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今週のヘッドライン: 2023年06月 1週号

平時からの食料安保を理念に 基本法検証部会が中間取りまとめ(1面)【2023年6月1週号】

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 農林水産省の食料・農業・農村政策審議会基本法検証部会は5月29日、食料・農業・農村基本法の見直しに向けた中間取りまとめを野村哲郎農相に提出した。食料をめぐる国内外の情勢が大きく変化する中、20年後を見据え、「平時から国民一人一人の食料安全保障の達成を図る」ことを基本理念とするよう提起。食料の安定供給の確保へ国内農業生産の増大や適正な価格形成に向けた仕組み構築などを盛り込んだ。政府は6月にまとめる「食料・農業・農村の新たな展開方向」などにも反映し、法改正に向けた作業を進めていく。

(1面)

〈写真:中間取りまとめを農相に提出(左は部会長・中嶋康博東京大学大学院教授)〉

生乳生産量見通し 5万2000トンの下方修正(2面・総合)【2023年6月1週号】

 Jミルクは5月26日、2023年度の生乳と牛乳乳製品の需給見通しを更新した。全国の生乳生産量は前年度比1.5%減の741万8千トンで、1月の見通しから5万2千トン下方修正した。北海道、都府県ともに前年を下回り、2年連続の減産となる。経産牛の早期リタイアなど生産抑制に懸命の努力が続く中、8月からの飲用等向け乳価の引き上げに伴う製品への価格転嫁は、牛乳・乳製品の消費を押し下げる可能性もある。酪農乳業関係者が一体となって需給ギャップの解消に取り組み、早期の需給安定化を図る必要がある。

(2面・総合)

秋肥 高度化成28%値下げ(2面・総合)【2023年6月1週号】

 JA全農は5月26日、6月から10月に適用する2023肥料年度の秋肥価格を公表した。基準銘柄の高度化成(15%―15%―15%)は春肥に比べて28%値下げした。単肥は石灰窒素を除く7品目は7~44%値を下げた。低調な荷動きやロシアとベラルーシへの経済制裁に参加しない国向けの原料輸出が継続され、肥料原料の国際市況が下落に転じたため。

(2面・総合)

台風・豪雨の対策を 収入保険と園芸施設共済のセット加入(3面・収入保険)【2023年6月1週号】

 農林水産省の「災害に強い施設園芸づくり月間」が1日から開始した。激甚化する豪雨や台風などの対策強化として、ハウスの補強など技術指導の徹底や農業保険への加入促進を重点的に行う。園芸施設共済は、補償額の上乗せ特約を選べば、築年数にかかわらず新築時の資産価値まで補償され、補償対象の追加や割引も充実し経営状況に合わせた選択が可能だ。また、施設内の作物へのリスクは、収入保険への加入でカバーできる。NOSAIでは、園芸施設共済と収入保険のセット加入を推進し、施設園芸農家の安定経営を後押ししている。

(3面・収入保険)

親子で作る簡単レシピ(5面・すまいる)【2023年6月1週号】

 6月は食育月間。家族で料理をし、食卓を囲むなど楽しく、気軽に、食を考える機会にしてみよう。親子料理研究家のいしづかかなさんに、子どもと一緒に料理を楽しめる簡単レシピを紹介してもらった。

(5面・すまいる)

「みどり戦略」技術カタログに58件追加(7面・営農技術・資材)【2023年6月1週号】

 農林水産省は5月26日、「みどりの食料システム戦略」の実現に貢献する技術カタログに、新たに58件の現在普及可能な技術を追加し、同省のホームページに公開した。技術の概要や導入による環境負荷低減の効果、留意点、問い合わせ先などをまとめている。このうち、水稲で鶏ふんや緑肥を活用して化学肥料を低減できる2技術を紹介する。

(7面・営農技術・資材)

