ヘッドライン一覧 購読申込&お問い合わせ 農業共済新聞とは? 情報提供&ご意見・ご感想 コラム防風林

今週のヘッドライン: 2023年04月 2週号

広がれ"うまい米" 宇都宮大が開発「ゆうだい21」(1面)【2023年4月2週号】

230413_1.jpg

 宇都宮大学が開発した良食味米品種「ゆうだい21」が近年、食味を競うコンクールでの上位入賞が続いている。評価の高まりを受け、同大学はブランド確立を目指す5カ年のプロジェクトを2022年に立ち上げた。県内外の篤農家2人を伝道師として認定し、良食味の栽培技術を広める方針だ。施肥量や気候に敏感で細やかな管理が求められる一方、寒暖差が大きい中山間地域などで食味が高まり、特色ある米づくりへの活用が期待される。中小規模農家中心に全国200ヘクタール超に栽培が拡大している。

(1面)

〈写真:大学で森島さん(右)から種もみを受け取る阿久津さん〉

みどり戦略の基本計画 全県出そろう(2面・総合)【2023年4月2週号】

 農林水産省は3月31日、みどりの食料システム法に基づく基本計画を全ての都道府県が策定したことを明らかにした。昨年7月に施行された同法は、持続可能な食料システムの構築に向け、有機農業の拡大や化学農薬、化学肥料の使用量低減を推進するもの。輸入資源への依存を抑制し、国内の生産力を高める食料安全保障の強化にもつながると期待されている。その一方で、地域ぐるみで環境負荷低減を推進する特定区域(モデル地区)は2022年度末時点で12県23市町となった。特定区域の設定を促進し、持続可能な農業生産への転換を促すことが大切だ。

(2面・総合)

地域おこし協力隊 6447人で最多に(2面・総合)【2023年4月2週号】

 総務省は4日、2022年度の「地域おこし協力隊」の隊員が前年度比432人増の6447人となり、過去最多を更新したと発表した。受け入れ自治体数も31団体増の1118団体で過去最多だった。

(2面・総合)

Jクレジット制度 温暖化対策を新たな収入源に(3面・ビジネス)【2023年4月2週号】

 「J-クレジット制度」は、温室効果ガスの排出削減・吸収した量を「カーボンクレジット」として国が認証し、企業間などで売買可能にする仕組みだ。農業界でも環境保全型農業の支援や、中山間地域などでの新たな収入源の一つとして注目されている。先行的にバイオ炭の農地施用によるJ-クレジットの仕組みづくりに取り組んできた立命館大学日本バイオ炭研究センターの柴田晃センター長に、農業者の収益に生かすポイントを教えてもらう。

(3面・ビジネス)

〈読み解く〉苦境に立つ日本酪農(7面・読み解く)【2023年4月2週号】

 日本の酪農は、コロナ禍以降の牛乳・乳製品の需要減少に加え、飼料価格の高騰や子牛価格の低迷で存続が危ぶまれるほどの苦境に立っている。現在に至る経緯や課題について各種資料などを基に解説する。

(7面・読み解く)

河川流出抑制へ 水稲用肥料のプラスチック被膜殻(9面・営農技術・資材)【2023年4月2週号】

 プラスチックごみによる海洋汚染が国際的な問題となる中、水田から水稲用緩効性肥料に使われているプラスチック被膜殻の流出を防ぐ対策が呼びかけられている。特に代かきの際に殻が巻き上げられ、移植前の落水時に多く流れ出ることから、農林水産省やJA全農、肥料団体などは「浅水代かき」や「捕集網(ネット)の使用・設置」などの取り組み実施を勧めている。

(9面・営農技術・資材)

転換作物にジネンジョ 水はけ重視で良品出荷【4月2週号 岩手県】

230413_7.jpg

 【岩手支局】平泉町長島の丸山訓〈さとし〉さん(80)は、「平泉自然薯〈じねんじょ〉の会」の設立に関わり、2003年にジネンジョ栽培を始めた。同会の栽培技術担当として会員の畑に出向き、「いつでもジネンジョが食べられるまちを目指す」と意気込む。国による米の生産調整が実施されてから、丸山さんは知人とともに転換作物を探していた。「栄養価が高く、水稲栽培の合間に作業できるジネンジョを知り、栽培を決めた」と話す。天然のジネンジョは、収穫できる1メートルほどの大きさになるまで5~10年かかるが、種芋から栽培することで1年ごとに栽培・収穫できる。4月に種芋を作り、6月に仮植、11月下旬から収穫。同町周辺では5月に田植え、10月ごろに稲刈りをするため、作業時期が重ならず栽培できるという。同会の設立当初から栽培技術担当で、会員の畑に出向いて指導する丸山さん。「雨水などがジネンジョの周りにたまると腐るため、水はけに最も気を付ける」と話す。「畝の真ん中に溝を掘り、半円筒状にしたあぜ道シートに山砂を敷く。その上に発芽させた種芋を15度以上の傾斜をつけて仮植する」。傾斜で水はけが良くなり、あぜ道シートに沿って育つため、真っすぐなジネンジョができるという。会員10人で年間800キロのジネンジョを生産する。すりおろしたものは同町の中尊寺敷地内の食堂で提供されるほか、生の芋は一関市の製麺会社へ卸す。ジネンジョを練り込んだそばやうどんは、同町内の道の駅や一関市内の産直施設で販売されるという。丸山さんは「新型コロナウイルスの影響で減っていた出荷量が、昨年度から元に戻りつつある。平泉町の特産品として知られるようになり、地元の方や観光客がジネンジョをいつでも食べられるまちを目指したい」と先を見据える。

