今週のヘッドライン: 2024年04月 4週号
水稲38ヘクタールなどで経営する福島県本宮市の御稲プライマル株式会社では、米の食味データに基づき、顧客の用途や好みに合わせて調合(ブレンド)する「カスタム米」を販売。品種や産地銘柄、新米だけではない価値を提供する。「自分たちでデータを持ち、食味の再現性が高まるのが強み。いつでも好みに合うおいしさを提案できる」と後藤正人代表(44)。自社の機器による計測に加え、官能試験で食味・食感などを数値化。品種や収穫圃場・収穫日による品質特性も含めて全米袋に番号をつけてパレットごとに管理し、多様な注文に応じている。
人や物の往来が活発化する大型連休を控え、農林水産省などが空海港での水際対策を強化するとともに畜産関係者に飼養衛生管理の徹底を強く呼びかけている。特に韓国や中国などで感染が続くアフリカ豚熱(ASF)や口蹄疫の侵入・まん延を許せば、国内畜産業への打撃は避けられない。空海港の検疫で海外からの持ち込みが禁止されている肉製品の摘発例は、2023年に15万2329件と過去最多を更新した。コロナ禍からの経済回復や円安などで訪日客も増加傾向にあり、訪日客や海外に渡航した人の農場への立ち入り、肉製品の持ち込みには十分な警戒が求められる。家畜伝染病の侵入・発生リスクを関係者間で共有し、防疫対策を強化・徹底する必要がある。
NOSAIおおいた(大分県農業共済組合)では、地域農業の維持に力を注ぐベテラン共済部長(NOSAI部長)が活躍している。高齢農家などから水田を預かり、面積を拡大。地域の中心的な農業者として米作りに取り組む。農業保険による備えの大切さを伝えながら、円滑な事業運営を支える共済部長2人に話を聞いた。
農林水産省は先ごろ、卸売市場の仲卸・卸売業者と小売業者間の生鮮食料品などの取引適正化に向けたガイドラインを策定した。同省の調査で明らかになった独占禁止法などの点で問題となり得る事例を9項目に整理し、望ましい取引実例などをまとめた。両者の交渉力に差があるため、小売業者から「不当な返品」や「客寄せのための納品価格の不当な引き下げ」などを要求される事例が確認されている。仲卸・卸売業者の経営が悪化すれば、卸売市場の存亡につながり、ひいては農業者や出荷団体にも影響が及びかねない。同省は説明会を開き、周知徹底を図る考えだ。
鮮やかな花、色が目を引くナスタチウム(別名:金蓮花キンレンカ)はガーデニングなど鑑賞用に人気がある。また、食べるとピリッとした辛さを持ち、花や葉などがサラダや砂糖菓子などの食材にも利用可能だ。ハーブやエディブルフラワー(食用花)を研究する「ミエコズガーデン」の小松美枝子さんに栽培方法や見た目を生かした食卓での利用について教えてもらう。
アスパラガスを2~3月に定植して翌春に収穫する「採りっきり栽培」は、慣行の露地栽培では3年かかる収穫までの期間を短縮し、防除など管理の手間も減らせる利点がある。同技術を開発した明治大学農学部農学科野菜園芸学研究室では、さらなる収益増加と作業負担の軽減に向けて、生分解性液状マルチを使った採りっきり栽培についてトーテク株式会社と共同研究中だ。先ごろ開かれた「アスパラガス採りっきり栽培 明治大学フィールドデー」では液状マルチの使用による増収などの調査結果が紹介された。
【愛媛支局】食味が良く、豆1粒が約3センチ(一寸)の在来ソラマメ「清水一寸」を改良し、1株当たりの3粒莢の割合が高い品種を育成した松山市志津川町の山本文則さん(75)。クラウドファンディングで集まった資金で、育種開始から28年越しの2022年に品種登録された。バナナの房のように1節に三つや四つの莢が着く姿と、妻・房子さんへの感謝を込めて「清水一寸 媛の房」と名付けた。種子の卸業者を通して県中予地域で普及が進み、山本さんによると、生産者は8人に増加している。
〈写真:「若い人には自分がこうと思ったら最後まで貫いてほしい」と山本さん〉
【広島支局】神石高原町の株式会社BINGO(前田諭志代表取締役=42歳)が運営する鳥獣食肉解体加工施設「備後ジビエ製作所」は、備後地域で野生鳥獣の回収、加工、販売を行う。2018年に福山市、23年に神石高原町に加工施設を構え、年間1500頭のイノシシやシカを取り扱う。
〈写真:「おいしい肉を安定して提供したい」と話す前田代表〉
【福島支局】「オリーブが町の復興の支えになってほしい」と話す浪江町立野の加藤修さん(71)。水稲5ヘクタールのほか、畑3ヘクタールでオリーブを栽培し、同町の復興に奮闘している。同町は原発事故の避難指示解除に伴い、町内での営農が徐々に再開され始めた。加藤さんは「失ったものを取り戻すことは難しい。町のイメージを良いものに変えていくことが大切」と力強く話す。
〈写真:樹形を確認する加藤さん〉
【香川支局】温州ミカン2.5ヘクタールを栽培するまんのう町の宮本勝之さん(82)は、傾斜地のミカン園地に町特産のモウソウチクで垣を作り、快適な作業環境を実現している。「作業時の足場が平坦になり、年を取っても楽に、効率良く農業ができます」と話す。
〈写真:町特産のモウソウチクを使った竹垣。「人とミカン、環境にも良い、相乗作用のある垣です」と宮本さん〉
【大分支局】「スイートピーに恋をしてしまいました」と話す佐伯市の市川一清さん、幸子さん夫妻。スイートピー88アール、ホオズキ70アールを栽培する清幸農園を経営する。独自に育種したスイートピーのオリジナルブランド「トトロシリーズ」を生産。この品種は突然変異した花から種を取り、色が定着するまで4~5年をかけて商品化された。生産を始めて35年となる現在では、23種類のトトロシリーズを栽培し、関東や宮崎に出荷している。
〈写真:「独自ブランドを次代につなぎたい」と一清さん(右)と幸子さん〉
▼能登半島地震からの復旧・復興に関し、財務省は「将来の需要減少や維持管理コストも念頭に置き」「集約的なまちづくりやインフラ整備の在り方も含めて十分な検討が必要」との考えを財務制度等審議会の分科会に示した。復旧・復興の検討も十分ではない段階で"コスト抑制ありき"は乱暴すぎないか。
▼分科会のテーマは「人口減少を踏まえたインフラ整備の在り方」で、「コンパクトなまちづくりを前提にインフラ整備を進めることが必須」と明記。2050年には8割の地域で人口が30%以上減少し、約2割の地域で無居住化するとの推計も示す。能登地域に限らず、全国に広げたいのだ。
▼人口減少に伴い集落の自治や祭事、生活環境などの維持が困難になりつつあるのは事実だ。島根大学の作野広和教授は、省くところは省き、外部の協力も得て、得意技(できること)を生かした住民主体の地域運営を勧める。人口減少を前提にした「縮充」と呼ばれる最小限の地域維持方策だという。
▼効率や予算の制約はあろうが、地域で暮らす住民の意向は何よりも尊重すべきだ。