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今週のヘッドライン: 2023年10月 2週号

農家民宿 再生空き家でお試し経営(1面)【2023年10月2週号】

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 石川県能登町の周辺約50戸で構成する農家民宿群「春蘭の里」は、長年かけて培った教育旅行・観光の受け入れ体制や集客力を基盤に、移住・定住を加速させている。代表の多田真由美さん(24)は「農家民宿は暮らしと仕事の場が一体となっているのが特徴。お試し移住・お試し経営で、一歩踏み出すハードルを下げていきたい」と話す。移住希望者などが長期滞在できる宿泊施設を備えるほか、空き家を農家民宿に整備して負担を少なく運営が始められる仕組みを整えた。若手の関心が高いとされる地方移住の受け皿となり、新たな地域づくり事業の創出や農家民宿の継承などを図る。

(1面)

〈写真:カフェ開設に向け、情報発信や草刈りの手伝いなど話し合う。左から多田さん、駒井さん、加藤さん〉

不測時の食料供給確保へ 増産要請・指示の考え方示す(2面・総合)【2023年10月2週号】

 農林水産省は2日、「不測時における食料安全保障に関する検討会」の第3回会合を開き、食料供給の確保対策の論点を示した。事態の深刻化防止を主眼に、供給量が不足する恐れの段階から深刻度に対応した措置を円滑に講じるとした。生産者など事業者に対応を求める際は、自主的な取り組みを促す「要請」を基本とし、特に必要と認められる場合に限り「指示」を行う。対象品目には小麦や食用大豆、牛乳・乳製品などを挙げた。政府は不測時の食料供給確保に必要な関連法案を来年の通常国会に提出する方針だが、生産者など事業者が不安なく取り組めるよう現場の実情を踏まえた丁寧な制度設計が求められる。

(2面・総合)

生乳生産量3.2%減 Jミルクが需給見通し(2面・総合)【2023年10月2週号】

 Jミルクは9月29日、2023年度の生乳と牛乳・乳製品の需給見通しを更新した。全国の生乳生産量は前年度比3.2%減の729万5千トンとし、前回見通し(7月28日公表)から9万8千トン下方修正した。離農の増加や生産抑制の取り組みに加え、今夏の記録的な猛暑の影響を反映した。一方、8月からの生乳取引価格引き上げに伴う製品価格の値上げの影響で、消費も減退しており、Jミルクは「需給動向はこれまで以上に不透明感が強い」と説明。飲用不需要期の冬季に向け、牛乳・乳製品市場の活性化と乳業工場の稼働最大化など全国協調での需給調整や乳製品製造の準備を進める必要性を強調する。

(2面・総合)

電子取引情報のデータ保存2024年1月から義務化(3面・ビジネス)【2023年10月2週号】

 2022年に改正された電子帳簿保存法により、24年1月から「電子取引に関する電子データ保存の義務化」がスタートする。メールやインターネットを介してやりとりした取引情報のデータ保存が必須となり、規模にかかわらず農業者を含めた全ての事業者に対応が求められる。国税庁の特設サイトから改正制度のポイントや手続きなどについて整理した。

(3面・ビジネス)

一輪車の"楽押し" 力をかけずにラクラク運搬(5面・すまいる)【2023年10月2週号】

 一輪車で坂道やぬかるみをスイスイ――。岩手大学滝沢農場では、農業資材や収穫物などの運搬に使う一輪車をより軽い力で押せる裏技「楽押し」を広めている。方法は、取っ手にベルトなどを固定するだけ。農研機構東北農業研究センターとともに考案した。岩手大学農学部の由比進教授に、方法や注意点を教えてもらう。

(5面・すまいる)

自脱型コンバイン機内清掃のポイント(7面・営農技術・資材)【2023年10月2週号】

 水稲の収穫で品種を切り替える際や収穫を終えて格納する前は、自脱型コンバインの丁寧な機内清掃が欠かせない。コンタミ(異品種混入)のほか、故障の原因にもなるためだ。農研機構農業機械研究部門の荒井圭介研究員に清掃のポイントを取材した。