園芸施設共済+収入保険 手厚い補償で安心【6月1週号 埼玉県】

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 【埼玉支局】「自然災害への不安は尽きません。園芸施設共済と収入保険に加入することで、万が一に備えています」と話すのは、深谷市の木村三夫さん(70)。連棟ハウス2棟20アールでキュウリを、露地60アールでネギとカリフラワーを栽培する。キュウリの品種は「まりん」で、3月と8月に定植。全量をJAふかやに出荷する。土壌診断を年に2回受けて圃場の状態を把握。診断結果に基づいて有機肥料を施す。秋は病虫害が発生しやすいため、キュウリの状態を注意深く観察し、兆候が見られたときは発生初期に防除する。「高品質なキュウリを作るにはハウス内の環境制御が重要です」と木村さん。樹勢を見て小まめに灌水〈かんすい〉をするほか、天窓の自動開閉装置を利用し安定した温度管理に取り組む。ハウス内はカーテンを2重に掛けて保温することで、冬や春先の寒い時期も無加温で栽培できるという。木村さんは、2017年10月に台風21号の影響で天窓の開閉装置と制御盤が故障する被害に遭った。激しい風でハウス内に雨が吹き込み、機材が漏電したことが原因だった。「台風が去った後に開閉装置を確認して、まさかと思いました。NOSAIに連絡をしたところ、すぐに職員が対応してくれたので安心しました」。12月までキュウリを収穫するため、適切な温度管理が引き続き必要だ。修理をするまでは、手動の巻き上げ装置で天窓を開閉して、ハウス内の温度管理に対応した。ハウス本体だけではなく、附帯〈ふたい〉施設も加入していたため、補償を受けることができた。加えて、新築時の資産価値の最大8割を補償する「復旧費用特約」を付けていたことが手厚い補償につながったという。収入保険で作物の被害をカバーしている。22年には野菜の市場価格が低下したため収入が減少し、保険金を受け取った。「深谷市では、22年6月に大規模な降ひょうに見舞われました。幸いにも被害は免れましたが、紙一重の状況でした。園芸施設共済と収入保険でリスクに備えつつ、これからも消費者の皆さんに喜んでもらえるキュウリを作っていきたいです」と話している。

〈写真:「農業保険に加入していることで、安心して栽培に取り組めます」と木村さん〉

収入保険・私の選択 好評の「かぼちゃ芋」増産へ【6月1週号 石川県】

230608_8.jpg 実家が専業農家で、農業者大学校を卒業後は父の下で働いていましたが、2015年に経営を分けて独立し、サツマイモ、スイカ、ブロッコリーなどを1.2ヘクタール栽培しています。県の農業青年グループ連絡協議会に加入して、地元の農家と情報交換し、互いを高め合いながら頑張っています。主力は奥能登で昔から作られている「かぼちゃ芋」です。黄金色で、糖度が高く、しっとりとしているのが特徴で、多くは干し芋に加工し、直売所や道の駅、東京のアンテナショップで販売し、好評を得ています。昨年は焼き芋専門店からの注文があり、販路を拡大中です。異常気象や価格の低下に備え、22年に収入保険に加入しました。サツマイモは契約栽培のため一定の収入は見込めます。しかし、全国で近年多発するサツマイモの基腐病に不安を感じたことが加入のきっかけです。収穫期の作業が深夜に及ぶことがあり、自身の病気やけがによる減収も補償してくれることが大きな決め手となりました。今後、化学農薬に依存しない病害虫管理として、緑肥作物の作付けを考えています。土壌バランスを整え、ハリガネムシやセンチュウなどによる被害の抑制に効果を期待しています。今年は水稲やカボチャ栽培を父から受け継ぎます。まずは経営の安定を図り、かぼちゃ芋の増産に向けて加工場の整備や農業機械の購入に投資し、さらに規模を拡大していきたいです。
 (石川支局)

〈写真:「お客さんの笑顔を思い浮かべて作っています」と前濱さん〉

牛床はコンポストバーン 乳房炎減少、肥料で提供【6月1週号 岡山県】

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 【岡山支局】牛の乳房炎対策にコンポストバーンの利用が勧められている。コンポストバーンとは、ふん尿と敷料を攪拌〈かくはん〉して発酵させた堆肥を牛床として利用するもの。発酵熱で大腸菌などの乳房炎原因菌が減少する。表面が乾燥しているため、乳房の汚れが少なく衛生的だ。岡山市で酪農業を営む妹尾始〈せのお・はじめ〉さん(63)は、2016年にコンポストバーンを導入した。牛床に戻し入れる堆肥は妹尾牧場で自家調製したものだ。ふん尿におが粉を混ぜて水分を調整し、温度を確認しながら十分に発酵させる。さらに納豆菌培養液を牛床へ散布することで、乳房炎原因菌の増殖を抑制し、良質な発酵を促すことができるという。高品質の堆肥は敷料に利用する以外にも、地域の農家へ肥料として提供する。妹尾さんの長女・優佳〈ゆか〉さんは「コンポストバーン導入後は乳房炎の発生が減少し、生乳の体細胞数が低く維持できるようになった。管理する上で最も重要なのは良質な堆肥作りと考えている」と話す。

