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今週のヘッドライン: 2023年07月 2週号

高知で完熟リンゴ 土作り重視し全て袋かけ(1面)【2023年7月2週号】

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 「高知でおいしいリンゴ作りを目指しています」――高知県佐川町二ツ野の土本観光果樹園代表・土本誠さん(48)は、60アールの園地で県内では珍しいリンゴの生産に努め、多くの来園客を呼び込んでいる。色づきや日持ちで劣るとされる暖地で、土作りを重視し、病害虫の発生・まん延防止へ適期防除を徹底するとともに品質向上も兼ねて有袋栽培を実践する。「秋の結果を楽しみに日々作業に向き合えるのがリンゴ栽培の面白さ」と誠さん。多くの人に完熟リンゴを味わってもらおうと園地で汗を流している。

(1面)

〈写真:「ユーチューブ(動画投稿サイト)なども参考に栽培技術を研究しています」と誠さん〉

集積・集約の加速化へ 策定始まる「地域計画」(2面・総合)【2023年7月2週号】

 地域の話し合いで将来の農地利用の姿を明確にする「地域計画」の策定が各市町村で始まっている。おおむね10年先を見据えて地域の農地と担い手を結び付け、地域農業を次の世代に引き継ぐのが狙いだ。高齢化や人口減少で農業者の大幅な減少と耕作放棄地の増加が予想される中で、農地の集積・集約化で効率的な生産を促すとともに、用水路の管理や獣害対策など集落としての活動方針も協議しておきたい。中小規模の多様な経営体をはじめ幅広い関係者による合意形成が大切だ。

(2面・総合)

2023年農業経営体数92万9400に減(2面・総合)【2023年7月2週号】

 農林水産省は6月30日、2023年農業構造動態調査結果(2月1日現在)を公表。全国の農業経営体数は前年比4.7%減の92万9400となった。10年前の14年(147万1200)と比べて3分の2に減少した。
 会社法人などの団体経営体数は同1.5%増の4万700だったものの、高齢化などで個人経営体は同5%減の88万8700となっている。

(2面・総合)

「雇用就農資金」第2回募集スタート 雇用就農者の確保・定着を後押し (3面・ビジネス)【2023年7月2週号】

 農業に従事する人材の確保・定着が急務となる中、「就農雇用資金」の2023年度第2回募集が今月5日から始まった。49歳以下の就農希望者を新たに雇用する農業法人などに資金を助成する制度で、新規雇用就農者1人当たり年間最大で60万円または120万円を最長4年間支援する。募集期間は8月8日まで。支援のタイプなど事業の概要を紹介する。

(3面・ビジネス)

夏野菜おいしく食べきる 作り置きアイデア紹介 (5面・すまいる)【2023年7月2週号】

 旬のトマトなどはおいしい反面、豊作で一度に大量に手に入り、家族などで食べきれない場合もある。静岡県函南町の野菜農家で、野菜ソムリエプロの神尾かほりさんに、トマトを中心に夏野菜をおいしく食べきる保存調理アイデアを教えてもらう。

(5面・すまいる)

電柵の効果補強 傾斜地で使いやすい塗装3年でも劣化せず(7面・営農技術・資材)【2023年7月2週号】

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 山梨県総合農業技術センターでは、傾斜地農地の土留めとして使われるコンクリートの上面に導電性塗料を塗布する方法で、電気柵の効果を高める技術を開発した。電気が通りやすくなり、縁に乗った害獣を感電させて圃場への侵入を防ぐ。ブドウ園地での試験では3年間、導電性を維持したと確認した。塗料一式は5月から商品化された。中山間地に多い傾斜地農地で電気柵を活用しやすくなり、獣害の防止効果が高まると期待されている。

(7面・営農技術・資材)

