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今週のヘッドライン: 2024年09月 1週号

住民主体の獣害対策 町の「専門員」がサポート(1面)【2024年9月1週号】

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 イノシシ、ニホンザル、ツキノワグマ――多様な野生動物への対応が課題となっている福島県西会津町では、地域住民主体の獣害対策に力を入れている。活動の基礎は、自治区(集落)単位で開く「鳥獣被害対策研修会」だ。鳥獣行政に特化した町の職員「専門員」のサポートのもと、獣害対策の基本的な考え方を学ぶとともに、出没や被害の状況を確認。集落の実情に合った対策を住民自ら立案、実施する。町では地域ぐるみの取り組みをさらに広げ、多発する被害の抑制につなげたい考えだ。

(1面)

〈写真:情報交換する石田さん(右)と飯田主査。後ろは住民が協力して整備した緩衝帯。以前は木が生い茂っていた〉

新基本計画の検討方向 農業構造転換へ政策再構築(1面)【2024年9月1週号】

 政府は8月27日、食料安定供給・農林水産業基盤強化本部を開き、来年3月末策定する新たな食料・農業・農村基本計画の検討方向などを整理した。改正食料・農業・農村基本法に基づく食料安全保障の強化では、輸入依存度の高い麦・大豆の増産と水田政策の見直し、輸出向けの国際競争力のある産地育成などを政策課題に掲げた。環境と調和のとれた食料システムの確立では、2027年度を目標に新たな環境直接支払交付金を創設する。

(1面)

農林水産省予算概算要求 構造転換へ2兆6389億円(2面・総合)【2024年9月1週号】

 農林水産省は8月30日、2025年度農林水産関係予算概算要求を財務省に提出した。総額は24年度当初予算比16.3%増の2兆6389億円。改正食料・農業・農村基本法に基づく農業の構造転換を初動5年間で集中的に実行し、農林水産業の持続可能な成長を推進する予算と位置付け、海外依存度の高い麦・大豆の生産拡大など食料安全保障の強化に重点配分した。生産資材の確保・安定供給では国産飼料の生産・利用拡大などの支援を拡充。合理的な価格形成に向けたコスト指標の作成促進などを盛り込んだ。農業の持続的な発展では、地域計画の実現を後押しする総合対策を措置する。「収入保険制度の実施」は110億円増の458億円、「農業共済事業の実施」は2億円増の所要額816億円を計上した。

(2面・総合)

収入保険の自動継続特約 更新手続きが簡単に(3面・収入保険)【2024年9月1週号】

 2024年1月から保険期間が始まる収入保険の加入者で、自動継続特約を付けている場合、NOSAI全国連(全国農業共済組合連合会)から順次、25年1月以降の契約更新についての書類が届く。11月末までに忘れずに手続きをしてほしい。自動継続特約を付けると、翌年以降は加入申請書の提出が不要となり、付加保険料(事務費)が千円割引される。契約更新の手続きなどについて、稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。

(3面・収入保険)

献立に取り入れてみよう! 家庭で楽しむジビエ料理(5面・すまいる)【2024年9月1週号】

 天然の野生鳥獣の食肉を意味するジビエは、欧州では貴族の伝統料理として古くから発展してきた食文化だ。近年は捕獲鳥獣を地域資源へ転換する方策としても注目されている。日本ジビエ振興協会常務理事・事務局長の鮎澤廉(あゆざわれん)さんに家庭で楽しめるジビエ料理やおすすめの調理法を紹介してもらった。

(5面・すまいる)

高温でも安定生産 水稲の追肥を効率的に(7面・営農技術・資材)【2024年9月1週号】

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 特別栽培米を中心に、水稲約58ヘクタールなどで経営する山形県鶴岡市渡前の株式会社井上農場(井上馨代表)は、生育に応じた追肥体系で温暖化にも対応した生産安定を図る。生産を担当する井上貴利専務(43)は「気温の推移が読みにくい中、追肥も含め基本に戻ることが重要」と話す。県が配信する圃場ごとの生育情報などを参考に、散布しやすい肥料選びや従業員との情報共有などで作業を効率化。食味向上では、光合成を促す糖蜜のドローン(小型無人機)散布など独自の工夫を実践している。

