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今週のヘッドライン: 2024年08月 3週号

地域農業を盛り上げる 調理用トマト「すずこま」特産化へ(1面)【2024年8月3週号】

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 岩手県釜石市は、加熱調理や加工に向くトマト「すずこま」の特産化に力を注いでいる。赤い色素のリコペンが豊富なため加熱しても鮮やかな赤色を保ち、食味に優れ、草丈が低く栽培しやすいのが特徴だ。試験期間を経て本格的な栽培に移行した今年は、6戸が計700株ほどを管理する。ジェラートやカレーなど業務用の利用が徐々に広がっており、市では実需者とのマッチングを図り、出口を増やして生産を振興していく考えだ。温暖で降雪が少ない気候を生かし、小面積でも所得確保が期待できる「釜石型農業」の確立を目指す。

(1面)

〈写真:「すずこまはゼリーなどにしてもおいしい」と話す佐々木さん〉

食料自給率低迷続く 2023年度は3年連続の38%(2面・総合)【2024年8月3週号】

 農林水産省は8日、2023年度の食料自給率を発表。カロリー(供給熱量)ベースの自給率は3年連続で38%となった。小麦の生産量増加などがプラスに寄与する一方、テンサイの糖度低下による国産原料の製糖量減少がマイナス要因となった。生産額ベースの自給率は3ポイント増の61%で、過去最低だった前年度は上回ったものの、過去2番目に低い水準にある。政府は来年3月に策定する次期食料・農業・農村基本計画では、食料自給率その他の目標を定める方針。改正基本法で掲げた「食料安全保障の確保」が見通せる目標設定とその実現に向けた具体策の確立・実行が求められる。

(2面・総合)

2024年度水稲 猛暑の影響に注視 品質低下の懸念も(3面・農業保険)【2024年8月3週号】

 今年の夏も全国的に厳しい暑さが続いている。農作業中は熱中症予防に努めるとともに、水稲では、米の品質低下につながる出穂期以降の高温に十分警戒したい。昨年のように白未熟粒や胴割れ粒が多発して米の1等比率が低下すれば、経営への打撃が大きいためだ。NOSAIでは、品質低下が多数見込まれる場合は注意喚起し、水稲共済加入者には必ず収穫前の被害申告を呼びかける。高温下での水稲作の注意点を、稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。

(3面・農業保険)

毒キノコにご用心 食中毒が毎年発生(5面・すまいる)【2024年8月3週号】

 秋の味覚として、野生のキノコを採取して食べるのを楽しみにしている人も多いだろう。一方、毒キノコによる食中毒は毎年発生しており、長野県では7月にドクツルタケの誤食事例が発生し、食中毒注意報を発出した。農林水産省は、食用だと確実に判断できない場合は「採らない」「食べない」「売らない」「人にあげない」よう呼びかけている。野生のキノコによる食中毒を防ぐための注意点をまとめた。

(5面・すまいる)

令和6年度農林水産省経営局関係業務功績者等表彰(6面・特集)【2024年8月3週号】

 NOSAI団体は、「安心をすべての農家に届けよう」を目標に掲げ、組織を挙げて「未来へつなぐ」サポート運動を展開。収入保険と農業共済を推進して、自然災害や価格低下など多様なリスクから農業経営を守り、その安定や発展を支えている。このほど決定した「令和6年度農業保険の推進に係る優良事例に対する経営局関係業務功績者等表彰」では、農業保険の推進で顕著な実績と他の模範となる優秀な取り組みを行った組合・支所や職員が表彰された。6点の受賞事例について概要を紹介する。

(6面・特集)

作物画像で生育診断 GPEC出展から2事例を紹介(9面・営農技術・資材)【2024年8月3週号】

 施設園芸で、カメラ撮影した作物のデータから生育診断や収量予測を行い、適切な施肥・灌水〈かんすい〉につなげる技術が実用化され始めている。人工知能(AI)などを駆使し高い精度の撮影・分析が可能だ。東京ビッグサイト(東京都江東区)で先ごろ開かれた施設園芸・植物工場展(GPEC)での出展から2事例を紹介する。

(9面・営農技術・資材)

