する。
▼果樹の樹体被害は回復に数年を要する例があり、経営への影響も大きい。被害抑制には、雪解け前の園地に入り、枝を一つ一つ掘り出して雪に引かれないようにするしかなく重労働だ。青森県の自治体やJAでは、農道の除雪開始時期を早め、農家が園地に出やすい環境を整え対策を支援する。
▼リンゴは、これから春にかけて剪定(せんてい)時期となる。ネット上にブログを公開するリンゴ農家は、樹体の被害を確かめながら、収量を落とさないよう剪定を工夫していた。雪害の影響を最小限に抑え、収穫を目指してほしい。