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今週のヘッドライン: 2023年09月 4週号

需要つかむ復興の花 アンスリウム栽培(1面)【2023年9月4週号】

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 福島県川俣町の川俣町ポリエステル媒地活用推進組合(鴫原秀雄組合長、79歳)は、古着をリサイクルしたポリエステル繊維の培地で南国の花・アンスリウムを栽培している。東京電力福島第一原発事故に伴う避難指示が解除された山木屋地区の生産者を含む12戸が、50ほどに及ぶ多彩な品種を通年で生産。花持ちや色艶の良さなど優れた品質で評価を高め、2021年には切り花の年間出荷本数30万本を達成した。鴫原組合長は「目標とする年間50万本出荷も見えてきた。達成に向け、産地をさらに盛り上げていきたい」と話す。

(1面)

〈写真上:アンスリウムの生育を見る鴫原組合長〉
〈写真下:出荷作業をする鴫原組合長と妻のたい子さん〉

食品ロス削減月間 飼・肥料など再利用もより重要に(2面・総合)【2023年9月4週号】

 10月は食品ロス削減月間だ。2021年度の日本の食品ロス量は約523万トンで、国連世界食糧計画(WFP)による21年の食料支援量(約440万トン)の1.2倍に上る。世界的な食料生産と供給のリスクが高まる中、多くを海外に依存する食料の損失・廃棄の削減は持続可能な社会の実現に向けても重要だ。官民連携で取り組みを強化するとともに、昨今の生産資材価格高騰も踏まえ、食品廃棄物を有用な資源と捉え、エコフィード(食品残さ飼料)や肥料などへの利用を進める必要がある。

(2面・総合)

JA全農10~12月の配合飼料価格 4期連続の値下げ(2面・総合)【2023年9月4週号】

 JA全農は21日、2023年10~12月期の配合飼料供給価格を前期(7~9月)に比べ、全国全畜種総平均でトン当たり2700円値下げすると発表した。円安や国内大豆かすの値上げの影響はあるものの、トウモロコシのシカゴ相場の値下がりなどを反映した。引き下げは4期連続。ただ価格水準は、依然、高い状況が続く。

(2面・総合)

豪雨被災地 損害評価員が水稲共済支える(3面・NOSAI)【2023年9月4週号】

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 近年の異常気象による大雨や干ばつ、猛暑などの被害が続く中、NOSAI新潟(新潟県農業共済組合)の管内では、損害評価員が稲作の適正な被害状況の把握などに協力し、水稲共済制度を支える。昨年は、関川村などで大規模な豪雨災害が発生し、近隣地域も含めて連携した班を編成。被害申告があった圃場で収量調査(検見)や抜取調査(実測)といった作業を分担して、円滑で適正な損害評価につなげている。

(3面・NOSAI)

〈写真上:「収穫直前まで地域内の生育を注視している」と大島さん(左)。NOSAI職員に生育状況を説明する〉
〈写真下:近隣の水田で復旧状況を見る稲家さん。「大きな災害が頻発するようになった」と話す〉

相続登記の義務化 何が変わる(5面・すまいる)【2023年9月4週号】

 2024年4月1日から相続登記の申請義務化が始まる。所有者が不明な土地が増加し、さまざまな社会問題が生じているため、申請を法律で義務づけてその増加を防ぐのがねらいだ。法務省民事局に相続登記申請義務化の背景や具体的なポイントを教えてもらう。

(5面・すまいる)

口蹄疫、近隣国で発生 飼養衛生管理の徹底を(7面・営農技術・資材)【2023年9月4週号】

 新型コロナの5類移行に伴い、インバウンド(訪日外国人旅行者)が増加している。近隣のアジア諸国では継続的に口蹄疫やアフリカ豚熱など家畜伝染病が発生しており、国内への侵入や発生に十分な警戒が必要だ。韓国では今年5月に4年ぶりに牛などで口蹄疫が発生した。飼養衛生管理を再確認して病原体の侵入や汚染の拡大を防ぐとともに、飼養する家畜を毎日健康観察して泡状のよだれなど疑わしい症状があれば、すぐに獣医師や家畜保健衛生所に連絡してほしい。飼養衛生管理の要点をまとめた。

