今週のヘッドライン: 2024年06月 2週号
松山市は、アボカドの産地化を推進。樹上で完熟させる国産の強みを前面にPRし、日本一の産地を目指している。ミカン園の耕作放棄地対策として導入し、現在、生産者190人、14.6ヘクタールまで拡大した。松山市農業指導センターが苗木を生産し、市内の認定農業者に分譲。栽培のポイントなども指導し、生産を後押しする。昨季の生産量は約8トンで、成園化の進展に伴い、今後さらに増える見込みだ。
NOSAI協会(全国農業共済協会、髙橋博会長)は1~2日、獣医学系大学の学生などを対象としたNOSAI獣医師職員の採用説明会を開いた。1日は東京都武蔵野市の日本獣医生命科学大学、2日は相模原市の麻布大学で実施し、両会場合わせて42人の学生などが参加。若手NOSAI獣医師が職場環境や仕事のやりがいなどを紹介したほか、23道県のNOSAIが各ブースで個別に面談し、業務内容や待遇などを説明した。
主食用米の需給ひっ迫が強まり、2024年産の作付け意向が増加傾向にある。坂本哲志農相は5月31日の閣議後会見で、需要に応じた生産・販売へ「6月末の営農計画書提出まできめ細やかな需給情報などの提供を徹底していく」と強調した。農林水産省によると4月末時点の都道府県別作付け意向では「増加傾向」が11県となり、1月末時点から6県増えた。ただし、4月末時点の民間在庫量は180万トンと近年では低い水準にあるものの、増産と豊作が重なれば需給緩和に転じかねないとの懸念もある。米の需給を巡る状況などを話し合った。
営農に参画する家族全員が、意欲とやりがいを持って働ける環境づくりを目指し、経営方針や役割分担、就業規則などを家族間の話し合いで決める「家族経営協定」。農林水産省によると、協定を締結している農家数は年々増加し、2023年3月末時点で6万戸を超えた。締結した内容は家族全員で実行し、課題などは定期的に見直すことで経営改善やライフ・ワーク・バランスの実現につながり、スムーズな経営移譲や法人化へのステップとしての効果も期待できる。
「作りたいものを種から栽培して、自分がデザインした作品で人に喜んでもらえる。農業って楽しい」と話す鈴木広史さん(49)。妻の彩さん(45)と神戸市北区大沢(おおぞう)町でFarmer′s Yard(ファーマーズヤード)を営む。30アールで野菜やエディブルフラワー(食用花)、ハーブなど年間約400品種を農薬や化学肥料を使わずに栽培する。野菜のギフト需要を開拓し、多くはミニサイズに育てた野菜を中心にブーケやアレンジメントにして販売し、人気を集めている。
白ネギ産地である鳥取県西部では、農家の腰痛対策に力を入れる。現場でも、農家が自作の台車や農具などを工夫し、収穫や土寄せでの腰を曲げる作業や持ち上げの頻度などを減らす。機械化が進みにくい作業に着目し、体への負担軽減につなげることで、雇用の安定や規模拡大への対応につなげている。
【山形支局】鶴岡市羽黒町の「株式会社わんぱく(代表・松浦眞紀子さん=74歳)」は、2004年に養鶏を始め、現在500平方メートルの鶏舎2棟で約3000羽の鶏を飼育している。飼育環境の工夫や、餌の自社製造などを積極的に行い、鶏がのびのびと過ごせる飼育環境の整備に力を入れている。
今年5月、農場敷地内に念願の直売所「KOKO189」をオープンさせ、自家産卵を使ったプリンやシュークリームといったスイーツ、だし巻き卵や卵サンドなどの総菜も提供する。
松浦さんは「今よりもっと、鶏や従業員、お客さまなど皆さんが幸せを感じられる環境をつくっていきたい。直売所で販売する商品を増やしたり、地域の農家さんが作った農作物を販売したりしていきたい」と話す。
