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今週のヘッドライン: 2024年01月 4週号

住民の協力で確実に 侵入病害虫の早期発見とまん延防止(1面)【2024年1月4週号】

 気候変動や物流の国際化を背景に、病害虫の侵入や国内でのまん延のリスクが高まっている。一方で、現場では専門人材が不足し、農地以外に広がる例もあるため、迅速な発見や防除体制の構築が課題だ。日本植物防疫協会が16日に開いたシンポジウムでは、早期発見やまん延防止に向け、予察精度を高める技術の確立や普及とともに、農家以外も含む住民の理解や協力が不可欠との意見が専門家から挙がった。

(1面)

捕獲の強化継続必要 イノシシ、個体数減も生息域は拡大(2面・総合)【2024年1月4週号】

 環境省は23日、イノシシ保護・管理検討会を開き、農業被害などの防止・軽減に向け、個体数低減や低密度維持のための個体群管理手法などについて意見交換した。捕獲強化や豚熱への感染で、2021年度のイノシシの推定個体数は72万頭と、ピーク時からおおむね半減した。一方、温暖化などにより生息地域が拡大。全国の農作物被害額は減少しているものの、地域で差があり人身事故も出ている。検討会では、豚熱が沈静化した地域で個体数が急増しているとの調査結果も報告された。鳥獣被害は農作物被害だけでなく、営農意欲の減退や耕作放棄地の拡大など地域農業に深刻な打撃を与える。捕獲人材の確保・育成を含め、対策の継続・強化が求められる。

(2面・総合)

収入保険、収穫救済 果樹産地支える礎に(3面・NOSAI)【2024年1月4週号】

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 NOSAI山形(山形県農業共済組合)では、春先の凍霜害など果樹の自然災害への備えに、収入保険や果樹の収穫共済への加入を推進している。全ての職員が地区担当を分け持ち、樹木の損害を補償する樹体共済とのセット加入を呼びかける。凍霜害防止器材購入費の一部補助など損害防止事業も充実。全国トップの収穫量を誇るサクランボや西洋ナシなど果樹の一大産地で、農家の経営安定を支えている。

(3面・NOSAI)

〈写真:ラ・フランスを剪定する亘さん〉

おいしく健康に 地元食材で減塩メニューを提供(5面・すまいる)【2024年1月4週号】

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 農漁家女性が中心となり、地産地消のレストランを運営する愛媛県宇和島市の「企業組合津島あぐり工房・あすも」は、市の委託を受け、食材の味を生かした減塩メニューを提供。栄養士による食生活指導などとあわせて、住民の健康改善に一役買っている。同市では、高血圧の市民が多いことから、住民に週1回、高血圧改善メニューを提供する事業を通じて、市民の食生活改善を図る方針だ。

(5面・すまいる)

〈写真:減塩メニューを調理する前田料理長〉

棚持ち・見栄えが鍵 スイートコーン品種トレンド(7面・流通)【2024年1月4週号】

 夏野菜のスイートコーンは、季節感があり、簡単においしく食べられるので人気だ。本紙4週号営農技術・資材面で「注目の種苗」を執筆する株式会社ヒューマンコミュニケーションズの阿比留みど里代表取締役に、小売店や直売所で関心が高まっている新しい品種などを聞いた。

(7面・流通)

湿度保持で天敵定着 ハウスブドウのハダニ類防除(9面・営農技術・資材)【2024年1月4週号】

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 JA全農は17、18日、山梨県内で「ハウスぶどう防除研究会」を開催。営農指導などの関係者約100人が参加し、「シャインマスカット」を中心としたハウスブドウの安定生産に向け、天敵を利用したハダニ防除の研究成果や普及事例などを共有した。JA全農やまなしは、圃場環境を調査して天敵ミヤコカブリダニの定着に重要な湿度の維持には、有機マルチ資材の敷設などが有効と報告。ミヤコカブリダニのパック製剤と天敵保護資材「バンカーシート」を利用した「ミヤコバンカー」を使用する際に圃場環境を維持すれば、ハダニ類の多発生の予防につながることなどを紹介した。

(9面・営農技術・資材)

