今週のヘッドライン: 2023年11月 4週号
中山間地にある浜松市天竜区春野町の若手農家3人が、大学生ボランティアらと連携して「春野耕作隊」として地域活性化を図る。「若い人が町内に住み続けられる仕組みをつくりたい。過疎化の地域だからこそ、楽しんで新しい取り組みに挑戦する」と代表の伊澤光興さん(40)。耕作放棄地を再生した畑30アールなどで共同作業により野菜を栽培し、学生たちには農産物をPRするシールなどのデザイン制作を依頼。地域づくりを経験できる場をつくる。約10年間の活動で、卒業生など地域内外の応援者を増やしている。
〈写真:若手の連携で過疎化に立ち向かう(右から伊澤さん、中村さん、川西さん)〉
農林水産省は10日、自民党農林関係合同会議に水田の畑地転換を推進する「畑地化促進事業」の2024年産支援単価を示し了承された。「畑地化支援」の単価は野菜など高収益作物が23年産から3万5千円引き下げ10アール当たり14万円とし、麦・大豆など畑作物は23年産と同額の14万円に据え置く。当初はいずれも10万5千円に減額する方針だったが、党内の反論を踏まえ修正した。世界的な食料生産・供給リスクが高まる中、海外依存の高い麦・大豆などの生産拡大は食料安全保障の確立に向けた重要な課題だ。一方、畑地化の推進は水田を基盤とした地域営農の将来像にも関わる。必要財源の安定確保を含め、畑地化を進める生産現場に寄り添った施策の構築が求められる。
近年は大雨や台風、地震、大雪など甚大な自然災害が相次ぎ、住宅など建物にも被害が発生している。火災などの事故に加え、自然災害を含む幅広い被害を補償する建物総合共済に加入し、万全に備えてほしい。建物総合共済では2022年度に103億7千万円の共済金を支払い、被災農家の生活再建を支えた。支払い原因別に見ると、地震が約51億円、風水害が約21億円、雪害が約17億円など自然災害は約9割を占めている。建物総合共済の仕組みについて、稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。
インターネット検索の件数推移や関連ワードを分析すると、消費者に人気の品目や食べ方のトレンドが見えてくる。長年、農産物の消費動向を分析しているオイシックス・ラ・大地ロジスティックス本部の阪下利久氏に、野菜について2023年の注目ワードと、来年以降に想定されるトレンドを解説してもらう。
11月22日は、「いい夫婦(ふうふ)の日」。パートナーへ日ごろの感謝や愛情を込めて花を贈ってはいかが。一般社団法人花の国日本協議会でプロモーション推進室長を務める小川典子さんに、おすすめの旬の花を花言葉や魅力、贈り方などとともに教えてもらった。
第23回全国山羊〈やぎ〉サミット静岡大会が3~4日、静岡県立農林環境専門職大学・短期大学部(磐田市)で開催された。「山羊の魅力・多様性」をテーマに同実行委員会と全国山羊ネットワークが主催した。ヤギネットワークさんいん(島根県)の青戸貞夫氏による基調講演「新たな時代を切り開く『山羊の公益的機能』」のほか、ヤギの多様な活用法として「乳」「肉」「皮」「農福連携」などの事例を報告。飼育者や技術者、研究者、獣医師など全国の関係者が意見を交換した。
【鳥取支局】町の面積の95%を森林が占める自然豊かな若桜町。同町にある有限会社若桜農林振興の小林正樹〈こばやし・まさき〉社長(62)は、年々増える耕作放棄地対策として、2019年からエゴマ、翌年からは水稲栽培に取り組む。町内で収穫したエゴマを全量買い取り、えごま油などを製造販売し、地域の活性化につなげている。同町は、40年ほど前までは特産品としてエゴマやタカキビなどの穀物を使った餅を生産するグループがあった。グループは解散したが、地元固有のエゴマの種は残っていた。エゴマ栽培が復活したのは13年前。地元農家の小林誠さんが中心となり、種を受け継ぎ試験的に栽培し、町外の搾油施設で搾油したところ、良質な油が生産できた。これを機に、同町の要請を受け、農林振興の事業として本格的な取り組みが始まった。現在は約1ヘクタールを栽培している。19年に加工施設「エゴマ工房」が開設されたことで、町内でエゴマの栽培から加工までが可能になった。収穫したエゴマは、低温圧搾したえごま油、実を焙煎〈ばいせん〉した「焙煎えごま」に加工。自社のホームページや、道の駅若桜などでの販売に加え、ふるさと納税の返礼品など地元産業の一翼を担う。しかし、同町は高齢化や過疎化の影響で新規就農者や農業後継者が不足し、耕作放棄地が増加している。エゴマは、獣害対策が不必要で、栽培にかかるコストが比較的少ないため、耕作放棄地の対策として優れているという。現在、同町内のエゴマ生産者は28戸、栽培面積は約4ヘクタール。エゴマ栽培に適した農地を確保し、生産規模を拡大していくことが鍵となる。小林社長は、今後は新商品を開発し、需要を高め、供給量を増やしていきたいという。「耕作放棄地を増やさないためにも、エゴマの生産から加工、そして販売をすることで町の活性化につなげていければ」と話す。
