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今週のヘッドライン: 2023年12月 1週号

NOSAI協会が都内で全国NOSAI大会(1面)【2023年12月1週号】

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 NOSAI協会(全国農業共済協会)は11月28日、東京都内で「『未来へつなぐ』サポート運動令和5年度全国NOSAI大会」を開く。近年の国際情勢や円安などの影響で輸入に依存する穀物や生産資材の価格は高止まりし、多くの農業者が打撃を受けている。さらに今年も各地で自然災害が発生し、夏の異常高温による被害も目立つ。大会には全国のNOSAI関係者が集まり、収入保険と農業共済で農家経営を強力に支えていくことを確認。すべての農家に農業保険によるセーフティーネットを届ける全国運動に組織を挙げて取り組む旨を決議する。

(1面)

畜産物価格決定へ議論始まる 危機脱却の単価確保を(2面・総合)【2023年12月1週号】

 農林水産省は11月22日、食料・農業・農村政策審議会畜産部会を開き、12月中旬をめどとする2024年度畜産物価格と関連対策の決定に向け、畜産・酪農情勢や政策課題などを議論した。酪農関係の委員からは飼料価格の高止まりなど生産コストの増加や生乳の需給緩和など厳しい現状を訴える発言が続出。枝肉や子牛価格の低迷などが続く肉用牛関係の委員からは、牛肉の消費拡大や肉用子牛対策の強化など再生産可能な環境整備を求める声が相次いだ。畜産・酪農の危機的状況からの脱却と経営継続が見通せる単価水準の確保とともに、営農意欲を喚起し、実効性ある対策の構築・実施が求められる。

(2面・総合)

野菜価格安定制度との同時利用 24年新規加入者まで可(2面・総合)【2023年12月1週号】

 農林水産省は11月22日、自民党農林関係合同会議で2024年の収入保険新規加入者は野菜価格安定制度と2年間の同時利用が可能とする案を示し了承された。既に収入保険に加入している22年、23年加入者は同時利用期間を3年間に延長する。ただ、野菜価格安定制度から収入保険への移行を促進する目的をおおむね達成したとして、同時利用は24年の加入までで終了し、25年以降の新規加入者には適用しないとした。

(2面・総合)

収入保険 2024年の加入申し込み期限迫る(3面・収入保険)【2023年12月1週号】

 収入保険は農業者の経営努力で避けられないあらゆるリスクに対応して収入減少を補てんする。個人経営体や、事業年度が1月開始の法人経営体は2024年の加入申請期限が12月末に迫っている。24年からは「気象災害特例」の新設など、より充実した仕組みに見直される。激甚化、頻発化する自然災害などに備え、加入を希望する農業者は今年中の加入手続きが肝要だ。

(3面・収入保険)

田んぼから魅力発信 自社産米で菓子など(6面・すまいる)【2023年12月1週号】

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 「集落の良さを維持して未来につながる道づくりがしたい」と話す、栃木県那須町のTINTS株式会社代表取締役の井上敬二朗さん(44)。米専門ブランド「稲作本店」として米を生産し、米粉菓子やポン菓子など加工品の製造販売を行う。米の需要開拓をしながら地域に人を呼び込み、地方の魅力を伝えたいとしている。

(6面・すまいる)

〈写真:オリジナル商品を手に敬二朗さんと真梨子さん〉

片屋根・連棟型ハウス 換気良く高強度(9面・営農技術・資材)【2023年12月1週号】

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 農研機構西日本農業研究センターと香川県農業試験場は、主に夏秋作向けの「片屋根・連棟型ハウス(NNハウス)」を開発した。換気性が良く暑熱抑制効果が高いため、換気扇や遮熱資材の展張をしなくても、植物の高温ストレス回避や作業者の負担軽減を図れる。構造材は安価な建設足場用の単管パイプを利用し、強度が高く災害に強い。設置費用はダブルアーチ型パイプハウスとほぼ同じだ。2021年度から香川県内で導入され、施設アスパラガスを中心に約2.4ヘクタールで普及している。

(9面・営農技術・資材)

