今週のヘッドライン: 2024年09月 2週号
日本一の黒ゴマ産地を目指し、兵庫県丹波市の丹波黒ごま生産組合では「丹波黒ごま」のブランド化に力を入れている。今年産は26人が2.8ヘクタールで栽培する。高品質・安定生産へ、普及センターと連携して栽培暦を作成。栽培講習会への参加を義務付け、全圃場の巡回指導を実施する。黒ゴマは、ゴマ専門の食品会社和田萬(大阪市)に全量を出荷する。黒ゴマ7.5アールなどを栽培し、生産組合顧問を務める同市青垣町の芦田美智則さん(72)は、産地の知名度を高めようと和田萬から加工品を個人で仕入れ、農産物直売所で販売。道の駅では黒ゴマのジェラートが人気商品となるなど、黒ゴマの魅力発信に努めている。
台風10号は、非常に強い勢力で8月29日に鹿児島県薩摩川内市付近に上陸し、ゆっくりとした速度で勢力を弱めながら九州、四国を抜けて東海沖へ進んだ。この間、西日本から東日本の太平洋側を中心に広い範囲で大雨が長時間続き、農業関係にも甚大な被害が発生した。
農林水産省は8月30日、2023年の新規就農者は前年比5.2%減の4万3460人だったと発表した。49歳以下は5.8%減の1万5890人で、ともに2年連続で現行統計開始(15年)以降の最少を更新。就農形態別でみても親元就農など「新規自営農業就農者」、農業法人への「新規雇用就農者」、「新規参入者」のいずれも前年を下回った。政府は改正食料・農業・農村基本法に基づき、今後5年間を食料安全保障の強化などに向けた農業構造転換集中対策期間に位置付けた。過疎化・高齢化が進む中、次代を担う人材の育成・確保は食料安全保障の確立のみならず地域の維持・活性化を図る最重要課題だ。他産業に劣らない労働環境整備など職業としての農業の魅力を高める施策の抜本強化が求められる。
農業法人などで学生や社会人の就業体験を受け入れる「農業インターンシップ」が各地で実施されている。従業員と一緒に農作業を経験し、働くイメージがしやすく、円滑な就業や就業後のミスマッチの回避にも期待される。一方で、受け入れる際は、事故やトラブルを防ぐため、体験内容などの説明や農作業安全の確保、職場のハラスメント対策などの配慮が重要だ。日本農業法人協会が受け入れ側の留意点をまとめたルールブックなどからポイントを紹介する。
台風10号に伴う大雨や能登半島地震など各地で自然災害が発生している。こうした時に気を付けたいのが住宅の修理や義援金をめぐるトラブルだ。国民生活センターは、災害時の混乱や被災者を支援したい気持ちにつけ込んだ悪質商法が多発しているとして、注意を呼びかけている。相談事例と対策を紹介する。
水稲の湛水〈たんすい〉直播で無コーティングの根出し種子を用いた代かき同時浅層土中播種栽培の導入が進んでいる。種子コーティングの手間とコストを省くほか、トラクターに装着する専用の播種機により仕上げ代かきと播種が1工程で済むのが特徴だ。秋田県大仙市の株式会社仙北農園では今年、水稲38ヘクタールのうち、19ヘクタールで導入。代表の小須田顕さん(38)は「1人作業で労働時間を大幅に短縮できる。昨年までの収量も10アール当たり平均で600キロほどあり、移植と遜色ない」と手応えを感じている。
【広島支局】東広島市志和町の株式会社ねぎらいふぁーむ(八幡原圭代表=35歳、従業員13人)は、同市の協力農家とともにブランド青ネギ「サムライねぎ」を年間通して栽培。市内のスーパーや道の駅のほか、多くの飲食店に出荷する。若い世代の育成や、食品ロスをなくす取り組みを積極的に行っている。
〈写真:「ねぎらいの気持ちを持ち、日常にネギのある生活『ねぎライフ』の実現という思いを社名に込めた」と八幡原さん〉
【静岡支局】「循環型農業には魅力がある」と話すのは、メタン発酵消化液を液体肥料として活用(水稲7ヘクタール)する、掛川市「有限会社エコ心愛」代表の山下明広さん(68)。
〈写真:水田にメタン発酵消化液を施す山下さん〉
【福井支局】「妹が農業を頑張っている姿を見て、生産者の思いを伝えるお菓子作りに取り組んでいきたいと思った」と話すのは、鯖江市下新庄町の菓子店「うちのぶどう」を営む宮本采知さん(28)。妹の知弥さん(26)とともに、祖父から農業と加工品の製造販売事業を引き継ぎ、姉妹で協力しながら営農する。
〈写真:生育中のブドウの樹の下で「県のイベントにも積極的に出店し、姉妹で協力しながら農業と店舗経営を行っている」と采知さん(左)と知弥さん〉
【山形支局】河北町西里でエダマメ9アール、水稲2.4アール、サクランボ7アールを栽培する岡崎秋一さん(77)。岡崎さんは製作所を営んでいた経験を生かし、エダマメの脱水機を自作した。
〈写真:自作の脱水機を前に岡崎さん〉
【新潟支局】新発田市中曽根町の富樫梨沙さん(34)は、米袋を再利用した「一升米と米袋リメイクリュックセット」の販売を、今年3月からインターネットを中心に行っている。
〈写真:リュックは1歳の子どもが無理なく背負える〉
▼2022年度の有機農業面積が前年度比14%増の3万300ヘクタールになったと農林水産省が発表した。前年度の2倍を超える二桁の伸び率はこれまでに例がない。22年度から本格化したみどりの食料システム戦略の支援事業なども面積拡大を後押しした。
▼有機農業は、化学農薬や化学肥料、遺伝子組み換え技術を使わず、環境負荷を低減した農産物の生産方法と定義される。温暖化防止や生物多様性への寄与なども期待され、市場規模は拡大傾向にある。新規参入者の2~3割が有機農業に取り組むとの調査結果があり、関心を寄せる農家も多いはず。
▼課題は慣行農業に比べ手間やコストがかかる点だ。有機農業を行う農家の調査では、面積を増やせない理由の上位を占め、縮小の意向を示す農家もいるほど。新規参入も含む有機農業の取り組み拡大には、安定生産技術の開発・普及や価値に見合う価格形成など持続性を高める環境整備が欠かせない。