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今週のヘッドライン: 2024年10月 3週号

就農希望者にブドウ作りを指導 人を育て産地の力に(1面)【2024年10月3週号】

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 ブドウ6ヘクタールを栽培する山梨県山梨市牧丘町の合同会社はやぶさファーム(代表社員・久保田博之さん、40歳)は、就農希望者の受け入れや農福連携に取り組み、ブドウ産地の維持・振興に力を注いでいる。就農希望者は、これまで4人が独立。農福連携では、農業体験を通じて引きこもり経験者の自信や意欲を引き出し、体験終了後もアルバイトとして雇用するなど社会参加を支援している。学生や社会人のインターンシップにも積極的で、多くの人を呼び込んで農業の魅力を伝え、地域全体を活気づけている。

(1面)

〈写真:醸造用ブドウ「甲州」の出来を見る久保田さん〉

酪肉近見直し 検討の論点(2面・総合)【2024年10月3週号】

 農林水産省は4日、食料・農業・農村政策審議会畜産部会を開き、新たな「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」(酪農近)の策定に向け、酪農・乳業の課題を集中的に議論した。同省は「需給ギャップ」や「持続的な経営」など11項目の論点を提示。生産者の委員から飼料高騰と生産抑制で厳しい酪農経営の報告があり、生乳需給の安定や牛乳・乳製品の需要拡大などを求める声が相次いだ。国内酪農は規模拡大を加速させて生乳の安定供給を支えてきたが、生産現場では限界感も生じている。持続可能な酪農生産基盤の確立へ酪農家が生産意欲を持って経営継続できる施策の確立が求められる。

(2面・総合)

首相「経済対策策定」指示 補正予算編成へ(2面・総合)【2024年10月3週号】

 石破茂首相は4日の閣議で、今秋にまとめる総合経済対策の策定を閣僚に指示した。衆院選後に速やかに決定し、2024年度補正予算案を編成する。
 対策の柱は「物価高の克服」「日本経済・地方経済の成長」「国民の安心・安全の確保」。デフレからの脱却を確実なものとするとし、物価高対策では低所得者世帯向けの給付金交付や家庭・住宅の省エネ・再エネなどエネルギーコストの上昇に強い社会の実現を後押しする。

(2面・総合)

園芸施設共済 特約でより補償充実(3面・農業保険)【2024年10月3週号】

 気象庁の寒候期予報によると、今年の冬(12~2月)の降雪量は日本海側で平年並みか多いと見通している。各地で頻発する自然災害などによる農業用ハウスの被害を補償するのが、園芸施設共済だ。特約を付加すれば、築年数にかかわらず新築時の資産価値まで補償されるなど、経営ニーズに応じた補償を選択できる。さらにハウス内の農作物の備えは、収入保険に加入すれば万全だ。園芸施設共済の仕組みについて、稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。

(3面・農業保険)

酪農と里山の魅力伝える 消費者に体験・イベントを提供(5面・すまいる)【2024年10月3週号】

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 東京都八王子市美山町で酪農を営む三神牧場の三神仁代表(63)は、両親が残した里山に人を呼び込もうと季節のイベント開催など工夫を凝らしている。搾乳体験ができる「ウシ塾」には年間100人ほどが参加。三神さんは都市近郊型酪農の強みを「目の前に消費者がいること」と話し、体験型里山牧場を目指して酪農の理解醸成活動に注力している。

(5面・すまいる)

〈写真:牛の様子を確認する三神さん〉

2024年度天皇杯 地域に根ざして産地の先導役に(7面・営農技術・資材)【2024年10月3週号】

 農林水産省は、2024年度農林水産祭の天皇杯などの受賞者が決定したと発表した。過去1年間(23年7月~24年6月)の参加表彰行事で農林水産大臣賞を受賞した463点の中から決定した。11月23日の式典で表彰する。受賞した5部門のうち「農産・蚕糸」と「畜産」の受賞事例について紹介する。

(7面・営農技術・資材)