キュウリ/大雨、猛暑に負けない【山形県・8月3週号】

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 【山形支局】「キュウリの栽培は労力がかかるが利益率が高い。他の作物と上手に組み合わせれば安定した経営ができる」と話す、川西町中小松の富樫啓貴〈ひろき〉さん(32)。祖父から稲作を学び、2019年に独立就農した。現在は水稲3ヘクタールのほか、ロマネスコ10アール、露地キュウリ20アールを栽培している。
 「キュウリ栽培を始めてからこれまでは、苦難の連続だった」と話す富樫さん。栽培1年目は7月に大雨被害を受け、21年8月は集中豪雨によって畑が冠水しカビが発生。約3トンを廃棄したという。また、近年の猛暑では、高温障害による生育不良も多発している。
 富樫さんは高温対策として「拍動式自動灌水〈かんすい〉システム」を23年に導入した。この装置は、日照量で自動的に作動し、作動するとタンクにためた水を吸い上げ、パイプを通して土壌に灌水されるもの。
 富樫さん方では、2条に植えられた苗木に沿って2本の給水パイプをマルチの中に通し、1時間の間に約10分間ゆっくりとした速度で、1日当たり3千リットルが灌水されるよう設定している。タンク内には液肥も入れることで同時に施肥できるため、追肥の手間が省けるのもメリットだ。
 昨年の猛暑でも高温障害の影響を最小限にとどめることができ、約15トンの収穫量を得られたという。また、排水対策ではプラソイラーを使用して土壌の排水性を高め、大雨に備えている。

〈写真:整枝、葉摘み作業をする富樫さん〉

花き・野菜苗/ホームセンターと契約【岩手県・8月3週号】

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 【岩手支局】年間およそ30万ポッドの花きや野菜の苗を栽培して、ホームセンター6店舗に出荷する花巻市東和町の青木茂さん(65)。計画的に出荷するため、温度管理に力を入れている。また、セルトレーに固化培土が補充してある「プラントプラグ」を使用することで、土作りを省力化して、高品質な苗の生産に励む。
 ハウス8棟(26アール)で、妻の美紀子さん(60)、長女の華子魅〈かすみ〉さん(40)とマリーゴールドやベゴニア、サルビアなどの花きや、キュウリやナスなど野菜苗を栽培。繁忙期にはパート従業員3人を雇用している。
 「市場へ出荷するよりも価格が安定している」と青木さん。2010年からはホームセンターとの契約栽培を始めた。2~10月まで花きや野菜の苗を花巻市、北上市、奥州市の店舗に出荷している。「出荷計画表に合わせた栽培が難しい。出荷時期に合わせて播種しているが、発芽しないからといっていつまでも待てないし、計画より早く仕上がっても出荷できない。特に近年は、春の気温が高いので葉物野菜の生育が早い」
 播種は25度から30度に設定した温床マットの上で行う。「土作りやセルトレーに土を補充する手間が省略できる」とプラントプラグを使用し、若苗定植する。「セルトレーから鉢上げする時は手作業になるが、固化培土は土が固まっているため移植しやすい」
 苗は、20鉢用のケースに位置を交互にずらしながら10鉢ずつ入れる。「病虫害の発生を防ぐために風通しを良くする」と青木さん。

