今週のヘッドライン: 2024年04月 2週号
労働者の安全と健康の確保を目的とした労働安全衛生法の関連規則改正に伴い、雇用主が労働者に対して実施する「雇い入れ時教育」が、4月1日から全ての業種で義務化された。農業ではこれまで省略できた機械や保護具の取り扱い、作業開始時の点検など4項目を含む8項目が労働者を雇用する農家や法人などの義務となった。農林水産省では、事業者向けと労働者向けのテキストを作成してホームページで公表し、活用を呼びかけている。また、厚生労働省は、事故が多いトラクターなどの農機を扱う労働者に行う「特別教育」や農作業事故の報告についても義務化の検討を始めている。
改正農業経営基盤強化促進法で規定された「地域計画」の策定期限は2025年3月末で、既に1年を切った。農地利用と担い手を結び付けた10年後の地域農業の設計図との位置付けで、地域の話し合いに基づいて農地の効率的利用を促すとともに担い手の確保・育成などにつなげるのが目的だ。高齢化や人口減少が急速に進む中、農地の維持・確保には担い手への農地集積・集約化が欠かせない。一方、地域合意が前提となる将来像の策定には時間を要するため、期限までの策定は困難との見方もある。中山間地域などでは担い手への農地集積・集約にも限界があり、高齢農家や地域住民も含む多様な人材が活躍できる環境づくりなども課題だ。
厚生労働省は3月29日、2023年に自殺した農林漁業者は382人だったと発表。前年比では13人少ないものの、依然高止まりが続く。
内訳は自営者が前年比17人増の271人で、男性が247人、女性は24人となった。原因・動機別(家族の証言などから最大四つまで回答可能)では「健康問題」が136人で最も多く、事業不振など「経済・生活問題」が109人、家族の将来悲観や親子関係の不和など「家庭問題」が68人、仕事の失敗など「勤務問題」は32人だった。
農業女子の活動が広がる中、ブランドづくりなどで企業と連携する事例も増えている。農林水産省が先ごろ開催した「第8回大農業女子会」では、「農業女子の活動を企業に提案しよう!」をテーマに地域ブランディングや地域資源活用を支援する金子和夫事務所の金子和夫代表が講演。農業女子が企業と協働するためのアプローチ方法を五つのステップに整理した。概要を紹介する。
施設イチゴ3.6アールで無加温栽培に取り組む大阪府能勢町の吉村聡子さん(39)。年間500リットルを使っていた灯油を削減し、温室効果ガスの排出抑制など環境保全型の農法確立を目指している。「子どもたちの将来を考えたとき、少しでも温暖化が緩和されていてほしい。食生活や社会のあり方も含めて見直す機会につなげたい」と話す。気温が低くなる日は、遮光シートでの畝の被覆や散水による保温を徹底し、生育障害や休眠を回避。防除では天敵を利用して農薬散布の削減や省力化につなげ、付加価値販売の工夫で収量減をカバーしていく考えだ。
飼料価格が高止まりする中、国産濃厚飼料の子実トウモロコシ生産が各地で進んでいる。水田転作として栽培する場合、大豆の機械を流用でき、補助金を含めた収入は大豆と比べて少ないが、省力的に管理できる利点がある。農研機構東北農業研究センターなどが開いた子実トウモロコシについてのフォーラムでは、2年間の実証を行った宮城県内での栽培事例などが報告された。
【栃木支局】壬生町藤井の株式会社AJTでは、倉井信夫(くらいのぶお)代表取締役(39)と三浦成人(みうらなるひと)専務取締役(33)が、露地とビニールハウス計10.4ヘクタールで栽培したコマツナとホウレンソウを販売している。2023年4月に新作業場を建設し、7月には農業生産工程管理(GAP)の一つJGAPを取得した。倉井代表は「新しい作業場になったことで調整から販売までの効率が良くなった。JGAPの取得は販路拡大と価格交渉を有利に進める材料になっている」と話す。
〈写真:ウォーターカーテンハウスで栽培するコマツナを手にする倉井代表(左)、三浦専務〉
【山形支局】「おいしい米や山菜、自然環境などの地域資源を生かし、お金が入り、人が訪れるようにしたい」と話すのは、酒田市大沢地区で「合同会社COCOSATO(コサト)」を営む阿部彩人(あやと)さん(43)。地域の農作物に付加価値を付けて販売するほか、ジュンサイ収穫体験を企画し、観光客を呼び込むなど地区全体をプロデュースしている。
〈写真:「大沢地区の資源を生かし地域を盛り上げてきたい」と阿部さん(中央)。右が同地区コミュニティ振興会会長の後藤正一さん(72)、左が副会長の遠田修さん〉
【三重支局】木曽岬町の「伊藤農園」3代目・伊藤達郎さん(33)は、父・知己さん(60)、母・友子さん(60)、弟・佑亮さん(31)と共に、祖父の代から続く米とトマトの栽培に力を入れる。
味を追求するトマト〝とまリッチ〟は、土耕栽培で、灌水(かんすい)量を抑えて糖度を高める。収量を追求する〝大玉トマト〟はオランダ製の軒高5.7メートルの高軒高施設で栽培。味と収量はどちらも重要で、両立が難しいという。そのため〝高濃度トマトは味、大玉トマトは収量〟と二つの柱を持つ経営戦略で挑む考えだ。
〈写真:「高軒高ハウスは、骨材を減らすことで光の入る量が全然違う」と達郎さん。手に取る品種は、耐病性を付けた「かれん」〉
【山口支局】宇部市小野で農業を営む原田哲成さん(84)と妻の恵子さん(78)は、2.8ヘクタールで米、ハウス2棟でイチゴやメロンなどを栽培する。
「牛を引いて田を耕す頃から農業をやってきました。農業は生きる楽しみ。お客さんと心安くなって、ついつい話も止まらなくなってしまいます。ぜひ農業をやってみてほしい」と哲成さん。さらに「この地域は土壌が粘土質なのでおいしい米ができます。乾燥調製も自分たちでやっていますよ。昔は、遠い地区から米を作りに来る人もいました。高齢化で人は減っていきますが、自分たちでやれるうちは米作りを続けていきたい」と話す。
〈写真:「イチゴもメロンも評判がええのよ。おいしいよ~。もいだの食べてみて」と話す原田さん夫妻〉
▼日本気象協会が推進する「熱中症ゼロへ」プロジェクトは、4月からの活動開始を発表。公式サイト内に「暑さへの備え」と題して予防や対策に関する情報を公開した。「地球沸騰化時代の熱中症対策」を活動テーマとし、情報発信を強化する。
▼同サイトでは、環境を知る温度計や湿度計、水分・塩分補給用のスポーツドリンクや塩あめ、タオルや冷却剤、扇風機などの準備を呼びかける。また、入浴や軽い運動など意識的に汗をかく生活を送る「暑熱順化」を提案。数日~2週間で暑さに慣れやすい体になるそうだ。
▼農林水産省も農作業安全対策として本年度から5~7月を「熱中症対策研修実施強化期間」に設定。暑さが本格化する前からの研修実施や注意喚起を促す。エアコン大手のダイキンは、夏前のエアコン試運転を呼びかける。不具合に気付かないと必要なときに間に合わない。試運転に加え、フィルター掃除も大切だ。
▼昨年5月に熱中症で救急搬送された人は100人を超える。できる準備は今のうちに進めたい。