今週のヘッドライン: 2023年04月 3週号
福岡県宗像市牟田尻の清水陽介さん(44)は、大豆向けに開発された部分浅耕一工程播種技術を麦にも活用。2022年産小麦「チクゴイズミ」は10アール当たり収量573キロ(JA平均452キロ)、全量1等を達成した。播種前は、露地キャベツの定植などと作業が競合する中、非選択性除草剤散布と組み合わせて稲刈り後の荒起こしをせず、省力化に努めている。麦の収量に直結する排水対策は徹底する一方、中耕・土入れは省き、赤かび病の防除は作業委託する。メリハリを付けた複合経営を展開し、収益性を高めている。
自民党は12日、農産物輸出促進対策委員会と米の需要拡大・創出検討プロジェクトチーム(PT)の合同会議を開き、米の輸出拡大に向けて事業者の意見を聴取した。茨城県那珂市の老舗酒蔵である木内酒造株式会社は、原料に国産米を使うウイスキーのブランド化と輸出の取り組みを報告。ウイスキー造りに必要な麦芽の半分は国産米に置き換えが可能で、約1.2万トンの需要が生まれると試算した。日本酒(清酒)などアルコール飲料は海外の日本食ブームなどを背景に、今後も堅調な需要が見込まれる。安定した需要が見通せる戦略作物への作付け転換では、稲作を維持できる酒造用米は有望な選択肢の一つだ。酒蔵ツーリズムなど観光による地域活性化などの展開も期待されている。
生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(生活クラブ連合会)は12日、東京都内で「酪農応援!生活クラブ牛乳フォーラム」を開催。経営悪化に苦しむ酪農家の危機的状況を共有し、牛乳・乳製品の消費拡大などを通じて酪農現場を応援しようと呼びかけた。生活クラブ連合会の村上彰一会長は「単に安ければいいという消費者の存在がこういう事態を招いたともいえる。消費者の責任は非常に大きい。生産の実態を見て、理解して、きちんと選択(購入)することが大事だ」と訴えた。
2022年産大豆の全国の10アール当たり収量は160キロで、前年産を5%下回った。東北や北陸で発生した開花期以降の大雨や日照不足により、着さや数の減少や粒の肥大抑制があったためだ。大豆は天候不順や湿害の影響を受けやすい。近年は豪雨被害も多発しており、収入保険または大豆共済への加入が欠かせない。大豆共済の仕組みについて、稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。
ふりかけや、おかずみそなど、お米のおいしさを引き立てる「ご飯のおとも」。炊きたてに乗せると、見た目にも食欲が刺激され、ついおかわりしたくなる。インターネットの生活総合情報サイト「All About(オール アバウト)」で、ホームメイドクッキングガイドとして活動する黒田民子さんに、身近な食材で手軽に作れ、料理のアレンジにも使える2品を紹介してもらう。
水稲19ヘクタールで経営する千葉県栄町の藤﨑賢治さん(55)は、計2800枚を育苗する。主力の「コシヒカリ」と「マンゲツモチ」の1800枚は露地プール育苗とし、設備投資や灌水(かんすい)の手間を抑える。ハウスでのプール育苗も組み合わせて作業時期を分散。1人作業を基本に、人手がかかる播種や苗箱運搬は、家族や地元農家の協力が得られる日に集中させ、大規模化に対応する。
【兵庫支局】丹波市の山本浩子〈やまもと・ひろこ〉さん(59)は、「丹波栗〈たんばぐり〉」のブランドを守るため樹体の管理に力を注いでいる。冬の剪定〈せんてい〉の時期には、最適な樹形を目指して、一本ずつ丁寧に、愛情を持って取り組む。山本さんの「ヒロちゃん栗園」は約1ヘクタール。「クリの木は毎年大きくなり子どもの成長と同じ。育てることは愛情を込めた『木育〈こそだ〉て』」と話す。クリ栽培はもともと義父が手がけていたが、高齢のため、管理しきれなくなったという。山本さんは12年ほど前、収穫・出荷を試した。「複雑な作業がなくても秋になると収穫でき、手頃で収量も多く、楽しい」と感じていた。しかし、3年ほどで収量が減り始め、枯れる木が出てきた。原因を知りたいと考え、JA丹波ひかみの講習に参加したところ、クリ栽培の先輩農家と出会い、害虫対策などの管理不足が不作につながっていることを知った。「管理を始めたころは、手を入れていない期間が長かった影響で害虫駆除に時間がかかった。今はイガを園地に残さないなどの害虫対策をしているので、1本当たりの防除作業は早く済む」。