〈写真:望月さんの圃場を視察。有機マルチ資材(ケイントップ)が敷いてある〉

羊に魅了された獣医さん 独自の餌で上質肉【1月4週号 鳥取県】

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 【鳥取支局】「羊はとても穏やかな生き物で、見ているだけでとても癒やされる」と話すのは、南部町で羊の飼育に取り組む西谷公志〈にしたに・こうし〉さん(69)。獣医師の西谷さんは、県職員として畜産業に35年間携わった。羊を飼っていた知人からもらった肉を食べたところ、おいしさに魅了されたという。たくさんの羊を飼い、ジンギスカンを毎日食べる生活を夢見るようになり、1年早く退職して飼育を始めた。「県職員時代は牛関係を担当していた経験があったことから、羊は簡単に飼育できると思った」と西谷さん。当初は約50頭飼育する計画だったが、飼育・繁殖は想像以上に難しく、挫折した経験があるという。西谷さんが飼育する羊の品種は、発育が早く食肉向けの「サフォーク」。現在は約2ヘクタールの敷地で22頭を飼育・繁殖しながら、羊肉を地域のレストランや知り合いなどに販売する。羊の体調管理には神経を使う。牛に比べて体力が乏しく、比較的容易に死んでしまうという。猛暑だった2023年の夏は、「暑さで弱らないように遮光カーテンや扇風機を駆使して、暑さを和らげる必要があった。寄生虫による感染症や死亡原因が分からないケースがあり、非常に難しい」と苦労を話す。餌は牧草のほか、大豆、くず米、トウモロコシにミネラルを混ぜた「西谷ゴールドブレンド」。これが臭みの無い上質な肉にするポイントだという。最近では牧草の栽培や圃場管理に精を出しながら、獣医師として子牛のワクチン接種や、シルバー人材センターの会員として業務を請け負う多忙な毎日を過ごす。「羊の魅力は肉の味だけではなく、その性格にもある。基本的におとなしく、優しい生き物だ。見ているだけでのどかな気持ちにさせてくれる」と笑顔の西谷さん。出荷頭数が安定し、「多くの人に羊肉のおいしさを知ってもらいたい」と意気込む。

〈写真:放牧場内で羊に餌を与える西谷さん〉

収入保険・私の選択 圃場を守り農業続けられる【1月4週号 山口県】

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山口市  高橋 克己〈たかはし・かつみ〉さん(75)
 収入保険には、制度が始まった2019年に農業共済組合の職員の勧めがあり、青色申告をしていたので、すぐに加入することができました。加入した年にキャベツの価格が低下して減収しました。野菜価格安定制度の生産者補給金等交付に比べ、保険金等の受け取り時期が翌年になる上、保険料積み立ての支払い負担が大きく、「収入保険に加入して良かったのかな」と不安になったこともありました。けれど、つなぎ資金制度がありましたし、収入保険に加入していて「本当にありがたかった」と感じています。今は圃場の基盤整備で水稲は栽培していませんが、20年はトビイロウンカの被害を受けました。ここ2、3年は、キャベツの価格低下があったほか、ひょうや大雨による浸水でタマネギが腐り収穫できませんでした。それでも過去5年の実績を基に設定された農業収入が基準となり、自然災害による収入減少を補てんすることができました。22年は2枚目の圃場にキャベツを植え付ける前日、私が脳梗塞になりました。植え付け準備をしていたのに、計画面積の5分の1しか作付けできませんでした。病気になって農業をやめることを考えましたが、「またトラクターに乗りたい。農業がしたい」という一心でリハビリを頑張りました。70歳を節目に生命保険の加入ができなくなっていたので、収入保険のおかげで今も農業を続けることができています。体が動くうちは、妻と一緒にこれまで作ってきた圃場を守り、農業を続けていきたいです。
 ▽キャベツ65アール、タマネギ5アール (山口支局)

〈写真:「おいしいキャベツになりました」と話す克己さん(右)と妻・きみ子さん(72)〉

複合土壌菌と植物残さで肥料 生育促進と土壌改良に【1月4週号 岩手県】

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 【岩手支局】盛岡市のエスプラスカンパニー株式会社は、2023年10月に複合土壌菌群(BUIK〈ビューイック〉菌)を使った「BUIK肥料」の製造を開始。一般向けに販売するほか、山ブドウを栽培する自社農園に施す。この肥料は、50種類以上の土壌菌で構成されたBUIK菌と米ぬか、食物残さを高温発酵させて製造。品目を問わず使用でき、作物の生育促進や土壌改良に有効とされている。化学肥料による環境負荷を低減できるため、事業化に可能性を感じた堀内繁喜代表取締役(55)は、国の補助金などを利用。宮古市新里地区に1日当たり540キロの肥料を製造できる工場を整備した。同地区産の山ブドウのおいしさに魅力を感じた堀内代表は、12年にジュースとワインの商品化を企画し販売を始めた。22年に開園した自社農園では、製造した肥料とカキ殻だけを施用して栽培した山ブドウを使った商品の製造を目指す。堀内代表は「今年は肥料の販売先確保が目標。多くの方に知ってほしい」と意気込む。

