今週のヘッドライン: 2024年08月 2週号
農林水産省は7月30日、2024年6月末の主食用米の民間在庫量は前年同期比41万トン減の156万トンとの速報値を示した。1999年以降の最少で、昨夏の猛暑に伴う精米歩留まりの低下やインバウンド(訪日客)需要を含む消費の回復などが要因だ。需給引き締まりが鮮明となる一方、同省は年間需要量に対する在庫量の比率は22.2%で、2012年と同水準にあり「在庫量に不足はない」と説明。24年7月~25年6月の主食用米の需要量は673万トンと見通し、24年産の適正生産量が達成されれば、25年6月末在庫量は152万トンになると見込んだ。一方、東日本を中心に主食用米の作付け拡大意向が強まり、作柄など不確定要因も多いことから、同省は今後の需給動向を注視する方針だ。
農林水産省は7月30日、自民党農林関係合同会議に2025年度農林関係予算概算要求の主要事項案を示した。改正食料・農業・農村基本法に基づき「農業の構造転換の実現に向けた施策を初動5年間で集中的に実行する」と明記。(1)食料安全保障の強化(2)農業の持続的な発展(3)農村の振興(4)環境負荷低減に向けた取り組み強化(5)多面的機能の発揮――を柱に、農業の持続可能な成長を推進する予算を要求するとした。同省は概算要求を8月末までにまとめ、財務省に提出する。
Jミルクは7月30日、2024年度の生乳と牛乳・乳製品の需給見通しを発表した。全国の生乳生産量は前年度比0.9%増の738万6千トンとし、前回見通し(5月31日公表)から2万7千トン下方修正した。昨年の猛暑で北海道で受胎時期が遅れ、5月下旬ごろから分娩(ぶんべん)頭数が減少している影響を反映した。飲用牛乳の最需要期となる9月の都府県需給は、広域的な配乳調整で対応可能とする一方、冬季には再び需給が緩和すると見込み、継続的な消費拡大の取り組みが重要としている。
農林水産省は、農業経営の被雇用者は、農繁期の実労働時間が、1日8時間、1週間で40時間を超えると労働環境に対する満足度が下がるとの分析結果を明らかにした。1日の休憩時間が60分以上、1カ月当たりの休日数が8日以上だと満足度が高く、農繁期も短い方が満足度が高い傾向となった。経営体側の「労働環境の改善が必要」とする回答のうち「賃金上昇」「休日の増加」は販売金額が高いほど多くなる傾向がみられた。
夏本番。猛暑で熱中症予防や夏バテ対策が求められる中、ミルク料理家で管理栄養士の小山浩子さんがおすすめするのは、乳製品と果物の組み合わせだ。牛乳から作る自家製カッテージチーズとホエイ(乳清)、旬のモモを使った冷たいスイーツを紹介してもらう。
岐阜県農業技術センターでは、イチゴを加害するヒラズハナアザミウマに対し、施設内への侵入を半数以下に抑える物理的防除法を開発した。1ミリ目合いの白色防虫ネットを施設の側面に張り、施設から1メートル離れた外周に高さ80センチの黒色遮光資材を柵状に設置。施設と柵の間に黒色防草シートを敷く。無設置と比べて花への寄生頭数を約4分の1に抑えて被害果が減少。春の出荷期間が長くなり所得向上につながると期待される。
【埼玉支局】滑川町伊古の株式会社グリーンファームらぱん(清家良夫代表取締役=53歳)は、ハウス11棟3.8ヘクタールでトマトを年間約400トン生産する。納品先との情報交換を通じて、消費者のニーズに則した高品質なトマトを出荷。自社ブランドの価値向上に取り組んでいる。
生産したトマトはほぼ全量を県内のスーパーに出荷しており、1日当たり約10件の納品先へ、同社の従業員が直接配達している。配達時に、各スーパーのバイヤーと販売状況などの情報交換を行う。品切れせず、売れ残りしない適切な出荷量を把握することで、常に鮮度の良いトマトを店頭に並べられる。結果として、商品の返品率を大幅に下げることができるという。
地域ごとに消費者層の傾向を聞き取り、ニーズに則した商品作りに努める。高齢者の多い地域では1袋当たりの重量を軽くして、持ち帰りやすいサイズで納品。郊外の大型スーパーは車で来店する家族連れが多いため、買い得感のある大袋で納品するなど、納品先の希望に沿って柔軟に対応する。
鮮度を保持して出荷するため、収穫後は冷やしてから袋詰めし、出荷直前まで保冷庫で保管している。今後は運搬中も保冷できるよう、冷蔵車を導入して品質管理の向上を目指す。清家代表は「高品質な商品を良い状態で消費者へ届けることは、スーパーとの共通目標です。情報交換を通じて、消費者から信頼を得られるような商品づくりと提供に努めたい」と話す。
〈写真:トマトの生育を確認する清家代表(奥)と有賀義信取締役〉
【佐賀支局】大豆を収穫した後の圃場で酒米「山田錦」の作付けに取り組む嬉野市塩田町の農事組合法人アグリ三新(代表・岩永一郎さん=68歳)。乾田直播栽培を取り入れながら、省力化を図り面積増を目指している。