〈写真:「堆肥の戻し入れ、攪拌作業は1日2回行う」と優佳さん〉

メンマ作り講座や竹炭の販売も 竹林は資源、広がる用途【6月1週号 山口県】

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 【山口支局】「荒れた竹林の竹を利用して、資源の循環活用につなげていきたい」と話すのは、山口市徳地の配電線保全伐採業・株式会社樹〈いつき〉の武石智絵〈たけいし・ちえ〉さん(48)。「高齢化が進み、力仕事のタケノコ掘りをする人が少なくなりました。竹は資源になるし、食材にもなります」と話す。同社は、全国各地で竹林整備に取り組む「純国産メンマプロジェクト」に参加し、昨年から竹を食材として活用。今年4月には地元の作業場でメンマ作り講座を開いた。「地元の新たな特産品になれば」と約1トンの生産を目指す。さらに竹炭の製造・販売のほか、無煙炭化器も販売する。「竹林整備から出た枯れ竹は、炭化すれば土壌改良材や畜産臭気対策に有効です。竹炭は地元の農家さん数人に無償で提供し、その効果を比較していただいています」と武石さん。成竹はチップやパウダーにすると堆肥作りに活用できるため、今後は製造に取り組む予定だという。武石さんは「竹はいろいろな活用方法があると思います。地域の資源として、竹の長所を生かしていきたいです」と話す。

〈写真:「純国産のメンマは、独特のにおいがなく、シャキシャキしておいしいですよ」と武石さん〉

省力、低コスト、通年出荷 多年草「エンジェルウイングス」【6月1週号 岩手県】

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 【岩手支局】八幡平市安代の八幡有城〈やはた・ゆうき〉さん(37)は、国内では同市だけで栽培される希少な多年草「エンジェルウイングス」の生産に取り組む。南米チリが原産のエンジェルウイングスは、同市とチリの国際交流をきっかけに、約2年の試験期間を経て2018年に同市内で栽培を開始。白いうぶ毛で覆われた厚みのある葉が特徴で、一年中観賞できる。露地とハウス7棟の合わせて100アールで、リンドウを中心に多品種の花きを栽培する八幡さん。エンジェルウイングスはリンドウの収穫が落ち着く秋ごろから栽培を始める。「寒さと乾燥に強く、小まめな水やりや冬季の暖房が不要なので、省力で低コストの生産ができる」。岩手県北地域の気候に耐えられるエンジェルウイングスの特性を生かし、通年出荷の経営を確立した。「より多くの人に知ってもらうため、栽培に力を入れたい」と八幡さん。「全国でも有名なリンドウ産地の安代で、リンドウのほかにもすてきな花があることを全国にアピールしたい」と意欲的だ。

〈写真:「消費者のニーズに応えるため、新しい品種を日々研究している」と八幡さん〉

防風林「短期間豪雨による災害が増加、十分に警戒を【2023年6月1週号】」

 ▼小学生の頃、親類が住む集落のすぐ近くで土石流災害があった。実家から車で20分ほどの距離であり、親類を訪ねる両親とともに現場を見た。山を背後に沢沿いに家が立ち並んでいた一帯は茶色く泥だらけになり、道路にも大きな石がゴロゴロしていた。26戸の家屋が全半壊し、死傷者も多く出た。自然災害の怖さを実感した体験だ。
 ▼記録を見ると、沢の上流で山腹崩壊が発生し、途中の砂防施設を破壊しながら流路の堆積物を巻き込んで集落を襲った。始め460立方メートルほどだった土砂は最後は3万立方メートルを超えたとみられる。大雨が原因だが、スキー場開発による樹林の伐採との関連性を指摘する声もあった。
 ▼先ごろ閣議決定された2022年度森林・林業白書は「気候変動に対応した治山対策」を特集する。治山対策と森林整備が進んで山の表面の浸食は減り、山腹崩壊など山地災害の発生件数は減少したという。しかし、温暖化の影響で短時間強雨の発生頻度は増しており、1カ所当たりの災害規模は増加傾向と報告する。
 ▼近年の災害の特徴を(1)表層よりもやや深い層からの崩壊の発生(2)流量増による渓流の縦横侵食量の増加(3)線状降水帯の発生などによる山地災害の同時多発化(4)洪水流量の増加による流木災害の激甚化――と分析。今後の対応では、治山施設の長寿命化と機能強化に加え、流域治水の関係者や国土交通省など他省庁との連携強化を進めると記述している。
 ▼今年は例年に比べ梅雨入りが早いようだ。台風の針路となる海域の海面水温が高く、台風が発達しやすい環境という。気象情報に注意し、早めの避難などを心がけたい。

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