ブランド花きを守る/子育てと営農を両立【秋田県・10月3週号】

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 【秋田支局】「先輩方が築き上げた鹿角の花きのブランド力を、自分たちの世代もつないでいきたい」と話す鹿角市十和田大湯の中村京子さん(40)。露地70アール、37坪のハウス2棟で花き栽培を行う。4人の子育てをしながら、パート2人を雇用して日々の営農に励む。
 中村さんが手がける品目はシンテッポウユリやトルコギキョウ、スターチスなど。JAかづの花き生産部会に所属し、全量を出荷する。関東方面のほか、秋田県内や宮城県へ流通。規格外品は「大湯103号線産直センター直売所」で販売する。
 中学生の時から両親が行う花き栽培を手伝っていた中村さん。結婚後に子育てとの両立を目指して新規就農し、10年目を迎えた。
 シンテッポウユリは「優雅」「雷山〈らいざん〉」を栽培。2月上旬から中旬に、同JAの種苗センターで部会員らと共に播種する。5月中旬に定植し、8月下旬から秋彼岸に向けて収穫が始まる。蕾〈つぼみ〉の先端から110センチほどを1本ずつ鎌で刈り取り。刈り取って残った葉が光合成することで、球根に養分が蓄えられる。
 翌年は、越冬した球根から5、6本の芽が出るので3本に間引く。7月中旬から8月上旬にかけて収穫でき、これをもう一年繰り返す。主に盆用として出荷し、1年目から合わせて毎年5万本の出荷を見込む。
 同JA営農販売課の海沼将人さんは「中村さんのユリは品質が良く、終盤まで数多く納品いただいた。今後の若手農家を引っ張る頼もしい方なので、引き続き支援していきたい」と期待を寄せる。
 前年より良いものを作り、販売額を伸ばすことを毎年の目標に掲げる。「物価高騰の影響は大きいが、薬剤などを節約して病気が出ては台無し。しっかりと手をかけ、喜ばれるものを作りたい」と張り切る。

〈写真:長さを確認し鎌で刈り取る中村さん〉

収入保険・私の選択 新規作物にチャレンジ【新潟県・10月3週号】

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新潟県佐渡市 羽二生武さん(83歳)
 「収入保険のことが気になっていたところにNOSAI職員が説明に来てくれて、すぐに加入しました」と話す佐渡市寺田の羽二生武さん。水稲3.5ヘクタールのほか、メロンなどの園芸作物を5アール栽培している。
 羽二生さんが収入保険に加入したのは2021年。ラジオCMを耳にして興味を持ち、職員の話を聞いてすぐに加入した。
 加入した21年はコロナ禍の影響で米価が低下。天候にも恵まれず、例年と比べて収穫量も約1割少なくなった。「収入保険の保険金を受け取ったおかげで農業を続けることができて、本当に助かりました」と話す。
 羽二生さんは鉄筋工として働きながら水稲を栽培していたが、60歳の退職を機に「水稲の他に何か栽培できないか」と考え、メロン作りを始めた。現在は「JA佐渡メロン倶楽部〈くらぶ〉」に加入し、昨年の8月にはJA佐渡の直売所「よらんか舎」の周年イベントでメロンのかき氷を出し始めた。「好評だったので、今後もイベントの際には商品を出していきたい」と意気込む。
 また、ブドウ「シャインマスカット」の栽培も始め、「収入保険は品目の枠にとらわれず、農業経営者ごとの収入全体を補償対象としているので、新規作物の生産にも安心して取り組めます。収入保険で経営の安心を確保しながら、生涯現役で農業に向き合っていきたいです」と話す。