〈写真:「『青木さんの苗を待っていたよ』と言ってくれる人もいる。いい加減な苗は出せない」と青木さん〉

大切な棚田を後世に【新潟県・8月3週号】

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 【新潟支局】上越市「株式会社えちご棚田文化研究所」代表取締役の岩崎欣一さん(65)は、フィリピンの世界遺産「バナウェ・ライステラス(棚田)」を通して現地と交流し、問題を共有しながら棚田の管理に汗を流している。
 同市安塚区で棚田を管理する岩崎さん。安塚区に嫁いできたフィリピン人に頼まれ、約20年前にフィリピンから天日塩を輸入・販売している。
 天日塩採取の現地視察で見たのが、山奥の山岳地帯に沿って広がる棚田だった。世界文化遺産に登録されているが、過去には世界危機遺産にも登録されていた。若者の都会流出で担い手不足となり、耕作放棄される田が増えていたからだ。除草剤をまいた畝はもろく、土砂崩れが起きたこともあった。
 岩崎さんの住む安塚区でも同じ条件がそろう。500メートル以上の深海が隆起した土地からなり、地滑りの後に棚田を形成。ミネラル豊富な土で稲作ができているが、担い手不足の課題を抱えている。「田んぼを手放す人が増え、面積が毎年2~3ヘクタール増える。10ヘクタールを水管理して作付けしていくのが限度だが、今は20ヘクタール作付けしている。手が回らず満足いかないこともあるが、山を荒らしてしまわないように頑張っています」と話す。
 岩崎さんは年に1度、フィリピンを訪問。フィリピンからも日本へ棚田の見学に来る。今後はバナウェの棚田の米の輸入販売をしたいと考えている。
 「将来への希望を持ちながら、これからも棚田を通して交流し、安塚の土地を守っていきたいですね」と岩崎さんは力を込める。

〈写真:耕作放棄地を整備した水田と岩崎さん〉

北秋田市が承継支援事業/特産「綴子のセリ」をつなぐ【秋田県・8月3週号】

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 【秋田支局】北秋田市は、事業者の承継課題を支援するため、2022年10月にインターネット上で「北秋田市継業バンク」を開設した。後継者不在の事業者情報を公開し、全国から担い手を募る。運用開始後、工芸と農業分野で事業承継が成立。取り組みに成果が表れている。
 継業バンクは、ココホレジャパン株式会社(岡山市)が提供する事業承継のマッチングサービス。移住・継業を考える全国約3150人が登録する。北秋田市は同社と提携し、専用プラットフォームを開設。全県に先駆けて自治体関与型の承継支援事業に取り組んでいる。

 同市綴子田子ケ沢は、特産「綴子のセリ」栽培が40年以上続く地域だが、20戸以上いた生産者は離農などで2戸に減少。24アールで栽培を続ける斎藤光幸さん(74)は「セリの伝統が途絶えるのは残念だが、後継者がいない以上はやむを得ないと思っていた」と振り返る。
 同市が働きかけて、継業バンクに情報を掲載すると問い合わせがあり、長野県生坂村から尾形清さん(68)、亜希子さん(41)夫妻が2度の現地体験に訪れた後、今年4月に移住。セリ栽培を継いだ。
 移住して農業を始めたいと考えていたという亜希子さん。「情報を集めていた際、斎藤さんの記事を見た。大館市出身の私にとって、セリはきりたんぽ鍋に欠かせない愛着のある食材。伝統をつなごうと、夫と継業を決めた」と話す。綴子のセリと認められる高品質のセリを作ることが目標だという。
 斎藤さんは「意欲がある2人に継いでもらい、安堵〈あんど〉した。良いセリができるように栽培技術を伝えていきたい」とほほ笑む。

〈写真:収穫した「綴子のセリ」を洗浄する斎藤さん〉

防風林「紛争・戦争に至らせない努力の継続を【2024年8月3週号】」

 ▼タレントのタモリさんが「新しい戦前」とテレビ番組で述べたのは、2022年の年末だった。同年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻が長期化の様相を呈し、日本では政府が防衛力の抜本的強化を掲げて防衛予算を大幅に引き上げた頃だ。以後、2年近く経過したが、ロシアの侵攻は続き、中東情勢など含め戦争や紛争の火種は増えた感がある。
 ▼世界を見渡すとシリアやアフガニスタン、ミャンマーなど内乱状態にある国・地域も多い。欧州では移民問題や経済・環境政策などへの不満を背景に極右勢力が台頭し、暴力的なデモなども目立つようになった。
 ▼世界的に不穏な動きが広がる要因として、既存の政治や政党への失望感や不満感が募り、既存体制の破壊を欲しているとの指摘がある。ただ、他者の排斥や暴力を肯定するかのような言動は認めてはならない。しわ寄せは常に弱者に向かうのだから。
 ▼太平洋戦争の終戦から79回目の夏を迎える。戦争を経験した世代は、日本の人口の1割ほどになり、記憶の継承も難しくなった。それでも「新しい戦中」とならないよう、努力を続けなければならない。

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