今週のヘッドライン: 2025年01月 3週号
小型無人機(ドローン)の農業現場での活用・普及が進んでいる。農薬などの散布面積は急拡大し、直近の2023年度集計では延べ100万ヘクタールを突破した。肥料散布や播種など利用場面も拡大し、空撮による生育状況や病害虫の把握、施設トマトの授粉など技術開発も進んでいる。水稲・麦類など土地利用型作物に加え、野菜類や果樹などでも登録農薬が増え活用場面は拡大。高齢化や条件不利地に対応する技術として省力化への貢献が期待されている。
観光庁は15日、2024年の訪日客旅行消費額(速報値)は8兆1395億円と発表。過去最高だった23年を53.4%上回り、初めて8兆円を突破した。円安などを追い風に訪日客数(推計)が約3687万人と過去最高を大幅に更新し、1人当たり旅行支出も増加した。政府は、30年に消費額15兆円、訪日客6千万人の目標の達成へ受け入れを一層強化する。さらに訪日客による食関連消費を農林水産物・食品の輸出拡大に向けた新たな政策の柱と位置付けた。国内外で日本の食や農への需要を高めて「海外から稼ぐ力」を強化し、地域の活性化につなげる考えだ。
今冬は、東日本から西日本の日本海側にかけて大雪となっており、農業被害も発生している。農業用ハウスを対象とする園芸施設共済は、標準コースに特約を付加すれば、築年数にかかわらず新築時の資産価値までの損害を補償する。さらに収入保険に加入すれば、ハウス内農産物の補償も万全だ。園芸施設共済の仕組みについて、稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。
健康診断は体の状態を知り、病気の早期発見につながる重要な機会だ。農閑期などを選び定期的に受診しておきたい。毎月4週号すまいる欄で「診察室」を担当する佐久総合病院の夏川周介名誉院長に、健康診断の役割や必要性を教えてもらう。
熊本県甲佐町の株式会社まきの農園は、代表の牧野千代加さん(65)と娘の阿津坂円さん(42)が水稲・麦・大豆を中心に手がけ、省力的な経営を実践している。大型機械を導入して、水稲では「密苗」を取り入れるほか、麦や水稲の作業と競合しないスイートコーン(ハウス67アール)、クリ30アールも栽培。今年は、さらに1ヘクタールほど水田を拡大する計画だが、年間を通じて無理のない作業体系の構築を目指している。千代加さんは「地域の農業・農地を守っていきたい」と話す。
水田に水を張らずに水稲を栽培する節水型の乾田直播栽培に各地の農業経営者が挑戦している。農林水産省は、輸出向けに生産コストの6割減を掲げ、農業者や国内外の資材メーカー・研究機関などを集めて2024年産から栽培・販売実証を始めた。1年目は関東平たん地で米1キロ当たり生産コスト75円と地域平均比で7割減の成果も報告された。栽培期間中のほとんど水を張らないため、温室効果ガスの排出削減や世界的な食料不足への貢献も期待されている。
【北海道支局】芽室町の有限会社鈴鹿農園の鈴鹿誠(すずかまこと)代表(60)は、2004年の経営移譲を機に会社を設立。従業員11人で小麦106ヘクタールと大豆38ヘクタール、バレイショ49ヘクタールなど約237ヘクタールを作付けしている。企業理念に「安心・安全な野菜づくり」「農業の未来に向けた地域貢献」を掲げ、有機JAS認証栽培の取り組みやバレイショの播種・収穫作業を担うコントラクター事業を展開する。
〈写真:商品を手に鈴鹿代表〉
【新潟支局】上越市頸城区大谷内の「農事組合法人ふぁーむ大地」では、働きがいのある職場づくりと魅力的な農業の創造を目指し「『働き方改革』実行宣言」に取り組んでいる。2021年には新潟県農業経営体等表彰「働き方改革の部」で知事賞を受賞した。
〈写真:「今年も豊作を目指して頑張ります」と意気込む松本祐一代表理事(54歳、右から3人目)と従業員
【山形支局】高畠町露藤の安部隆之さん(71)は、出荷規格に満たないサトイモの冷凍販売を行い、食品ロスの削減に取り組んでいる。
〈写真:「旬ではなくても、そのままのおいしさが味わえると好評」と安部さん〉
【島根支局】「ブドウが大好きです」と笑顔で話す安来市の大森菜月さん(23)は2022年に就農。ブドウ「デラウェア」「ピオーネ」「シャインマスカット」「クイーンニーナ」をハウス21アールで、イチジクを露地5アールで栽培している。
〈写真:「農業は試行錯誤の繰り返しですが、そこが楽しいです」と大森さん〉
▼成人の日の13日、日向灘を震源とする地震が発生し、宮崎市などで最大震度5弱を観測した。昨年8月にも日向灘を震源とする地震が発生し、宮崎県日南市で最大震度6弱を観測。南海トラフ地震の想定震源域であり、平常時に比べ大規模地震の発生可能性が高まっていると政府は注意を呼びかけた。気象庁の報道発表では、今回は注意には至らないとしつつ、日頃の備えの重要性を強調している。
▼今年は、1995年1月に発生した阪神・淡路大震災から30年を迎える。死者は6400人を超え、農林水産被害も約900億円に上った。現在放送中のNHKの朝ドラ『おむすび』では、幼い頃に阪神・淡路大震災を経験した主人公が、東日本大震災に関わる姿も描かれている。
▼日本は自然災害が多い国といわれる。国土技術研究センターによると、国土面積は全世界の0.26%に過ぎない。しかし、全世界で起こったマグニチュード6以上の地震の18.5%が日本で起こり、全世界の活火山の7.1%が日本にあるという。災害による全世界の被害金額の17.5%が日本の被害金額とのデータもあるそうだ。
▼阪神・淡路大震災以降、最大震度7以上の地震だけでも2004年10月の新潟県中越地震、11年3月の東日本大震災がある。この間に、ボランティアによる災害支援が定着し、政府などの支援策も強化されてきた。ただ、被災地域でも年数の経過とともに記憶が薄れ、備えの重要性を忘れがちとの指摘がある。災害の経験を風化させず、次代の人たちに伝える大切さを改めて考えたい。