今週のヘッドライン: 2023年07月 4週号
全国酪農青年女性会議と全国酪農業協同組合連合会(全酪連)は13日、札幌市で酪友フォーラム2023を開き、全国の酪農家など300人が参加した。過去の酪農経営発表者が現況を報告し、パネルディスカッションでは10年後の夢などを話し合った。生産資材の高騰や生乳の需給緩和などで酪農経営は苦境に立たされる中、将来を見据えた前向きな発言が相次いだ。
〈写真:パネルディスカッションは、回答をフリップに書く形式で行われた〉
食料・農業・農村基本法の見直しに向けた、農林水産省の政策審議会基本法検証部会による地方意見交換会が始まった。14日の熊本市を皮切りに8月8日の北海道帯広市まで全国11都市で開催する。国内市場の一層の縮小、農業従事者の急激な減少など課題が山積する中で、国内農業生産の増大や多様な担い手の位置付け、再生産可能な価格形成の仕組みなどを新たな基本法にどのように盛り込むかが注目される。
環太平洋連携協定(CPTPP)に加盟する日本を含めた11カ国は16日、ニュージーランドのオークランドで閣僚級会合「TPP委員会」を開き、英国の新規加盟を正式に承認した。加盟国の追加は2018年の協定発効以来、初めて。CPTPPへの加盟国は12カ国となった。
NOSAI福島(福島県農業共済組合)では、自然災害の頻発を踏まえ、備えの大切さを強調する共済部長(NOSAI部長)が活躍している。台風による家屋の浸水や果樹の凍霜害など自身も被害を経験する中、組合員とNOSAIのパイプ役を務める2人に話を聞いた。
今夏は野菜スタンプを作り、友人や親戚にオリジナルの暑中・残暑見舞いを送りませんか。大阪市平野区で「ART NO WATAGE 絵画教室」を主宰する原はら明みょうあさのさんに、野菜スタンプの作り方を紹介してもらう。
今夏は梅雨明け前から各地で猛暑となり、高温障害や干ばつによる農作物の減収や品質低下、家畜の体調悪化などが懸念される。大分県が公表した「農林業における少雨・高温対策マニュアル」などに基づき、水稲や大豆、乳用牛・肉用牛での猛暑時の対策例を紹介する。
【香川支局】しょうゆ造りが盛んな小豆島では、昔ながらの木桶〈きおけ〉を使った製造方法を今に受け継ぐ。小豆島町の竹本和史さん(46)は、製造後に出る搾りかすを肥料にした「醤〈ひしお〉トマト」の栽培に2016年から取り組む。「うま味成分のアミノ酸数値は、同じ品種と比較して約3倍高いです。木桶仕込みのしょうゆかすならではの特長で、糖度が高くコクが増したトマトです」と竹本さん。産業廃棄物として処分されていた搾りかすを生かすことで付加価値を与え、地元のしょうゆ産業に貢献する。しょうゆの搾りかすは、大豆や小麦、塩が主成分。発酵過程で木桶に蓄積されてきた酵母菌や乳酸菌、タンパク質が分解されたアミノ酸を豊富に含む。アミノ酸は水溶性のため土によく溶け、トマトにも吸収されやすい。栽培するトマトの品種は加工しやすい中玉の「フルティカ」。定植は3月に始め、6月から8月にかけて収穫する。糖度は10度から12度で、市販品の約1.5倍だ。市場評価は高く、ほかのトマトと比べ高値で取引され、「もっと量がほしい」という要望があるという。ハウス10アールで年間2トンほど収穫し、ほとんどを東京の市場に出荷する。
今年、醤トマトを栽培するメンバーに、新規就農した土庄町の鹿嶋大介さん(35)が加わり、竹本さんは指導に力が入る。鹿嶋さんは来年3月の定植からハウス15アールで栽培を開始。「小豆島でトマト栽培をしたいと思ったときに醤トマトを知りました。竹本さんから醤トマト栽培のノウハウを教わり、小豆島の魅力を発信できる農家を目指していきたい」と意気込む。竹本さんは当初、搾りかすの活用方法の模索から始めた。品目は、単価が高く収益が見込め、塩分に比較的強いトマトを選択。品種はいくつか試した。「始めて5年くらいは失敗が多く苦労しました。現在でも栽培技術の完成度は約7割程度です」と竹本さん。最大の弱みは塩分で、対策として、トマトを収穫した後は塩分を吸収するアイスプラントを植え付ける。小豆農業改良普及センターの清田隆治副主幹は「肥料のバランスや灌水〈かんすい〉量をうまくコントロールして栽培されています。フルーツトマトより皮が薄く、強い酸味はないので非常に食べやすく、味が良くてしっかりとしたうま味があります」と評価する。
〈写真:「醤トマトは高い糖度と豊かなうま味が特徴」と竹本さん〉