〈写真:「生涯現役で農業を続けるには、収入保険が必要ですね」と羽二生さん〉

家族経営協定を締結/若い世代につなぐため【福島県・10月3週号】

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 【福島支局】ウド1ヘクタールなどを家族で栽培する鮫川村の白坂農園(代表=白坂忠幸さん・44歳)では、労働報酬や休日などの就業環境を整えるため家族経営協定を結んだ。代表の白坂さんは「この協定でこれからの若い世代に農業を仕事として捉えてほしい」と奮闘する。
 家族経営協定は、農業と家事に従事する家族員の間で結ぶ。口約束ではなく、役割や労働報酬・環境、目標について家族で話し合い、明文化する。
 白坂さんは「私が就農した22年前は、手伝い感覚だった」と振り返る。おいの就農を機に同協定を検討、2024年に締結した。「家族間だとあいまいになりがちな給与や休暇などの条件を明確にできた」と話す。
 鮫川村役場農林商工課の担当者は「白坂さんの締結は鮫川村で6軒目。村にとって農業は基幹産業だが、高齢化に歯止めがかからない。若い力で村を引っ張っていってほしい」とエールを送る。
 白坂さんは「ウド農家として魅せる農業を心がけています」と力強く話し、協定だけでなく、自身の子が仕事として魅力を感じる農業がしたいと栽培に励んでいる。

〈写真:「ウドとナガイモのお歳暮セットを販売しています」と白坂さん(右)とおいの光太郎さん〉

地元食材使って/食堂を軸に地域活性化【青森県・10月3週号】

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 【青森支局】十和田市南東部に位置する一本松集落では、集会場に月に一度、「食堂一本松」が開店する。実行委員会代表の野崎さち子さん(69)ら地域住民13人が、地域活性化の一環として、地元で収穫された食材を使用した郷土料理を提供する。
 食堂が運営を開始したのは今年5月。基本的に第4土曜日に営業し、毎回30食限定で事前予約制となっている。SNS(交流サイト)で情報を発信したところ、若い世代も訪れているという。
 「食材に特別なものは何も使用していない。その代わり、下ごしらえには昔ながらの方法で手間暇をかけている」と野崎さん。来店者や地域住民から「料理を教えてほしい」という声もあり、料理教室も行っている。野崎さんは「先輩から学んだ技術は私の宝物。若い世代の人たちにも受け継いでいってもらえるよう、多くの人に伝えていきたい」と朗らかに話す。
 「地域が活性化していく様子を見るのがとても喜ばしい」と話す野崎さん。今後について「自分も含め高齢化が進むこの地域で、お互いに支え助け合いながら、最後までこの地で生活できる集落を目指してこの活動を続けていきたい」と意気込む。

〈写真:笑顔で御膳を紹介する野崎さん〉

防風林「空き家活用で地域ににぎわいを【2024年10月3週号】」

 ▼日本の人口が減少に転じて以降、地方でも都市部でも放置された空き家が目立ってきたと感じている。総務省の調査では、2023年10月1日現在の空き家数は900万2千戸。5年に1度の調査で、前回(18年)比で51万3千戸増と過去最多になり、総住宅数に占める割合も13.8%と過去最高となった。
 ▼近所を散歩していても長期間放置された空き家を見かける。屋根は落ち、窓は割れ、壁は崩れ、繁茂した草木が道路側に飛び出し、通行の妨げになる場所もある。何とかできないかと思うが、個人資産であり、勝手に処分できないのだ。法改正で放置空き家の対策も強化が図られてはいるものの、現状では行政の対応も後手に回っている。
 ▼国土交通省は先ごろ、「『農地付き空き家』の手引き」改定版を公表した。空き家バンクなどに取り組む自治体に向けに、田園回帰など都市部の住民が持つ農山漁村への潜在的な移住への関心に応え、空き家の有効活用を呼びかけるものだ。移住を希望する人の多くが農地を希望する事例が多いとし、主要な手続きや先進的な事例、関連する制度と利用可能な事業などをまとめた。
 ▼手引きによると、空き家の取得要因は相続が半数以上を占め、所有者の4分の1は遠隔地に居住する。日常的な管理ができない空き家ほど早く朽ちる可能性がある。相続した生家をすぐに売ったり貸したりは決心しにくいだろう。ただ、魅力を感じて移住者が増えればそれだけ故郷のにぎやさが増す。そう考えてはどうか。

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