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今週のヘッドライン: 2024年08月 4週号

振動でコナジラミ類を防除 施設トマトで実用化へ(1面)【2024年8月4週号】

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 振動を利用した施設トマトのコナジラミ類防除技術の実用化が目前だ。施設内でワイヤなどの誘引具を通じて作物に特定の周波数を伝えると、コナジラミ類の行動を制御して被害抑制につながる。振動による受粉促進効果も確認されている。来年度の市販化を目標に実証が進む。キノコや果樹でも振動による防除技術の確立が見込まれ、生育促進など副次的な効果が見られる例もある。農薬散布を抑えることで薬剤抵抗性の発達を回避でき、省力化や環境保全型農業への貢献も期待される。

(1面)

〈写真:市販化目前の振動装置が披露された〉

厳しい残暑 熱中症予防の継続を(2面・総合)【2024年8月4週号】

 気象庁は20日、9~11月の3カ月予報を発表した。平均気温は全国的に高くなる見通し。温暖化に加え、南米ペルー沖の海水温が低くなるラニーニャ現象の発生が予想され、太平洋高気圧の張り出しが強まることなどが要因だ。9月から10月にかけて厳しい残暑が続く見込みで、引き続き熱中症予防の徹底が重要となる。降水量は東・西日本太平洋側で平年並みか多い見通しで、秋雨前線や台風に伴う大雨や暴風などへの警戒も欠かせない。最新の気象情報に留意し、命を守る行動を徹底したい。

(2面・総合)

自走式動力噴霧機を貸し出し 水稲病害虫防除に成果(3面・NOSAI)【2024年8月4週号】

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 NOSAI福島(福島県農業共済組合)は、いもち病やカメムシなどの水稲病害虫防除を目的に、自走式動力噴霧機を水稲共済・収入保険加入者に無償(一部除く)で貸し出している。組合全体で29台を所持し、昨年は58戸に貸し出して約200ヘクタールの防除に役立てた。機械の購入は負担が大きいことから毎年借りる農家が多く「これからも続けてほしい」と継続を求める声が寄せられている。

(3面・NOSAI)

〈写真:NOSAI職員と情報交換する三瓶さん(左)〉

ネット販売向け 農産物の撮影のポイント(4面・流通)【2024年8月4週号】

 農業カメラマンの網野文絵さんは、農家向けに、農産物販売やSNS(交流サイト)での情報発信などに向けた写真講座を開いている。インターネット販売に役立つ農産物の撮影のポイントについて紹介してもらう。

(4面・流通)

簡単・便利が魅力 風呂敷活用術(5面・すまいる)【2024年8月4週号】

 風呂敷は、簡単な包み方を覚えるだけで幅広い用途に合わせられるのが魅力だ。京都のれん株式会社(京都市中京区)で風呂敷の使い方などを提案している総合サポート・正和三代子さんに、簡単で便利な包み方を教えてもらう。

(5面・すまいる)

導入進む高温耐性品種 品質低下回避へ(7面・営農技術・資材)【2024年8月4週号】

 水稲では、温暖化に伴う登熟期の高温の影響で、白未熟粒など玄米の品質低下が問題となり、高温耐性品種が注目されている。2023年産では主食用米作付面積の14.7%を占め、年々増加している。適正な間断灌水〈かんすい〉 や葉色診断に基づく追肥など対策技術と組み合わせ、高品質米の生産に努めたい。農研機構作物研究部門の後藤明俊オーダーメード育種基盤グループ長に高温耐性品種の特徴などを聞いた。

(7面・営農技術・資材)

