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今週のヘッドライン: 2023年08月 1週号

有機稲作 さらに広げたい(1面)【2023年8月1週号】

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 有機栽培を中心に水稲40ヘクタールで経営する滋賀県野洲市の中道農園株式会社は、乗用型除草機や小型無人機(ドローン)など機械導入による作業の効率化を進める。代表の中道唯幸さん(65)は「有機や慣行など農法を隔てず皆で技術を共有したい。それぞれの強みが最大限生かせて、農業はより良い方向に向かう」と話す。みどりの食料システム法に基づき、化学肥料や化学農薬の使用量低減などに取り組む「環境負荷低減事業活動実施計画」を作成、昨年11月に生産者として全国で初めて認定された。環境保全型農業に関わる農機などの導入負担を軽減する「みどり投資促進税制」を活用し、労力軽減と経営安定を図る。

(1面)

〈写真:新たに追加購入した除草機と中道さん〉

台風災害 激甚化も(2面・総合)【2023年8月1週号】

 環境省は7月21日、温暖化の進行に伴い、今後日本に襲来する台風はより発達した状態で上陸し、降水量の増加で河川の氾濫や浸水地域の拡大リスクが高まるなどとした影響評価結果を公表した。近年各地に甚大な被害をもたらした台風を対象に、気温上昇時に同程度の台風が襲来した場合の影響をシミュレーションした。風害や高潮のリスクも高まるという。今夏も温暖化の影響とみられる異常気象が世界各国で頻発している。本格的な台風シーズンを前に備えを万全にしておくことが大切だ。

(2面・総合)

JA全中が予算要請(2面・総合)【2023年8月1週号】

 JA全中の中家徹会長らは7月21日、農林水産省で野村哲郎農相と面談し、2024年度の農業関係予算に関する要請書を手渡した。持続可能な農業・農村の実現に向けた基本政策の確立とともに、国内農業生産の増大を基本とした食料安全保障予算など農林水産関係予算の確保を求めた。

(2面・総合)

収入保険 気象災害特例を新設(3面・収入保険)【2023年8月1週号】

 品目の枠にとらわれずあらゆるリスクに対応して収入減少を補償する収入保険。2024年の加入から、より充実した仕組みに見直される。近年、気象災害が激甚化・頻発化する中、気象災害で下がった農業収入をその年の基準収入の8割まで上方修正して補償水準を一定程度に保つ「気象災害特例」を新設。保険方式だけで基準収入の9割を補償限度として積立金の負担を軽減するタイプが選択可能になる。さらに、2年分としていた青色申告の実績を1年分に見直して早期に収入保険に加入できるようにする。

(3面・収入保険)

住宅地で酪農続ける 移動動物園でファンづくり(5面・すまいる)【2023年8月1週号】

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 「畜産・酪農をより理解してくれるファンを増やしながら、この場所で酪農を続けたい」と話すのは川崎市高津区で福田牧場を営む福田努さん(68)。同市唯一の酪農家として、経産牛11頭、育成牛3頭を飼養し、臭気や騒音の抑制など住宅地という環境に配慮した飼養管理を実践する。牛のほか、ポニーやヤギ、ウサギなども飼養し、子どもたちに触れ合いの場を提供する「移動動物園」との複合経営に取り組み、都市近郊型酪農を持続可能なものにしている。

(5面・すまいる)

〈写真:「規模拡大は難しいので平均乳量を伸ばすなど個体能力を向上させたい」と努さん〉

多様な作業に対応 人に自動追従する運搬ロボット(9面・営農技術・資材)【2023年8月1週号】

 農研機構と株式会社Doogが共同開発した農業向けロボット「メカロン」は、作業者に追従して収穫物の運搬を担うなど、人とロボットが一緒に作業する「協働」をコンセプトに開発された。クローラー型で走破性が高く、一度走ったルートを記憶して自動で往復することも可能だ。シンプルな構造で、追従の指示はボタン一つで操作できるなど使い勝手の良さも特長となっている。先行していたマーケティング機の販売を経て、本年度中には一般販売が始まる見込みだ。

(9面・営農技術・資材)