〈写真:眞鍋さんが昨年建てた3連棟タイプのNNハウス〉

青パパイアを新たな特産へ オーナー制度を導入、人を呼び込む契機に【12月1週号 石川県】

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 【石川支局】「青パパイアを七尾の新たな特産にしたい」と話すのは、七尾市下町で農業を営む野見弘〈のみ・ひろし〉さん(80)。2021年に、15アールの畑で青パパイアの苗木10本を試験的に育てたところ手応えを感じ、昨年から苗木を100本に増やし本格的に栽培・収穫を始めた。地元のスーパーや道の駅の直売所に出荷するほか、オーナー制度を導入している。野見さんが栽培するのは、茨城県の農園が開発した「サンパパイヤ」。パパイアは、通常は熱帯地域で育つが、サンパパイヤは寒冷地でも育つように改良されている。青パパイアはシャキシャキとした食感で、味にくせがない。サラダのほか、煮物や天ぷらなどの料理に幅広く活用できる。タンパク質・糖分・脂質の三大栄養素を同時分解するパパインと呼ばれる食物酵素を豊富に含み、健康野菜として注目されている。今年は昨年より40本増やして140本の苗木を植えた。4月に定植した後、適宜に追肥し、10月中旬から11月にかけて収穫。1本の木で15キロから20キロほどの実が取れるという。1年1作のため、収穫を終えた木は、すき込んで堆肥として活用。米ぬかや鶏ふんを土に混ぜ、春まで熟成させる。青パパイアは生でも食べられるので、農薬は使わない。収穫するときは、実に指紋がつかないように手袋を着用する。「特別な技術は必要ないが、養分たっぷりの土なので雑草は多い。除草は手作業で小まめにする」と野見さん。オーナー制度では、現在県内外の28人が登録している。木のそばに登録者名が書かれた立て札を置き、実ができたら収穫を体験してもらう。青パパイアの生育の様子は写真共有サイト(インスタグラム)で定期的に発信している。「オーナー制度は、収穫時の労力軽減や、登録者が生育を見守りに通うことで人を呼び込むきっかけとなる」と笑顔を見せる野見さん。「青パパイアは育てやすく、北陸では珍しいため話題性もある。地域の農地を活用して、栽培本数を増やし、収穫量を安定させたい」と意気込む。

〈写真:実りを迎えたサンパパイヤ。「これからの季節、おでんに入れるのもおすすめです」と野見さん〉

収入保険・私の選択 幅広い補償が加入の決め手【12月1週号 北海道】

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 【北海道支局】2021年1月に農業共済から収入保険に切り替えた竹内章郎〈たけうち・あきお〉さん(49)。今金町で水稲13.5ヘクタール、種子バレイショ・白大豆・小麦を5.3ヘクタール、園芸施設でミニトマトを16アール栽培している。竹内さんは「当初は収入保険の加入に迷いがありました。品目ごとに補償する農業共済と比較し、収入保険は全体の農業収入を基準とすることから、数品目を作付けしている場合に保険の対象となることが難しいのではと感じていました」と話す。NOSAI職員の説明や収入保険に加入する農家の話を聞き、けがや病気で農作物の収穫が困難となった場合に補償されることや、過去に台風で園芸施設に大きな被害を受けた際に内作物の補償が自分が思っていたほどの額ではなかったため、考え直したという。「収入保険の初年度の保険料は積立金の負担が大きいですが、保険金を受け取らなければ翌年度から積み立てる必要がなくなることから、それほど負担にはならないです」。園芸施設の被害を契機にホウレンソウや小カブの栽培から高収益のミニトマトへ転換した。「ミニトマトが全体の収入の中で大きな割合を占めるため、園芸施設共済の内作物の補償では不安を感じていました」。22年に農作業中に左膝十字靭帯〈じんたい〉を損傷し、入院・手術を余儀なくされた。ミニトマトは家族で収穫できたが、水稲と畑作物は作業委託ができなかったため、農地の賃貸で対応した。「まさか自分がけがをするとは思わなかったです。収入保険に加入していなければ、今ごろどうなっていたか分からないです」と竹内さん。「基盤整備で作業効率が良くなったので、けがに気を付けて経営面積をもう少し広げていきたいです」と意気込む。

〈写真:「収入保険は幅広い事故に対応し、補償が手厚いと感じました」と竹内さん〉

播種後1~2週間で収穫 耕作放棄地活用「ひげにんにく栽培」【12月1週号 新潟県】

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 【新潟支局】長岡市西川口の株式会社越後808(広井歩代表取締役)は、ハウス3棟で「ひげにんにく」を栽培している。同社は紐〈ひも〉の製造販売事業を手がける信越工業株式会社(山田宏和代表取締役)の農業部門の子会社として2011年3月に設立された。04年の中越地震以降、川口地域で過疎化が進み耕作放棄地が増えていた。何とかしたいという声が社内で多かったことから、農業への参入を決めたという。広井代表は「収益性や栽培特性を考え、ひげにんにくにたどりつきました」と当時を振り返る。ひげにんにくは、ニンニクから根と芽を伸ばしたもの。肥料や農薬は使わない軽石水耕栽培で、播種後1~2週間で収穫できる。年間を通じて栽培が可能だ。「芯まで加熱すると甘くマイルドになります。ニンニクらしい味や香りがありながら、においは弱めで気になりにくいと思います」と広井代表。短期間で収穫できる反面、発芽と温度管理が難しい。特に春から夏は発芽率が低いため、収穫量を確保するのに播種量を多くするが、変動が大きく安定した生産が課題だ。広井代表は「販路を全国に広げたいですね。加工品も含め、インターネット販売で個人のお客さまに注目していただければ」と話す。

