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今週のヘッドライン: 2023年08月 2週号

子連れ特化の観光農園(1面)【2023年8月2週号】

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 和歌山県かつらぎ町の株式会社やまやまは、子連れ家族に特化した観光農園「くつろぎたいのも山々」を運営し、開設1年半ながら約3千人の年間集客を達成している。代表の猪原有紀子さん(36)は「世界一子連れを歓迎する観光農園として、親子がくつろげる場にしたい」と話す。耕作放棄地となっていた800坪をブルーベリーの摘み取り園などに再生し、キャンプ場を併設。おむつ替えスペースや授乳室など、子連れへの対応を最優先に施設を設計した。子育てしやすい環境づくりなど社会問題の解決を事業の柱に据えた「ソーシャルビジネス」として注目されている。

(1面)

〈写真:店長の庄司さん(左から3人目)とボランティア。子育て支援に関心を持ち、県内外から手伝いに訪れる〉

米の需給見通し 6月末在庫量200万トン下回る(2面・総合)【2023年8月2週号】

 農林水産省は7月31日、食料・農業・農村政策審議会食糧部会を開き、2023年6月末の主食用米の民間在庫量は前年同期比約21万トン減の197万トンとなったと説明した。適正水準とされる200万トンを下回った。23年7月~24年6月の主食用米の需要量を681万トンと見通し、23年産の適正生産量(669万トン)が達成されれば、24年6月末在庫量は184万トンとなる見込み。生産現場では一定の需給改善へ期待感が高まり、早場米地帯ではJA概算金を引き上げる動きがある。一方、今夏は全国的に記録的な高温傾向で推移しており、品質を含む作柄や米消費への影響などを心配する声もある。同省は今後の需給動向を注視する方針だ。

(2面・総合)

Jミルク見通し生産量下方修正(2面・総合)【2023年8月2週号】

 Jミルクは7月28日、2023年度の生乳と牛乳・乳製品の需給見通しを発表した。全国の生乳生産量は前年度比1.9%減の739万3千トンとし、前回見通し(5月26日公表)から2万5千トン下方修正した。酪農家の廃業増加や生乳生産抑制の進展などを反映した。一方、8月からの飲用・発酵乳向け生乳取引価格引き上げに伴う製品価格の値上げによる需要の大幅な低下を見込み、脱脂粉乳の在庫量が想定以上に増加する可能性を指摘。酪農・乳業一体で牛乳・乳製品の消費拡大と在庫削減対策を継続実施する重要性を訴える。

(2面・総合)

持続可能な農業へ 国際水準GAP現状と効果(3面・ビジネス)【2023年8月2週号】

 農林水産省は、生産現場における国際水準GAP(農業生産工程管理)の普及推進に力を入れている。食料・農業・農村基本計画で掲げた「2030年までにほぼ全ての産地で実施」の実現に向け、昨年3月に策定した推進方策と新たなガイドラインに基づき、取り組み内容の標準化や、都道府県GAPの国際水準への引き上げなどを進めている。現状や農業者のメリットなどを整理した。

(3面・ビジネス)

あっさりおいしくタンパク豊富 豆腐料理で夏バテ解消(5面・すまいる)【2023年8月2週号】

 元気で健康な体づくりには欠かせないタンパク質。暑い日が続くと食欲がわかず、あっさりとした食事が増えて不足がちになることも。そこでおすすめしたいのがタンパク質などの栄養豊富な豆腐。「野菜と豆腐の料理家」として活動する江戸野陽子さんに、夏にこそ食べたい豆腐料理を紹介してもらう。

(5面・すまいる)

太陽熱消毒に石灰窒素 土壌病害を回避(7面・営農技術・資材)【2023年8月2週号】

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 「施設コマツナを作り始めて25年間、石灰窒素を利用した太陽熱消毒で土壌病害は一度も発生していない」と話すのは、ハウス37棟(48アール)でコマツナを年7作栽培する静岡県三島市川原ヶ谷の杉本正博さん(71)。梅雨明け後から全てのハウスで行う太陽熱消毒は、米ぬかと石灰窒素を散布して腐熟を促進させて灌水〈かんすい〉し、ハウスを2~3週間密閉する。太陽熱と有機物の発酵熱を利用し、土壌中の病害虫を死滅させる。基肥には有機配合肥料を施用し、良食味を追求。スーパーと契約取引して静岡県ブランドの「しずおか食セレクション」に認定されている。

