今週のヘッドライン: 2024年03月 4週号
宮城県大崎市田尻地域の農事組合法人田尻アグリワーカーズは、就労支援などに取り組む地元の労働者協同組合(ワーカーズコープ)と連携し、引きこもり経験がある若者などの雇用につなげる。ハウス25アールでトマトを中心に野菜を栽培し、職場体験などを機に雇用した20~30代の従業員2人が5年以上定着している。佐々木洋志代表(47)は「職場が合わず働く機会がなかった人を農業で下支えしたい。高齢化が進む地元農業の担い手としても重要」と話す。
農林水産省は15日、多面的機能支払交付金第三者委員会を開き、2022年度多面的機能支払交付金の分析結果などを示した。「農地維持支払」「資源向上支払」(共同)ともに取り組み面積は200万ヘクタールを上回り、増加傾向にある。一方、4割の組織で活動参加者数が減少。約半数の組織が5~10年後に参加者不足に伴う活動への影響を懸念している。政府は25年度からの次期対策に向け、企業や教育機関、非農業者とのマッチングを推進するとともに、活動組織の広域化や広域組織の活動支援などを強化する方針。農地や水路などの維持管理は農業の持続的な発展や農村の振興に不可欠だ。地域活動の持続性確保へ財政支援の充実を含め関連施策の強化・拡充が求められる。
NOSAI熊本(熊本県農業共済組合)は、農家サービスの一環として、使わなくなった農機具などを売りたい農家と買いたい農家の橋渡しをする農機具リサイクルのサービスを実施し、好評を得ている。年4回発行する広報紙「ひのくに」に、出品依頼を受けた農機具などの写真や製品情報、最低売却価格などを掲載。購入希望者は、広報紙の専用はがきに購入希望価格などを記入してNOSAIに送付する。出品者はNOSAIが報告する購入希望者から候補者を選定し、本人同士で直接交渉する仕組みだ。手数料は不要で、毎号50件を掲載。約9割に購入希望の申し込みがある。
千葉県富里市で野菜を生産・販売する株式会社アグリシアJAPAN代表取締役の津田乃梨子さん(43)は、新たな品目としてイチゴのブランド化を進めている。果実の黒さが目を引く「真紅の美鈴」を目玉に「とちおとめ」や「紅ほっぺ」など計5品種を栽培。イチゴ狩りと圃場に隣接する直売所などで販売し、地域に人を呼び込んでいる。イチゴで同市を盛り上げたいとオンライン販売も手がけ、交流サイト(SNS)を活用したPRに努めている。
青果物の量り売りを普及できないかと、青果店2店舗で実施された実証試験結果が公表された。農業者は袋詰め作業が省略できるほか、プラスチックの包装袋が不要となり、資材費削減と環境負荷の低減にもつながる。利用客からは、量とサイズを自由に選べる点や少ない単位で購入できるなどの理由で「今後も利用したい」との回答が9割を超え、好評だった。先ごろ東京都内で開かれた事業成果発表会(日本施設園芸協会主催)から概要を紹介する。
水稲17.5ヘクタールとパン用小麦「せときらら」7ヘクタールなどを栽培する山口県山陽小野田市厚狭の農事組合法人石束・不動寺原は、衛星データの活用などで小麦開花期の追肥時期と施用量を把握。播種量の調整や冬季の踏圧3回で分げつを促進し、高収量と高タンパク生産を両立させている。水稲収穫後は3回の耕起で稲株を完全に粉砕し、きれいな畝を施工。明渠〈めいきょ〉を排水溝につなげ、大雨の後は補修して排水対策を徹底する。丁寧な栽培管理を積み重ね、2023年産の10アール当たり収量は345キロとJA地区平均と比べて16%多収で、全量1等を達成した。
【岩手支局】「九条ネギ」を中心にネギを栽培する八幡平市大更の合同会社みのり風土では、国内生産の少ない西洋ネギ「リーキ」を栽培。国産品を求める飲食店に出荷している。2023年には、県内産ネギで初めて農業生産工程管理(GAP)の一つJGAP認証を取得。販路拡大につなげた。
現在は10アールでリーキを栽培。2月下旬に播種し、10月上旬に収穫する。耐暑・耐寒性に優れているため、寒暖差のある同市で栽培できるという。「太いリーキにするため、1粒播種を行う。株間を広げるため、面積が必要」と村上代表。「今後は需要に応じて面積を増やし、出荷期間を延ばしたい」と意気込む。