(7面・営農技術・資材)

食用ホオズキ特産化へ連携 農高、福祉法人と商品開発【9月4週号 北海道】

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 【北海道支局】新十津川町徳富地区の小田秀一さん(62)は、カボチャ68アール、ビニールハウス16棟でミニトマト、スイカ、メロン、食用ホオズキなどを栽培。「徳富ほおずきの会」の会長を務め、会員とともに食用ホオズキを町の特産品にしようと栽培に力を入れている。同会が栽培する品種は食用向けの「太陽の子」。「とっぷベリー」と名付け、道内各地に出荷されている。観賞用のホオズキは実を包んでいる袋状の「ガク」がオレンジ色になるが、食用は黄色になるのが特徴。糖度が13度以上あり、収穫し生で食べることができる。甘さと酸味のバランスが良いことから、生食用だけではなく製菓の原料にも使われる。食用ホオズキの栽培は2月中旬から始まる。播種から発芽まで1カ月ほどかかり、その間の温度管理が重要だ。気温が低い時期はビニールハウス内の管理が難しいため、新十津川農業高等学校が苗立ちしたものを定植する会員もいる。5月下旬から6月上旬に定植し、成長につれて茎が折れやすくなるため、ひもでつるすなどの対策が必要だ。収穫は8月中旬から10月中旬まで続き、1週間程度追熟させてから出荷する。とっぷベリーのブランド化を目指し、新十津川農業高等学校や社会福祉法人明和会と連携。「ほおずきプロジェクト」を立ち上げ、商品を開発する。2023年2月には学生が考案したレシピをもとに、マフィンやレアチーズケーキ、大福などスイーツを販売し、知名度の向上を図った。「ホオズキの栽培が中山間地域の発展につながり、新十津川町の特産物になればと考えています」と小田さん。「今年は高温の日が続き、生育に影響が出ています。露地で栽培する生産者がほとんどなので、強風の影響を受けることもあります。今後は生産者が増え安定した供給ができればと思います」と話す。

〈写真:手作業で選果するため収穫した食用ホオズキを慎重に運ぶ小田さん〉

収入保険・私の選択  果樹経営を守る強い味方【9月4週号 鳥取県】

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鳥取県南部町  岩田 充夫〈いわた・みつお〉さん(76)
 柿を作り始めて今年で17年目になります。毎年順調に出荷していましたが、近年はカイガラムシの被害に悩まされています。この害虫が木につくと、木は弱るし、すす病が実に発生して出荷できません。せっかくできた柿の多くを、廃棄してしまわなければならないのが残念で仕方ありません。この害虫対策として3年に1回を目安に、粗皮削りといって樹木の表面の皮を削ります。柿の表面の皮は虫が入り込みやすいので、この作業でカイガラムシが越冬できないようにします。数年前までは手作業で粗皮を剥いでいましたが、最近では高圧洗浄機で、粗皮を削るというよりは吹き飛ばしています。以前に比べ一本一本にかかる作業時間がだいぶ短縮され、重労働でもないので作業が楽になりました。今年の生育状況を見ると、猛暑の影響なのか虫の被害は無いですが、日焼けの果実が例年より目立ちます。軽度の日焼けなら気にはならないのですが、今年は日焼けの程度が深いと感じます。日焼けになった箇所が熟れて鳥についばまれています。このようなことは今まで見たことがありません。収入保険は幅広い補償と病気やけがで収穫できなかった場合でも補償の対象となることが精神的に安心できます。自己努力では避けられない減収のすべてが補償される収入保険は、果樹などの年1回しか出荷がない生産者の経営を守る強い味方だと確信しています。柿を作り続けている間は収入保険へ継続して加入していくつもりです。
 ▽柿40アール、水稲57アール (鳥取支局)

