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今週のヘッドライン: 2023年05月 4週号

乳牛の代謝プロファイルテスト 経営向上を後押し(1面)【2023年5月4週号】

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 NOSAI岡山(岡山県農業共済組合)では、乳牛の血液検査などを実施して健康状態を把握し、獣医師が酪農家に飼養管理などをアドバイスする代謝プロファイルテスト(MPT)に取り組んでいる。家畜共済の加入者が対象で、年1回は特定損害防止事業での対応により農家の金銭負担はない。2022年度は44戸で910頭に実施した。客観的データを示して具体的な改善方策を提案し、乳量増や事故低減など生産性の向上につなげ、飼料高騰により生産費が増大する中で酪農経営を支えている。

(1面)

〈写真上:NOSAI獣医師の診察を見守る安富さん〉
〈写真下:牛舎で改善策を話しあう小橋さん(左)と西川所長〉

2022年度農業白書 食料安保の強化を特集(2面・総合)【2023年5月4週号】

 政府は26日、2022年度「食料・農業・農村白書」を閣議決定した。「食料安全保障の強化に向けて」を特集し、世界的な食料需要の増加や国際情勢の不安定化などで高まる食料安全保障上のリスクなどを解説。わが国が将来にわたって食料を安定的に供給していくための「大きなターニングポイントを迎えている」と強調し、輸入に依存する麦・大豆などの生産拡大や国内肥料原料の効率的利用など過度な輸入依存構造からの転換を図る必要性を訴えた。

(2面・総合)

G7声明 食料危機は喫緊の課題(2面・総合)【2023年5月4週号】

 広島市で開かれた先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)が21日、閉幕した。同日の記者会見で岸田文雄首相は主要課題の一つである食料安全保障について「食料危機は、人々の暮らしに関わる喫緊の課題」と述べ、7カ国による首脳声明とともに、インドやブラジルなど「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国8カ国も含む広島行動声明をまとめたと成果を強調した。

(2面・総合)

梅ピクルスを楽しもう(5面・すまいる)【2023年5月4週号】

 "梅不二子"を名乗り、埼玉県越生町でウメ産地振興に活動する山口農園の山口由美さんは、簡単に作れる梅ピクルスをおすすめする。漬けた梅や汁は料理の風味付けにも使いやすく、梅シロップや梅酒以外の用途が広がる。傷果や梅干しの種などの利用法と併せ、旬の梅を余すところなく楽しむ農家の知恵を教えてもらう。

(5面・すまいる)

物流の2024年問題 検討会が最終まとめ案(6面・流通)【2023年5月4週号】

 トラックドライバーの時間外労働時間の規制が強化される「2024年問題」への対応について、国土交通省、経済産業省、農林水産省による有識者会議「持続可能な物流の実現に向けた検討会」(座長=根本敏則敬愛大学経済学部教授)は19日、物流の諸課題解決に向けた最終取りまとめ案を示した。一定規模以上の荷主企業や物流事業者に労働時間の削減などを具体化する中長期計画の作成と定期報告を義務付けることを提起。取り組みが不十分な場合の勧告など法的措置の検討も求めた。青果物物流など農業分野への影響も懸念され、非効率な商慣習の見直しなど関係者が一体となった対応が急務となる。

(6面・流通)

クリの自走式収穫機 作業時間3分の1に(9面・営農技術・資材)【2023年5月4週号】

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 茨城県は先ごろ、国内初となる自走式のクリ収穫機の実演会を開いた。農機具メーカーの株式会社オーレック(本社:福岡県広川町)と共同開発した。いがの収穫率はほぼ100%、実だけでは70~80%。トングを使った従来の手収穫と比較すると作業時間をほぼ3分の1に短縮できる。クリ栽培では作業の半分近くを収穫が占めており、大幅な省力化によって規模拡大や新たな担い手の確保などにつながると期待されている。

(9面・営農技術・資材)