〈写真:土留め上面に塗布された導電性塗料を指す本田主任研究員〉

「害獣罠捕獲検知システム」開発 電波が弱い場所でも使用可【7月2週号 岩手県】

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 【岩手支局】岩泉町袰綿〈ほろわた〉の澤里寛行さん(46)は、独自に開発した「害獣罠〈わな〉捕獲検知システム」と、ドローン(小型無人機)を獣害対策に利用。ツキノワグマによる農作物や人への被害が多発する同町は、澤里さんの取り組みに期待を寄せる。同町内では2022年、有害鳥獣による被害が104ヘクタールで3605万円に上った。住民がツキノワグマに襲われる被害も4件発生している。岩泉猟友会員の澤里さんは、プログラマーの経験を生かし、21年に「害獣罠捕獲検知システム」を開発。昨年特許を取得した。システムは、害獣の捕獲を検知し、インターネット回線を経由して遠隔地に情報を発信。設置したカメラからの画像をAI(人工知能)技術で解析し、わなの扉の開閉や害獣の有無を判定する。電話回線ではなくIoT(多様なものをインターネットで制御する仕組み)向けの回線を利用するため、電波が弱い場所でも使用可能だ。「遠隔地から判定できるので安全性が高い。山中に設置したわなの見回りや点検作業を効率よく実施できる」と澤里さん。昨年、同システムに加えてドローンを使った獣害対策を始めた。上空140メートルから圃場を見回り、害獣の行動様式を分析。見通しが悪い圃場を安全に巡視できるほか、わなの設置場所の適切な選定につながる。「獣害を恐れて作付けをやめた農家がいる。住民の安全確保とともに、農業への悪影響を防ぎたい」。同町は昨年、捕獲事業でツキノワグマを31頭捕獲したほか、電気牧柵の設置費用を補助するなど、対策に取り組む。「澤里さんのシステムの独自性や安全性に注目している」と同町農林水産課の熊谷渓太主事補。町内ではイノシシの被害も発生しており、「イノシシ捕獲のための講習会を開くなど対策を進めたい」と話す。

〈写真:「自分の知識と技術を獣害対策に役立てたい」と澤里さん。今年1月に一等無人航空機操縦士の資格を取得した〉

収入保険・私の選択 雇用守るため加入は不可欠【7月2週号 山口県】

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山口県萩市  榎谷 紘司〈えのきだに・こうじ〉さん(35)
 私が主に栽培するイチゴ「さちのか」は、お菓子屋さんの需要が高く、地元でも好評です。苗を定植する直前の昨年9月上旬に、疫病と炭疽〈たんそ〉病の被害に遭いました。1年かけて育苗するため、今期出荷に間に合わせるための苗を新しく育てることはできません。加えて、最近は新品種の人気に押され、さちのかの苗を取り扱う業者が少なく、買うこともできませんでした。被害拡大を防ぎながら定植しましたが、その後の生育は良くなく、寒暖差も影響して収穫量が例年に比べ40%減少しました。収入保険に加入しているおかげで、収入減少の補てんができ、新たに導入した機材費などの返済のめどが立ちました。保険金等の見積もりツールは自分で入力してすぐに金額が分かるので、今後の計画を立てる上でありがたいですね。収入保険は、経営規模の拡大を考慮して基準収入金額を設定できることが加入の決め手でした。失敗を恐れることなく、チャレンジすることができる頼もしい保険です。経営者という立場からも従業員の雇用を守るため、加入は必要不可欠です。
 ▽イチゴ30アール、野菜2.7ヘクタール
 (山口支局)

