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今週のヘッドライン: 2023年06月 2週号

ミカン産地をつなぐ 人材確保へ新規就農プロジェクト(1面)【2023年6月2週号】

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 三重県南部に位置する御浜町では、基幹産業であるミカン産地の維持・振興へ向け、新規就農促進プロジェクトに力を入れている。人材確保の窓口として昨年3月に立ち上げたプロモーションサイト「青を編む」では、海や山の"青"など町の魅力を発信するだけでなく、農業体験の案内から移住者の紹介、1人でも無理なくできる経営モデルの提案や研修などの支援までミカン農家への"道のり"を分かりやすく示す。サイト開設後の1年で30件近くの問い合わせがあり、今年4月までにIターンを中心に9人が就農を目指して研修を開始している。

(1面)

〈写真:鈴木さん(右)の指導を受ける研修生の宮部さん(中)と徳永さん〉

東・西日本で豪雨災害 6県に線状降水帯(1面)【2023年6月2週号】

 本州付近に停滞する梅雨前線に向かって台風2号周辺の非常に暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で2日、西日本から東日本の太平洋側を中心に前線の活動が活発になり、大雨に見舞われた。
 高知県や和歌山県、奈良県、三重県、愛知県、静岡県では「線状降水帯」が発生した。和歌山・愛知・静岡3県の一部地域では、警戒レベルのうち危険度が最も高い警戒レベル5に当たる「緊急安全確保」が発令されるなど、各地で記録的な豪雨となった。人的被害や住宅被害をはじめ、農業関係でも土砂災害や農作物の浸水・冠水被害などが多数確認されている。

(1面)

700万へ誘客促進 農水省が農泊推進実行計画(2面・総合)【2023年6月2週号】

 農林水産省は2日、「農泊推進のあり方検討会」を開き、2025年度に年間延べ宿泊者数を700万人に増やす目標達成に向けた「農泊推進実行計画」を取りまとめた。コロナ禍で疲弊した農泊地域の実施体制を再構築し、マーケティング戦略に基づく誘客などを促進。所得向上や雇用創出などにつなげ、農山漁村地域の持続性確保を目指す。農泊は移住・定住を見据えた関係人口の創出に貢献すると期待されている。受け入れ側がメリットを感じ、主体的に取り組める支援など施策の具体化が求められる。

(2面・総合)

必ず文書で記録を 加工業務用野菜の契約取引(3面・ビジネス)【2023年6月2週号】

 食の外部化に伴い、加工・業務用野菜の需要が伸長し、現在では野菜需要全体の約6割を占める。加工・業務用野菜の取引を円滑に進めるには、契約書など文書で記録を残すことが重要だ。ただし、天候次第で規格や品質、数量、時期がばらつきやすく、生産者と実需者双方がリスクと対策を理解して文書化し、トラブルを最小限にする。生産者や実需者などで組織する野菜流通カット協議会が作成した「加工・業務用野菜標準基本契約取引ガイドライン2020」から、標準的な取引手順や契約の注意点などを紹介する。

(3面・ビジネス)

やってみよう! 田んぼの生きもの調べ(5面・すまいる)【2023年6月2週号】

 水田には多様な生きものが生息している。今年は田植え後の生きものを観察し、稲作を含めて田んぼの価値を見える化してみよう。宮城県大崎市のNPO法人田んぼ理事長の舩橋玲二さんに、田んぼの生きもの調べのこつを教えてもらう。

(5面・すまいる)

水稲の高温障害 葉色に応じた穂肥で回避(7面・営農技術・資材)【2023年6月2週号】

 新潟県長岡市で水稲30ヘクタール、大豆18ヘクタールを栽培する有限会社ホープイン中沢は、水稲の高温障害対策として生育や土壌条件に合わせた細やかな管理を実践。葉緑素計で計測し、葉色に応じて最大3回の穂肥を施用する。また、台風前は深水管理して通過後の高温の影響を防ぐ。駒野亜由美代表(44)は「観察は米農家の一番の仕事」と話す。記録的な猛暑だった2019年も「コシヒカリ」の1等米比率99%以上を確保した。

(7面・営農技術・資材)