〈写真:袋詰めした製品を手に堀内代表(右)と息子で肥料製造を担当する堀内結斗さん〉

野菜50品目、直売所で試食会 高級料理店など50店舗と取引【1月4週号 京都府】

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 【京都支局】久御山町で西村農園を営む西村九三男〈にしむら・くみお〉さん(66)は、約2ヘクタールでナスを中心に年間約50品目の野菜を栽培。農産物直売所で試食会を開催するほか、写真共有アプリ「インスタグラム」を活用して顧客獲得につなげている。「農産物直売所でお客さまから『西村さんの野菜、おいしかったわ』と言っていただけるのが本当にうれしい。もっとおいしい野菜を作ろうと励みになる」と笑顔で話す。西村さんは農業に携わって44年、10代以上続く農家だ。就農当初は軟弱野菜、ナス、ダイコンなどを栽培していたが、「もっともうかる農業をするために」と考え、約15年前から多品目を手がける。ナスは「賀茂なす」「ふわとろなす」「フルーツナス」など6種類、キャベツは紫キャベツなど5種類、ダイコンは5種類、カリフラワーは3種類、ほかにはロマネスコ、「紅菜苔(こうさいたい)」など珍しい品目も栽培する。出荷先の農産物直売所3カ所では、試食会を年間4~5回開いて買い物客にアピール。直売所で西村さんの野菜を手にした料理人から連絡が直接入ることもあるという。飲食店との取引は京都府内の高級レストランなど約20店舗と、府外の約30店舗だ。インスタグラムに情報を投稿するのは妻の奈津子〈なつこ〉さんの担当。同農園は「久御山町産業大使」を委嘱されていることから、町内産の野菜の魅力も掲載する。「農業はやり方次第でもっともうかる。農業の魅力や野菜のおいしさを広く伝え、多くの若者が就農してくれれば」と力強く話す。

〈写真:「これからも農業の魅力を伝えていきたい」と西村さん夫妻〉

コーヒー増産に挑戦【1月4週号 大分県】

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 【大分支局】日田市天瀬町で、コーヒー豆のハウス栽培に挑戦する佐藤貴博さん(31)。「知人から紹介されて、周りで誰も作っていないので、チャレンジすることにしました」と約4年前に栽培を始めた。コーヒー豆の九州地方での栽培方法は確立されていないため、ノウハウの蓄積に奮闘中だ。「思うように開花しなかったときに、雨季を再現してはどうかと考え、大量に散水してみたところ、うまく開花するようになりました」と話す。現在の栽培面積は約10アールで、400キロほどのコーヒーチェリーが収穫できるという。味の評判は上々で、さらなる増産を目指している。「将来は近くにある温泉に訪れる観光客に飲んでもらい、観光農園化も視野に入れたりしながら、国産のコーヒーを提供していきたいです」と意気込む。

〈写真:コーヒーチェリーを手に佐藤さん〉

防風林「消防団は地域防災力の中核【2024年1月4週号】」

 ▼総務省消防庁は、2023年版消防白書を公表した。特集では、大規模災害や新型コロナ、熱中症などに対応した実績などを記述。小型無人機(ドローン)をはじめ実際の救助活動を踏まえた消防防災体制の整備状況を報告する。
 ▼消防団については「地域防災力の中核」として、一層の充実強化を図る必要性を強調した。減少傾向とはいえ、全ての市町村に設置され、23年4月1日現在で76万2670人の消防団員がいる。消防職員数は全国で16万7861人だ。自然災害の発生を想定すると、地域で暮らし、救命の知識や技術を持つ消防団員の存在は頼もしい。
 ▼また、近年は女性や学生の団員、特定の活動・役割を担う機能別消防団員が増加しており、青壮年の男性主体から幅広い人材が集まる組織に移行しつつあるようだ。不足する団員の補充にとどまらず、地域に根ざした多様な活動の充実なども期待される。
 ▼例えば避難所の運営支援では、女性や高齢者への配慮が後手になるとの指摘もある。女性団員がいれば、女性ならではの困りごとにも素早く対応できるだろう。

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