茶産地を輝かせる/農家・非農家がチームで活動【静岡県・8月4週号】

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 【静岡支局】静岡市葵区で茶1.7ヘクタールを栽培する松永哲也さん(51)は、「足久保ティーワークス茶農業協同組合」の理事を務めている。同組合は松永さんをはじめとする25人の茶農家が組合員となって構成し、このほかに非農家のスタッフ約10人が販売や広報を担当している。異なる背景を持つメンバーがチームとなって意見を出し合い、「足久保茶」で作る和紅茶ブランドの立ち上げや、茶工場に併設したテラスカフェをオープンするなど、茶に親しむための仕掛けづくりを行う。
 足久保ティーワークスは1996年に設立。2000年に「紅茶を入り口として緑茶に興味を持ってほしい」という思いから、緑茶と同じ茶葉を使用した和紅茶の製造を始める。さらに非農家スタッフが参加することで、22年には「はじまりの紅茶」として和紅茶をブランド化した。
 このころから県内外の催事に積極的に出店し、22年10月にはJR小田原駅直結の商業施設に常設店舗を開設。ティーバッグの商品を充実させ、水出し用ボトルで入れて試飲を行うことで、日常に取り入れやすい形で楽しめることをアピールしている。
 テラスカフェ前の畑で苗木を育てる「マイ茶の木オーナー」もチームのメンバーでアイデアを出し合い実現した取り組みの一つだ。
 施肥などはスタッフが行うが、イベント開催時以外に自主的に手入れに訪れるオーナーもいて、現在は県内外問わず約100人が苗木の成長を見守っている。

〈写真:「マイ茶の木は僕たちも一緒に育てます」と松永さん〉

イチジクコンテナ栽培/露地で挑戦【新潟県・8月4週号】

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 【新潟支局】「女性一人でも管理しやすい栽培方法に挑戦しています」と話すのは、新発田市「ほんのり農園」代表の堀川紀子さん(45)。2022年に新規就農し、露地10アールでイチジクのコンテナ栽培に取り組んでいる。
 水稲育苗ハウスを活用したイチジクコンテナ栽培は新潟県が開発。地植えに比べて栽培管理が容易で、定植1年目から収穫できるメリットがある。堀川さんは露地でもコンテナ栽培ができるのではと考えた。
 栽培管理から販売まで一人で行っている堀川さん。「イチジクは、他の果樹に比べて剪定〈せんてい〉作業などの面で栽培しやすい」と話す。品種は「桝井〈ますい〉ドーフィン」「ビオレソリエス」など5種で、約800コンテナある。
 栽培は3月のコンテナの組み立て作業から始まり、8月下旬から11月上旬まで収穫が続く。その後、雪で壊れないよう、コンテナの分解作業を行う。
 埼玉県出身の堀川さんは、結婚を機に新潟県に移住。子育てをしながら保育士として働いていた。「子育てと仕事の両立が難しいと感じていたとき、農業は働く時間を自分で調整できると思いました。また、学生時代から農業を勉強してきたこともあり、チャレンジしてみようと思いました」と話す。
 新発田市の果樹農家で3年間研修し、独立就農した。1年目は灌水〈かんすい〉設備の整備、コンテナ台の作製など、電気工具を使いながらできることは自分で行い、無事に1年目から収穫、販売を開始できた。
 販売先は、JAの直売所や道の駅がメインで、今年からインターネット販売も開始する予定だ。

〈写真:「栽培管理から販売まで一人で行っています」と堀川さん〉

親子で挑む生薬産地化【山形県・8月4週号】

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 【山形支局】「国内で消費される生薬は輸入品が多い。国産生薬の栽培環境をつくっていけたら」と話すのは、山形市千手堂の株式会社朝日生薬で代表を務める生澤俊朗さん(65)。薬剤師として働きながら、息子の甲志郎さん(29)と共に生薬として知られる「オタネニンジン」を同市内で5アール栽培。種苗の販売を中心に行っている。
 オタネニンジンは播種から収穫まで6年の歳月を要する。標準的な栽培方法は研究機関により示されているが、気候や土壌で異なるという。同社では8月から芽切り処理を行い、12月に播種する。
 播種後3年はプランターで栽培し、その後は畝に植え替える。土壌の含水率は10%以上20%以下となるよう屋根を設置して調整。高温対策のため、今年からさらに多く寒冷紗〈かんれいしゃ〉をかける。
 「これからも試行錯誤しながら親子で力を合わせて頑張りたい」と2人は笑顔を見せる。

