今週のヘッドライン: 2024年05月 4週号
「新規就農者の育成、定着には、効率的に技術を習得する仕組みが必要」と話すのは、山梨県韮崎市でブドウ2.5ヘクタールを栽培する株式会社クピド・ファームの岩下忠士会長(75)。独立就農希望者を受け入れ、ドローン(小型無人機)による空撮画像を活用した剪定〈せんてい〉や、スマートフォンのアプリによる摘粒のサポートなどITで早期の技術習得を後押しする。地域の農家との間に入って、農地の確保にも協力。ブドウ産地の維持・振興に力を注ぐ。
国土交通省は17日、国土審議会半島振興対策部会を開き、半島施策の対応方向など示した中間とりまとめ素案を提示した。能登半島地震を教訓に自立・分散型の地域づくりで防災対策を強化するとともに、条件不利性に対応した安全・安心な地域づくりや地域資源をいかした産業・観光振興の推進などを盛り込んだ。人口減少・高齢化への対応では地域の担い手確保を最重要課題に位置付け、企業や大学などとも連携した二地域居住や関係人口の拡大などを後押しする。半島地域は農業や漁業が基幹産業で、国土保全や文化継承など国民の豊かな暮らしを支えるとともに、独特の歴史や文化を継承してきた。過疎化・高齢化が加速する中、半島地域の維持・振興策の抜本強化が急務だ。
NOSAIの各組合では毎年、5~6月に通常総代会を開催する。総代会は、地域の組合員から選ばれる総代が出席し、組合員の意見を届け、組合の運営に反映させる重要な会合だ。総代だけでなくNOSAI部長や損害評価員で構成される基礎組織が組合の円滑な運営を支えている。総代会や基礎組織の役割などを、稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。
岡山県瀬戸内市で年間30品目の野菜を生産・販売する株式会社いぶきは、販路を県内向けに絞り、地場産の鮮度や安心感を付加価値にスーパーマーケットや学校給食向けで実績を伸ばしている。新たに岡山市の中心地に自社産野菜の料理を提供するカフェバーの開店を準備する。交流サイト(SNS)や料理提供による農園PRを展開し、健康需要を意識したサラダや農業体験などを地元企業に売り込む拠点とする方針だ。
クマが市街地や集落など人の生活圏に出没し、人を襲う事件が近年増えている。2023年度は東北を中心に出没情報が2万4千件を超え、人身被害も過去最多の219人となった。今年も冬眠明けのクマ類が目撃されており、人身被害防止は喫緊の課題だ。農林水産省では、環境省による注意喚起などを踏まえ、農業現場での出没を防ぐためのリーフレットを作成。適切な対応を呼びかけている。
岐阜県中山間農業研究所では、夏季の強い日射で発生する夏秋トマトの裂果を減らす自動遮光システムを開発した。熱中症の暑さ指数測定に使われる黒球を利用し、温度センサーが反応して黒球内温度が43度以上になると巻き上げ機が動作。雨よけパイプハウスのクロス補強上の遮光資材が自動的に閉まる仕組み。梅雨明け後の午後に稼働させるだけで可販収量が増加し、10アール当たり約80万円の導入経費(耐用年数7年)を上回る増益が期待できるとしている。
【長野支局】飯田市龍江の株式会社MFS総合研究所(以下MFS)では自社と契約農場合わせて15ヘクタールでニンニクを栽培し、それを原料とした黒にんにくの製造・販売を行っている。代表の木下利春さん(73)が黒にんにくの製造に取り組むきっかけとなったのは、近年問題となっている遊休農地の増加により、農村ならではの景観が失われるのを守るためだという。
現在15ヘクタールで栽培するニンニクのうち11ヘクタールが契約栽培だ。契約栽培農家は市内だけでなく県内外にもいるという。生産量は増やす予定だが、地域活性化の観点から、自社農場を拡大するのではなく、契約栽培農家を増やしていきたい考えだ。
〈写真:「食える農業への転換が、遊休農地の減少につながっていくのでは」と話す木下さん〉
岡山県津山市 中島伸士さん (46)
「シャインマスカット」や「ピオーネ」などブドウ8品種を、パート1人と栽培しています。他業種に就きながら父親の手伝いを4年間続け、2023年に経営を引き継いで専業になりました。
気候や樹齢などで生育状況が毎年変わるため、園地の観察には常に力を注いでいます。状況に合わせて、ハウス内の温度を高く維持するためにビニールを3重にしたり、果実に多くの日光を当てるために剪定〈せんてい〉をしたりするなど、さまざまな工夫をしながら品質向上に努めています。
23年は日照不足で全体的に糖度が上がらず、出荷が遅れて販売単価が下がり、大幅に減収しましたが、収入保険の補てんが支えになりました。安心して経営し、挑戦を続けるために、収入保険や園芸施設共済に加入して備えるのは大切なことです。これからも続けて加入します。