〈写真:焼き菓子、プリン、総菜などさまざまな商品が並ぶ店内〉
【北海道支局】北見市西相内地区で大橋農場を営む大橋保登士さん(43)、加奈子さん(45)夫妻は、麦18ヘクタール、畑作物28ヘクタールを栽培する傍ら、手作りパンの移動販売を行っている。
パンの個性に合わせて小清水町産のライ麦、十勝産小麦の石臼挽〈び〉き全粒粉「臼夢」、古代小麦と呼ばれる「スペルト小麦」など、小麦を使い分けている。
〈写真:敷地内に止めるキッチンカーから顔をのぞかせる大橋さん〉
【滋賀支局】「夏にリンドウが色鮮やかに咲くのが楽しみ」と話すのは、長浜市榎木町の「きたがわ農園」取締役・北川富美子さん(49)。水稲、大豆などを約65ヘクタールで栽培し、水田の転作作物として、3年前からリンドウを栽培している。
「ソレイユ」「飛竜」など4品種を6アールで栽培。収穫作業では切り口からの病気を防ぐため、はさみを使わず手で折って摘み取るなど工夫を欠かさない。
主にJAレーク伊吹を通して市場へ出荷。北川さんは「65センチ以上の規格のものを中心に出荷していますが、収穫量は伸び悩んでいます。短いものや細いものは、仏花として他のキクなどと組み合わせて利用できるので需要が伸びています」と話し、市場の需要を見極めながら盆時期の出荷を目指す。
〈写真:「高冷地と比べて、開花時期が1週間ほど早まるため、作業は早めに取りかかっています」と北川さん〉
【岩手支局】ホワイトアスパラガス(約250アール)を露地栽培する岩手町土川の田村孝美さん(64)。光を遮るために高畝を形成し、収穫まで地中で栽培する。また、収穫量を安定させるため、地中内の温度管理に注意を払う。今後は、SNS(交流サイト)などを通して販路の拡大を目指す。
ホワイトアスパラガスはビニールハウスで栽培する人が多い中、田村さんは高さ約30センチの畝を形成して、播種から収穫までを露地で行う。地中で成長させるため、光を当てずに栽培できるという。「地中で栽培することで先端の擬葉が減る。穂先の凹凸が少なくなるので、しなやかな見た目になる」と話す。
ホワイトアスパラガスが地中から芽を出す4月上旬に高畝を形成。4月下旬~6月下旬までに、約1トンを収穫する。「収穫量を安定させるためには、地中の水分と温度管理が大切」と田村さん。「雨が少ないと肥料が地中に流れないので育ちが悪くなる。近年は猛暑が続いている。水不足が心配」と話す。地中内を適温30度以下に保つため、雑草を高刈りして日陰を作るという。
〈写真:「栽培を指導してくれた人に『見た目や食味が優れている』と高く評価されうれしかった」と田村さん〉
▼6月は牛乳月間だ。「父の日に牛乳(ちち)を贈ろう!」「愛してミルク」「土日ミルク」など、今年も多様なキャンペーンが展開されている。コロナ禍以降、生乳需要の低迷と飼料など生産資材価格の高騰・高止まりが続き、酪農の経営環境は依然として厳しい。まずは消費面からの応援を実践しよう。
▼牛乳は、飲むだけでなく調理にも使いたい。みそやしょうゆなどの調味料と合わせて使うと減塩になるほか、こくが出てカルシウムの補給にも役立つ。「乳和食」でネット検索すれば参考になるレシピも豊富だ。
▼改正食料・農業・農村基本法は、新たに「環境と調和のとれた食料システムの確立」を規定した。生産から消費まで食料システム全体の環境負荷低減の推進を記述。農業は、家畜排せつ物を有効利用するとともに国産の飼料増産など輸入依存を減らす資源循環型の生産体系への移行を図る方向だ。
▼農作物や飼料の生産と堆肥利用の耕畜連携は、環境との調和や国産の大切さを消費者に伝える材料にもなる。国産応援団の拡大へ、情報発信の耕畜連携にも期待したい。