丹波農業改良普及センターの認定制度「丹波栗剪定士」取得に挑戦し、2016年に認定を受けた。剪定は、葉がすべて落ちる1月から3月の暖かくなるまで。樹齢を延ばすためにも病気や虫、傷の入念なチェックは欠かせない。山本さんは「ヒロちゃん栗園DE八百屋さん」を経営する。栽培した丹波栗をはじめクリのフィナンシェなどの加工品、地域の野菜を販売。クリは収穫後1週間から40日間追熟させる。0~2度で貯蔵すると、より甘みが増すという。「リピーターの方も多く、予約の電話の際に『去年も買いました』と言ってもらえるのがうれしい」と山本さん。「栽培面積と加工品の種類を増やすことが目標。これからも丹波栗のブランドを守っていきたい」と意欲的に話す。
〈写真:「放置されているクリ林を市内で見かける。誰も管理しないのであれば自分が守りたい」と山本さん〉
【福井支局】「お米のおいしさをより多くの人に知ってもらいたい」と話すのは、若狭町熊川で「米パン工房coneru(コネル)」を営む藤本和美〈ふじもと・かずみ〉さん(53)。夫の武士〈たけし〉さんが作る「コシヒカリ」を使った米粉パンの製造・販売を2010年から始め、米の消費拡大に尽力している。埼玉県出身の藤本さんは武士さんと結婚後、若狭町で農業に携わるようになった。ところが、倉庫に積まれた米袋の減り方が年々鈍くなり、米の消費が減ってきていることを実感。どうにかして米をもっと食べてもらえるようにならないかと考えていた。そんな中で、米粉を使ったパンの存在を知り、自家産のコシヒカリを使用した米粉パン作りを開始し、米粉の配合割合などを2年間にわたり独自に研究。米粉特有のもっちり感とパンのふんわり感のどちらも備えたパンの開発に成功した。米粉パンは、藤本さんが経営する藤本農園で販売を始め、地元の保育園などで利用してもらったことがきっかけとなり、口コミで人気商品となっていった。今年1月、業務拡大に伴い、国の重要伝統的建造物群保存地区として選定されている熊川宿に米パン専門店を開業した。作り置きをしないので、開店する土日祝日には早朝から仕込みを始め、家族の協力を得ながら営業している。常時13種類ほどの米粉パンが並び、オープン前から買い求める客の列ができるほどの人気店となった。天気のいい日には、1時間しないうちに完売となる。一番人気の塩パンは、米粉パンとは思えないほどふんわりとしていて、かむほどに米粉パン特有のもっちり感と米のほのかな甘みが広がる。「これからも安全・安心でおいしい米粉パンを提供し、この店や商品をきっかけに米の消費拡大につながっていけたらうれしい」と藤本さん。「地場産食材を食べるなど、地産地消を通して地元農業者を応援してほしい」と話してくれた。
〈写真:開店前から客が列をなす米パン工房coneru〉
【山形支局】鶴岡市本町で商店街の活性化に取り組む「substance〈サブスタンス〉」の代表・斎藤達也さん(45)は、不要になった水稲用苗箱を活用したサングラスを商品化し、今年本格的に販売する。苗箱は地元農家が廃棄するものを回収し、自社で洗浄して粉砕。加工は福井県鯖江市の企業に委託し、フレームは苗箱、レンズは植物性のプラスチックで仕上げた。斎藤さんは鶴岡銀座商店街の事務所・会議室スペースの運営などに携わる傍ら、地元の規格外野菜を使ったコールドプレスジュースなどの開発を手がける。「都市部の大手企業ではなく、農業や製造業など1次産業が多い地方から環境への意識を啓蒙(けいもう)したい」と考え、商品開発を始めた。斎藤さんは「田植えの際に使用してもらうなど、ストーリーと関連付けてPRできたら」と話す。
〈写真:苗箱を活用して作られたサングラス「substance」(税込み8800円)〉
【北海道支局】株式会社辻村農場(代表取締役・辻村靖さん=56歳)は、辻村さんの曽祖父が1901年に妹背牛町で営農を開始。辻村さんで4代目となる122年続く農場だ。同社は2021年に法人化。妹背牛町8区で水稲9ヘクタール、秋播き小麦13ヘクタール、黒大豆を11ヘクタール作付ける。特に、水稲は15年からすべて乾田直播栽培に取り組み、成果を上げている。辻村さんは1985年に北海道農業試験場(現農研機構北海道農業研究センター)に入職し4年間勤務の後、実家の農業を継承。就農当初は、両親の栽培方法を踏襲していたが、2011年にJA北いぶき主催の講演会で省力的な乾田直播技術の説明を受けて興味が湧き、先進地の農場を視察した。