(7面・営農技術・資材)

〈写真:米ぬかと石灰窒素を散布後、乗用トラクターで耕起する杉本さん〉

肉用牛繁殖経営を低コスト化・省力化 離島の畜産支える公共牧野【8月2週号 島根県】

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 【島根支局】西ノ島町では1963年に牧野管理規定が定められ、牧畑〈まきはた〉が行われていた農地が公共牧野として活用されるようになった。地区住民であれば土地を所有していなくても公共牧野で放牧することができ、現在は12の牧(約1673ヘクタール)で31戸が599頭の牛を放牧している。隠岐諸島では昔から牧畑と呼ばれる隠岐固有の農法が取り組まれていた。牧畑は、起伏が激しい隠岐諸島で、土地をうまく活用し、食料を安定して自給するために生まれたという。起源は明らかではないが、1607年の江戸時代の検地帳に牧畑が記録され、400年以上の歴史がある。牧畑は四つ以上の牧区を4年サイクルで放牧・栽培に取り組む。順番は、牛馬生産、土壌を回復するための放牧、主食の麦栽培、地力を回復させるための豆類栽培、救荒作物のアワ・ヒエ栽培で連作障害を避けていた。同町で牛飼いをしていた堀川栄一さん(74)は「牧畑の牧替えのときには、地区の子ども総出で牛を追いかけたものです」と話す。牧畑の土地はほとんど個人の所有で、耕作と採草は所有権に基づき行われていたが、戦後の食料事情の好転に伴い、現在では耕作しなくなった。しかし、放牧は昔から所有権、耕作権に関係なく地区住民であれば平等に利用でき、現在でも牛馬の放牧風景を見ることができる。今では隠岐ユネスコ世界ジオパークの一部にもなり、同町の観光資源として一役を担う。2022年に同町内の農家の牛を譲り受け、新規就農した世良哲也さん(42)は「公共牧野という制度があったことも就農に踏み切れた理由の一つです。放牧は経験が必要で、地域の先輩農家の支えもあり、なんとかやっています」と話す。隠岐諸島の畜産は、牧畑という歴史的背景をもつ公共牧野があることで、放牧を主体とした飼い方が可能だ。離島というハンディキャップを抱えた隠岐諸島の畜産には、肉用牛繁殖経営を低コスト化・省力化でするための公共牧野は欠かせない重要な要素となっている。

〈写真:放牧場内で餌やりをする世良さん〉

収入保険・私の選択 経営に合うプランが後押し【8月2週号 山形県】

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 【山形支局】「けがをしたときは、痛みと農作業ができなくなる心配で頭の中が真っ白になりました」と話すのは、長井市下伊佐沢の増田和則〈ますだ・かずのり〉さん(60)。水稲580アール、スイカ20アール、洋ナシ20アールを栽培している。2022年4月、ナシの剪定〈せんてい〉作業中に脚立から落ち肋骨〈ろっこつ〉を骨折。入院や療養のため、春先の農作業ができなかった。田植えやスイカの定植が遅れ、収量が減り品質は低下。8月の集中豪雨で水田が冠水、米価の低迷が追い打ちをかけ、販売収入は平年の7割を下回った。「収入保険に加入していて良かったと、つくづく思う。本当にありがたい」と増田さん。収入保険に加入する前は「内容の説明は受けたことがなかったが、保険料と積立金が高い感じがして、自分の経営には合わない」と考えていたという。そんなときNOSAI職員から「話だけでも聞いて試算をさせてください」と説明を受けた。さまざまなリスクに対応できるほか、保険料の50%、積立金は75%を国が負担し、無事故で保険料が安くなること、大きな損害では無利子のつなぎ融資が受けられることなどを知った。「農家に寄り添った保険だということが分かり、加入してもいいかなと思った。推進に来た職員の熱意も伝わった」と笑顔で話す。収入保険には保険料の安い下限設定タイプがあることも背中を押した。「経営に合った設定を選ぶことができ、保険料を抑えられるので加入しやすい」と、ニーズに沿ったプランがあることも加入を決断する要因になった。これまで増田さんは、スイカの収穫が終わると稲刈りやナシの収穫と、複数の作物を栽培することで経営の安定につなげてきた。今後はこれまでの営農スタイルに収入保険を加え、リスクに備えた農業経営に取り組んでいく。