強風対策の補強+園芸施設共済加入 経営拡充に専心【6月2週号 岩手県】

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 【岩手支局】「農業は自分のアイデア次第で自由に取り組める」と話すのは、花巻市矢沢の大信田真史〈まさひと〉さん(41)。同市内の農業生産法人から独立して就農し、ビニールハウスでピーマンとアスパラガスの栽培に取り組む。自らの営農スタイルを模索し、規模拡大と収益増加を目指して試行を重ねる。大信田さんは同市内の農業生産法人を2020年に退職後、岩手県立農業大学校に1年間通い、22年に就農した。昨年、面積を増やし、現在はハウス8棟で栽培する。大信田さんは「たくさんの先輩農家から農業を学ぶうちに、自分に合ったやり方で自由に農業をしてみたくなった」と話す。就農時、ハウスのパイプや農機具、灌水〈かんすい〉装置は農業生産法人に勤めていたときの知人や離農した人などから譲り受けた。「今年は補助金を利用して農機具を買い替えた。周りの方や補助金制度に助けられている。本当にありがたい」。ハウスは強風対策の補強を施した上で、園芸施設共済に加入して備えているという。今年は自動換気装置を導入した。ハウス内を適温に保つため、設定温度を超えるとハウス側面のビニールが巻き上げられる。「1棟ずつ温度管理をするのが大変だった。装置の導入後、ほかの作業や休憩に時間を取れるようになった」。一方で、機械に頼ったための失敗があった。自動灌水装置の設定を誤り、一部のハウスに水が行き届かなかったという。「まさか装置の設定ミスだとは思わなかった。便利だが、人の目で確認することが必要だと痛感した」。大信田さんは「自分に合った農業のやり方を探しながら、規模を拡大して売り上げを伸ばしたい」と意気込む。

〈写真:「二つの業者に土壌診断を依頼し、双方の診断結果を参考にして栽培する」と大信田さん〉

サブスク方式で通年出荷 夏イチゴのおいしさアピール【6月2週号 長野県】

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 【長野支局】「南信州いちご村」の屋号でイチゴの収穫に精を出す飯田市松尾の林紀行さん(31)。夏イチゴのPRも兼ねて、年間を通じてイチゴが購入できるサブスクリプション(定額制=サブスク)に2023年から取り組んでいる。通年出荷できるように、季節によって栽培地を変えるという紀行さん。標高の低い豊丘村で「章姫」「紅ほっぺ」「アウリ」など冬イチゴ7品種を約13アール、標高の高い阿南町新野では「サマーリリカル」「サマープリンセス」の夏イチゴ2品種を約20アール、それぞれハウスで栽培する。紀行さんは就農して4年目で、一般企業で流通の経験をした後、父の浩志さん(62)から農業を教わり、昨年1月に後を引き継いだ。元々はイチゴ狩りをメインにしていたが、新型コロナウイルス感染症をきっかけに、インターネットを中心とした出荷販売に切り替えた。国産の夏イチゴは酸味が強く、業務用のイメージが強いが、浩志さんがおいしい夏イチゴの生産ノウハウを持っていたこともあり、その魅力を多くの人に知ってほしいという思いがあったことも、サブスクを始めた理由の一つだ。今年は10件ほどにサービスを提供しているが、生産量を考えながら受け入れ件数を増やせればと考えている。「夏のスーパーなどでは取り扱っていない新鮮なイチゴを味わえることがサブスクの良さ」と紀行さん。「将来的には地域の夏イチゴ栽培者を増やしていきたい。その先駆けになれば」と話す。

〈写真:「自信を持ってお届けします」とイチゴをPRする紀行さんと妻の里沙さん〉

液剤散布ボート自作 大幅な時短実現【6月2週号 山形県】

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 【山形支局】三川町横山の太田伸吉さん(74)は息子の光佳さん(48)と、無線操縦式の水田用液剤散布ボートを自作。水田一面を自走させ、短時間での除草剤散布を可能にした。伸吉さんは2014年、ボディーボードの上に草刈機のエンジンと液剤タンクを搭載したボートを仲間と協力して試作。しかし、浮力や耐久性に課題があったため、船体にFRP(繊維強化プラスチック)を使用するなど改良を重ねた。現在のボートは、長さ130センチ、幅75センチ。26㏄エンジン(5リットルタンク、重さ13キロ)、35㏄エンジン(10リットルタンク、重さ15.5キロ)の2台を使用する。伸吉さんの圃場は、5年ほど前に畦畔〈けいはん〉の除去で大区画化され、作付面積は約30ヘクタール。ボートを活用することで作業時間の大幅な短縮を実現した。伸吉さんと光佳さんは「離農者が今後増加して栽培面積が拡大しそうなので、省力化しながら営農していきたい」と話す。