▽ブドウ「シャインマスカット」「ピオーネ」など8品種(露地70アール、加温ハウス10アール)
〈写真:「自分のやり方で父親以上に信用される農家になりたい。来年は赤い袋を使って、より糖度の高いブドウ作りに挑戦したい」と中島さん〉
【鹿児島支局】「茶葉の栽培に取り組み始めた頃からの夢だったので、消費者の喜ぶ顔を見ることができてうれしい」と話す錦江町神川の今隈幸洋〈いまぐまゆきひろ〉さん(45)。経営するteashop&cafe tenは多くの利用者でにぎわっている。
株式会社今隈製茶の代表取締役として茶園12ヘクタールでの栽培から加工・販売まで行う。「自ら育てた茶を消費者に直接楽しんでもらうことで、茶の魅力を感じてほしい」と、2023年8月に同店をオープンさせた。
一番人気の緑茶ラテは渋みが少なく甘さのある品種「さえみどり」を使用。飲んだ際に茶葉のざらつきを感じないよう、粉末にする際に細心の注意を払って加工している。厳選したオーツミルクと合わせ、うまみと甘さを感じることができる自慢の商品に仕上げた。
「今は深蒸し茶などの緑茶中心ですが、紅茶や烏龍茶の加工・販売にも力を入れてお茶の魅力をもっと伝えていきたい」と今後の抱負を話す。
〈写真:「お茶を気軽に楽しんでもらえれば」と今隈さん〉
【愛媛支局】田中隆さん(55)、直子さん(51)夫妻は西予市明浜町渡江地区の加工所「かあちゃん工房」で、かんきつを使ったクラフトコーラを作っている。自家産レモンとポンカンにシナモン、砂糖、スパイスを加えて、煮詰めて製造するコーラは、爽やかで優しい味だ。
製造のきっかけは「子供が好きなので子供に喜んでほしいから」と直子さんは話す。2年前まで兵庫県で菓子作りを生業としていた2人にとって、加工だけなく、材料の生産から携われる農業に魅力を感じたことが同地区への移住の決め手となった。現在、約1ヘクタールで温州ミカンやポンカンなどの栽培に取り組んでいる。
農業をする傍ら、コーラを販売するため、同市のイベントに積極的に出店。それ以外にも、自家焙煎〈ばいせん〉オーガニックコーヒーや「みかん餅」も販売している。
隆さんは「渡江地区の人たちは親近感があり、大変良くしてもらっています。『かあちゃん工房』は私たちにとって研究所です」と笑顔で話す。
〈写真:かんきつクラフトコーラを手に田中さん夫妻〉
【熊本支局】天草市楠浦町でクリ30アールを栽培している若山良孝さん(74)。過疎化が進む故郷を少しでも明るくしたいと、ペットボトルで風車を作製し、家の周りや沿道に設置している。
弟の若山藤信さん(70)は、天草市五和町で風車工房を開き、プラスチックのカラーファイルで風車を作製している。「久しぶりに帰郷した際、人ひとりすれ違わず、寂しさでがくぜんとした。故郷を明るく元気にしたいという思いでこの活動をはじめた」と振り返る。
今では集落の沿道約2キロに約350個の風車が設置されている。「近隣の小中学校に依頼し、名前や絵を描いてもらったこともある。設置後に訪れてくれたことがうれしかった」と良孝さん。
藤信さんは「今後はさらに風車の数を増やし、集落を明るくしたい」と話す。
〈写真:「色付けや設置を地域の方に協力してもらっている」と良孝さん〉
▼今年の大型連休は、過度な為替の円安と重なり、海外旅行に出る人は出費が大幅な割り増しとなった。カップ麺持参で節約する人がニュースに出ていて、食費を削ったら旅行の楽しみが減るだろうと気の毒になった。一方で訪日外国人にはお得な旅になり、インタビューに宿も食事も安いと笑顔を見せていた。
▼農林水産省が公表する米国農務省の月次報告概要では、小麦やトウモロコシの国際相場はすでに一時期の高騰状態を脱し、安値水準の推移となっている。しかし、配合飼料価格などは高止まりが続く。相場が下がった恩恵が円安で打ち消されているためだ。
▼厚生労働省が公表した2023年度の毎月勤労統計調査によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年度比2.2%低下した。現金給与総額は増えたが、物価上昇に追いついていない。早急に物価の上昇を超える賃上げを実現しなければ、十分に食料品を買えない貧困層の増加も懸念される。
▼昨今の円安には、輸出の比重が大きい企業のトップでさえ喜べないと発言。政府・日銀の市場介入も行われたようだが、状況を打開できていない。円安や食料品の価格高騰に早く歯止めをかけてほしい。だが、国民の窮状をよそに、国会では政治資金の規制をめぐる与野党の攻防が続く。
※前回の本欄で、導入天敵の名称はチュウゴクオナガコバチでした。訂正します。