【広島支局】福山市駅家町で獣害対策に取り組む「駅家町服部地区鳥獣被害対策協議会」。槇本保夫会長(75)は、2018年に同じ地区の槇本敦司さん(70)と藤原秀勝さん(70)の3人で同協議会を立ち上げた。ワイヤメッシュを加工した自作の箱わなで、主にイノシシを捕獲している。箱わな作りの参考に各地を見て回り、頑丈にするためにワイヤメッシュを2重にして作製。当初は自分たちの田畑を守るためだったが、近隣の農家から箱わなを依頼され、現在は服部地区を中心に24カ所に設置している。箱わなに仕掛ける餌には米ぬかを使用し、40頭を超えるイノシシを捕獲した年もあったという。「餌の入れ替えやわなの確認など、日々の巡回は欠かせない」と槇本会長。イノシシを捕獲した後は、猟友会を通じて市に申請し、報奨金で新たな箱わなを作製する。槇本会長は「少人数での活動なので、規模をこれ以上拡大するのは難しいが、少しでも獣害で困っている人の助けになれたら」と話す。
〈写真:箱わなを設置する左から槇本会長、藤原さん、槇本さん〉
【和歌山支局】有田川町の原毛利彰〈はらげ・としあき〉さん(46)は温州ミカンやキウイフルーツを栽培する傍ら、辛くないシシトウ「ししわかまる」をビニールハウスで栽培し、2022年から本格的に出荷している。ししわかまるは和歌山県農業試験場暖地園芸センターと京都教育大学が共同で開発し、20年に登録された新品種。有田地域を中心に生産され、原毛さんは品種登録前の開発段階から試験栽培などに関わってきた。3月に定植し、4月中旬から11月にかけて収穫する。辛みがないだけではなく、一般的なシシトウと比べて皮が薄く種が少ない。「遺伝子的にカプサイシンをまったく生成しないので、絶対に辛くならない。辛みが苦手な人や学校の給食など幅広く活用してほしい」と原毛さん。所属するJAありだのシシトウ部会では、小学生を対象にした作付け体験会を22年から開催しており、地域を盛り上げる活動に精力的に取り組んでいる。
〈写真:「ようやく出荷できるほど取れるようになりました」と原毛さん〉
【愛媛支局】内子町の山間で2年前にヤギの放牧を始めた「やまま牧場」代表の千葉真史さん(33)。1.5ヘクタールの放牧地で、乳用種「日本ザーネン」と肉用の日本在来種を合わせて21頭飼育する。生体販売が主体だが、低温殺菌し冷凍したペット用ミルクを今月からインターネットで販売するという。ヤギのミルクは牛乳アレルギーの原因になるαS1―カゼインの含有量が非常に少なく、脂肪球の大きさが牛乳の6分の1程度で消化吸収が良い。「タウリンも豊富で栄養価が高く、近年需要が高まっています」と千葉さん。すでに「ペットに飲ませたい」という声が届いているという。加工場の整備を進めている最中で、来春完成を目指す。妻の夢子さん(32)が作るヤギミルクを使用したプリンや練乳などの菓子類を販売する予定だ。千葉さんは「ヤギのミルクは季節によって味が変わり、加工方法や合わせる材料でくせが出ます。その時々の味やクラフト感を感じてもらえる商品を開発できれば」と話す。
〈写真:「傾斜に強く、暑さにも強いヤギは、平地の少ない愛媛での放牧に適しています」と千葉さん〉
▼1人暮らしの高齢者が増加する中、重要性を増しているのが健康や生活の状況などを確認する見守り活動だ。総務省の実態調査では、コロナ禍を経てタブレットなどデジタル機器の活用事例も増えている。ただ、高齢化と人口減少で公的な人材不足は続く見込みで、地域住民や民間事業者など多様な主体による複層的な見守り活動の在り方検討を課題に挙げた。
▼調査によると、訪問活動では、自治会や郵便局、新聞販売店との連携、配食・食材配達に合わせた安否確認などの事例がある。遠隔からの確認では、温度や人の動きを感知するセンサーの配置や緊急通報装置で異変を把握するほか、タブレットを使い姿の確認や通話するなどの工夫もあった。
▼65歳以上の1人暮らしは、2021年は男性約231万人、女性約441万人。それが40年には男性約356万人、女性約540万人と全体で3割増える見通しだ。家族と同居する人に比べ、1人暮らしでは近所付き合いも少ない傾向があり、健康や病気などに不安を覚える割合も高いという。
▼子どもたちが家を離れて暮らすようになり、現状で心配はないが、自分もいつ1人暮らしになるか分からない。孤独や不安な気持ちの回避に、安否確認だけでない、会話ができる見守りを求めたい。