(7面・営農技術・資材)

〈写真:スマートフォンで生育予測を確認する井上専務(左から2人目)と従業員(6月下旬撮影)〉

モモの木の凍害対策 主幹部保温で着果数増【福島県・9月1週号】

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 【福島支局】モモ85アールなどを経営する飯坂町の菊田透さん(72)は、モモの木の凍害対策に市販の保温資材を使用している。「霜の被害がないのに、モモが受粉しないのを疑問に思ったことがきっかけ」と話し、3年前に同商品を取り入れた。着果数が倍以上となり、手応えを得ている。
 冬季に主幹部に巻き付けることで、表面温度の日較差が縮小し、夜間の樹液凍結を抑制する効果があるという。菊田さんは、極晩生種の「ゆめかおり」に同商品を使用している。
 降霜で被害を受けていないにもかかわらず、人工授粉してもなかなか結実しないため、原因を追求していた菊田さん。温暖化で冬季の樹液流動が早まり、夜間の低温で樹液が凍結。その後の日較差により樹液が急激に融解し細胞がダメージを受け、木の衰弱を招き、不受粉を引き起こしている可能性があることが分かったという。

〈写真:主幹部に巻き付け、夜間の樹液凍結を抑制する〉

収入保険・私の選択 ブドウ 病害克服へ計画的に作業【山梨県・9月1週号】

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 【山梨支局】「加入の手続きや事故が起きた時の手間が減った」と話すのは、笛吹市一宮町でブドウ「シャインマスカット」「スカーレット」「紫玉」など6品種60アールを栽培する久津間登〈くつまのぼる〉さん(75)。果樹共済に加入していたが、2022年に収入保険に移行した。同年にブドウの病害で収入が28%減少し保険金を受け取った。
 久津間さんは62歳で勤めを退職後、専業農家に。毎年のように各地でまん延する晩腐病が悩みの種だ。
 晩腐病は難防除病害で、幼果期に雨滴が果実に触れることで感染し、糖度が高くなる収穫期に発病する。久津間さんも「以前は晩腐病で全滅した畑もあった。その時は房を埋めるために大きな穴を7カ所も掘ったよ」と話す。
 「ジベレリン処理後にきっちり袋をかけているが、摘粒で袋をはずす2週間の間に感染してしまう」と話す久津間さん。22年は紫玉と「ブラックビート」で晩腐病とえそ果病が発生した。「他の品種がある程度収穫できたので、そこまで収入が減るとは思わなかった。保険金が出ると聞いて安心した」と話す。
 久津間さんは21年までは果樹共済に加入していたが、NOSAI職員に同等の掛金で補償が高い収入保険を勧められ加入。「収入保険は、加入するときは青色申告決算書のコピーを提出するだけだし、忙しい収穫期に損害評価を受けなくていい」と話す。
 加入に当たっては、農作業日誌の記載を求められたが、久津間さんは以前から誘引や摘粒、消毒など日々の作業を、作業日誌に細かく記録。前年の日誌を確認しながら、計画的に作業を行っている。

