今週のヘッドライン: 2024年12月 3週号
埼玉県白岡市のアルファイノベーション株式会社は、ネギ生産・販売を核とする「農・福・商」連携を掲げ、福祉事業所との就労支援で人手を確保し、周年出荷による加工向けの安定取引を実現した。栽培技術の提供や流通支援を通じて全国の生産者と連携を広げている。「ミスマッチの解消が経営の基盤。社会に求められていることに応えていく」と山田浩太代表(50)。農業人口の急減や資材調達の不安化なども意識し、地域で管理しきれない果樹園での新規事業や肥料の自社製造など、さらなる発展に歩みを進める。
政府は改正食料・農業・農村基本法に基づき、来年3月末に中期的な農政の基本的な施策と目標を示す新たな食料・農業・農村基本計画を策定する。併せて2027年度以降の水田政策や酪農・肉用牛生産の近代化を図るための基本方針(酪肉近)、果樹農業振興基本方針など品目別施策の具体化・見直しを進める方針だ。頻発する自然災害や紛争の継続・拡大など世界の食料供給リスクが高まる中で、改正基本法で掲げた食料安全保障の確保には国内生産基盤の強化が欠かせない。農家が展望を持って営農継続できる環境整備を基本に、現場の実情を踏まえた実効性ある施策の構築が求められる。
農林水産省は10日、2024年産主食用米の収穫量は前年産比18万2千トン増の679万2千トンで確定したと発表した。作況指数は全国で101の「平年並み」となった。
同省の需給見通しに当てはめると、25年6月末在庫量は5万トン増の158万トンとなる。江藤拓農相は閣議後会見で、収穫量や民間在庫量を見れば供給量は十分確保されていると強調。「あまり価格水準が高いという空気をつくられると、消費者も苦労する」と述べ、需給状況を注視していく考えを示した。
2024年も能登半島地震をはじめ、大雨や台風など自然災害が頻発し、農業分野にも甚大な被害が発生した。高まるリスクに対応するには、農業保険への加入とともに、農業版BCP(事業継続計画)が有効だ。被災時の損害を最小限にとどめ、早期復旧を図るため、農閑期のこの時期に策定し、備えておきたい。BCPのポイントなどについて、稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。
寒さが増し、露地の家庭菜園などでは栽培できる品目も少なくなる。キッチンの窓辺などで、室内ハーブ栽培を楽しもう。ハーブインストラクターで、さいたま市の農業法人で働く早坂幸野華さんがお勧めするのは、ローズマリー。フレッシュな香りが特徴で、栽培の手間が少ない。栽培方法と、日々の料理での手軽な活用法を教えてもらった。
農研機構畜産研究部門は5日、スマート機器を利用した放牧管理技術に関する技術検討会を開いた。牛の放牧は農家の省力化と低コスト化につながる一方、脱柵や事故の懸念など管理が難しい面もある。衛星利用測位システム(GPS)首輪を活用した放牧牛管理システムなど、ICT(情報通信技術)を活用した見回りの軽労化などの成果が紹介された。
▼1年間の世相を一文字で表す今年の漢字は「金」と発表された。パリ五輪での多くの金メダル獲得や政治をめぐる裏金問題、金目当ての闇バイトなど金にまつわる話題が注目を集めたことで選ばれたという。言われてみればと納得感はあるが、裏金や闇バイトは来年に持ち越さず早くなくしてもらいたい。
今年の漢字は、漢字の素晴らしさや奥深い意義を伝えようと日本漢字能力検定協会が1995年から始めた。11月に募集し、一番応募の多かった漢字が選ばれる。発表は原則12月12日で、"いいじ、いちじ"の語呂合わせで同協会が漢字の日と定めた。京都・清水寺の貫主が大きな筆で大きな和紙に揮毫(きごう)する発表イベントも定着した。
▼全30回のうち金の選出は5回目で最多だ。いずれもオリンピックイヤーで金メダルが話題になったほか、2000年は2000円紙幣誕生、12年は山中伸弥氏のノーベル賞受賞(金字塔)や金環日食、16年は東京都知事などの「政治とカネ」問題、21年は新500円硬貨誕生なども理由に挙がる。続くのは2回選出の「戦」「災」「税」だ。戦は01年の米国同時多発テロと22年のウクライナ侵攻、災は04年の新潟県中越地震と18年の西日本豪雨、北海道胆振東部地震があった。
▼年末を迎え、ウクライナ侵攻やイスラエル・ガザ戦争に加え、シリアのアサド政権崩壊などきな臭いニュースが増えた。年明けには自国第一を掲げ、国際協調に関心の薄い米国トランプ政権が動き出す。戦や災に3度目がないことを祈る。