ヘッドライン一覧 購読申込&お問い合わせ 農業共済新聞とは? 情報提供&ご意見・ご感想 コラム防風林

今週のヘッドライン: 2023年10月 1週号

獣害対策 分業で軌道に(1面)【2023年10月1週号】

231001_1.jpg

 和歌山県田辺市上芳養〈かみはや〉の日向〈ひなた〉地区では、ウメとかんきつを栽培する株式会社日向屋と野生獣の食肉処理施設「ひなたの杜〈もり〉」を運営する紀州ジビエ生産販売企業組合が連携し、獣害の減少に成功した。狩猟免許を持つ日向屋の4人がくくりわなを設置し、年間80~120頭のイノシシやシカを捕獲。ひなたの杜の解体担当が現場に出向き、止め刺しと血抜きをして衛生管理に優れた高品質のジビエ(野生鳥獣肉)を供給する。獣害を抑制し、日向屋は耕作放棄地の解消や剪定〈せんてい〉の作業受託など担い手として活躍。紀州ジビエ生産販売企業組合は開設3年目で黒字化を達成した。

(1面)

〈写真:温州ミカンを摘果する。左手前が日向屋の岡本代表〉

農村RMO 先進事例の横展開を(2面・総合)【2023年10月1週号】

 農林水産省は9月22日、農村RMO推進研究会を開き、地域の農用地保全をテーマに農村型地域運営組織(農村RMO)が果たす役割や展開方策などを探った。事例発表ではブランド米作りやスマート農機の導入による省力化に加え、移住・就農予備軍を集める市民農園の開設などの可能性が示された。さらに条件が不利な耕作放棄地に景観作物を植えて人を呼び込む地域づくりの報告もあった。過疎化・高齢化が急速に進む中、農業を核にした地域コミュニティーの維持・発展へ農村RMOへの期待は大きい。今回報告された事例からは地域資源を活用し、地域内外の多様な人材と農業をつなぐ活動に、農村RMOの具体的な姿がイメージされた。その機能が持続的に発揮されるよう先進事例を横展開する支援の充実・強化が求められる。

(2面・総合)

収入保険加入 宮下農相「旗振っていく」(2面・総合)【2023年10月1週号】

 宮下一郎農相は9月22日の会見で、今夏の記録的な猛暑に伴い、収穫が始まった北陸や関東などで「2等米、3等米の比率が高くなっているとの報告を受けている」とし「各産地で収穫が本格化するが、品質や量への影響を十分に把握していく」と述べた。  一定以上の被害が確認された場合、農業共済の災害収入共済方式(品質方式)に加入している農家には共済金が、収入保険加入者には保険金等が支払われると説明した。ただし、未加入者は収入減少も推測されることから、今後に備えてさらなる制度加入に「旗振っていくことが必要」と強調した。

(2面・総合)

収入保険 24年から気象災害特例を新設(3面・収入保険)【2023年10月1週号】

 収入保険では、2024年の加入から、気象災害で下がった農業収入を基準収入の8割まで上方修正して、加入する年の補償水準を一定程度に保つ「気象災害特例」が新設される。24年の契約では、過去の気象災害で大きな被害を受けた加入者は、最大で19年まで過去5年にさかのぼって補正可能だ。

(3面・収入保険)

皮までおいしく食べてほしい サツマイモを生産・加工・販売(5面・すまいる)【2023年10月1週号】

 「サツマイモといえば私だと地域内で少しずつ認知されてきましたね」と笑顔で話すのは埼玉県飯能市で「MASUZU株式会社」を営む鈴木志生梨さん(36)。市内や近隣に合わせて12カ所、約1.9ヘクタールの圃場でサツマイモを専門に栽培する。今年は「べにはるか」や「ベニアズマ」など7品種を栽培。自社の直売所「芋はん」では生芋のほか、焼き芋やアイスなどの加工品を販売している。消費者との会話を大切にしながらサツマイモに特化した確かな農業経営を実践している。

(5面・すまいる)

熱帯果樹を試験栽培 燃油節減で収益化へ(7面・営農技術・資材)【2023年10月1週号】

 農林水産省、中四国アグリテック(中国四国農林水産・食品先進技術研究会)などは9月25日、果樹の施設栽培に関するシンポジウムを開催。島根大学生物資源科学部の松本敏一教授が、島根県内の試験栽培を例に、熱帯果樹栽培の収量や経済性などについて報告した。冬季加温のコスト削減が重要とし、無加温ハウス栽培できる品目・品種の選択や、温泉水など化石燃料以外の熱源利用が有効と説明した。