〈写真:柿の2度目の摘果に励む岩田さん〉

耕作放棄地を活用 ズッキーニ2回収穫【9月4週号 岐阜県】

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 【岐阜支局】高山市国府町の木下明大〈きした・あきひろ〉さん(39)は、ズッキーニやトマトなど2ヘクタールを栽培する。「ズッキーニはあまり手がかからず、耕作放棄地の活用にはぴったりだと思った」と話す。ズッキーニの栽培を始めて7年目になる。取り組み始めたきっかけは、連作障害が出にくく、動物や害虫による被害が少ないとインターネットの記事で読んだことだ。現在は4200本を栽培し、6~7月と9月の2回収穫する。「ズッキーニは夏野菜だが、高温にやや弱い。冷涼な飛騨地域なら真夏でも育てやすい」と木下さん。栽培当初と比べ、生産者が増えてきたと感じており、全国的に出荷量が多い6~7月の市場価格は下落傾向だという。木下さんは夏季に栽培が容易な地域の利点を生かし、高値が付きやすい9月にも出荷する。2019年に収入保険に加入した。「ズッキーニは強風や湿害に弱く、保険の備えが必須の作物。収入保険がなければ今の生活はない」と木下さん。現在は法人化を目指して準備を進めており「規模を拡大して、耕作放棄地を減らすことが目標だ。地域を活性化していきたい」と話す。

〈写真:ズッキーニの生育状況を確かめる木下さん〉

ポット成苗を疎植 病害虫対策に奏功【9月4週号 徳島県】

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 【徳島支局】阿波市市場町の西田賢二さん(44)は、約100筆の圃場で水稲8ヘクタール、麦30アールを作付ける。栽培品種は「コシヒカリ」「ヒノヒカリ」「にこまる」のほか、古代米や酒造好適米、小麦、ライ麦など多岐にわたる。日本酒愛好家の会に所属する西田さんは、自分が栽培した米で日本酒を造ることが夢だった。収穫した酒米は、蔵元で醸され「お殿田(おでんでん)」という銘酒に生まれ変わる。酒米の品種は「五百万石」や「山田錦」など毎年変えて、味わいの違いを楽しめるのが特徴だ。酒米栽培では化学合成農薬や除草剤を一切使わず、化学肥料も可能な限り使わない。農薬を使わず栽培する際に悩まされる病害虫対策は「みのるポット成苗移植システム(みのる式)」を導入した。みのる式は、丈15センチまで育てた根鉢付きの成苗を疎植する。病害虫に強く、倒伏軽減の効果もあるという。さらに、田植え時に米ぬかをまき、土壌の表面を酸欠状態にすることで、雑草の出芽を抑制している。「栽培には手間暇かかるが、価値を感じて購入してくれる人が多い。来年は水稲の栽培面積を10ヘクタール以上、酒米も増やしていきたい」と意気込む。

〈写真:米笑(こめしょう)という屋号で営農に取り組む西田さん。「おいしいお米を食べて、笑顔で健康に過ごしてほしい」という思いが込められている〉

防風林「人を呼び込む工夫が過疎地の活路を見いだせないか【2023年9月4週号】」

 ▼総務省などは、2023年度の過疎地域持続的発展優良事例表彰の総務大臣賞3事例と全国過疎地域連盟会長賞5事例の決定を発表した。10月26日に富山市で開く「全国過疎問題シンポジウム2023inとやま」で表彰する。
 ▼各事例の概要には、獣害対策や高齢者の困りごと解決、地域の食文化継承やブランド化、買い物弱者対策などによる暮らしの質向上など多様な活動が挙がる。少子高齢化と人口減少が進む過疎地域では、そもそも活動を担う人材の確保が難しいはず。しかし、移住者や地域外の人材の協力を得たり、情報通信技術(ICT)を活用したりと地域の実情に応じた工夫が読み取れた。
 ▼全国過疎地域連盟によると、過疎法の要件に該当する過疎市町村数は885で全国市町村数の51%に当たる。人口の割合は9%余に過ぎないが、面積は約6割を占め、大部分は農山漁村地域となっている。特に中山間や山間地域では農林業の停滞に伴い商店や事業所なども閉鎖し、バスや鉄道の減便や廃止という悪循環に陥る例が多い。
 ▼過疎地域の森林や田畑の維持は、国土の保全や水源のかん養など多面的機能の発揮につながり、下流域で暮らす多くの国民に恩恵をもたらす。傾斜地では規模拡大による経営の効率化や省力化などのメリットも限定されるが、山並みの景観や渓流など人を呼び込む資源に恵まれた側面もある。そこに活路を見いだせないだろうか。

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