今週のヘッドライン: 2024年05月 3週号
農林水産省が15日に発表した病害虫発生予報第2号では、果樹カメムシ類が関東・東海・近畿・中国・四国・九州の一部地域で多くなると予想した。13日までに18府県から注意報が発出されている。暖冬による成虫の越冬量増加などを背景に、調査で記録的な誘殺数となる県もあり、園地への侵入も例年より早い時期に確認される傾向にある。防除所や普及機関などでは、園地の見回りによる早期の飛来確認と、適時適切な薬剤散布、多目的防災網による侵入防止などを呼びかけている。
北海道庁は10日、2024年2月1日時点の道内の酪農戸数(生乳出荷戸数)は23年同期比224戸減の4600戸となったと発表した。減少率は4.64%で2年連続で2000年以降最大を更新。離農は80頭未満の中小規模層が全体の9割を超え、要因は「高齢化と後継者問題」「経営者の事故・病気・死亡」「負債問題」などだった。昨今の配合飼料価格の高騰・高止まりなど生産費の上昇は酪農経営を圧迫し、先行きが見えない中で、都府県でも酪農家の減少が加速化している。次世代が育つ国内酪農基盤の確立へ強化対策は待ったなしだ。
気象庁は10日、今夏から秋にかけてラニーニャ現象が発生する可能性が高まるとの予測を発表した。発生・発達した場合は、世界の天候に影響を与える可能性がある。発生時の日本の夏の天候は、平均気温は北日本で高く、日照時間は北日本太平洋側で多い傾向が見られる。また、秋は降水量が北日本日本海側で並みか多く、西日本太平洋側で少ない傾向がある。
和歌山県のみなべ町や田辺市など国内有数のウメ産地が、3月20日に4千ヘクタールを超える広範囲でひょう害を受けた。暖冬の影響で着果数が平年より少なかったこともあり、収量減と秀品率の低下によるウメ農家への影響が懸念されている。NOSAIわかやま(和歌山県農業共済組合)では、園地の被害状況を確認。主力品種「南高」の収穫を控え、収入保険加入者にはつなぎ融資や気象災害特例の周知、果樹共済加入者には適正で迅速な共済金支払いに向けた体制を整え、被災農家の営農継続を後押しする。
秋田県男鹿市、男鹿半島のなかほどにある真山(しんざん)地区で古民家カフェと民宿を営む猿田真さん(48)。提供する食事には、自宅の畑で取れた野菜や地域の米など地元の食材を使う。伝統行事「なまはげ」の担い手としても活躍。地域に人を呼び込んで"いなか暮らし"の魅力を発信する。
広島県立総合技術研究所農業技術センターでは、足場管ハウスと枠板式高畝を利用したアスパラガス栽培を対象とした環境制御技術を検証し、品質・収量向上に成果を上げている。軒が高く、換気効率の良い足場管ハウス、自動調光システムで室内の温度上昇を抑え、穂先の開き・曲がりなど規格外の発生を抑制。また、枠板式高畝に合わせた土壌養水分制御システムで適正な養水分管理を行う。実証に協力する三次市甲奴町の宮林誠さん(46)は昨年、慣行区の1.3倍となる10アール当たり2.8トンを収穫した。
【島根支局】邑南町の寺本直人さん(27)は実家の農業を受け継ぎ、姉の秋穂さん(29)と共同で多品目の野菜や果樹の栽培に取り組んでいる。現在、直人さんはハウス4棟13.8アールでトマトとイチジクおよびブドウ「神紅」、露地15アールでブロッコリーとキャベツを栽培。秋穂さんはハウス5棟33アールでブドウ「シャインマスカット」とイチゴを栽培している。インターネットの活用も積極的だ。ホームページや写真共有サイト(インスタグラム)、SNS(交流サイト)で日々の出来事を発信するほか、無料通話アプリ(LINE)で直販も行う。
〈写真:「イチゴの品種は『かおり野』。邑南町は寒冷地のため、より甘くなります」と直人さん〉
【宮城支局】「南国果実アボカドの国産流通が目標」と話すのは、登米市米山町の「ファーム宮田」代表取締役・佐藤安憲さん(65)。宮田建設株式会社の農業部門として2017年に立ち上げ、くん炭製造作業で出る熱排出エネルギーをハウスの加温に有効活用してアボカド栽培にチャレンジしている。
〈写真:「成木が楽しみ」と佐藤さん〉
【福島支局】早期退職して農業を始めた田村市の新田浩さん(62)は、福島県では珍しいホップを2.7アール栽培する。新田さんは年に一度、ホップの収穫体験を行っている。「自分が栽培したホップを通じて、福島県の復興や地元の活性化につながってくれたらうれしいです」と笑顔で話す。
〈写真:ワイヤの巻き取りについて説明する新田さん〉
【福井支局】高浜町中寄地区の景観を保全する住民団体「蝓蜊の里くらぶ」では、休耕地に花を植える活動を続けている。代表の山﨑孝晴さん(81)は「あまり手間のかからない方法で地区の休耕地をより良い景観に保つことで、楽しみながら草刈りや花の栽培ができるようになった」と話す。
〈写真:いつもの集合場所の水車小屋前で山﨑さん(右)と近藤義和さん、美穂子さん夫妻〉
【山形支局】「一人でも多くの子どもたちが農業にあこがれを持ってもらえるよう、活動を続けていきたい」と話すのは、寒河江市ほなみの芳賀あゆみさん(53)。「芳賀にこにこ農園」の常務取締役で県指導農業士も務める芳賀さんは、子どもたちに食農を伝える、特定非営利活動法人「アグリバトンプロジェクト」の活動として、絵本の読み聞かせを行っている。
〈写真:読み聞かせをする芳賀さん(左)〉
▼農研機構は、天敵として導入したチュウゴクオオハナバチによるクリの難防除害虫クリタマバチの抑制効果が40年余り継続しているとの調査結果を発表した。クリタマバチは1940年代に中国から侵入して分布を拡大。60年代半ばにはクリ栽培で大きな被害が出ていた。
▼農薬や抵抗性品種による防除が困難なため、天敵利用を検討。中国からチュウゴクオオハナバチを導入し、82年春から効果をみながら放飼してきた。現在では日本に定着し、クリタマバチの被害を抑え続けている。
▼侵入害虫の原産地からの天敵導入は、伝統的生物的防除と呼ばれる。クリタマバチは欧州にも侵入して問題となっており、2005年には日本で採集したチュウゴクオオハナバチをイタリアが導入・放飼しており、成果が期待されている。
▼ただ、侵入は貿易など人や物の移動が要因とされ、虫の側には悪意も何もない。新たな「害虫」の発生を防ぐには、人の活動による生態系への影響を減らすしかないのだ。