今週のヘッドライン: 2024年03月 2週号
京都府福知山市川合地区の川合地域農場づくり協議会はサル害対策として、通話アプリ「LINE」で住民が群れの移動情報などを共有できる仕組みを作り、住民による組織的な追い払いや効率的な捕獲で被害抑制に成功している。「地域づくりの手段としてサル害対策を捉えている。住民で方向性を共有し、前向きに取り組めるようにした」と土佐祐司代表(70)。生活にも影響が大きいサル害を抑えたことで、廃校を活用したキャンプ場で里山体験イベントを開くなど、移住・定住や関係人口創出も期待できる環境づくりを実現している。
農林水産省は5日、食料・農業・農村政策審議会食糧部会に2024年産の水田における都道府県別作付け意向(1月末時点)を示した。主食用米は「前年並み」が30県で「増加傾向」が5県、「減少傾向」は11県となった。昨年の記録的猛暑の影響で出回り量が減るなど需給が引き締まる中、実需側委員からは不足感を訴える声が相次いだ。一方、人口減少などを背景に主食用米需要の減少傾向が続いており、生産者委員は、需給安定には需要に応じた生産の継続が重要と強調。特に助成単価が見直された飼料用米は25県が減少傾向となり、主食用米への揺り戻しなどが懸念されると、政府に対応を求める声が上がった。
農林水産省は4日、農泊推進研究会を開き、一般社団法人日本ファームステイ協会事務局長で、株式会社百戦錬磨の大野彰則取締役が2023年度の農泊旅行の消費動向調査結果を報告、対応策などを提起した。特に農泊を通じた雇用の創出や持続的な収益確保には誘客拡大や高付加価値化、情報発信の強化が重要と強調。地域ならではの食や体験の提供など地域資源の希少性の探求・発見・商品化を訴えた。以下、概要を紹介する。
茨城県筑波山麓で自給自足的な生活を営むライターの和田義弥さんは、一坪の畑に複数の野菜を栽培する「一坪ミニ菜園」を実践する。小さなスペースに区切ることで管理がしやすく、庭の一画の家庭菜園や市民農園にもおすすめだという。ミニ菜園の作り方の基本や利点などを紹介してもらう。
畜産の現場で診療に携わる獣医師が研究成果を発表する「令和5年度(第50回)家畜診療等技術全国研究集会」(主催・全国農業共済協会)が2月21~22日、東京大学安田講堂(東京都文京区)で開かれた。第50回記念大会として、獣医療の発展や畜産振興などへの多大な功績が評価され、NOSAI千葉西部家畜診療所の田中秀和副所長に内閣総理大臣表彰が授与された。研究発表では、全国から選出された19題を審査し、農林水産大臣賞はNOSAI宮崎生産獣医療センターの嶋田誠司獣医師らによる「対照的な経緯で清浄化に至った豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)2症例から得られた感染制御対策の検討」が受賞した。また、農林水産省経営局長賞9点(うち吉田賞1点、奨励賞2点)、全国農業共済協会長賞9点が選ばれた。農林水産大臣賞と吉田賞・奨励賞の報告概要を掲載。また、審査委員長を務めた岩手大学の佐藤繁名誉教授が全国研究集会50年の歩みをテーマに講演、若手獣医師によるシンポジウムも行われた。
農研機構は、カラスによる農業用ビニールハウスの損傷を防ぐ「ハウスにテグス君」を開発した。ハウス頂部から30センチ程度の高さに、透明テグスをジグザグに張ることで、カラスの侵入を防ぐ。必要資材を最小限に抑え、棟高3メートル×間口5メートル×奥行き10メートルのハウスの場合、資材費は2万3千円程度。テグスの支柱には弾性ポールを使い、脚立を使用せずに設置できる。
【岩手支局】奥州市江刺藤里の佐藤広一さん(71)は、約600本のナラやクリの木を原木に使ったシイタケの生産に、2010年から取り組む。
栽培を始めた翌年に東日本大震災が発生し、原木を全て処分することになった佐藤さん。「奥州市の補助金を利用し、栽培を再開できた」と話す。
〈写真:「午前中に収穫したシイタケは梱包(こんぽう)して産直施設に翌日出荷する」と佐藤さん〉
【山形支局】NOSAI山形(山形県農業共済組合、梅津善助組合長)の最上家畜診療所では「OPU-IVF(経膣〈けいちつ〉採卵による体外受精)」技術による新しい牛体外受精卵事業を2022年度に取り入れ、一定の実績を重ねている。23年9月には最上家畜診療所によるこの技術を用いた初めての受精卵子牛が、新庄市の小倉牧場(小倉久弥代表、42歳)で出生した。
〈写真:23年9月にOPU-IVF技術を活用して生まれた子牛と小倉さん〉
【栃木支局】2012年に始動した「佐野藍復活プロジェクト」は、かつて隆盛を誇った佐野市のアイ栽培と藍染め技術を約100年ぶりに復興しようとする試みだ。プロジェクトをきっかけにアイ栽培を始めたのは、佐野市下彦間町の小竹利美(こたけとしみ)さん(72)。「地域の伝統を継承できる点が魅力。栽培農家の増加と、プロジェクトのさらなる盛り上がりに期待している」と話す。
〈写真:発酵中のアイグサを天地返しする小竹さん。最高約65度まで温度が上昇する〉
【埼玉支局】上里町の白須貴裕(しらすたかひろ)さん(43)は、2024年1月に農業生産工程管理(GAP)の一つJGAP認証を取得した。作業の記録や作業場の整理整頓を実施し、安全確保や作業効率アップにつなげている。
〈写真:道具置き場の前で白須さん。置く場所を明確にすることで、物を探す時間が大幅に減った〉
▼新たな地質時代の設定を検討していた国際組織で、投票の結果、提案が否決されたと報じられている。提案は、人類の活動が地球に及ぼした影響が明らかな1950年代以降を新たに「人新世」と定義するものだ。「ひとしんせい」や「じんしんせい」と呼ばれる。
▼提案の理由は明らかだ。50年代以降に堆積した土などを分析すると核実験など起因すると考えられる放射性物質が検出され、海洋では60年代以降に微細なプラスチック(マイクロプラスチック)が増えるという。人類の活動以外での排出はあり得ない。
▼地質時代は、地球の地殻形成後の約46億年を地層や生物相の状態などを踏まえて分類・定義する。大きく四つの累代があり、代、紀、世などと細かく分ける。現在は顕生累代の新生代、第4紀、完新世とされている。
▼今回の提案否決に関しては、数十年で地質時代を決めるのは時期尚早との考え方もあるよう。ただ、環境中にプラスチックごみを排出しないなど資源循環を基本に早急に転換を図らなければ、人類由来の堆積層は一層その厚みを増していくばかりだ。