アグリ三新は2015年、三ケ崎営農組合と新村営農組合が合併し発足。24人の構成員で営農に当たっている。
乾田直播栽培を取り入れたのは、地元の酒米生産組合から「大豆を収穫した後の圃場で山田錦を作付けないか」という誘いを受けたこと。後継者不足などから次世代に向けて省力化・効率化が図れる栽培技術の確立が必要と考える岩永さんの思いと合致したことや、関係機関からのサポートを受けられることなどから一部の圃場を乾田直播栽培に切り替えた。
「現在、乾田直播栽培は『夢しずく』10ヘクタールに対し1.2ヘクタール、山田錦17ヘクタールに対し8.7ヘクタールで行っています」と岩永さん。「代かきや苗作り、苗の運搬などの作業が必要ないため、労力やコストの削減にもつながっています」とメリットを話す。
岩永さんは「今後は乾田直播栽培の面積を増やし、さらなる省力化を目指したいですね」と今後の展望を話してくれた。
〈写真:播種作業を行うアグリ三新のメンバー〉
【石川支局】「消費者に安全な ものを届け、地域とともに発展する農業をしたい」と話すのは、株式会社リーフファーム加賀(加賀市直下町)の代表取締役・西山匡亮さん(35)。弟で専務取締役の中田徹さん(32)とともに水稲と野菜、ナシの複合経営に取り組んでいる。
元々、西山さんが米や野菜、中田さんはナシを栽培。それぞれが栽培面積を拡大していく中、従業員の雇用や生産物の品質向上を考え、2021年3月に二人で協力し法人化することを決めた。
現在、4人の従業員を周年で雇用。繁忙期にはアルバイトを雇う。収益性を高めるため、従業員のスキルアップに力を注いでいる。
西山さんは、若手農家中心のグループ「かが有機農法研究会」に所属し、農薬不使用の有機農法に挑戦中。農産物は直売するほか、ルクセンブルクなどの欧州や台湾などへの輸出を行っている。
「四季を肌で感じながら作業するのが楽しいです。失敗を糧にして、翌年はさらに良いものを収穫したいと頑張っています」と話す中田さん。
〈写真:「兄弟仲良く力を合わせて頑張りたい」と話す西山さん(右)と中田さん〉
【三重支局】木曽岬町の有限会社木曽岬農業センター・取締役の古村英之さん(28)は、生産効率を上げるスマート農業に取り組んでいる。
同社は英之さん、父・精康さん(59)、弟の隼大さん(26)、従業員15人で、米作りから販売、配達まで一貫して行っている。
水稲180ヘクタール、小麦75ヘクタール、大豆5ヘクタールの合わせて260ヘクタールを全面請け負いし、田植え、稲刈り、トラクター作業の請け負いは延べ350ヘクタールだ。
この広さを効率良く安全に回していくには、ICT(情報通信技術)の活用が必須と考える英之さん。「効率が悪いと従業員の疲れがたまり、けがや事故のもとになる。安全に働いてもらうことが何よりも大事」と話す。
2016年には、作業の安全と従業員の働きやすさを最優先に考え、農業経営の課題解決をサポートする、インターネットクラウド利用の営農・サービス支援システム「KSAS(クボタスマートアグリシステム)」を導入した。
圃場の場所をスマートフォンで確認でき、作業内容の指示を行うため、入社したばかりの従業員でも間違いなく現場にたどり着き、簡単な作業ならほぼ間違いなくできるようになったという。また、栽培記録を画像で管理し、生育差を基に反省や作業の見直しも可能になった。
作業記録が自動で作成されるため、進捗情報をマップ上で確認でき、従業員同士で情報共有しながら効率良く作業を進められる。仕事の予定や状況の把握だけではなく、収穫した際に水分量やタンパク質量を計測し、クラウド上で管理できるのも魅力だという。
〈写真:「時代に合った農業経営をしていきたい」と英之さん〉
▼パリ五輪が開催中だ。猛暑と熱帯夜が続く中、寝不足は避けようと思いつつ、夜中のテレビ中継で熱戦を追う日々が続く。金メダルを目指して競い合う姿は勇ましく、順当勝ちや番狂わせに一喜一憂する選手たちの表情も魅力的だ。
▼格闘技や採点競技などは微妙な判定もあるが、結果は結果として受けとめたい。最近は、何か起きると交流サイト(SNS)などで意見が交わされる。意見交換だけならよいが、選手や審判などを直接誹謗(ひぼう)中傷する書き込みも目立つ。観戦を純粋に楽しみたい気持ちを踏みにじられている気がする。
▼個人的な意見でもSNSに投稿すれば瞬時に世界中に拡散する。投稿者は、中傷される人の気持ちなどお構いなしだから余計に始末が悪い。ネット社会で生活の利便性が増す一方、解消すべき問題も増えている。
▼最近のトップクラスの選手には、競技の練習だけでなく、メンタル面の管理指導が必須になっているという。外部の雑音から遮断して、1分1秒や紙一重を競う勝負に集中する姿を今後も見続けたい。