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今週のヘッドライン: 2023年08月 3週号

下水汚泥の肥料利用を推進 都内でシンポジウム(1面)【2023年8月3週号】

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 下水処理で生じた汚泥資源の肥料利用を推進しようと農林水産省と国土交通省は8日、都内でシンポジウムを開催。安全性の確保や品質を担保する新たな規格など利用拡大へ向けた方策を示すとともに、山形県鶴岡市と神戸市の先進事例などが報告された。ウクライナ情勢や円安などの影響で輸入肥料原料の価格が高騰し、農家経営を圧迫。原料のほとんどを輸入に依存し、供給面でも不安定な状況が続く。政府は、肥料の国産化と安定供給、資源循環型社会の構築を目指し、2030年までに下水汚泥の農業利用を倍増する目標を掲げる。

(1面)

〈写真:農林水産省と国土交通省の共催で開かれたシンポジウム〉

低迷する食料自給率 生産額ベース過去最低(2面・総合)【2023年8月3週号】

 農林水産省は7日、2022年度の食料自給率を発表した。カロリー(供給熱量)ベースの自給率は前年度と同じ38%となったが、小数点以下を含めるとわずかに低下した。生産額ベースの自給率は飼料や食料品原料などの輸入価格高騰で5ポイント下落して58%となり、過去最低を更新。国内の潜在的な生産能力を示す食料自給力指標も過去最低水準となった。輸入に依存するリスクの高まりで、国内生産基盤に立脚した食料安全保障の確立が最重要課題となる一方で、食料消費に占める国内生産の割合は低迷・低下が続く。国産シェア奪還へ生産基盤の維持・強化が展望できる施策の確立が急務となっている。

(2面・総合)

農林水産物輸出額が最高更新(2面・総合)【2023年8月3週号】

 農林水産省は4日、2023年上半期(1~6月)の農林水産物・食品の輸出額は前年同期比9.6%増の7144億円となったと発表した。
 上半期の実績では過去最高。多くの国・地域で新型コロナに伴う行動制限が解除され、外食向けが回復したことや小売店向けなどが堅調だったことに加え、円安で海外市場での競争環境が改善した。

(2面・総合)

積算温度計を設置 適期収穫の目安に(3面・農業保険)【2023年8月3週号】

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 今夏は全国的な猛暑となり、気象庁の1カ月予報によると、9月初めまで高温傾向が続く見通し。水稲では、米の品質低下につながる出穂期以降の高温障害に十分な警戒が必要だ。NOSAIでは関係機関と連携し、白未熟粒や胴割れ粒が多数見込まれる場合、注意喚起する。NOSAI埼玉(埼玉県農業共済組合)では、管内の水田99カ所に積算温度計を設置。地域や品種ごとの収穫適期の目安にしてもらい、良質米生産を支援している。

(3面・農業保険)

〈写真:積算温度計を確認する小沢さん〉

夏の食中毒に注意 家庭でできる予防のポイント(5面・すまいる)【2023年8月3週号】

 8月は厚生労働省が定める「食品衛生月間」だ。温度と湿度が上昇する夏場は特に細菌が繁殖しやすく、食中毒の発生リスクが高まるとして、注意を呼びかける。今夏は全国的に記録的な猛暑で、食中毒のリスクもさらに高まると予想される。家庭でできる食中毒予防のポイントを、政府公表資料から紹介する。

(5面・すまいる)

イアコーン 野菜と輸作で耕畜双方に利点(7面・営農技術・資材)【2023年8月3週号】

 岡山県笠岡市の笠岡湾干拓地で、国産の濃厚飼料として耕畜連携で生産するイアコーン(トウモロコシの雌穂〈しすい〉)の収穫が7月下旬に行われ、近隣の生産者や県の担当者などが見学した。黄熟期の7月下旬~8月上旬に収穫でき、作業時間は10アール当たり10~15分程度と短い。イアコーンはサイレージにして酪農家が利用。一方、収穫残さの茎葉はロータリーすき込みで1カ月程度で分解し、野菜農家がキャベツなどを栽培する緑肥にする。効率的な輪作体系として普及が期待される。

(7面・営農技術・資材)