(7面・営農技術・資材)

念願の牧場開業 国産羊肉を普及【10月1週号 秋田県】

231001_7.jpg

 【秋田支局】藤里町藤琴の宮野洋平さん(42)と妻の友美さん(38)は、群馬県渋川市から家族4人で同町に移住し、めん羊牧場を開業する夢を実現させた。国内流通量が約1%といわれる国産羊肉の普及に貢献したいとの思いで、食肉用羊の飼養に励む。宮野さん夫妻は群馬県の観光牧場でめん羊飼育に携わり、将来の独立を考えていた。洋平さんが同町の地域おこし協力隊に就任したことを機に、2021年3月に移住。同町では畜産振興として、1987年にめん羊飼育が始まっていた。「めん羊への理解が町にあることが決め手だった」と洋平さんは振り返る。町営牧場で飼育の補助をしながら開業準備を進め、2021年9月に粕毛地区で「宮の羊の牧場」を開業。新規就農した友美さんが代表を務め、洋平さんが牧場長として約360平方メートルの畜舎1棟と約5ヘクタールの放牧地で「テクセル」種や「サフォーク」種など120頭の繁殖と肥育を手がける。洋平さんは「双子以上を出産する多産傾向の母羊を80頭にして、肥育頭数を増やしたい」と話す。今年は20頭以上の出荷を予定。秋田県食肉流通公社で食肉処理後、首都圏や秋田市のほか、能代市の飲食店10店舗へ生後1年未満の肉を中心に卸す。友美さんは「テクセル種は肉の繊維が太く、しっかりした赤身で、サフォーク種は赤身と脂のバランスの良さが特徴。取引先に率直な感想を求めて、好まれる羊肉を作っていきたい」と意欲を見せる。地域おこし協力隊事業や移住後の取り組みに関わった同町役場総務課企画財政係の田中大樹主任は「宮野さんは開業への明確なビジョンを持っていた。藤里町に可能性を感じてくれた意義は大きい。この町に人を魅了する資源や文化があると再認識できた」と話す。開業して2年。地域イベントに積極的に参加し、羊肉コロッケやハンバーガーを販売し、国産羊肉の普及に努めている。地元農家との耕畜連携が始まり、将来はすべて秋田県産の飼料でめん羊を育て、羊肉料理を提供する飲食店経営の構想をがあるという。

〈写真:羊に餌を与える宮野さん夫妻。洋平さんは「流通が少ない国産羊肉を多くの人に届けられるよう、これからも二人で力を合わせて頑張っていきたい」と話す〉

収入保険・私の選択  経営全体の補償で加入決意【10月1週号 北海道】

231001_8.jpg

 【北海道支局】篠根克典さん(56)は「オホーツク・オーチャード株式会社篠根果樹園」の代表取締役を務め、北見市で3ヘクタールの園地にリンゴを約700本栽培。自家産果樹の加工品を作り評判を呼んでいる。篠根さんは、ほんのり甘酸っぱく昔懐かしい味が評判の品種「旭」を中心に、30品種以上のリンゴ、10品種ほどのプルーンの栽培に取り組み、品種を増やしてきた。以前は半導体業界に勤めていた篠根さん。父親がリンゴを栽培していたことから、2010年に脱サラを決意。現在は直売所でリンゴのほか、ジャムやシードルなどの加工品をインターネットや道の駅「流氷街道網走」で販売する。人気商品の一つが「旭りんごのジャム」。東京農業大学の網走キャンパス社会人講座で商品開発をしたことがきっかけで、リンゴ酢で糖度を調整し素材本来の味を楽しめる逸品だ。篠根さんはNOSAI職員の説明をきっかけに収入保険に興味を持ち、21年に加入した。「直売所で販売していることから、収穫量の正確な調査というのは難しいです。そのため、農家の経営全体を補償する収入保険が適していると考え、加入しました」と話す。21年から2年間は、干ばつでリンゴが大きく減収。22年は苗木にエゾシカによる食害が発生した。「不測の事態が起きる前に収入保険に加入していたので、加入したことでの"安心"を実感しました。被害発生から保険金請求の対応がスムーズで、本当に助かりました。収入保険は営農する上で、切っても切れない存在なので、今後も加入を続けていきたいです」と篠根さん。「これからは農薬を使わない栽培や有機肥料重視の施肥体系・農産加工品など新しい取り組みに挑戦したいです。消費者の笑顔のために、おいしいリンゴを追求していきたいです」と意欲を見せる。