〈写真:収穫したてのひげにんにく〉

4経営体が協働 タマネギ産地化へ共同体制に活路【12月1週号 岡山県】

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 【岡山支局】4経営体で構成する「小田川鬼おん」は、備中エリアでタマネギの産地化を目指している。生産から出荷まで共同体制が各経営体の収益につながった。同団体の結成は2021年。矢掛町の矢神毎戸〈やがみまいど〉営農組合、笠岡市の奥山〈おくやま〉営農組合、井原市のファーム県主〈あがたぬし〉の3農事組合法人と笠岡市の守谷謙祐〈もりや・けんすけ〉さん(46)が所属する。結成当時の栽培規模は約3ヘクタールだったが、現在は約7ヘクタールに拡大した。タマネギ栽培は多くの人手が必要になる。より効率的な生産出荷体制の必要性を感じた矢神毎戸営農組合の組合長・高月周次郎〈たかつき・しゅうじろう〉さん(73)は、共通の悩みを抱える法人に声をかけ同団体を結成。各経営体の労働力共有が可能になった。作業効率を上げるため、大量集荷が可能な鉄コンテナを導入した。20年にはJAの支援で調製・選別用のタッピングマシンを設置し、機械作業に移行。省力化に取り組みながら、同団体内の選別・出荷体制を整えた。農業普及指導センターなど、関係機関との情報共有に無料通話アプリ「LINE」のトーク機能を活用する。気象や病害虫情報、防除方法など、栽培管理に当たっての注意喚起が共有され、法人同士の連絡網にも使う。奥山営農組合理事の有本正義〈ありもと・まさよし〉さん(78)は「連絡網のおかげで、圃場の情報が各法人とすぐに共有できる。栽培管理のことも関係機関に相談しやすくなった」と話す。同団体は若手農家の勉強の場としても機能する。守谷さんは就農3年目で、ファーム県主の代表・森岡知義〈もりおか・ともよし〉さん(50)は2年目。栽培管理に不安を抱えていたが、ベテラン構成員の教えを受けて自信を付けた。森岡さんと守谷さんは「先輩方がとても頼もしい。農業全般の指導を受けられてありがたい。学ぶことが多く勉強の毎日だ」と感謝する。

〈写真:定植後の根の活着を良くするため、タマネギ苗は約20センチに切りそろえる〉

防風林「品種の特性を生かすのは栽培技術【2023年12月1週号】」

 ▼米育種の研究者に「コシヒカリ」を超える品種を育成する場合、どんな特性が鍵になるだろうと尋ねたことがある。その研究者は少し考えて「今は粘りの強い米が好まれているが、長い時間軸で考えれば消費者の好みも変化して米に求められる特性も変わるだろう」と述べた。ただ、特性を特定するのは難しいとした。20年以上も前の話だが、コシヒカリを超えたといえる品種は今も登場していない。
 ▼今年の記録的な猛暑の影響で、新潟県産コシヒカリの等級が9月末時点で1等は3.6%となり、高温耐性の低さが指摘された。だが、2等まで含めると46.3%になる。新潟県産の高温耐性品種は2等以内が9割というが、1等が15.9%の品種もある。異常といえる高温に加え、渇水もある中で農家が肥培管理を頑張った結果だろう。
 ▼この夏は全国的に高温で推移したけれども、気象経過は地域ごとに異なり、同じ地域でも地形や移植時期の違いで危険な時期に遭う可能性も違ってくる。他県産コシヒカリの1等比率をみても数%から100%までばらつきがある。例え高温耐性品種でも特性頼みだけで十分な力は発揮できない。
 ▼本紙で「農を拓いた先人たち」を連載した西尾敏彦氏は「コシヒカリの奇跡」と題して育成・普及の過程を紹介。食味は良いが倒伏しやすくいもちに弱いため育成中の評価は低かったが、早期栽培向けから普及し、試験場と普及員、さらに農家の努力で各地方に適した栽培技術を作り上げたと結んだ。今後、水稲品種に高温耐性が求められるのは確かだろうが、栽培技術の確立には農家の工夫や努力が欠かせない。

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