グローバルGAP団体認証 契約先確保に奏功【8月3週号 岩手県】

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 【岩手支局】一戸町奥中山の髙橋政一さん(56)は、結球レタス8ヘクタール、非結球レタス(グリーンリーフ、サニーレタス、ロメインレタス)3ヘクタールを栽培し、2019年にグローバルGAPの団体認証を取得。髙橋さんは「地域全体でGAP(農業生産工程管理)認証を取得して、質の高いレタスを生産したい」と話す。グローバルGAPの取得には、食の安全性や労働環境など、各農産物に指定された基準項目をクリアし、審査を経て認定を受ける必要がある。髙橋さんを含めた同町のレタス生産者4人は、19年にグローバルGAPの団体認証を取得した。奥中山地域の本年度の取得者は6人で、さらに増える見込みだ。基準項目は農薬や肥料の使用状況、圃場の環境整備など多岐にわたる。髙橋さんは「日々の栽培管理の記録をはじめ、異物混入を防ぐために、たばこやジュースなどを圃場内へ持ち込まないなど、細心の注意を払っている」と話す。結球レタスは毎日500~600ケース、非結球レタスは50~60ケースを、栽培契約を結ぶ企業のほか、東北地方の市場へ出荷。消費者の食の安全性への意識向上で、GAP品を優先して取り扱う企業が増えているという。「グローバルGAPの取得が、栽培契約先の確保につながった」。作業は髙橋さん夫妻、息子、外国人技能実習生の計6人で担う。「従業員が働きやすい環境を整えることを重視している」と髙橋さん。夏場は出荷が毎日あるため、体調を崩さないように技能実習生の宿舎にはエアコンを取り付けた。不測の事態に備え収入保険に加入している。「昨年発生した大雨の被害額を補てんできた。万が一の事態から従業員を守るために、収入保険の加入は必要」。髙橋さんは「10月上旬まで収穫が続く。落ち着いたら家族で旅行するなど、ゆとりを持った農業を目指したい」と話す。

〈写真:「消費者が安心して購入できる生産物を継続して出荷したい」と髙橋さん〉

収入保険・私の選択 野菜農家は加入を勧めたい【8月3週号 栃木県】

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 【栃木支局】「農業共済制度のない野菜農家や、従業員を雇用している農家は加入した方がいい。実際に減収して保険のありがたみが分かった」と話すのは、那須塩原市上郷屋の「みさき農園」園主・室井博文さん(59)。2022年に収入保険に加入した。出荷先の事業縮小で収入が5割以下になり、つなぎ融資を利用。保険金を受け取った。従業員を20人雇用し、ネギ約15ヘクタールと水稲約8ヘクタールを栽培して規模拡大を毎年続けていた。現在はネギの作付けをやめ、3人で水稲と二条大麦、大豆を約30ヘクタール栽培する。主な取引先の青果仲卸業者にネギを週約6万本出荷していたが、新型コロナによる需要減で取引がなくなったという。「4月に取引停止の話をされてから実際に出荷できなくなるまで、10日もなかったと思う。収入の8割を占めていたため、売り先を必死に探したが、週に3万本しか出荷できなくなってしまった」と室井さん。ネギは播種から収穫まで約7カ月かかる。「前年より手をかけてきたネギを処分するしかなく、本当に悔しい思いをした」と唇をかむ。加えて、6月にはネギの皮むき機が故障。「通常なら1週間で直るはずが、世界的な半導体不足の影響で部品が欠品し、出荷が1カ月以上停止した。ネギはやむを得ず、すき込むしかなかった」という。18年から収入保険の推進を受けていた。「友人や知人とも度々話題に上り、類似制度と比べたりしていたが、わが事とは考えていなかったと思う」。決め手になったのは担当職員の熱心な推進だった。「『野菜農家、特に室井さんの経営には収入保険が合っている』という話だった。従業員を雇っているし、経営安定のためにと加入した」と当時を振り返る。つなぎ融資の説明も受けていた。「つなぎ融資を使えると聞いたときはホッとした。出荷ができなくても従業員の給料は支払わなければならない。連絡をしてから1カ月ほどで受け取れたので、本当に助かった」と笑顔を見せる。「給料の支払いに作業機械のローン返済もある。収入保険に加入していなかったら、資金を取り崩した上に銀行から借り入れする事態だった。自ら出荷先を見つけている農家は、取引先と共倒れになる可能性もある。大きい農家であればあるほど、もしものときのメリットが大きい」と力を込める。