農機を操作して50年 法人の米麦生産に貢献【7月2週号 香川県】

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 【香川支局】まんのう町の関美智子さん(69)は、農事組合法人未来ファーム下分で、農業機械を扱うメンバーとして作業に奮闘する。「農業機械が好きで、運転できることが誇り。5月に新品のコンバインで麦を収穫しました。大きな機械は運転しがいがあります」と最新式の農業機械も乗りこなす。同法人は2020年9月に地域の農地を集積して発足。水稲5.3ヘクタール、麦5.8ヘクタールを作付ける。メンバーは50代から70代の男女13人で、農業機械を扱えるのは関さんを含めて4人だ。同法人の近藤茂義代表理事(72)は「関さんは男性メンバーでも尻込みするような大型機械にも物おじしません。機械を扱えるメンバーが仕事で参加できない平日の作業では、特に重要な戦力です」と高く評価する。結婚を機に就農した関さんは、義父とともに米麦やタバコ、野菜を大規模に作付けしてきた。就農直後からコンバインやトラクターを運転し、操作歴は50年近い。「早くから機械作業を任せてくれた義父の方針が今の自分や法人の役に立っていると思うと、感謝しかないですね」

〈写真:「自動車より農業機械に乗る方が楽しい」と関さん〉

世界一辛いトウガラシ栽培 加工品販売に手応え【7月2週号 大阪府】

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 【大阪支局】高槻市で「オーガニックファームHARA」を営む末延冬樹〈すえのぶ・ふゆき〉さん(37)は、世界一辛いとギネス世界記録に認定されるトウガラシ「キャロライナ・リーパー」を30アールで栽培し、年間約1トン収穫。一味唐辛子をはじめ加工品の製造・販売にも取り組む。末延さんは2016年に同市の原地区で約10アールの畑を借り、少量多品目野菜の栽培に挑戦。しかし、通販で出荷した作物が再配達になり野菜が傷むなどの悩みを抱えていた。そこで「何か特異性のあるものを作りたい」とトウガラシに目を付け、これまでに7品種ほど試作し販売を試みた。先輩農家からは「原地区ではトウガラシの栽培は無理だ」と言われたが、研究熱心な末延さんは、畝を高くするなど工夫し、キャロライナ・リーパーの収穫にこぎつけた。その後、加工品の製造にも取り組む。テレビ番組でキャロライナ・リーパーが取り上げられたことをきっかけに、月1、2本の売り上げだった一味唐辛子が1日に100本売れ、「今後の見通しができた」と振り返る。キャロライナ・リーパーの種は開発者から直接購入。魚粉、海藻、カニ殻などを混ぜて完全発酵させた有機肥料を使って育てる。栽培はとても繊細で、発芽から移植までは温度管理などに特に気を使うという。加工は、洗浄後に香りを飛ばさないように専用の乾燥機で3日間かけて乾燥させた後に粉砕。保護用ゴーグルが必須で、手袋は何枚も重ねないといけないほど刺激を伴うつらい工程だ。主にネット販売で、「しんどい思いをして作ったものが売れるのはうれしい」と末延さん。「栽培面積を増やすのは難しいので、加工品の種類を増やしていきたい」と話す。

〈写真:「手間暇かけて大切に育てている」と末延さん〉

防風林「十分に役割を果たしている多面的機能交付金【2023年7月2週号】」

 ▼財務省の財政制度等審議会は先ごろ、「歴史的転機における財政」と題した建議をまとめ、鈴木俊一財務相に提出した。地球環境問題や安全保障環境、格差の固定化・拡大など歴史的な転機となり得る場面にある中で財政の健全化が急務と訴えている。
 ▼農業関係の施策では、食料の安定供給に資する農地の集積・集約化をさらに進め、多面的機能支払交付金や中山間地域等直接支払交付金による支援継続も明記した。ただし、営農が必要な農地との条件付きで、営農継続が難しい農地は放牧や植林など粗放的に低コストで管理する総合対策の活用を促すとした。
 ▼気になるのは多面的機能の評価だ。農林水産省が試算した年間1兆7千億円の政策効果の大半が「保健休養・やすらぎ」で、239億~358億円とされた「洪水や土砂災害の防止」効果は本年度の予算額(487億円)を下回ると指摘した。
 ▼水田活用交付金は、同審議会の建議などを受け「5年に1度の水張り」と要件が厳格化された。やすらぎを生む予算こそ大事にすべきだろう。

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