今週のヘッドライン: 2024年06月 4週号
福岡県朝倉市長田で年間述べ10ヘクタール作付ける露地野菜と水稲5ヘクタールで経営する「個人農家ほしの」の星野純子さん(48)は、農場の働き方改革を推進。夏は従業員が水分補給や休憩が取りやすい環境づくりなど熱中症対策に努める。「熱中症は本人にしかわからない。忙しい中でも自分から体調管理しやすいようにしている」と話す。事務所の外に冷蔵庫を配置し、作業の合間に水分や間食を取りやすくした。毎日の天気に合わせた昼食を用意し、従業員の体調維持を図る。事務所には冷房付きの仮眠スペースも整備。気温が高まる時間帯を避けたサマータイム制の導入など工夫を凝らしている。
農林水産省は14日、みどりの食料システム法(みどり法)に基づく農業者認定が2024年5月末時点で全国で1万5690人となったと発表した。環境負荷低減に取り組む農業者を都道府県が認定し、税制面などで支援する仕組み。23年度から本格的な認定が始まっており、生産者団体の「グループ認定」なども推進し認定拡大を目指す方針だ。また同省は同日、環境負荷を低減して生産した農産物の「見える化」ラベルの愛称を「みえるらべる」に決定したと発表。消費者が選択できる仕組みとして定着を図る。農業の持続的発展に欠かせない環境負荷低減と農業所得の向上が結び付けば生産現場の後押しになる。鍵となるのは消費者の理解と行動喚起だ。
NOSAI団体は17日、2025年度農業保険関係予算の必要額確保を求める要請書を坂本哲志農相に手渡した。NOSAI協会(全国農業共済協会)の髙橋博会長らが農林水産省内で直接面会した。
「未来へつなぐ」サポート運動中央推進本部(本部長・髙橋博NOSAI協会〈全国農業共済協会〉会長)はこのほど、「令和6年度『未来へつなぐ』サポート運動中央表彰」の受賞組織などを発表した。最優秀賞3組織の取り組み概要を紹介する。併せて、NOSAI全国連(全国農業共済組合連合会)が決定した「令和6年度農業経営収入保険事業表彰」受賞者・組織などを紹介する。
主食用米の需給と価格の動向に注目が集まっている。2023年産米の相対取引価格が出来秋から前年産比1割高程度で推移するのと対照的に、スポットで米を手当てする業者間取引は急騰。特に業務用の銘柄の不足が報じられているためだ。背景には、急増するインバウンド(訪日客)向けなど業務用需要が堅調で、4月末時点の民間在庫量が180万トンと需給見通しを上回って供給が進む状況がある。
長野県野菜花き試験場は、湿害が発生しやすい水田転換畑でブロッコリーを安定生産する表面排水対策として「平高うねマルチ栽培」を提案している。高さ25センチの平高うねとマルチ被覆を組み合わせた栽培法で、作土層が拡大し、マルチ内の土壌水分が低く推移することから湿害低減に有効だ。実証に協力した生産者からは「排水効果がはっきり表れ、収穫物が確保できる」と評価を得ている。
【山口支局】「東日本大震災をきっかけに、食に困らないために農業をしようと思いました」と話すのは、山口市阿東の「阿東つばめ農園」代表・安渓大慧さん(41)。農薬や化学肥料を使用せずに農作物を栽培し、父の遊地さん(72)、母の貴子さん(72)と持続可能な農業を営む。2019年8月に県内初のソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)を導入し、自然エネルギーの活用に取り組んでいる。
水稲の圃場約26アールに支柱を立て、上部空間にソーラーパネル(太陽光パネル)を設置して「おひさま発電所」と名付けた。田植機やコンバインなどの農業機械が入れる高さで設計されており、パネル下の圃場で水稲「イセヒカリ」を栽培する。設置当初は多くの見学者が訪れたという。
「ソーラーパネルを設置すると圃場の3分の1が陰になりますが、平年通りの天候で3分の2の光があれば、作物は育つんですよ」と遊地さん。スマートフォンのアプリで日々の発電量や売電量などが確認できるという。大慧さんは「導入後は、不安定な農作物の収入以外に年間を通した収入が生まれ、将来の営農に向けて安心感が生まれました」と話す。
〈写真:「自分で機械の修理も行います。苦労して育てたお米を収穫するのが楽しみです」と大慧さん(右)と遊地さん〉