〈写真:「収入保険に加入していれば、新たな作物に挑戦もできる」と増田さん〉

西洋野菜、ハーブなど50品目 加工品開発にも注力【8月2週号 兵庫県】

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 【兵庫支局】南あわじ市の「淡路島西洋野菜園」代表・柴山厚志〈しばやま・あつし〉さん(61)は、60アールで西洋野菜やハーブなど約50品目150品種を、農薬や化学肥料は使わずに栽培する。2009年に神戸市から南あわじ市へ夫婦で移住し、翌年に就農。以前勤めていた飲食店で扱っていた西洋野菜の栽培を始めた。収穫した野菜は全国各地の飲食店へ販売する。「品種や大きさの選別はお任せいただいています。飲食店さんとの信頼関係があってこそ成り立っています。栽培するときは皆さんの顔が浮かび、頑張れます」と柴山さん。自ら開設したオンラインショップで、野菜とハーブのセットや加工品を販売する。西洋野菜のチコリの根を使った「チコリコーヒー」は、焙煎〈ばいせん〉やスライスの試作を重ね、2年かけて商品化した。柴山さんは「現在は口コミによる販売が中心ですが、今後はプロモーションにも力を入れたい」と意気込む。

〈写真:西洋野菜の栽培に取り組む柴山さん夫妻〉

せっけん、化粧品、染め物体験 藍を生かして地域活性化【8月2週号 山口県】

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 【山口支局】「富海〈とのみ〉の藍を使い、6次産業化したかった」と話すのは防府市富海の宇多村史朗〈うたむら・しろう〉さん(72)。藍を活用したさまざまな取り組みを進めている。「2011年に山口国民体育大会で優勝した地元の高校バレーボール部の選手に、富海在住の藍染め作家が藍染めのハンカチをプレゼントしたのがきっかけです。藍の魅力を再認識し、『富海を藍染めの里にしよう』と話が持ち上がりました」と宇多村さん。藍の栽培技術を持つ地域おこし協力隊員が主となり、13年に富海で栽培が始まった。20年に藍の栽培事業を実施し、宇多村さんは地元の藍を使用した染め物体験のほか、化粧品やせっけんなどの製品を企画している。「子どもさんへの贈り物に良かったと聞きます。昔は子どものおむつに使用されるなど、藍は体を守るものとして、生活の中で使われていたそうですからね。コロナ禍では、抗菌作用もあるとして、藍染め製品が注目されていました」。宇多村さんは「地元の公民館で藍染め体験などの開催も検討していきたい」と地域の活性化に思いを巡らせる。

〈写真:「せっけんは香りが良く、藍の色がアクセントになっています」と話す史朗さん(右)と妻の洋子さん(73)〉

防風林「問われる外国人労働者の雇用の在り方【2023年8月2週号】」

 ▼厚生労働省は、外国人技能実習生が働く事業所で2022年に7247件の労働基準関係法令違反が認められたと発表した。法令違反が疑われると監督指導を実施した約1万件の7割超に及ぶ。主な違反事項は、使用する機械などの安全基準、割増賃金の支払いなどだった。
 ▼農業の違反事例は186件あり、違反事項は賃金の支払い、年次有給休暇、安全基準の三つで6割を占めた。具体的には、参加を義務づける朝礼を労働時間にしていない(タイムカードを打刻しない)事例を紹介。是正勧告に従い、過去にさかのぼって約65万円の未払い賃金を支払ったとする。
 ▼生産現場の人手不足は深刻だ。技能実習生など外国人労働者なしでは経営維持が困難な農家や法人もあると聞く。ただし、円安もあって賃金は目減りし、悪質な事業者による人権侵害行為も複数指摘され、外国人労働者が日本で働く魅力は低下している。
 ▼政府は、人権への配慮や地域社会を共に支える観点で抜本的な制度見直しを検討する。職場としての環境改善も大切だ。

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