〈写真:エゴマの生育状況を確認する小林社長〉
広島県北広島町 農事組合法人小笹〈こささ〉
〈農事組合法人小笹〉代表理事=泉繁樹〈いずみ・しげき〉さん(76)。水稲17.76ヘクタール、WCS(発酵粗飼料)用稲5.3ヘクタール、ソバ約3ヘクタール
〈写真:ツインモアーの横で「省力化が図れて、みんなが喜んでくれる機械を導入しています」と角田さん〉
【北海道支局】JA新はこだて酪農生産部会(金子新市部会長=57歳、会員170人)はこのほど「高校生に牛乳を届けよう!」と銘打った牛乳消費拡大企画を実施。渡島・檜山管内21の高校を対象に200ミリリットルの牛乳約6700個を無償配布した。牛乳は小学校から中学校までは学校給食で提供されるが、高校生になると給食がなくなり、飲む機会が少なくなっているため企画されたもの。同部会の各支部会では、これまでも町村単位や病院などに牛乳の無償配布を実施していたが、今回は配布範囲を拡大した。牛乳の無償配布は2023年2月に2校で先行して実施。10月23~26日の期間で19校へ配布を終えた。北海道函館西高校(古御堂徹校長)では、10月26日の昼休みに金子部会長が「牛乳は体に良いので、たくさん飲んでください」とあいさつし、各クラスの代表に教員分も含め合計757パックを手渡した。同校1年の渋谷涼太さんは「牛乳は今でもたくさん飲んでいます。今日の牛乳は生産する酪農家の方から直接話を聞いた後に飲んだので、いつも以上においしいです」と元気に話す。
〈写真:金子部会長(左)から牛乳を受け取る北海道函館西高校の代表生徒〉
【福島支局】須賀川市で飼料用米17ヘクタールを栽培する横川良雄さん(67)は、中古の2トンダンプカーを「もみ殻トレーラー」に改造した。もみ殻を圃場へ散布する際に使い、運搬作業の時間短縮や労力軽減に取り組む。全面積で多収性の飼料用米品種を栽培する横川さんは、収量を求め、稲の倒伏を何とかしたいと、稈を丈夫にする方法を模索。もみ殻に含まれるケイ酸が良いと知り、5年ほど前から圃場にまいている。トレーラーは、市販の農機だと積載量が少なく、運搬回数が多くなるため、中古のダンプカーを購入。ダンプカーは圃場条件によっては走行できないため、トラクターでけん引できるように改造した。キャビンとエンジンを外し、シャーシとダンプは再利用。シャーシには、けん引ヒッチを取り付け、荷台は5立方メートル積載できるように、荷台を囲むあおりをかさ上げし、油圧関係を加工した。トラクターは、ぬかるみ対策としてダブルタイヤに変え、外部油圧の取り出し(ダンプ用油圧シリンダー昇降用)と電装関係の配線を施した。油圧ホースは地面に触れないよう、けん引ヒッチに支柱を溶接してつるす。もみ殻の散布時は荷台を上げ、後部のあおりが5センチ程度開くようチェーンで調整。10アール当たり1.5台分を目安に、刈り取り後の株が見える程度に散布する。横川さんは「以前に比べ稲が倒伏しなくなった。続けたい」と効果を実感。横川さんと圃場が近い水稲農家の池田多可志さんは「この量を1回で運び、散布が早く、圃場からすぐいなくなる。時間と燃料費の節減になる」と驚く。
〈写真:「もっと改良を重ねたい」と横川さん〉
▼「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」の選定結果が10日、公表された。今回が第10回で全国から29地区が選ばれ、累計の選定数は315となった。また、過去の優良事例から、選定後に著しい発展性が見られ全国の模範になると評価された「仙北市農山村体験推進協議会」(秋田県)を特別賞に決定した。
▼同協議会は第3回で選定された。農山村宿泊体験受け入れ団体と体験指導団体、サポート団体の活動を一本化し、農家民宿のレベルアップやフェイスブックなど交流サイト(SNS)を活用した積極的な情報発信を展開。教育旅行者数や外国人の農家民泊数を伸ばした成果などが評価された。
▼選定後はワンストップサービス体制を構築し、協議会を法人化。コロナ禍でも独自に感染症ガイドラインを定めて受け入れを継続した。キャッシュレス決済の導入やリクエスト型の予約手配への対応、ネーティブスピーカーの配置など受け入れの内容を充実させており、ホームページも日本語と英語に対応し閲覧者数が大幅に増えている。
▼この選定は、農林水産省と内閣官房が連携し、農山漁村の地域資源を活用し、地域の活性化や所得向上につながる事例を選び全国に発信して横展開を促すねらいがある。ただ、特にこの数年は内外の情勢が大きく変化した。選定地域がどのように困難に対応したのかは多くの人の関心事項だろう。地域の宝を掘り起こし、次世代につなぐために、そうした情報の共有化も大切だ。