(7面・営農技術・資材)

片面紫蘇の残さを活用 ボカシ肥料生産で提携【10月2週号 岩手県】

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 【岩手支局】シソ科の一年草「片面紫蘇〈しそ〉」は宮古市川井地区の特産品。同市川内の株式会社川井産業振興公社(桐田教男社長、以下=川井振興公社)は、片面紫蘇を加工する際に出る葉と茎の搾りかす(以下=残さ)を、肥料生産を手がける岩泉町の一般社団法人岩泉農業振興公社(中居健一理事長、以下=岩泉農業公社)へ無償提供。昨年からボカシ肥料の原料として利用する。片面紫蘇は葉の表面が緑色、裏面が鮮やかな赤紫色で、香りの良さが特徴だ。同地区では、20人の生産者が8.9ヘクタールで栽培し、今夏は130トンを収穫した。片面紫蘇を使った加工品を製造・販売する川井振興公社は、片面紫蘇を煮出して圧搾し、抽出した原液をジュースに加工。圧搾後の残さは雫石町の処理施設へ運んで廃棄処分していたため、運搬にかかる費用と時間が課題だった。肥料を生産する岩泉農業公社の杉山明弘さんは、植物性の原料を利用した新たな肥料の開発を検討する中で、片面紫蘇の残さに着目。川井振興公社から提供された残さを利用したボカシ肥料を考案した。5トンの残さを使い、昨年から生産に取り組む。残さに豚ぷん30トンや米ぬかなどを混ぜ合わせ、堆肥舎で約4カ月間熟成させる。豚尿を加えて水分量と温度を調整するほか、重機で切り返して空気に触れさせ、微生物による発酵を促す。生産したボカシ肥料は、リン、カリなどの成分のほか、微生物が作り出した酵素を多く含み、ジャガイモやトマトなどの栽培に適している。川井振興公社の佐々木孝加工部長は「残さを廃棄する費用と運搬の時間が節約された。廃棄処分していたものを有効利用する良い取り組みだと思う」と話す。杉山さんは「ボカシ肥料は化学肥料と比べて成長を促進させる効果に緩効性があり、土壌への負荷が少ないのが利点。今後も川井振興公社さんと協力して生産に取り組みたい」と意気込む。

〈写真:「9月の高温でボカシ肥料の発酵が順調に進んでいる」と杉山さん〉

収入保険・私の選択  農業経営の心強い味方【10月2週号 山口県】

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山口県防府市  山本 友花〈やまもと・ゆか〉さん(32)
 主食用米を自然栽培しています。品種を厳選し、刈った草と稲わらだけを肥料で使用し、農薬は使いません。水稲共済に加入していましたが、2019年に収入保険に加入しました。20年以降はコロナ禍で取引先への出荷量が減少し、保険金等を受け取りました。農作業で忙しいときでも、電話一本で被害申告を受け付けてくれる収入保険は助かりました。収入保険は確定申告後に保険金等を支払うと聞き、必要な支出の補てんに対応できるか不安でした。しかし、保険期間の途中でも、つなぎ資金の貸し付けを受けることができると説明していただきました。農業をなりわいにするために苦労はありますが、収入保険は心強い味方です。農業は、天候によって作業に追われ、力仕事が多いですけれど、楽しいです。農業機械を使いこなして、ドローン(小型無人機)防除も始めました。数年後には圃場が整備される予定なので、栽培面積を増やしていきたいですね。
 ▽佐波川流域集落営農株式会社代表取締役。主食用米7.5ヘクタール、飼料用米7ヘクタール(山口支局)