〈写真:「会社の規模にかかわらず、農家の自覚を持って生産性向上に努めたい」と村上代表〉
【熊本支局】「品種ごとに色や大きさ、味が異なる個性豊かなブルーベリーを届けたい」と話す南阿蘇村の松浦剛さん(44)。獣医師として活躍する傍らブルーベリー20アールを栽培している。
松浦さんは地元の大阪で10年以上前からラビットアイ系、サザンハイブッシュ系を中心に60品種以上をポット栽培していた経験がある。熊本県へ移住し、南阿蘇村で圃場を借りて2020年に露地栽培を始めた。
「ブルーベリーはジャムとして販売されるときに品種が記載されることは少ない。香り、甘み、酸味が特徴の3品種を厳選し、品種別のジャムで消費者に違いを感じてもらえるような商品を作りたい」と意気込む。
〈写真:「『おいしい』と言ってもらえることがうれしい」と松浦さん〉
【秋田支局】水稲20ヘクタールやネギ5.3ヘクタールを手がける八峰町峰浜の株式会社アグリほんだ(2020年設立、社員4人)は、21年から収入保険に加入。同社の本多将紀代表(45)は、過去の被害経験をもとに、農業保険の必要性を仲間に伝え、これまでネギ農家3戸を収入保険成約に結び付けた。
収入保険には、ネギの販売金額が補償対象になることに魅力を感じ加入した。本多代表は「周りにはネギ栽培を経営の柱にする農家が複数いるため、リスクに備えて加入を検討してはどうかとJAネギ部会の会合などで勧めている」と話す。
〈写真:ネギの出荷作業に励む本多代表〉
【愛媛支局】四国中央市の特産サトイモ「伊予美人」の作付けが今年も始まった。JAうまの子会社「株式会社JAファームうま」では、「全期間マルチ栽培法」の整形マルチ作業を請け負い、後継者や労力不足の解消に取り組む。
全期間マルチ栽培法は、栽培の全期間で畝をマルチで被覆する方法で、追肥などの作業を省力化できる。作業は、土をかくはんしながら肥料を散布、畝を形成しマルチを被覆していく。種芋植付機で同時に植え付けることで、従来に比べ作業時間を4割短縮。肥料の改良も進み、品質と収量の向上が見込める。
同社では今年、JAうま管内のサトイモ栽培面積の4分の1を占める約20ヘクタールの作業委託を請け、特産品の生産を支えている。
〈写真:種芋を植え付けるJAファームうまの従業員。作業は2月中旬から4月上旬まで続く〉
【島根支局】大田市仁摩町馬路地区で介護事業などに取り組む任意団体「てごしようかい馬路」は、海藻を肥料に使ったアイスプラントを「さぶろべぇ」と名付け、2020年から40個のプランターで栽培する。
同地区には、鳴き砂で知られ天然記念物に指定された「琴ケ浜」がある。砂浜には多くの海藻が流れ着くが、処分するための施設がない。そこで、観光地でもある砂浜の美化のために、流れ着いた海藻の有効活用を考え、水や土中の塩分を吸い上げるアイスプラントに着目した。
〈写真:「海藻は洗わずに天日で干し、土と混ぜ合わせて肥料を作ります」と話すメンバー〉
▼ネット通販などに押され、書店数の減少が続いている。日本出版インフラセンターのまとめでは2022年度の総店舗数は1万1495店。03年度は2万880店あり、20年間でほぼ半減した。出版文化産業振興財団によると、22年9月時点で全国の約26.2%が1軒も書店がない無書店市町村という。
▼都市部でも書店は減り続けている。事務所の徒歩圏内に数店あった書店は1店になり、そこも閉店すると張り紙が出された。企業なども多い場所柄で、日中の人口は多いはずだが、書店に出向く人が少ないのだろう。
▼こどもの頃、自転車で10分ほどの住宅団地内に書店があり、小銭を持って週刊まんが誌などを買いに通った。中学、高校と成長するに連れ、雑誌や小説などにも手を広げた。ネットのない時代で、書店は多様な情報が得られる貴重な場所だった。
▼地方で書店を見つけると立ち寄ることが多い。出身作家や地域の歴史・文化をテーマにした地元出版社の書籍が並ぶコーナーが設けられ、勉強になる。ネットでは味わえない出合いのワクワク感が楽しいのだ。