リンゴ農家が狩猟+バーベキュー場【8月1週号 広島県】

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 【広島支局】庄原市比和町で「白根りんご農園」を営む白根浩治さん(40)は、妻の加奈さん(38)とリンゴを栽培する傍ら、猟師としても活動。今年5月には、ジビエ(野生鳥獣肉)を提供するバーベキュー場を開いた。浩治さんは「狩猟を通して、命をいただくことを教わった。一般の人たちのイノシシ肉の印象を変えたい」と話す。「最初はうちのリンゴ園を守るためだった」と浩治さん。果実を食べ、木を裂いてしまうイノシシの被害に、自ら立ち上がることを決意。浩治さんは2012年、加奈さんは15年に狩猟免許を取得した。自分たちで箱わなを設置し、地域の人から連絡があれば駆除に向かう。先輩猟師にノウハウを学ぶ中で、イノシシ肉のおいしさを知ったという。「臭い・硬いなどのマイナスイメージがあったけれど、新鮮な肉はまったく違った」と当時の感動を振り返る。地域の資源であるイノシシ肉を活用できないかと思っていたところ、同市是松町に「庄原市有害鳥獣処理施設」が完成。「捕獲して生きた状態の段階で施設に連絡すると、冷凍車が来てくれる。それから仕留めて血抜きをするので新鮮」と浩治さんは話す。新鮮な肉を食べてほしいという白根さん夫妻の思いと施設の考えが一致し、冷凍・冷蔵でのイノシシ肉の販売が始まった。同農園の直売所で販売するほか、贈答用としても発送する。白根さん夫妻は3ヘクタールの園地で33品種のリンゴを栽培し、9割を直売所で販売。「お客さんの声が直接聞けて、お客さんに育ててもらっている」と、消費者の声を受け、ジュースやジャムなどの種類は徐々に増えているという。イノシシ肉を販売するうちに、「近くで食べるところはないの」という声があり、バーベキュー場を開くことにした。「『思っていたイメージと違う。おいしい』と言ってもらえるのがうれしい」と浩治さん。「ここでおいしく食べてもらい、駆除することで田畑を守り、おいしい農作物ができる。このサイクルをもっともっと広げたい」と話す。

〈写真:自家産リンゴを使った焼き肉のタレを手に「イノシシ肉やジビエピザ、比和町のお米を食べに来て」と白根さん夫妻〉

収入保険・私の選択  安定を確保、安心して挑戦【8月1週号 石川県】

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石川県加賀市  坂本 泰毅〈さかもと・たいき〉さん(38)
 もともとは父と農業をしており、今年、経営移譲をして代表となりました。2014年に10人程度の生産者で発足した「かが有機農法研究会」に所属し、環境に配慮したブランド米「加賀のティール」を生産しています。ティール米には、化学肥料・化学農薬をまったく使わないブルーラベルと、農薬不使用の栽培技術を応用した殺虫殺菌剤不使用のオレンジラベルがあります。品種は「コシヒカリ」「ミルキークイーン」「農林21号」です。北陸が原産地で1943年に生まれた農林21号は、時代の流れとともに産地が途絶えていました。研究会では、柔らかな甘みと良食味の農林21号を地域を挙げて復活させ、今日に至っています。収入保険には父が制度開始当初に加入しました。自身の収入金額を基準にするため、年間に補償される金額が分かりやすい点や収入金額を安定させられる点が継続加入の決め手です。従来の農業共済制度では、米・大豆の収量減少が対象でした。収入保険では作物全品目の収量減少のほか、品質低下や価格の暴落なども対象となり、補償を受けました。作物の生育状況には日ごろから注意していますが、近年多く発生している異常気象などは予測もできません。万が一のときのため、収入保険に加入していることで経営を安定させられるので、新しいことにも安心して挑戦できます。
 ▽水稲29.63ヘクタール、大豆7.57ヘクタール、ブロッコリー1ヘクタール
 (石川支局)

