今週のヘッドライン: 2023年07月 3週号
長野県の佐久地域雑草イネ対策プロジェクトチームは、主食用米の減収や等級低下を招く難防除雑草「雑草イネ」の根絶を目指す。JAやNOSAIなど関係機関が一体となり、地域全体で早期発見と抜き取りを呼びかけるほか、効果的な除草剤の検討や技術普及で、農家の対策を促進する。発生程度や圃場位置を記録できるウェブアプリを活用。水田450ヘクタールを効率的に調査して警戒を強める。
〈写真:除草剤の効果を説明する農業農村支援センターの渡辺さん(左)とNOSAI、JA職員。左から2人目は市川さん〉
農林水産省は7日、畜産統計(2023年2月1日現在)を公表した。乳用牛の飼養戸数は、前年比5.3%(700戸)減の1万2600戸となり、統計開始以来最少を更新した。3~4%台の推移だった減少率が13年ぶりに5%を上回った。肉用牛の飼養戸数は4.5%(1800戸)減の3万8600戸、豚は6.1%(220戸)減の3370戸、採卵鶏は6.6%(120戸)減の1690戸などブロイラーを除いて軒並み減少した。飼料や資材、燃料など生産コストが高止まりする中で、過度な輸入依存からの脱却など持続可能な畜産の実現が求められる。
宇都宮大学農学部農業環境工学科の田村孝浩教授は、NOSAIの農機具共済のデータを基に、栃木県内の約20年間の農機盗難事例を分析。車種別で乗用トラクターが94%を占め、屋内格納中の被害が59.6%に上ることを明らかにした。田村教授は、農家自身の防犯意識向上と、車両と格納先の両方での施錠徹底を基本に、外から見えない場所への格納、安全キャブがない機種で市販のロックの後付けなどの対策が効果的とする。
主食用米の需要減少に歯止めがかからない中、日本の米政策と水田営農はターニング・ポイントを迎えている。穀物の国際相場高騰や水田の維持・活用にかかる財政負担などを背景に、政府は飼料用米など戦略作物の生産を支援する水田活用の直接支払交付金を見直し、輸入に依存する麦・大豆や飼料作物などの本作化・定着化に向けて水田の畑地化を推進する方針を示す。米をめぐる現状や課題を各種資料などを基に解説する。
魚釣りや水遊び、水泳などは夏の楽しみの一つだ。一方で、水にかかわる子どもの事故の約6割は川や湖で起こっており、不慮の水難事故も懸念される。子どもたちが安全に川遊びを楽しむためには、どのようなことに気をつければいいのか。指導者や教育関係者向けの教材開発などで子どもたちの水辺体験活動の充実を図る「河川財団 子どもの水辺サポートセンター」が作成した水辺の安全ハンドブックなどから紹介する。
稲作は機械化で総労働時間の削減が進む中、水管理を含む管理作業時間は大きく削減されず、25%超を占める。自動水管理システムや水田センサーが市販化されているが、導入・運用コストや安定した通信環境の確保が必要など課題もある。農研機構東北農業研究センターなどはこのほど水管理作業の省力・効率化をテーマに技術検討会を開き、東北地域で実施した実証試験の成果が報告された。
【鳥取支局】「花粉採取作業の省力化に向け、花粉採取に適した栽培管理の検討と花蕾〈からい〉採取機の開発を進めている」と話すのは、鳥取大学農学部の竹村圭弘〈たけむら・よしひろ〉准教授。技術開発を進め、「国産花粉の安定供給を求める各産地からの要望に応えたい」と話している。鳥取県で生産されるナシ「二十世紀」をはじめとする果樹類の多くは、人工授粉が必須だ。受粉に必要な花粉の調達は、高所作業での重労働となっている。近年は輸入花粉を利用する生産者が増加し、依存率は全国のナシの約30%。しかし、輸出国で病害が発生した場合、日本への供給は停止し、花粉量の不足と価格高騰が想定される。そのため、各産地から国産花粉の安定供給を求める要望が高まり、「花粉採取作業の省力化」と「花粉使用量削減」につながる技術開発が急務となった。花粉採取作業の省力化に向けた栽培管理は、ナシの花粉採取樹を低樹高ジョイント仕立てにして一斉採花すると、採取効率が棚栽培や立ち木栽培に比べ1.5倍以上向上したという。また、株式会社サンオーコミュニケーションズと連携して「手持ち式花蕾採取機」を開発。把持〈はじ〉棒の先端に小型モーターとブラシ状のゴムコードを取り付けた機械で、高速回転させたゴムコードを花そうに当て花蕾を落下させる。花蕾は、樹冠下に設置したブルーシートで回収。慣行の手摘み作業と比べ約7割の省力化に成功した。竹村准教授は「花粉の使用量削減のため、受粉機の開発にも積極的に取り組んでいる」と話す。その一つが「静電風圧式受粉機」。花粉に静電気を帯電させ、風圧で噴射することで花粉付着率が増加し、花粉使用量を削減できる。花粉付着数は慣行機と比べ約9倍になり、花粉使用量を慣行機より7~8割削減しても結実率は同等だという。
〈写真:資料を基に説明する竹村准教授〉
福井県若狭町 太田 忠〈おおた・ただし〉さん(53)
