今週のヘッドライン: 2024年04月 1週号
水田経営の規模拡大が進む中、水稲乾田直播の栽培面積が伸びている。育苗や移植作業が不要で春作業を省力化できる上、移植栽培と比べて収穫期が1~2週間程度遅れ、作期をずらせるためだ。農林水産省によると、2021年産は1万5987万ヘクタールで実施され、特に東北や東海で普及している。安定生産に欠かせない雑草や漏水対策については、農研機構や都道府県農業試験場などが地域に適した手順書を作成、公開している。
日本飼料用米振興協会は3月25日、食料・農業・農村基本法改正に関する政策提言を発表した。食料安全保障の確立には国内生産の拡大を大前提とした水田の生産力の最大化が重要と訴え、飼料用米の増産と安定供給を確保する政策の拡充を提起。特に水田活用の直接支払交付金(水活)での飼料用米の数量払いの上限撤廃や、多収で高タンパクな品種開発などを求めた。2023年産飼料用米の作付面積は24年産からの一般品種の交付単価引き下げを控え、4年ぶりに前年産を下回った。助成単価が見直される24年産は、さらなる減少も懸念される。ただ、米の需給安定や飼料自給率向上など飼料用米が果たす役割は大きい。耕畜連携など生産現場の取り組みが定着・発展できる環境整備が求められる。
食料・農業・農村基本法改正案の審議が3月26日、衆院本会議で始まった。与野党の代表質問が行われ、岸田文雄首相は、将来にわたる食料の安定供給の確保には「農業が持続的に発展し収益を確保していくことが重要」と強調。「改正基本法に基づき、生産性向上や付加価値向上の後押し、適正な価格形成の推進などを基本に、収入保険制度などの経営安定対策を適切に講じながら所得の向上を図る」と説明した。さらに、食料の持続的な供給には「生産から消費までの各段階の合意の下、国内外の資材費、人件費の恒常的なコストが考慮された価格形成が重要」と述べ、法制化も視野に仕組みを検討するとした。
新潟県上越地域では、ため池により用水を確保している水田が多く、2023年の猛暑では渇水被害が発生した。上越市安塚区の中山間地域で水稲11.3ヘクタールを栽培する農事組合法人ぼうがねは、高温と渇水による干害で収量が減り収入が減少。収入保険の支払対象となった。安定生産に向け、24年産では高温を見据えた圃場の再建や土作りを進めている。
給湯器の点検商法に関する相談件数が急増しているとして、国民生活センターが注意を呼びかけている。電話や訪問で突然給湯器の点検を持ちかけ、不安をあおって高額な機器への交換を迫る手口が多い。2023年4~12月末の相談件数は1099件と前年同期比で約3倍に増加。実際に契約してしまった人の7割以上は70歳以上が占めることから「特に高齢者は注意してほしい」と強調する。
日本農業機械化協会は3月22日、東京都内で「農業機械化フォーラム」を開催。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に向けた機械化技術の開発・普及の現状と今後の方向などを検討した。農研機構農業機械研究部門の土師健主任研究員は、乾燥もみ殻を燃料とする装置を利用した穀物乾燥システムを紹介。灯油使用量の削減効果や育苗培土への燃焼灰混合による炭素固定の試みなどを説明した。
【北海道支局】酪農という仕事を通じて人としての成長を図り、牛や環境に配慮した経営を実践している中野牧場代表・中野大樹(なかのたいき)さん(40)。鹿追町北鹿追地区で乳牛約850頭を飼養し、放牧地5ヘクタールのほか、飼料用作物125ヘクタールを作付けている。
現在、社員8人、パート従業員2人、研修生4人の牧場を運営する大樹さんは「人のため、牛のため、自然のため」という経営理念を掲げ、社員一丸となって学び、共に成長し合える牧場を目指す。その一環として福利厚生に力を入れる。
〈写真:人としての成長に加え、牛や環境に配慮した経営を実践する大樹さん(大樹さん提供)〉
【岡山支局】「牛に囲まれて育ち、小さな頃から自分も牛を飼いたいと思っていた」と話すのは、瀬戸内市長船町で酪農業を営む守時理恵さん(39)。「経営者の名前が父から自分に変わったことで、プレッシャーは感じている」という。一つ一つの作業に緊張感を持って取り組み、乳質管理には特に気を配る。「乳房炎が1頭出ることは今の私にとって一大事。早期発見・早期治療を心がけていきたい」
〈写真:「牛たちも家族のように思っています」と守時さん〉
【山梨支局】「目標は20代のうちに規模、経営内容、従業員の働きやすさを山梨で1番の牧場にすること」と話す、北杜市高根町の「株式会社ポートファーム」代表・利根川港さん(23)。乳用牛130頭と肉用子牛20頭を飼育し、1日3.7トンの生乳を生産する。
〈写真:就農してから初めて生まれた牛「ニア」と利根川さん〉
【秋田支局】横手市雄物川町の井上農園では、自家産サツマイモのペーストと県開発の「あめこうじ」を使った甘酒を合わせた「さちゅまいも」を製造。これから販売に乗り出す。
〈写真:「丁寧にこし、滑らかに仕上げる」と井上農園の井上真理子さん(40)〉
▼花見や歓送迎会など飲酒を伴う行事が増えるシーズンとなった。コロナ禍では自粛が続いたが、徐々に宴会の案内も増えているのではないか。ただし、アルコールは、人によって好き嫌いがあり、体質的に飲めない人もいる。互いに配慮して楽しめる宴会にしたい。
▼厚生労働省が公表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」は、行動や健康のリスクを記述し、健康に配慮した飲み方を提案する。行動面のリスクには、運動機能や集中力の低下による事故やけが、他人とのトラブル、金銭などの紛失を挙げる。飲める人には何らかの苦い記憶があるはずだ。
▼健康面のリスクには、急性アルコール中毒やアルコール依存症、生活習慣病、肝疾患、がんなどを挙げる。ガイドラインでは、生活習慣病リスクに配慮した純アルコール量として、男性40グラム、女性20グラムを1日当たり摂取量として示している。量は酒類に表示がある。ぜひ確認してほしい。
▼「酒に十の徳あり」など効能を表すことわざがある一方、「酒、人をのむ」など負の面も。難しさは自覚するが、明日も楽しく飲むために、ちょうどよい量でお開きに。