今週のヘッドライン: 2023年12月 3週号
2023年は、気候変動の影響とされる災害の激甚化や紛争多発など世界的に食料の生産・供給不安が高まった。国内では長引く物価高騰が家計を圧迫。肥料や飼料、燃料など生産コストの高騰・高止まりを農産物価格に十分反映できず、農業経営は厳しい状況が続く。持続可能な国内生産の確立を基本にした食料安全保障の強化が不可欠となる中、政府は過度な輸入依存からの脱却に向けた構造転換などを軸とした「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」を策定。来年の通常国会への改正案提出を視野に食料・農業・農村基本法の見直しと関連施策の具体化検討を加速させている。この一年の農業・農政をめぐる情勢を話し合った。
農林水産省は6日、自民党農地政策検討委員会に農地の総量確保に向けた国の関与強化と、食品事業者などによる農地所有適格法人への出資制限を緩和する特例創設を柱とする農地制度の見直しの方向性を提示した。次期通常国会への農地関連法の改正案提出を視野に検討を加速する。議員からは違反転用防止などへの迅速な対応や人・農地の受け皿となる法人の経営基盤の強化を求める発言が上がる一方、特に出資制限の緩和については農業者の決定権弱体化など懸念の声も相次いだ。現場実態に即した実効性ある制度設計が求められる。
2024年の収入保険の加入申請期限が、個人経営体や事業年度が1月開始の法人経営体は12月末に迫っている。収入保険は自然災害や価格低下だけでなく、農業者のけがや病気などあらゆるリスクに対応して収入減少を補てんする。24年からは、気象災害による補償金額の低下を緩和する特例や、積立金がなくても保険だけで9割補償をする方式を導入。青色申告実績1年分で加入できるようになり、より充実した仕組みになる。加入を希望する農業者は必ず年内に手続きをしてほしい。
世界の食料生産・供給が不安定化する中、政府は不測時の食料安全保障の確保へ法制化も視野に国内の体制整備を急ぐ方針だ。特に世界人口の増加や新興国の経済発展などで食料需要は増大する一方、地球温暖化による災害の激甚化をはじめ、家畜伝染病・病虫害の拡大や地政学リスクの顕在化、輸出規制の広がりなど食料需給の不安定化要因は多様化・深刻化している。国内生産の基盤強化を基本に万全な"備え"が欠かせない。食料供給を脅かすリスクの状況などを各種資料を基に解説する。
体の状態を知り、病気の早期発見などにもつながる健康診断。定期的な受診を忘れないでほしい。毎月4週号のすまいる欄で「診察室」を担当する佐久総合病院の夏川周介名誉院長に健康診断の必要性を解説してもらう。
中央畜産会は11月29日、2023年度「全国優良畜産経営管理技術発表会」を開催した。全国の推薦事例から選出された8事例を審査し、最優秀賞の農林水産大臣賞4点、優秀賞4点を決定した。大臣賞受賞者から、酪農・肉用牛飼養の3事例を紹介する。
▼わが家の鉢植えのモミジがようやく紅葉した。今年は夏の尋常ではない暑さで根を傷めたか、葉先が枯れ、痛々しい。気象庁の生物季節観測情報では、東京のカエデの紅葉日(標本木の大部分が紅葉)は11月29日。平年比で1日、昨年比で3日遅い程度だった。しかし、北海道、東北では十数日も遅れている観測地点が多く、異常を実感する。
▼気象庁によると、今年は春(3~5月)、夏(6~8月)、秋(9~11月)と3季節連続で平均気温の高温の記録を更新した。要因の一つである日本近海の平均海面水温も夏以降2季節連続の記録更新という。この"海の温暖化"は、魚の生息域を大きく変えており、各地の名産魚種の漁獲量が激減して安定供給が難しくなるなど混乱が生じている。
▼国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)がアラブ首長国連邦のドバイで開かれている。産業革命以前と比べ平均気温上昇を2度以内に抑えるとしたパリ協定の目標達成に向け、成果を検証して推進策を協議し、気候危機への対応強化を目指す。ただ、12月1日の首脳級会合後も対策を加速する合意形成の着地点が見えない状況だ。
▼今年は北半球全体が高温熱波に覆われ、森林火災など災害も多発。国連のグテーレス事務総長は「地球沸騰化の時代が到来した」と早急な行動を訴えた。しかし、拡大する戦争・紛争の影響もあってか、関心も薄れているかのようだ。国際社会の結束が最も必要な時期であるはずなのに。