今週のヘッドライン: 2024年02月 2週号
あなたらしい農ある暮らしを応援します――。長野県では、多様な人材を呼び込み、農村を活性化しようと県野菜花き試験場(塩尻市)内に「農ある暮らし相談センター」を設置。半農半Xや定年帰農など、農を取り入れた暮らしを希望する人の相談に乗っている。県職員の山村まゆさん(43)がアドバイザーを務め、個別に相談を受け付けるほか、セミナーや研修の講師としても対応。東京から同市に移住した自身の経験も伝えながら、相談者の一歩をサポートしている。
農林水産省は2日、東京都内で大豆単収の向上に関するシンポジウムを開き、国産大豆の生産・利用の拡大に向けた課題などを話し合った。2022年度の国内の大豆需要量約390万トンのうち、食品用は約100万トンで堅調に推移するものの、国産大豆の自給率は6~7%で低迷、生産量は伸び悩んでいる。世界人口の増加や気候変動の激化など輸入大豆は生産・供給の不安定化リスクが指摘され、食生活に重要な大豆の安定確保には、国内生産・供給体制の強化を基本による自給率向上が不可欠だ。シンポジウムでは、極多収品種の開発・普及の重要性などが提起された。農家の所得向上と実需者が求める数量・品質の安定供給の両立を基本に国産大豆振興の取り組み強化が求められている。
春先の強風による農業用ハウス被害が多発しているとして、農林水産省が交流サイト「フェイスブック」を通じて園芸施設共済への加入を呼びかけている。
「農水省・農業経営者net」によると、近年、園芸施設共済に加入しているハウスでは春先(2~4月)に発生した被害の約7割が強風関連と指摘。同期は特に水稲育苗ハウスなどの被覆時期に当たることから「園芸施設共済の加入期間は1年間だが、育苗ハウスなど被覆期間が短い場合は、通年で被覆するハウスに比べ少ない掛金負担で加入できる」仕組みがあると紹介し、加入の検討を訴える。
埼玉県秩父市黒谷で施設イチゴ69アールを栽培する株式会社和銅農園では、農業版事業継続計画(BCP)を策定し、大雪被害などを想定した被災時の対応を整理している。田口直樹代表(38)は「災害発生時の対処を頭の中から文書へ落とし込むことで、従業員と共有できる」と話す。被災時の初動とその後の事業再開に分け、安否確認や被害拡大防止への対応を整理。取引先の連絡先などを共有し、万が一の被災後も法人の信用が維持できるよう努めている。
地震や水害など大規模な災害時、SNS(交流サイト)は安否確認や情報収集・発信のツールとして活用できる。ただ、災害時はデマや根拠のないうわさが増えるため、不確かな情報に飛びつかないよう注意が必要だ。インターネットの生活総合情報サイト「AllAbout(オールアバウト)」でITリテラシーガイドとして活動するITジャーナリスト・成蹊大学客員教授の高橋暁子さんに、災害時にSNSを正しく利用するポイントなどを聞いた。
愛知県農業総合試験場では、安価で自作可能な作物の栽培環境モニタリング装置を開発した。装置はIoT(モノのインターネット)端末を中心とした本体に、温湿度や日射量、土壌水分などのセンサーを用途に合わせて接続。これらを制御するプログラムを組み合わせて作製する。計測結果は市販の既存機種とほぼ一致した。材料の調達や組み立て方法などをまとめたマニュアルとプログラムを、3月に試験場のホームページで公開する予定だ。
【山形支局】鶴岡市で製造されている汚泥発酵肥料「つるおかコンポスト」が全国で注目を集めている。この肥料は下水を浄化する際に発生する汚泥にもみ殻を添加し、80度以上の高温で発酵させたもの。通常は廃棄する資源を有効活用しているため、安価で品質が高く、農家の人気が高い。
〈写真:遠隔操作で肥料の切り返しを行う〉
【三重支局】御浜町の三重県農業研究所紀南果樹研究室では、軽トラックの荷台に動力噴霧機などを取り付けて、乗車したままかんきつの農薬散布ができる「アタッチメント式防除機」を開発した。荷台にタンクとバルブの遠隔操作コントロール装置、動力噴霧機を積載。凹字形の両側面にブームノズルを設置したアタッチメントフレームを、荷台後方にある荷物の落下を防ぐ板状の後アオリに取り付けた。
〈写真:アタッチメント式防除機を取り付けた軽トラ〉
【新潟支局】「令和6年能登半島地震」で、新潟県では最大震度6弱を観測した。特に、新潟市西区を中心とした液状化による被害が深刻化している。液状化による主な被害は、地割れや地盤の陥没、隆起など。
〈写真:「液状化の影響で田植機の一部が埋もれてしまった。このような被害は過去に経験がない」と原明彦さん(65)〉
【山口支局】「売り上げ目標を毎年立てて、それを達成できた時が一番うれしいですね」と話す柳井市の宮田誠さん(38)。2016年に就農し、ジネンジョ農家として経験を積んでいる。
〈写真:収穫したジネンジョの状態を確認する宮田さん〉
【岩手支局】遠野市宮守町達曽部のワサビ田で、小水力発電を利用した温度センサーの設置実証事業が2023年11月2日にスタートした。同事業は、気温と水温のデータを収集できるセンサーを設置し栽培管理に役立てるため、同町にある一般社団法人遠野わさび公社(鈴木惣喜理事長)と同市が株式会社リコーと連携して実施。
〈写真:センサーを確認する関係者。左から遠野市畜産園芸課の浅沼和也副主幹、公社の菊池陽所長、同市総務企画部経営企画課の箱山大樹主任。菊池所長は「スマート農業で、より良いワサビを生産できればうれしい」と期待する〉
▼関東各地で5日から6日朝にかけて、南岸低気圧の影響による降雪があった。東京は昼過ぎから雨に雪が混じりはじめ、夕方には地面が白く見えるところも。大雪警報が出た時点で、2014年2月の記録的な大雪が頭をよぎった。帰宅しようと電車に乗ったものの、途中駅で停止したまま朝を迎えることになった。
▼調べると、当時の東京都心で積雪27センチを観測した。郊外のわが家付近はさらに深かった気がする。動き出した別の経路の鉄道で移動し、雪を踏みながら2時間近くかけて帰宅した。平時なら徒歩で30分ほどの距離だ。バス停の屋根が雪の重さで倒れていた。
▼今回はそこまでの降雪量はなく、冷え込みも緩かったようで翌日にはかなりの雪が消えた。それでも幹線道路での自動車の立ち往生や鉄道のダイヤ乱れ、首都高の除雪の遅れなどニュースが続いた。雪国の人にしてみれば混乱ぶりに驚くことだろう。
▼地球温暖化から沸騰化の段階に移ったともいわれるが、暖冬の年が続いても、数年から十数年に一度は大雪もあるから気象は難しい。近年は果樹などで春先の凍霜害が頻発している。今年も十分に警戒を。