今週のヘッドライン: 2024年10月 1週号
黒毛和種の繁殖牛54頭と肥育牛10頭を飼養する京都府京丹後市丹後町の株式会社いちがお畜産は、自給飼料生産と放牧を組み合わせ、低コストで効率的な経営を追求している。発酵粗飼料(WCS)用稲や牧草を生産し、粗飼料は約4割を自給する。飼養管理と飼料生産は、代表の大江良樹さん(67)と後継者の健人さん(41)が主に担う。和子牛価格の低迷など厳しい環境下ながら、耕種農家の協力も得て経営発展を目指している。
9月20日から北陸、東北の日本海側が大雨となり、石川県の能登半島北部では21日午前に線状降水帯が発生。記録的な大雨で河川の氾濫、土砂災害が多発した。農業関係でも圃場の浸水や土砂の流入、農業用ハウスの倒壊など甚大な被害が発生した。被災地域のNOSAI団体では、被害状況の全容把握と迅速・適切な損害評価の実施に全力を挙げている。また、収入保険の加入者には、つなぎ融資の周知徹底に努めている。
中央果実協会は9月24日、「果樹産地における後継者・担い手育成」をテーマに事例発表会を開催。関係機関が連携して樹園地の集約・整備を進め新規就農者を確保した取り組みなどが紹介された。高品質な日本果実は国内外で高い評価を受け、果実の産出額は増加傾向にある一方、農家の減少・高齢化や後継者不足により栽培面積の減少に歯止めがかからず「将来が危ぶまれる状況」だ。果樹産地の振興は多くの園地が位置する中山間地域の維持・活性化にも直結する。永年作物でのある果樹の特性を踏まえつつ、次代を担う果樹農家の育成・定着へ官民一体での取り組み強化が求められる。
品目の枠にとらわれず、農業者の経営努力では避けられないあらゆるリスクに対応して収入減少を補填する収入保険。個人経営体や事業年度が1月開始の法人経営体の場合、2025年からの加入には、年末までの加入申請が必要だ。25年契約の新規加入者には、要件を満たせば保険料が割り引かれる負担軽減措置もある。収入保険の利点などについて、稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。
温暖化への適応として、希少性が高い熱帯果樹の栽培に関心が高まり、家庭菜園や直売所向けなどでも栽培されている。特有の酸味や香りが特徴のパッションフルーツは、その中でも栽培しやすい品目だという。南九州大学環境園芸学部(宮崎県都城市)・果樹園芸学研究室の前田隆昭教授に栽培方法の基本を教えてもらう。
スマートフォンの撮影画像などを使った病害虫の画像診断技術が実用化段階にきている。人工知能(AI)で高精度に判別でき、適用薬剤など効果的な防除手段の選択に役立つ。さらに、撮影データなどを収集・分析して広域で共有することで、被害拡大前の早期防除など発生予察への活用が期待されている。日本植物防疫協会が先ごろ開いたシンポジウムでは、農研機構や県の普及機関、メーカーなどが出席。画像診断を含む防除情報の生産現場での活用について成果や課題を整理した。
【埼玉支局】久喜市の岡野彰さん(50歳、おかのこファーム合同会社代表)は、水稲20ヘクタール、小麦2ヘクタール、露地野菜50アールの栽培を主軸に、作業受託するほか、農機店での勤務経験と各種資格を生かして農機の修理請け負い、中古農機の買い取り・販売なども行う。これらの収入を併せ、経営の安定化を図っている。
〈写真:コシヒカリの生育を確認する岡野さん。今年は念入りにカメムシ防除を行った〉
【山形支局】酒田市緑ケ丘で訪問看護事業や農業を手がける「有限会社アムザ(土田裕道代表)」の土田彩加さん(33)は、訪問看護に加えてイモ類の栽培、広報業務や営業など多岐にわたり業務を担う。栽培するイモ類は「芋あねちゃ(あねちゃは方言でお姉さんの意味)」の名前でブランド化し、販売している。
〈写真:「砂地で育った芋はおいしいですよ」と土田さん〉
【青森支局】「初めて生のキクラゲを食べたとき、そのおいしさに感動しました。いろいろな人に味わってほしいと一念発起しました」と話す弘前市相馬の種澤達也さん(62)。高品質キクラゲを消費者へ届けたいとハウス1アールで日々栽培に取り組んでいる。
〈写真:「生キクラゲの刺し身がおすすめ」と種澤さん〉
【島根支局】雲南市大東町の山田健太郎さん(35)は、耕作放棄地を活用して、米「プリンセスサリー」をはじめ、ウコン、ショウガ、コリアンダー、フェネグリークなどのスパイス類を農薬や化学肥料を使わずに栽培し、「出雲SPICE LAB.」と名付けた工房でクラフトコーラやスパイスカレーキットなどに加工して販売する。
〈写真:スパイスカレーキットとクラフトコーラを手に山田さん〉
▼農林水産省と環境省は、有識者の合同会議を開き、事業系食品ロス削減目標の見直し検討を始めた。食品リサイクル法による基本方針で設定した2030年度の削減目標(00年度比半減)を22年度に前倒しで達成。そこで年度内に新たな基本方針案をまとめ、さらに削減を促す30年度目標を設定する。
▼目標達成に大きく寄与したのはコロナ禍による国民の行動変容だ。在宅の機会と時間が増えて外食から内食に移行、居酒屋需要や宴会が減り、外食の食べ残しなどが減少したという。新たな目標設定では、今も継続する行動変容の影響も反映する方針だ。
▼コロナ禍を経て変わったと感じるのは冠婚葬祭で、特に葬儀は家族葬が増えた。葬儀相談依頼サイト「いい葬儀」を運営する鎌倉新書の調査では、コロナ禍を機に一般葬と家族葬の割合が逆転した。現在は家族葬が5割、一般葬は3割となっている。
▼インフルエンザと同じ5類への移行から1年以上が過ぎ、マスク姿の人も減った。ただ、コロナ禍で広がった慣習が定着しつつある。