今週のヘッドライン: 2024年11月 1週号
農林水産省は10月30日、2025年産主食用米の適正生産量を683万トンとする需給見通しを示した。9月25日現在の24年産予想収穫量と同水準で、端境期の在庫も確保され、需給は安定するとした。今夏の米品薄に伴う集荷競争の激化を受け、24年産米の相対取引価格(全銘柄平均)は06年以降最も高い60キロ当たり2万2700円でスタート。生産資材価格高騰などで危機的状況にあった稲作農家の経営改善が期待される。一方、米価上昇に伴う消費減退を心配する声もある。同省は24年産の生産・消費動向などを精査し、来年1月にも改めて需給見通しを示す方針だ。
政治資金問題や物価高対策などが大きな争点となった第50回衆議院選挙は10月28日、全議席が確定し、自民・公明両党が議席を減らし、過半数を割り込んだ。与党の過半数割れは2009年以来で、政権運営の不安定化は避けられない。当面は特別国会での首班指名選挙での対応を巡り、与野党の動きに注目が集まる。
農林水産省は10月29日、獣医事審議会計画部会を開き、産業動物獣医師の育成・確保をはじめとした獣医療の提供体制の充実に向け、各都道府県の計画策定などの進捗〈しんちょく〉状況の調査・検討に着手した。鳥インフルエンザの継続的発生や豚熱ワクチンの接種継続など家畜伝染病の対応に加え、衛生管理指導の役割など産業動物獣医師を取り巻く状況が大きく変化している。一方で産業動物臨床獣医師はこの20年で3%減少し、臨床獣医師が不足する地域も発生。国内畜産業の振興には、獣医療のニーズに応じた産業動物獣医師の育成・確保と知識や技術向上を図る対応が課題となっている。
島根県大田市長久町稲用〈いなもち〉の農事組合法人いなぎ(石田伸一代表理事、77歳)は、地域の農地を引き受け、水稲・大豆のほか、収益性の高い柿を取り入れた複合経営に取り組む。「今年は高温と雨不足の影響もあって、主食用米の1等米比率が若干下がる見込み」と石田代表。夜温が下がらなかったことによる柿の着色遅れなども一部で見られるという。収入保険に加入して自然災害や病虫害などのリスクに備え、地域農業の維持・振興に力を注ぐ。
毎月8日は「歯ブラシ交換デー」だ。月に1度、定期的に歯ブラシを交換する習慣を推奨している。交換のタイミングで自分に合った歯ブラシを選び、健康な歯を保とう。歯ブラシを選ぶポイントをライオン歯科衛生研究所セルフケアサポート事業部成人歯科啓発推進室の佐伯莉奈さんに教えてもらった。
促成ピーマン34アールを栽培する鹿児島県志布志市の下前泰雄さん(61)は、アザミウマ類などを捕食する土着天敵タバコカスミカメを効率的に収集・放飼する方法を考案。普及機関などと作成する手引きに今年から掲載し、産地で広めている。ハウス周辺でゴマを露地栽培してタバコカスミカメをおびき寄せ、ボトルに移して作物に直接振りかける。狙った株にボトルから直接放飼でき、ハウス内を飛行する成虫だけでなく、作物に定着しやすい幼虫も活用するため防除効果が高い。
【秋田支局】由利本荘市子吉地区で、荒れた果樹園地70アールを復活させようと有志が立ち上がった。「経験者不在の素人集団だが協力して取り組んでいる」と話す熊谷茂さん(66)が代表を務め、仲間たちは知識ゼロからのリンゴ栽培を行う。
〈写真:休日などを活用して営農に励む構成員ら〉
【北海道支局】野菜中心の経営のため、年によって収量や価格が不安定な野菜を補償する保険の必要性を強く感じていた大石尚志さん(59)は、大樹町でダイコン14ヘクタール、ニンジン7ヘクタール、小豆5ヘクタール、小麦11ヘクタールを作付け、収入保険制度開始当初の2018年から加入している。
〈写真:「"もしも"に備えて今後も収入保険に継続加入したい」と大石さん〉
【石川支局】「宅地化が進む中、農地の荒廃を防ぎたい」と話すのは、金沢市の「寺中(じちゅう)町共同農作業部会」代表・本堂敬二さん(74)。2021年設立の同部会は、水稲2.5ヘクタールを播種から乾燥まで共同で行い、生産性向上と担い手の育成、環境保全に取り組む。
〈写真:「それぞれの得意分野を活動に生かしている」と本堂さん(左端)〉
【新潟支局】十日町市中条の池田富夫さん(75)は、有害鳥獣の生態や生息域を熟知する狩猟歴54年の大ベテランだ。豊富な知識と経験を生かし、高齢化などで減少傾向だった同市の狩猟者の新規養成に貢献する。また、狩猟免許の取得を希望する農業者を対象に講習会も開催している。
〈写真:イノシシの生息域を説明する池田さん〉
【山形支局】村山市の県立村山産業高等学校では、2年生と3年生の生徒ら15人が課題探求型の授業の一環として酒米作りに挑戦している。栽培する酒米の品種は「山酒4号」。この品種は全国で唯一、高校名で品種登録がされている。
〈写真:「株式会社アスク」の社員から栽培方法を学ぶ生徒ら(写真提供=県立村山産業高等学校)〉
▼衆院選は、自民、公明両党が大きく議席を減らし、過半数を割り込む結果となった。立候補者の公認に絡む対応も含め、自民党の政治資金問題への甘さが批判された。投票率53.85%は戦後3番目の低さで、投票率が低いと組織票を持つ与党側に有利とされた"定説"も覆った。結果を誠実に受け止め、国民が納得できる対応で信頼回復に努めてほしい。
▼一方、長期にわたる物価高は国民の家計を圧迫し、格差や貧困の問題も切迫している。年末に向け、賃金引き上げの環境整備や低所得者支援なども含めた経済対策の策定と補正予算案、さらに2025年度の予算案編成などが急がれる。野党とも十分に協議し、政治を停滞させない対応を求めたい。
▼生産基盤の弱体化や過疎に直面する農業・農村政策の強化も待ったなしだ。25年度予算編成に向け、政府は改正食料・農業・農村基本法を踏まえ、集中的に農業の構造転換を進める初年度と位置づけた。地方経済の成長も、鍵を握るのは農業・農村政策の充実・強化にある。