〈写真:試験圃場を進むクリ収穫機〉

ハウス補強+園芸施設共済 安心して経営【5月4週号 大阪府】

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 【大阪支局】八尾市の浅井博〈あさい・ひろし〉さん(52)は、両親・妻との4人でエダマメ、若ゴボウをハウス6棟14アールで生産する。「近年はいつ災害が起こるか分からない。安心して経営を続けるために園芸施設共済は必要だ」と話す。浅井さんは37歳のときに勤めていた会社を退職し、農作業などを父から5年間教わり、経営を継いだ。園芸施設共済には父の代から加入。浅井さんが就農して間もなく、春先の突風で被覆材に被害が出たことがあり、「加入していなかったら補てんしてもらえなかった」と加入の必要性を強く感じたという。2017年には2棟が、19年には2棟が、いずれも突風でパイプと被覆材が被害に遭った。「NOSAI職員が迅速に対応してくれた。修繕費用を補てんしてもらい非常に助かった」。現在のハウスは、タイバーでの補強と防風ネットの設置で対策を強化している。JA大阪中河内相互出荷組合の代表を務める浅井さんは、組合員と話し合って20年に集団加入。これで掛金率が5%、事務賦課金が10%引きとなった。「資材費などが高騰する中、負担軽減は助かる」と笑顔を見せる。「18年の台風のような災害級の風が吹いたときのために、絶対に加入しておく方がいい。安心感がある」と未加入者へアドバイスする浅井さん。今後は「現状維持しつつ、雇用問題を解決しながら面積拡大を目指したい」と話す。22年には収入保険に加入し、安定経営により一層努める。

〈写真:突風対策として補強したタイバーを示す浅井さん〉

収入保険・私の選択 人への投資を重視、若手雇用も【5月4週号 岡山県】

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岡山県岡山市  國定 俊彦〈くにさだ・としひこ〉さん(40)
▽有限会社國定農産代表取締役社長▽水稲(もち米・酒造好適米・加工用・飼料用)167ヘクタール、二条大麦37ヘクタール、裸麦49ヘクタール、ほかにハトムギ、青大豆、黒大豆を栽培

 岡山市南区藤田地区を中心に米・麦・大豆など約170ヘクタールを経営し、加工品としてハトムギ茶・黒豆コーヒーを販売しています。大学卒業後は農業と無関係の会社に13年勤めた後、5年前に國定農産で働き始め、2023年4月に父親の後を継ぎ社長に就任しました。農業に関しては従業員が先輩なので、要望・アイデアを積極的に取り入れて効率化を進めています。機械やシステム面だけではなく、人への投資を重視しています。従業員それぞれが経営者感覚で主体的に動き、観察力を高めて、素早い対応ができることを目標としています。この会社で働いていて良かったと思ってもらいたいですね。地域に根差した会社になるため、最近では農業に興味を持ってもらえるようなイベントを開催し、近所の方にも野菜販売で出店してもらいました。400人ほど来場いただき、特に農業機械に乗って記念撮影をする子供の笑顔がうれしかったです。高齢化や後継者不足による離農に対応するため、受け皿として地域に貢献し、面積の増加に伴い従業員を増やして若い人の雇用を進めたいと考えています。広報面にも力を入れ、特に売り上げの中心となるハトムギ茶をより多くの方に宣伝できるよう、ショッピングモールでの試飲に挑戦したいです。経費高騰や異常気象の不安はありますが、収入保険に加入しているため新しいことに取り組みたいです。将来は息子に安心して譲ることができる会社にしたいですね。
 (岡山支局)

〈写真:「自分なりの経営理念で会社をより良くしたい」と國定さん〉

好評の直売、独自の品種も 多肉植物専業に手応え【5月4週号 島根県】

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 【島根支局】出雲市美談町で多肉植物を栽培する「飯塚農園」の飯塚広光さん(58)・真理子さん(58)夫妻。農業を始めた26年前はシクラメンを生産していたが、コストなどを考えて模索した結果、多肉植物にたどり着いた。現在はハウス3棟(15アール)で栽培する。多肉植物の栽培は、約16年前に親株集めから始め、10年前に多肉植物だけの経営に切り替えた。「多肉植物は種類が多く、一年中楽しめます。育て方がそれぞれ違い、とても興味深いです」と広光さん。2018年の大寒波では栽培していた多くが凍って枯れたが、残った株を育てるなどで、今では以前より種類が多くなり、オリジナル品種も手がけている。癒やし効果があるといわれる多肉植物は人気が高く、農園やイベントでの販売では多くの人が訪れるという。広光さんは「お客さまとお話しが直接でき、その中で教わることが多く、やりがいになっています。園内には多肉植物だけではなく猫もたくさんいますので、気軽に遊びに来てください」と話す。