〈写真:「経営安定のために必須の制度だ」と室井さん〉

米農家が米粉100%ベーグル店 自信の「能登ひかり」に付加価値【8月3週号 石川県】

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 【石川支局】「世界農業遺産に認定されたこの地の米のおいしさを多くの人に伝えたい」と話すのは、輪島市町野町金蔵地区の棚田で水稲10ヘクタール、ミニトマト2.8アールを栽培する山下祐介〈やました・ゆうすけ〉さん(37)。今年6月、妻の桂子〈けいこ〉さん(44)とともに自家産・自家製粉の米粉100%で作るベーグル店「こめとわとベーグル」をオープンさせた。店内には9種類ほどが並ぶ。グルテンフリーで、もちもちとした食感のベーグルの評判は口コミで広まり、地元客はもちろん遠方から訪れる客も多い。現在は「コシヒカリ」や県のブランド米「能登ひかり」など4品種を作付けている。「近年、米の需要が減っている。米に付加価値を付け、おいしさをもっと多くの人に伝えたい」と話す山下さん夫妻。老若男女が手軽に楽しめる米粉100%のベーグルの販売を思いついたという。商品開発は桂子さんが中心となり2021年にスタート。基礎を学ぶため、米粉のパン教室に通うところから始めた。米粉100%のベーグルは思い通りの食感に作り上げることが難しく、配合や発酵時間などに試行錯誤を重ねた。原料となる米は能登ひかりを採用。約2年かけてオリジナルレシピを完成させた。プレーンをはじめ、おかず系のカレーやあおさチーズ、おやつ系のチョコや抹茶ホワイトチョコ、アールグレイなど多種多様にそろえた。イートインが可能で、限定メニューの日替わりベーグルサンドとスープのセットを提供する。農業青年グループに所属する祐介さんは「今後はグループの農家が生産する農産物を生かしたベーグルを作りたい。米農家のベーグル店というだけではなく、奥能登の農産物を発信する場所となりたい」と将来を見据える。

〈写真:ベーグルを手に祐介さん(左)と桂子さん。「お米を活用して、新しい商品開発にチャレンジしたい」と笑顔で話す〉

「キラリモチ」で6次産業化 耕作放棄地を解消、所得向上にも一役【8月3週号 岡山県】

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 【岡山支局】高梁市宇治町の一般社団法人宇治雑穀研究会は、生きがいづくり、耕作放棄地の解消、食育、地域活性化をテーマに、構成員が栽培するもち麦「キラリモチ」を活用した6次産業化に取り組む。地域の高齢化が急速に進み、耕作放棄地が増える中で「地域の農地を荒らしたくない」という思いから、5人の有志が立ち上げた任意団体が研究会発足のきっかけとなった。栽培の手間が比較的かからず、加工品の収益が見込める雑穀の栽培で、耕作放棄地を解消し、地域高齢者の生きがいづくりや所得向上にも一役買う。収穫したもち麦は、茶や菓子、もち麦粉、ビールなどに加工し、市内のスーパーや市外の直売所で販売。開発には県や地元の高校、酒造業者などが携わる。今後もさまざまな業者との提携で、今までにないもち麦の活用方法を模索し、新たな加工品を開発・販売する予定だ。キラリモチの地産地消を進め、地域の憩いの場をつくる目的で、2019年には「カフェ麦」を同町内に開店。毎週月曜日だけの営業だが、キラリモチをふんだんに使った料理を目当てに、市内外から客が訪れるという。研究会は17年に一般社団法人になった。その後は活動内容に賛同する人々が集まり、今では地域おこし協力隊も参画。総勢26人が活動する。

〈写真:研究会のメンバー。2020年に「豊かなむらづくり全国表彰事業」で農林水産大臣賞を受賞するなど取り組みは高く評価されている〉

防風林「高齢者にこそスマホやSNSを【2023年8月3週号】」

 ▼家族で交流サイト(SNS)のLINE(ライン)を使っている。休日の予定調整など日常的な連絡やペットの写真を上げる程度だが、離れて暮らす子どもとの連絡も取りやすく、便利さを実感している。設定は子ども任せだったので、基本的な使い方しか知らない。
 ▼総務省の調査では、スマートフォンの保有は全世帯の9割に達している。インターネット利用機器としてパソコンよりも多く使われ、SNSを利用する個人の割合も8割となった。最近は70歳以上層のインターネットやSNSの利用が増加傾向にあるという。
 ▼SNSの利用目的は、「知人とのコミュニケーション」や「知りたい情報を探す」との回答が多いが、「災害発生時の情報収集と発信」なども挙がる。災害発生時は、回線が混み合う電話に比べSNSの方がつながりやすいとされる。家族で情報共有できる環境を作れば、オレオレ詐欺の被害回避などにも役立つのではないか。
 ▼コロナ禍による規制や自粛が解けた4年ぶりの夏休み。帰省など家族で集まる機会に、「面倒くさい」などと敬遠する高齢者にスマートフォンやSNSの使い方を伝える機会を作ってはどうか。初めての人にはハードルは高いだろう。しかし、集落の過疎化が進み、高齢の夫婦2人や1人暮らしの状況にあるなら、離れて暮らす家族にとっては安心でき、心強い味方となるはずだ。

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