〈写真:生育状況を確認する俊朗さん(左)と甲志郎さん〉

異業種から牛飼いへ/頭数増と多角化目指す【京都府・8月4週号】

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 【京都支局】「母牛20頭を目標に、黒字化させた上で子どもに継がせたい」と話す京丹後市の大同哲也〈だいどうてつや〉さん(40)は、2020年に京都府の畜産人材育成研修制度の第1期生として2年間の課程を修了し、市内の牧場で働きながら、牛舎を自力で整備した。今年4月、繁殖和牛2頭の飼育をスタートさせた。
 「牛が過ごしやすい環境を一番に考えている」と大同さん。牧場勤務の合間に牛舎に通い、掃除とブラッシングで健康状態をチェックする。給餌方法はマニュアル化し、家族でも管理できるように工夫する。
 もともと調理師として働いていた大同さん。メニュー開発時に「京の肉」に出合い、素材の持つ力に圧倒されるとともに、畜産業の後継者不足を知り、牛飼いの道を志した。
 「将来は自分が育てた健康な牛を、お肉として販売や調理できれば」と先を見据える。

〈写真:「牛にいかに価値を付けるか考えたい」と大同さん〉

リンゴ園地に自走式草刈機/スマホで確認【岩手県・8月4週号】

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 【岩手支局】「動かしてしまえば手間がない。導入して楽になった」と話すのは、奥州市江刺稲瀬で水稲1.3ヘクタール、リンゴ60アールを栽培する及川和広さん(68)。花巻市の和同産業株式会社(三國卓郎代表取締役社長)が開発したロボット草刈機「クロノス」でリンゴ園地の草刈りを省力化している。
 クロノスは全長84.5センチ、全幅52センチ、全高36センチ。「エリアワイヤー」で囲んだ範囲内を、本体下部の刈り刃を回転させて草を刈りながら自走する。搭載する超音波センサーと接触センサーが障害物を検知。減速して接触する。接触後に向きを変えることで刈り残しを少なくする仕組みだ。
 以前はフレールモアーやウイングモアーで1カ月に1度、3日ほどかけて草刈りをしていた及川さん。導入後は4月中旬から10月の間、毎日午前4時から午後9時までクロノスを稼働させる。「60アールの園地の草は、2週間程度で一通り刈り終わる。草が伸び過ぎるとクロノスが走行できなくなるので、そのまま稼働させて毎日少しずつ草を刈っている」と話す。
 稼働状況などは、スマートフォンで確認が可能だ。バッテリー残量が少なくなると自動で充電ステーションへ帰還して、充電が完了したら自走を再開する。

〈写真:草を刈りながら自走するクロノス〉

防風林「在庫が出回らない__令和の米騒動の行方【2024年8月4週号】」

 ▼実家では自分が小学生の頃まで飯米を自家生産していた。出来秋に待ち遠しいのが新米への切り替えだ。当時は収穫後の米の保存状態もよくなかったため、炊き上がりの白さや匂いなどの違いがはっきりと分かった。おいしさも格別で、最高で5杯食べたと記憶する。
 ▼今年も出来秋を迎えた。ただ、小売店から米が消え、新米の供給を待ちわびる異常事態となっている。近所のスーパーは、2週間ほど前から米の棚が空き始め、最近はのぞいても何もない状況が続いている。「1人1袋まで」と断り書きがあり、補充しても開店早々に売り切れていると推測される。
 ▼農林水産省は、6月末時点で150万トン超の民間在庫があり、需給ひっ迫の状況ではないと繰り返している。しかし、供給が滞っているのは確かで、早急に流通を促す必要がある。特に主食用米は、安定供給を図るために多額の予算も措置されている。状況改善を急がないと国民の不信感を招く。
 ▼品薄状態は(1)昨年の猛暑の影響による供給不足(2)パンや麺に比べ割安感があり消費が伸びた(3)インバウンド(訪日客)の増加で消費が伸びた――などが要因とされている。宮崎県の地震を機に、南海トラフ地震への警戒による備蓄需要も増えたようだ。割安感は、資材費の価格転嫁の遅れとも言えるが、米の消費減少に歯止めをかけ、拡大に転じる機会であることは間違いない。消費者に米を届けることが最優先課題だ。

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