〈写真:「旭」を中心に30品種以上のリンゴを栽培する篠根さん〉

転作にユーカリ 収穫が楽、通年出荷も【10月1週号 島根県】

231001_9.jpg

 【島根支局】津和野町で新しい転作品目に取り組む津和野花卉〈かき〉部会では、2017年にユーカリの栽培を始めた。部会長の村上厳雄〈むらかみ・いづお〉さん(80)は「野菜や果樹は重いので収穫作業は重労働になりますが、ユーカリは枝が軽く収穫が楽にできるので手軽に取り組めます」と話す。同部会では高さ2メートル以上になるユーカリの主幹を剪定〈せんてい〉し低樹高に仕立て、葉の付いた下枝を商品として箱詰めにする。常緑樹で年間を通して収穫できるので、季節に応じてアカシアやスモークツリーとセットで出荷。主に生け花やドライフラワーに使われる。ユーカリは空気を浄化する作用があり、室内で花瓶に挿せば観賞用になるほかさわやかな香りを楽しめ、女性を中心に人気があるという。

〈写真:「出荷できない葉をアロマオイルやお香に加工して無駄のない生産に取り組みたい」と村上さん〉

全国品評会金賞のシイタケ 温度・衛生管理を重視【10月1週号 岩手県】

231001_10.jpg

 【岩手支局】「自分のシイタケを多くの方に食べてほしい」と笑顔を見せるのは、花巻市矢沢の菊池浩太さん(36)。水稲のほか、2アールのハウスで菌床シイタケとピーマンをそれぞれ2棟ずつ栽培する。寒い地域に合った品種を選択し、栽培管理を工夫する。地域農業を守るため今後も栽培を続け、加工品販売を視野に入れているという。シイタケの品種は、10~3月が収穫時期で短期栽培型の「北研607号」。夏場も収穫できる品種は、温度管理にクーラーを導入する必要があるなどコストがかかるため、冬場に収穫する品種を選んだ。「21年10月にシイタケが大量に発生し、朝から夜中まで収穫作業に追われた」と菊池さん。ハウス内の温度管理をしていなかったため、日中と夜の気温差でシイタケの生存本能が働き、大量発生につながったという。「翌年からは断熱シートを使い、気温差を少なくしている」。そのほか、菌床ブロックに散水するための水は貯水して温度を上げて使うという。シイタケの収穫・選別の際には使い捨てのビニール手袋を使用し、ハウス内に入るときは長靴を洗浄。近隣で水稲を栽培する法人が圃場で殺菌剤を散布するときは、事前に連絡をもらうなど周囲の協力を得て、ハウス内に殺菌剤が入らないように対策を取っている。菊池さんは今年2月に開かれた「全国サンマッシュ生産協議会第33回品評会」で金賞を受賞した。今後は、離農が急速に進む地元の農業を守るため「離農する人の農地の引き受けや規格外品の加工品販売にも取り組みたい」と話す。

〈写真:「菌床ブロック一つの重さが2.5キロになるように散水する」と菊池さん〉

防風林「積み木遊びから森林資源の活用を考える【2023年10月1週号】」

 ▼休日に出かけた先で積み木を購入した。「かえるくん」という商品で同じ格好で色違いのカエル5個がセットだ。表情と色あいが気に入り、部屋の飾りに使えそうと思った。バランスを取りながら積む単純な遊び方が意外と面白く、立たせたり逆さにしたり、積み上げては撮影し、結構な枚数になっている。
 ▼子どもが小さい頃には、木の手触りや匂いを感じながら一緒に積み木で遊んでいた。そんなことも思い出される。手や頭を使う遊びは認知症予防にもなると聞くから、よいタイミングで再開したと言えるのかも。
 ▼木や木製品と触れ合う機会づくりは「木育」と呼ばれ、木工体験や植樹などの活動が各地で実践されている。子どもをはじめすべての人が「木とふれあい、木に学び、木と生きる」取り組みを通じ、木や森との関わりを主体的に考える豊かな心を育むとする。
 ▼10月は「木材利用促進月間」だ。国土の3分の2を占める森林を木材などに利用し、森林整備の促進と経済的な循環につなげる国民運動の一環だ。暮らしの中に国産の木材や木製品を増やしていくほど、持続可能性を高め、地球温暖化防止や国土保全など多面的機能の発揮にも寄与できる。

» ヘッドラインバックナンバー 月別一覧へ戻る