〈写真:「加賀のティールには『おいしくて安全なご飯を子供たちに届けたい』という思いを込めています」と坂本さん〉

国産飼料用トウモロコシ 高度利用化センター建設へ【8月1週号 山口県】

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 【山口支局】「飼料用トウモロコシで、農業の地域循環をはじめ、飼料や畜産に県内産の付加価値を付けたい」と話すのは、宇部市の農業生産法人株式会社あぐりんく取締役の工藤正直〈くどう・まさなお〉さん(51)。宇部市と山口市の圃場で飼料用トウモロコシを栽培する。「作業時間は稲作の10分の1。残りの時間をほかの作物の作業に活用できます。4月の春播きと7月の夏播きが可能で、水稲、麦、大豆との輪作にも適しています」と栽培のメリットを話す。「専用機械は大きくて高額のため、国の助成事業を活用して山口市子実コーン地域内循環型生産・出荷協議会員で共同利用しています。しかし、現状の栽培規模では、収穫後の乾燥や粉砕加工までを自社で完結できません。生産者が生産管理に集中できるように、この課題を解決したかった。一般社団法人農林水産業みらい基金の助成を受け、協議会員が生産する子実トウモロコシを乾燥、粉砕、配合までできる施設「やまぐち国産飼料用とうもろこし高度利用化センター(仮称)」を2023年11月に同社に建設することが決定している。同センターには専門技術指導員を置き、飼料の成分やカビ毒を分析するという。「国産原料を使うこれまでにない取り組みなので、安全性の確保はもとより、地域産の良さを生かす飼料で新しい価値をつくりたいです」と工藤さん。「肉用牛はセンターの飼料で約2年かけて育てます。県産の飼料で育つ牛の成長を見るのが今から楽しみです」と笑顔を見せる。

〈写真:「今年の子実トウモロコシの生産目標は200トン。共に飼料用トウモロコシを作る生産者を増やしていきたい」と工藤さん〉

農業法人に就職 充実の機械作業【8月1週号 新潟県】

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 【新潟支局】「草刈りを終えたときの達成感は最高です」と話す野口真祐葵〈のぐち・まゆき〉さん(24)。他県で競走馬の厩務員〈きゅうむいん〉や肉牛の飼育員として働いていたが、昨年Uターンし、株式会社総頼屋〈そうらいや〉(妙高市高柳、塚田俊介代表取締役)に就職した。同社は農産物の生産・加工・販売のほか、農作業の代行・請け負い・受託に取り組む。野口さんは当初、同社でウエブデザインの仕事に就く予定だったが、農業機械や小型無人機(ドローン)の操縦をに興味を持ち、現場の作業に挑戦している。機械操作は見た目以上に大変で、草刈機を壊してしまう失敗を経験したが、田植機の操縦は無難にこなせるようになった。「機械に乗るだけで緊張した田植え作業でしたが、後半はだいぶ慣れて、まっすぐ植えることができ、うれしかったです」。自分で植えた稲の収穫が今から楽しみだという。「体力仕事が多く、暑い時期は特にきついです」と野口さん。今の時期は畦畔〈けいはん〉の草刈り作業に汗を流す。「今後はドローンやコンバイン、トラクターも操縦できるように技術を磨き、一日も早く一人前になりたいです」と笑顔で話す。

〈写真:草刈り作業に向かう野口さん〉

防風林「泥沼化する戦争のしわ寄せは世界の弱者に向かう【2023年8月1週号】」

 ▼ロシアとウクライナとの戦争で非人道的な兵器であるクラスター爆弾を双方が使用していると報じられた。そもそも人道的な兵器などないのだが、クラスター爆弾は不発弾が多く、戦闘後の民間人の犠牲が後を絶たない。使用を禁止・制限する条約があるものの、ロシアとウクライナ、ウクライナにクラスター爆弾を供与する米国は条約を批准していない。
 ▼さらにロシアは、ウクライナ産穀物の海上輸送の安全を担保する穀物合意からの離脱を宣言。ウクライナ産穀物の輸出が滞る懸念から、小麦の国際市況が一時高騰した。中東や北アフリカでは食料を安価なウクライナ産穀物に頼る国が多く、低所得層を中心に食料を十分入手できない飢餓人口の増加など食料危機の恐れが指摘されている。
 ▼世界食糧計画(WFP)は、世界で最大8億2800万人が飢餓に苦しみ、新型コロナ流行前と比べ2億人も増えたとする。最大の要因は紛争で、飢餓に苦しむ人の7割は戦争や暴力の影響を受けた地域に住む。
 ▼ロシアとウクライナの戦争が非人道的兵器の使用を機に激化しないか心配だ。そのしわ寄せは世界中に及ぶ。各国の指導者には早期終結に向け一層尽力してほしい。

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