〈写真:「既製品より低コストに仕上がった」と話す伸吉さん(左)と光佳さん〉

緑肥にクリムゾンクローバー 特別栽培米に注力【6月2週号 福井県】

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 【福井支局】「集落の農地を残していくため、独自の取り組みに挑戦していきたい」と話すのは、あわら市上番〈かんばん〉の農事組合法人サンファーム上番の代表を務める岡嵜清弘〈おかざき・きよひろ〉さん(65)。緑肥作物としてクリムゾンクローバーを利用し、景観も楽しみながら圃場管理に力を注いでいる。会社員だった岡嵜さんは担い手農家の手伝いをしていたが、周囲からの要請で2022年に代表に就任。組織がある地域は農地の集約が進んでおり、規模拡大はあまり望めないため、今年は270アールの圃場で県のブランド米「いちほまれ」の栽培を開始した。どうせ取り組むなら、より付加価値の高いものをと考え、農薬や化学肥料を使わない特別栽培にチャレンジ。化学肥料をクリムゾンクローバーの緑肥に変え、除草対策用の機械を新たに導入した。特別栽培に取り組む先輩に指導を仰ぎ、ほかの生産者と情報交換しながら、技術の習得に尽力する。岡嵜さんは「将来、若手が自主的に農地を引き継いでくれるような、夢のある農業を目指したい」と話す。

〈写真:クリムソンクローバーの赤と空、圃場のコントラストが色鮮やかだ(写真提供=サンファーム上番)〉

栽培が簡単、高い栄養価 オカワカメを特産に【6月2週号 大阪府】

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 【大阪支局】東大阪市で葉物野菜「オカワカメ」を栽培する小林茂一〈こばやし・しげかず〉さん(72)は、同市の特産にしようと普及に力を入れている。2010年に知人からオカワカメを紹介され、その食感と味に感動。翌年に苗を購入し、現在は2アールで栽培する。オカワカメは栄養価が高く、さまざまな料理に合うという。栽培が簡単なことから、小林さんは「市の特産品にできないか」と考え、テレビ取材を受けるほか、イベントに参加するなど、PRに力を注ぐ。活動が実り、市民の認知度は高く、今では市内の農家約30戸が生産。収穫は5月から10月末で、JAグリーン大阪直売所「フレッシュ・クラブ」で販売し、好評を得ている。

〈写真:「生産者が宣伝することで、商品への思いが一番伝わる」と小林さん〉

防風林「国民の合意形成は農政見直しの大きな課題【2023年6月2週号】」

 ▼2022年度食料・農業・農村白書は、序文で生産者の減少と高齢化に加え、世界的な食料情勢の変化や気候変動などにより、わが国の農業・農村は「大きなターニングポイントを迎えている」と強調。特集でも「将来にわたって食料を安定的に供給していくためのターニングポイントを迎えている」と記述する。
 ▼その特集では、世界的な人口増加や温暖化に伴う農産物の生産可能地域の変化など食料安全保障上の主要なリスクを解説。過度に輸入に依存する麦・大豆などの生産拡大や未利用資源の活用、適切な価格形成を実現するフードシステムの構築など政府による農政見直しの概要と必要性を説明する。
 ▼白書の特集は「消費者の理解を得ることも重要」とひと言で結ぶが、適正な価格形成など農政見直しの実現は国民合意が大前提だ。平時からの食品アクセス確保など格差問題への対応も求められる中、安さより適正価格を選んでもらう難易度は相当高い。
 ▼ただ、食料・農業・農村政策の見直しに"次"はない。政府にはその覚悟で改革と国民合意の形成に臨んでほしい。

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