2020年に若狭町に移住し、岩屋地区で特産の「岩屋梨」を55アール、モモを10アールで生産しています。サラリーマン時代に兵庫県で農業研修に参加して、自然の中で伸び伸びと作物を育てる農業に魅力を感じ、就農について考えるようになりました。そんな中で、福井県が実施するふくい園芸カレッジ制度を見つけ、18年に研修生として野菜やメロンなどの栽培技術を学びました。カレッジの授業の中で学んだ果樹栽培に興味がわいたこともあって、出身地に近い若狭町のナシ産地で岩屋なしの生産者を募っていることを知り、研修が終了した20年に若狭町へ移住、ナシ生産者として就農しました。生産し始めてから4年目を迎え、毎日愛情を込めて栽培していますが、いよいよ収穫という時期になって、台風による落果やヤガ類の吸汁などで何度も大きな被害を経験しました。農業は自然相手の営みなので仕方ないことですが、最近の気象の変化は本当に心配です。仲間からのアドバイスで果樹共済に加入していましたが、22年に収入保険に切り替え、農業のいろいろなリスクに備えています。収入保険は、すべてのリスクに備えられ、農産物の価格低下による収入減少も補償の対象となるので心強いです。これからも岩屋梨を生産し、たくさんの人にそのおいしさを味わってもらえるように頑張ります。
(福井支局)
〈写真:「これからいろいろな果樹の栽培にも挑戦してみたい」と太田さん〉
【新潟支局】新潟市西蒲区国見の「農業生産法人株式会社くにみ農産」では、水稲の乾田直播栽培と小型無人機(ドローン)による除草剤などの散布を組み合わせ、作業の省力化を図り、作付面積の拡大を目指している。同法人では直播栽培を約4ヘクタール実施。そのうち1.2ヘクタールの大規模圃場で乾田直播を試験的に取り組む。同社の齋藤修吾代表(73)は「通常の栽培方法に劣らない収量や品質を確保できれば、限られた人員の中でさらなる面積拡大のカギとなるのでは」と話す。播種は圃場をレベラーで整地した後に、乾田専用の播種機を使用。代かきをしなくても良いため、作業時期を分散できる。除草剤は自己拡散性のある粒剤タイプを散布し、効率化を追求する。「ドローンでの散布は広範囲に均一にでき、30分ほどかかっていた作業が5分ほどで終えられます」と齋藤代表。肥料もドローンで散布できれば、さらなる省力化が期待できる。暑い時期の作業が軽減され、体の負担が少ないことも利点だ。齋藤代表は「この栽培方法が軌道に乗れば、大規模圃場の利点を最大限に生かし生産性が向上します。作業の省力化は従業員の負担軽減に直結するので、積極的に取り組んでいきたいですね」と話している。
〈写真:乾田直播圃場で、除草剤散布の準備をするくにみ農産の従業員〉
【大阪支局】「頑張った分だけ自分に返ってくるのが農業の魅力」と話す河南町の岡本てるよさん(51)。イチゴをハウス4棟10アールで栽培し、観光農園「白ゆりファーム」には年間300人が訪れる。イチゴは道の駅かなんなどにも出荷し、朝取りで熟度と大きさを大切にしているという。府が開催する「いちごアカデミー」で技術を学び、2020年に就農した。従業員4人は女性ばかりなので、「力仕事はとにかく大変」と岡本さん。アカデミーの仲間とは卒業後も交流があり、困ったときは助け合うことで地域とのつながりを実感する。高設栽培をを取り入れたハウス内は、ゆったりとした空間を届けたいという思いから、車いすでも通りやすいように幅を広くするなど工夫を凝らす。今後は夫が経営するデイサービスセンターと連携し、施設利用者が農作業に関われる農福連携の取り組みを進めるという。
〈写真:イチゴを収穫する岡本さん。「分からないことがあれば先輩農家がすぐに駆け付けてくれます」と話す〉
【広島支局】愛媛県今治市出身の秋山直樹さん(25)は、2020年に広島県大崎上島町へ移住し、レモン88アール、「石地みかん」10アールなどを栽培。「レモンの用途は幅広く、需要が高まっている」とレモンを主とした経営に取り組み、今年12月には初出荷を迎える。農業を始めるに当たり、近隣農家から荒廃地や竹林を譲り受け、自力で伐採・整備した。レモンの苗木を500本植栽し、生育を促すため、液肥を週1回与えている。今年、レモンは約2千キロの収穫を見込んでいるという。収穫量の7割を青果、残り3割を果汁としてJAに出荷する予定だ。秋山さんは「今はまだ枝張りが短く、枝に隠れる果実が少ないので管理が行き届きやすく、見栄えの良いものが多い。今後は枝が広がり、管理は難しくなってくるが、その分を果汁用として出荷していきたい」と話す。
〈写真:「町の生産者と一体となって産地を盛り上げ、将来は産地を代表するような農家になりたい」と秋山さん〉
▼電車でぐずり始めた幼児にスマホを渡してあやす。動画視聴やゲームをさせているようだ。最初に見たときは驚いたが、最近は買い物に出かけた際などベビーカーの幼児がスマホをいじる姿をよく見る。何をしても泣きやまず途方に暮れた子育て経験を踏まえれば、現代的なあやし方と認めるべきなのだろう。
▼内閣府の調査では、青少年の98.5%がスマホなどの機器でインターネットを利用し、0~6歳の未就学児も約7割が利用経験があるそうだ。未就学児の多くは親のスマホなどを使うが、小学生になると専用機器の保有率が増え、10歳以上で6割超になる。
▼スマホの普及で日常となったインターネットだが、課金などのトラブルや犯罪に巻き込まれる例も多い。総務省は、保護者が青少年の発達段階に合わせて利用を適切に管理するよう促している。特に利用が増える中学や高校の入学時期の啓発が効果的という。
▼ただ、中学生、高校生ともなれば、親の知識や経験が追いつかないほどスマホを使いこなす。今は成人になった子に話を聞くと結構トラブルもあったそうだ。自分で解決できたなら余計なことは言わない。このごろは子どもたちがスマホの先生だ。