〈写真:「気軽に多肉植物を楽しんでほしい」と飯塚さん夫妻〉

遊休農地借りて桑栽培 縄文桑うどんを開発【5月4週号 岩手県】

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 【岩手支局】一関市藤沢町で農家民宿「観樂樓〈かんらくろう〉」を営む佐藤静雄さん(79)は、自家産の桑の葉を粉末加工して練り込んだ「縄文桑うどん」を販売する。桑に関する講座で効能を知り、2010年に遊休農地15アールを借りて桑栽培を始めた。縄文文化で町おこしをする同町を盛り上げようと「縄文桑茶」や「縄文桑パウダー」など、加工品の開発・販売に取り組む。佐藤さんは「加工品の売り方や活用法の考案に悩んでいたが、卸し先で桑パウダーをうどんに練り込んで提供していることを知り、商品化を考えた」と話す。毎年8月ごろに地域住民と共に葉を1トン収穫し、乾燥などの加工は県内の業者へ委託する。桑うどんは同民宿でも提供し、好評を得ているという。「桑は血圧や血糖値を下げる効果があるといわれているが、一般には知られていないと感じる」と佐藤さん。「桑うどんはゆでた翌日でものびにくいので、いろいろな食べ方を提案したい」と意気込む。桑うどんは、道の駅かわさきのほかインターネットで販売する。

〈写真:桑うどん(1袋200グラム、税込み356円)を手に佐藤さん〉

傷物や規格外を活用 野菜スムージー販売【5月4週号 鹿児島県】

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 【鹿児島支局】規格外や傷で出荷できない野菜を有効活用しようと、安楽宮子さんは鹿屋市下祓川町のベジショップ・トッキーで、スムージーの製造・販売に取り組む。実家の農業法人で働いている際、規格外を理由に野菜が流通しない現状に直面した安楽さんは、「大事に育てた野菜をうまく活用できないか」と、野菜をふんだんに使ったスムージーを発案。2022年3月に販売所をオープンさせた。スムージーには添加剤・着色料は使わず、素材の味を十分に生かして甘さ控えに仕上げている。地域内外問わず多くの人が購入に訪れるという。安楽さんは「将来は県内各地の特産野菜を使用したご当地スムージーを作っていきたい。農家さん同士をつなげる場にもしていけたら」と意気込む。

〈写真:スムージーを提供する安楽さん。「期間限定商品など情報をSNS(交流サイト)で発信しています」と話す〉

防風林「値上げを騒ぐだけでは食料安保の理解は広がらない【2023年5月4週号】」

 ▼鶏卵の高値が続く。JA全農たまごが公表する相場情報では、卸売価格はMサイズ基準値でキロ当たり350円。過去最高値となった前月と同額で前年同月比では6割高だ。マスコミは「また値上げ」「物価の優等生に異変」などと報道を繰り返すが、少し冷静になれないか。
 ▼最近の報道から海外の鶏卵価格を拾うと、10個では香港で約700円、欧州のパリは約千円、ロンドンは約800円、米国は都市部平均で12個で約550円、米国ハワイになると約1300円など。欧州の鶏卵価格は前年比で3~8割高との報道もあり、平時の価格水準自体が高いのかも。
 ▼採卵鶏の生産費の約半分は飼料費が占め、安価な輸入飼料が支えてきた。今後、食料安全保障強化の一環で飼料の国産化を進める場合、"適正価格"の実現には値上げが必要になる可能性もある。消費者の理解醸成ではマスコミの冷静な対応も欠かせない。
 ▼国内養鶏場での高病原性鳥インフルエンザの発生は4月7日が最後で、穀物の国際相場も一時期に比べ落ち着いている。課題は多いが、まずは国内生産の回復と安定供給の早期実現を期待したい。

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