12年には0.5ヘクタールで乾田直播の試験栽培を開始。普及指導員や先進地の農業者の指導を受けながら農作業工程を見直し、苗立ちや水管理、雑草対策の課題に取り組んだ。乾田直播栽培では、自動制御のレーザーレベラーでの均平作業に多くの時間を要していたが、GPS(衛星利用測位システム)ガイダンスと自動操舵(そうだ)システムの導入で農地の均平が維持され、整地にかかる作業時間の短縮に成功した。辻村さんは「乾田直播は、作業の大半を1人でできるようになり、春の農繁期は雨天を除くと実働2週間程度で終了できます。農機具導入のための初期投資はかかりましたが、耐久性のある畑作作業機がメインとなるため、長期的にはメンテナンス費用が減り、農機具費を削減することができました」と話す。20年の水稲10アール当たり作業時間は2.5時間で、北海道平均15.5時間と比較し16%と大幅な省力化を実現した。品種は低温苗立ち性や耐病性に優れた「えみまる」に切り替えたため、10アール当たり収量570キロを確保。収穫・調製作業を効率化できたという。辻村さんは「今後は規模拡大を進め、基幹労働力1人で60ヘクタールまで営農が可能な作業体系を確立したい。また、新たにドローン(小型無人機)を使用した農薬散布を導入し、さらに農作業の効率を上げたい」と意気込む。
〈写真:ユーチューブ(チャンネル名「乾田直播やろうぜ!」)で実際の作業を公開している辻村さん〉
【岩手支局】「品質の良い米を作り、たくさんの人に食べてほしい」と話す北上市飯豊の八重樫哲哉さん(63)。2017年に「米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」で最高賞の金賞を受賞後も、土壌調査や疎植などさまざまな取り組みを続け、昨年の同コンクールで3度目の金賞に輝いた。八重樫さんは約3ヘクタールの圃場で「ミルキークイーン」「ひとめぼれ」「銀河のしずく」を栽培する。同コンクールでは、おいしさを示す食味値や炊飯した際の粘度などを示す味度値などが審査の対象。八重樫さんのミルキークイーンは最高賞の金賞に輝いた。米の機能性成分の研究などに取り組む「メディカルライス協会」に依頼し、1年おきに土壌調査を実施する。田植え前、出穂前、稲刈り後の年3回、同協会の専門家が腐植率を調査。肥料や農薬は慣行栽培より少ないという。田植えの際は疎植にする。「植え付けの幅を広げると、根の張りが良くなり強くて丈夫な稲に育つ」と、高品質な米を栽培するために工夫を凝らす。カメムシ対策は、園芸用の支柱の先にネットを取り付けた自作の道具を使う。圃場に立てると、カメムシが寄りつかなくなる効果があるという。「殺虫剤の中には生態系に悪影響を与えるものがあるので、道具でカメムシを防いでいる」米は全国の米穀店へ卸すほか、インターネット通販や同市のふるさと納税の返礼品などで販売。受賞で付加価値や認知度が高まり、販路が拡大している。「受賞で北上市の米が広く認知され、安定収入につながればうれしい」と八重樫さん。「何ごとも挑戦が大事。まだまだ勉強して、米の品質をより良くしたい」と意欲を見せる。
〈写真:カメムシ対策の道具。出穂前の圃場に30アール当たり10本ほどを等間隔で設置〉
▼消費者の人気が高く、栽培面積が急拡大しているブドウ「シャインマスカット」は、糖度の高さなどの食味とともに皮ごと食べられる簡便さが特徴だ。日本の果物消費量の第1位は長年バナナが占めている。やはり理由の上位には簡便さがくるのではないか。
▼そんな思いをめぐらせたのは、生協の注文書で皮むきの冷凍ミカンを見る機会が増えたためだ。皮ごと冷凍して列車のおともだった昔の冷凍ミカンとは違う。冷凍技術向上によるおいしさ、むかずに食べられる手軽さで人気という。ミカンは簡便と思っていたが、手を汚したくないニーズがある。
▼そういえば種が小さくて食べる際に邪魔にならない小玉スイカの新品種も話題になった。種の大きさが大玉スイカの4分の1ほどで、食べても種の存在を感じないため、種を出す必要がない。冷蔵庫にも入れやすく、小家族で食べきれる点も利点だそう。
▼いまやカットフルーツもコンビニやスーパーの定番品だ。包丁がない家庭も増えているとされる中、おいしくて簡単に食べられる果物に移行する流れは変わらないのかも。ただ、リンゴやモモ、ナシ、柿など果物のおいしさはそれぞれだ。おいしく食べるために皮をむく、種を出すひと手間も大事にしたい。