収入保険・私の選択  魅力ある補償率の高さ【10月2週号 岡山県】

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岡山県総社市  光畑 豊〈みつはた・ゆたか〉さん(76)
 収入保険には制度開始当初から加入しています。NOSAI職員の説明だけではなく、自分で調べましたが、やはり補償率の高さが一番の魅力でしたね。「もしものときにしっかりと支払われる」という安心感は大事です。補償内容は職員と随時相談しています。青色申告はすべて自分で作成しています。貸借対照表が難しいので、控除額は減りますが簡易方式で作成しています。最初だけ税理士に相談して、以降は特に問題なくできていますよ。昨年は小米が多く、単価の下落もあり、収入が大きく減少しました。実際に保険金が支払われると、加入していて良かったと実感しましたね。以前は水稲共済に加入していましたが、収入保険の方が補償が手厚い感覚があります。最近は地域の離農者が多くなり、預かる圃場が増えました。区画整理に取り組み、効率的に機械作業ができるように努めています。できる部分はなるべく省力化をしてメリハリを付けながら、体が動く間は農業を続けていきたいですね。
 ▽水稲「アケボノ」「恋の予感」「ヒノヒカリ」「とよめき」計13ヘクタール(岡山支局)

規格外イチゴでふりかけ開発【10月2週号 福井県】

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 【福井支局】「私たちのアイデアで少しでも農業者の助けになりたいと思った」と話すのは、永平寺町の福井県立大学生物資源学部創造農学科2年・松井咲来さん(19)と五島春季さん(19)。高浜町特産の大粒イチゴ「リッチゴ」の規格外品を利用したふりかけの開発に取り組んでいる。2人は学校からの紹介で野菜などの規格外品を使った商品開発プロジェクトを知り、今年2月に福井市で開催された同プロジェクトに参加。その中で、サイズや傷、完熟しているなどで規格外になる量の多さに驚いたという。「商品開発には興味があり、軽い気持ちで参加したが、生産者の思いや野菜などのおいしさに直接触れ、自分たちのアイデアで生産者を笑顔にしたいと思った」と松井さん。同プロジェクトでリッチゴを試食した五島さんは「イチゴのおいしさだけでなく、その大きさも表現できる新しい形の商品にしたいと考え、ありそうでなかったイチゴのふりかけを思いついた」と振り返る。プロジェクトをサポートする東京都のEXest株式会社代表取締役・中林幸宏さんは「2人は商品から福井への集客を見込んだ開発を目指している。自社のクラウドファンディングなどを大いに活用し、これからもチャレンジしてほしい」と期待する。生産者と協議を重ね、乾燥イチゴと県内産のシュンギクを使ったふりかけの試作品が完成した。松井さんと五島さんは「まだ改良点もあるが、私たちの商品で海外の人が福井の農業を知ってもらうきっかけになれればうれしい」と話してくれた。

〈写真:8月に米国で開催されたマーケティングプロジェクトに参加して「海外の評価を直接聞け、いい経験になった」と話す松井さん(写真提供=松井さん)〉

防風林「家畜の重要伝染病の侵入に備えよう【2023年10月2週号】」

 ▼環境省は4日、北海道で野生のカラスの死骸からA型鳥インフルエンザウイルスの陽性反応が確認されたと発表した。高病原性鳥インフルエンザと確定すれば、本年秋以降のシーズンで初確認となる。農林水産省は同日付で通知を発出。農場の飼養衛生管理徹底と観察の励行による早期発見・早期通報、発生に備えた防疫措置の事前準備などを求めている。
 ▼昨年は過去最も早い10月28日に国内農場で高病原性鳥インフルエンザ1例目が確認され、今年5月末までに26道県で84事例、約1771万羽が殺処分対象になる過去最大の発生となった。鶏卵の生産・供給にも影響が及び価格が高騰する騒ぎもあった。
 ▼高病原性鳥インフルエンザだけではない。豚や牛の重要な伝染性疾病であるアフリカ豚熱や口蹄疫が隣国の韓国や中国で発生。侵入が警戒されている。
 ▼増えているインバウンド(訪日外国人客)の靴や携行品にウイルスが付着し、持ち込まれる可能性もゼロではない。人の動線の乱れや小動物の侵入路ができていないかなど、いま一度農場の飼養衛生管理の点検を。

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