【福井支局】永平寺町光明寺の農事組合法人エコファーム光明寺では、今年4月に福井県立大学の学生4人を時給付きの職場体験として受け入れ、労働力の確保の糸口を見いだした。
元々は同大学が入学オリエンテーションで同町の魅力をPRすることを目的に同法人を訪問。副代表の小鍛冶徳夫さん(71)が、地域農業の概要説明を行った際、農業の担い手不足や高齢化などについて学生から質問が寄せられ「少しでも若い人に手伝ってもらえるとうれしいな」と軽く答えたという。
すると後日、その言葉に興味を持った学生から「アルバイトをさせてほしい」と小鍛冶さんに直接連絡が届き、メンバーと相談。学生からの善意を無下にはできないと、申し出た県外出身の学生4人を受け入れた。
受け入れた時には、人手は足りているのにとの意見も出たが、若い学生が一緒に働いてくれることで「若い人がいると元気になり、体力的にもとても助かる」というメンバーの声がほとんどだったという。
〈写真:アルバイト学生たちを受け入れた時の田植え作業。9月の収穫期にも受け入れを予定する(写真提供=小鍛冶さん)〉
【長野支局】夏でも涼しい気候を生かした全国有数の夏秋イチゴ産地・安曇野市で、およそ10年の歳月をかけて新品種が生まれた。
手がけたのは、安曇野市堀金で夏秋イチゴを栽培する堀井勇司さん(43)。5月中旬から11月に収穫を迎える夏秋イチゴは酸味が強く、主に製菓などの業務用として出荷されるが、新品種は、夏秋イチゴとしては甘みが強く香りも高いことから、生食用としても利用できるのが特長だという。
堀井さんの実家は元々、水稲約1ヘクタールを栽培する兼業農家だったが、限られた面積で、地域の特色を生かし差別化できるものをと考えた時に夏秋イチゴにたどり着き、農学部のある県内の大学へ進学。品種改良の技術も習得した。18年前の就農当時、ビニールハウス1棟から始まった夏秋イチゴ栽培だったが、現在では野菜苗ハウス2棟を含む17棟34アールまで規模を拡大した。
〈写真:「ぜひ安曇野へ食べに来てもらえれば」と堀井さん〉
【福島支局】水稲12ヘクタール、ブドウ40アール、ナシ90アールを家族で栽培する須賀川市の藤田麻理さん(44)。自作の出荷用パッケージで商品のイメージ定着に成功し、年間の売り上げが約20%増加。固定客を着実に増やしている。
藤田さんはブドウの栽培を機に、パッケージを自分でデザイン。箱の大きさや高さ、配色を吟味し、完成まで4カ月かかった。自作のパッケージは出荷するすべての作物に使用している。
パッケージ統一後は、自宅に直接購入しに来る人や、口コミで来店する人が増え、ブドウの売り上げは3倍になったという。藤田さんは「同じパッケージを使うことで『藤田さんちの米!』『藤田さんちの果物!』と認識してもらえてうれしい」と成果を話す。
〈写真:ハウスで摘果作業をする藤田さん〉
▼NHKの朝ドラ「虎に翼」は、日本初の女性弁護士・三淵嘉子さんをモデルに、男性社会だった法曹界に飛び込んで活躍する姿を描く。時にユーモアを交えて法律と人権などの問題に切り込む展開に加え、会話や行動の意味が後で本筋につながる伏線の張り方なども話題だ。
▼現在は戦後が舞台となり、家庭裁判所の発足を軸に話が進む。戦災孤児の問題が資料映像を交えて丁寧に語られるが、個人的には主人公たちが話し合うベンチの脇でハーモニカを吹く白装束の姿にはっとした。子どもの頃に公園のお祭や神社の宵宮などで見かけた傷痍(しょうい)軍人だ。人が行き交うにぎやかさとは相いれない痛々しさを感じ、戦争の犠牲者と分かって怖かった記憶がある。
▼何の説明もなく、多くの視聴者には戦後の風景として映っているのだろう。今後も恐らく主人公たちと絡むことはないと思う。ただ、繰り返しの登場には戦争による庶民の犠牲の大きさなど何らかのメッセージが込められている気がする。主人公に近い人物が食糧管理法の違反者を裁く立場の判事となり、闇米を拒否して栄養失調で亡くなる挿話も実際の事件に基づいているのだ。
▼実在の人物がモデルとはいえ、オリジナル脚本であり、今後の展開にも興味が湧く。財産権も参政権もなく婚姻後は法的に無能力者とされた女性の扱いが出発点だ。今はどうかと突きつけるのではないか。