今週のヘッドライン: 2024年11月 4週号
NOSAI協会(全国農業共済協会)は11月27日、東京都内で「『未来へつなぐ』サポート運動令和6年度全国NOSAI大会」を開く。気候変動や国際情勢の変化に伴い世界の食料生産・供給リスクが顕在化する中、食料安全保障の確立に向け国内生産基盤の維持・強化は急務となっている。大会には全国のNOSAI関係者が集まり、頻発・激甚化する自然災害への備えや生産性・付加価値向上などの取り組みを底支えする農業保険の役割を最大限に発揮し、農業・農村の持続的な発展を支えていくことを確認。"安心をすべての農家に届ける"全国運動の実践に組織を挙げて取り組む旨を決議する。
農林水産省は19日、2024年産主食用米の収穫量(10月25日現在)は679万2千トンと発表。前年産実績に比べ18万2千トン増加するものの、高温や災害の影響を反映して前回(9月25日現在)から4万1千トン下方修正した。10月30日に同省が示した需給見通しに当てはめると、25年6月末民間在庫量は158万トンとなり、過去最少水準だった24年6月末からの積み増しは5万トン程度となる。新米の集荷競争の影響が続き、24年産主食用米の相対取引価格は前年比5割高で推移している。ただ、小売店の国産米販売量は前年を下回る状況となり、安価な輸入米を取り扱う動きも出ている。今後の需給動向には注視が必要だ。
「地域の水田や生活、伝統を守っていきたい」と、新潟県長岡市寺泊でNOSAI部長を務める足立照久さん(50)。伝統工芸品の職人として働きながら、住民が管理できなくなった中山間地域の小区画水田を引き受け、水稲3ヘクタールを栽培する。拡大するイノシシ被害を防ごうと、行政やNOSAI新潟(新潟県農業共済組合)中越支所の職員に相談し、地域での注意喚起や対策に向けた情報共有に努めている。
世界一辛いトウガラシとして最近までギネス世界記録に認定されていた「キャロライナ・リーパー」の生産・加工・販売を手がける、大阪府高槻市原の末延〈すえのぶ〉農園HARA〈ハラ〉代表・末延冬樹さん(38)。農薬や化学肥料などを使用せずに栽培し、防護服と防じんマスクで刺激臭と闘いながら加工品を製造する。「買ってくれる人がいる限りは商品を切らさないように作り続けます」と話している。
インターネット検索の件数推移などを分析すると、消費動向のトレンドが見えてくる。長年、農産物の消費動向を分析しているオイシックス・ラ・大地 ロジスティックス本部の阪下利久氏に、野菜について、検索ワードから見る2024年の特徴や課題と、来年以降のポイントを解説してもらう。
JA全農は20日、全農酪農経営体験発表会を開いた。未来を創る「酪農のなかま」をテーマに、県本部などから推薦を受けた酪農家などが優良事例を発表した。地域資源の活用や創意工夫で省力・低コストな経営を実践する事例を紹介する。
【鳥取支局】植物油の原料栽培から加工・販売まで一貫して行う、倉吉市の西川農藝(にしかわのうげい)の西川真(にしかわまこと)さん(52)。420アールの圃場で、原料のゴマやエゴマ、ナタネを栽培し、低温製法で圧搾する。消費者に自家農園産の安全・安心な植物油を提供することを理念としている。
〈写真:人気商品の油セットを手に西川さん。倉吉市のふるさと納税の返礼品に選ばれている〉
【静岡支局】「近年、ますます厳しさを増す暑さに対して乳牛の状態を良好に維持できる」と話すのは、富士宮市人穴で酪農業(成乳牛50頭)を営む株式会社グレイスランドの関内慎介代表(44)。3年前から牛舎内部の暑熱対策として、ソーカーシステムを導入している。「地元の酪農業を営む仲間が取り入れた。暑さには常に悩まされてきたので早速自分の牛舎にも設置した」と話す。
〈写真:1頭ごとに背中から水を散布して乾燥させる散布用ノズル〉
【滋賀支局】「買ってくれた人や生産に関わってくれている人など、みんなをナシで笑顔にしたい」と話すのは彦根市の「彦根梨生産組合(17戸)」の組合長を務める吉田惠治(よしだけいじ)さん(48)。味や品質を維持しながら、産地を次世代につなごうと励んでいる。
〈写真:「彦根梨は実が大きく、形も奇麗と好評」と吉田さん〉
【長野支局】「南信州オリーブ」の屋号でオリーブ栽培を行う喬木村の中野克也さん(62)。村内にあるハウスで1.8アール、露地で28アールほどオリーブを栽培している。
〈写真:オリーブの実り具合を確認する中野さん〉
▼国内の果樹産地は、他の作物の栽培が困難な中山間地域に多く形成され、基幹品目として地域経済を支える例も多い。品質は海外でも評価され、リンゴやかんきつ、桃、ブドウ、柿は輸出促進の重点品目だ。ただし、一定の技術が必要で労働時間が長く機械化が困難など課題があり、高齢化などを背景に離農が進む。先般の食料・農業・農村政策審議会企画部会では「規模拡大、新規就農・参入、生産性向上全てに課題を抱えている」と指摘された。
▼生まれ育った実家周辺の地域も平たんな土地が少ない中山間にある。果樹で安定的に収入が得られるまで地域全体が貧しく、他の農村地域から縁談を敬遠されたという話も聞かされた。歴史を調べると、病虫害の多発や台風などの災害による不作、戦争や景気の影響、競合する果物の輸入解禁による値崩れなど幾多の困難を乗り越え、現在があると分かる。
▼『日本の果物はすごい』(中央公論新社)は、日本の歴史と果物の接点を文献など豊富な資料から解き明かす力作だ。著者の竹下大学氏は、民間企業で長く育種を担当した専門家。著書は5章構成で、かんきつ、柿、ブドウ、イチゴ、メロン、桃について導入や普及の経緯、歴史上の人物との関わりを紹介する。
▼徳川家康とミカンの縁、大隈重信が開いたメロン品評会など話題を集めた努力に感心する。最多の登場は果物好きの正岡子規だ。柿、ブドウ、イチゴの各章に現れ、イチゴは庭で栽培もしたという。温暖化への適応など大きな課題にも直面する果樹農業だが、地方創生につながる潜在力は大きい。産地振興へ知恵を絞ろう。