〈写真:紫玉の園地で久津間さん。「今年は順調」と話す〉

能登半島地震で被災 感謝忘れず営農続ける【石川県・9月1週号】

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 【石川支局】七尾市中島町中島地区では、能登半島地震により畑地の排水路の損壊や水田の塩害が発生している。同地区で水稲14ヘクタールと「金糸瓜〈きんしうり〉」や白ネギなど野菜1ヘクタールを栽培する山本正秋さん(59)と妻の由美子さんは、今年の栽培計画を縮小することになったものの、前向きに営農に取り組んでいる。
 「周囲から無理するなと声をかけられ、除草を手伝ってくれた人もいる。感謝の気持ちを持って今後も営農を続けていきたい」と山本さんは話す。
 山本さん方では、ハウス7棟のうち4棟が被災。3月中に給排水設備を修理し、ゆがんだままのハウスで計画通り4千枚の水稲育苗を行った。
 全壊した納屋から運び出した農機具をハウスに格納したため、使えるハウスが不足し、予定していた夏野菜の植え付けを一部断念することになった。
 壁の崩落によって変形したコンバインや、落下した瓦が当たった田植機など、農機具の損害額は800万円を超える。ハウスの復旧には園芸施設共済の共済金を、農機具や関連設備の修理や購入には事業助成金などの利用を進め、来春の完全復旧を目指している。

〈写真:ピーマンの管理をする山本さん夫妻〉

雇用就農 農業で地域に貢献したい【新潟県・9月1週号】

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 【新潟支局】「苦労があっても、元気に育ってくれた作物を収穫するのが今のやりがいです」と話す小千谷市片貝町の安達麻奈美さん(34)。農業高校を卒業後、地元の農業関係の職場で働いていたが、一昨年、同市の「はらふぁ~む(原佑哉代表)」に就農した。
 「農業高校で学ぶうちに農業が好きになり、関連した職に就きたいとずっと考えていました」と話す安達さんは、前職では農政関係の仕事をしていた。その仕事を通して、農業従事者の高齢化や耕作放棄地が年々増加していくことを実感。自分も農業で地域に貢献したいと考えるようになった。
 昨年11月にドローン(小型無人機)の免許を取得。さらに、大型特殊免許の取得も考えているという。
 原代表は「夏も冬もいつも笑顔で元気に頑張ってくれていて、周りもみんな元気をもらっています」と働きに太鼓判を押し、安達さんは「農業を通してこれから先も大事にしていきたい出会いや、たくさんの経験をさせてもらいました。苦労することもありますが、支えてくれる人たちへの感謝を忘れずに、いろいろなことに前向きに挑戦していきたいです」と笑顔で話す。

〈写真:「小千谷の若手農家と一緒に盛り上げていきたい」と安達さん〉

防風林「後悔しないために住宅の耐震化を【2024年9月1週号】」

 ▼能登半島地震の発生から8カ月を過ぎた。政府は、特に甚大な被害となった奥能登地域の復旧・復興に向け、石川県などと連携して生活やなりわいの再建を急いでいる。ただ、町並みごと倒壊した住宅が残る地域もあり、交通アクセスの悪さや建設業界の人手不足が重なって作業の遅れが指摘されている。被災した建物の公費解体の申請棟数は、8月19日時点で2万7000弱に上るものの、工事の完了棟数は3千に満たない状況だ。
 ▼高齢化や過疎化が進む奥能登地域では、建築から年数を経過した住宅が多く、倒壊などの被害が増えたとの指摘もある。耐震基準は1981年に見直され、政府は旧基準で建てた住宅の耐震診断や耐震改修を促している。しかし、費用負担などを敬遠し、旧基準の住宅に住み続ける人も多かったよう。
 ▼国土交通省は先ごろ、「木造住宅の安全確保方策マニュアル」を公表した。能登半島地震による被災状況を踏まえ、耐震化による地震のリスク低減を呼びかける。耐震診断による耐震性や危険性の確認と改修が基本だが、居住者の命を守る観点から、段階的な改修や部分的な改修、耐震性のある家具の導入など、すぐに改修できない場合の暫定的・緊急的な対策を明記。補助や融資など耐震化の支援制度も紹介する。
 ▼住宅が全半壊した場合、建て替えや補修の費用が耐震改修費用を大幅に上回るのは避けられない。災害に遭っても生まれ育った地域に住み続けたい人は多いはず。避難所や仮設住宅での生活は長引くほど体や精神面の負担は大きい。耐震診断と対策でリスクを一定程度低減できるのだ。後悔しないよう旧基準の住宅に住む人に検討を勧めたい。

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