〈写真:丸山さんは10アールの畑で約1200本のジネンジョを栽培する〉

ドローン防除でふるさとを守る【4月2週号 和歌山県】

230413_8.jpg

 【和歌山支局】みなべ町の農家で構成する「梅侍防除組合(構成員6人)」は、ドローン(小型無人機)を使用した水田農薬散布作業を請け負い、地域の農家を支援。「ドローン防除で、ふるさとを守る」をスローガンに、地域農業の課題解決に取り組んでいる。同組合は、野菜栽培に関する研究や環境保全農業の推進、梅干しのPR活動に取り組む「みなべ町野菜研究会」が前身。髙田行洋〈たかだ・ゆきひろ〉代表(59)は「野菜研究会での活動を通して、高齢化による担い手や労働力不足、耕作放棄地の増加など、農業が抱える問題に直面した」と話す。これらの問題に歯止めをかけるため、高齢者が多い中で、少しでも作業の省力化につなげることができればとドローンによる防除に目をつけた。しかし、中山間地の同町は条件的に不利で、引き受ける業者が見つからなかったため、「それなら自分たちでやろう」と一念発起。構成員全員で資金を出し合い、農業用ドローンを購入し防除組合を結成した。代表を含めた3人がドローンのオペレーターライセンスを取得し、オペレーターとナビゲーターの2人一組で作業に当たる。活動1年目の2021年は14軒の農家から依頼を受け、延べ451アールの圃場に散布。翌22年の実施面積はおよそ2倍となった。今後も依頼が増えることが見込まれ、事務局の中本憲明〈なかもと・のりあき〉さん(53)は「ドローンが1台しかないため、万が一の故障などで依頼者に迷惑がかからないよう、増台を予定している」と話す。現在、防除を請け負うのは同町の農家が作付けしている水田だけだが、将来はエリアを拡大し、果樹の防除も手がけることを目標にしている。髙田代表は「ドローン防除を継続して、ふるさとの農業を守りたい」と展望を話す。

〈写真:オペレーターとナビゲーターの2人一組で防除〉

ポップコーン用トウモロコシ 農閑期に安定雇用【4月2週号 北海道】

230413_9.jpg

 【北海道支局】前田農産食品株式会社は、本別町で小麦134.5ヘクタール、テンサイ24.4ヘクタール、ポップコーン用爆裂種トウモロコシ8.6ヘクタールを作付けるほか、自社産の原料を使い「北海道十勝ポップコーン」の製造・販売に取り組む。ポップコーンは電子レンジで加熱すると出来上がり、手軽に食べられると人気を呼んでいる。同社代表取締役の前田茂雄さん(48)は、東京農業大学を卒業後、アイオワ州立大学に留学し、米国の大規模農業経営や流通を学んだ。2000年に実家の前田農産食品合資会社(当時)に入社し、09年に小麦粉の販売を開始。道産小麦をPRする必要性を感じ、道産小麦の販路拡大やブランド化の推進などを目的とした北海道小麦キャンプの実行委員としてPRに努めた。前田さんは従業員の冬場の雇用確保のため、6次産業化を決意。輪作体系に新たな作物を導入し、13年には国内では珍しいポップコーン用爆裂種トウモロコシの栽培を始めた。自社工場でポップコーンの製造に取り組み、農閑期の安定した雇用の創出を実現した。22年には、新設した工場「北海道十勝ポップコーンファクトリー」が稼働。従来の2倍の生産能力を見込んでいる。定番のうま塩味のほか、23年4月からは新しくキャラメル味の生産を予定している。前田さんは農業者と消費者の連携や地域づくりの継続的な取り組みが評価され、第52回日本農業賞「食の架け橋の部」で奨励賞を受賞した。「地域を取り込んで商品開発をしたことが評価された。社員や地域の方々のおかげで受賞できたと思っている。感謝申しあげたい」と話す。将来は北米を中心に輸出したいという前田さんは、人材育成にも力を入れている。農業や産業に貢献する人材の養成を目的に、ナフィールド国際農業奨学金の日本支部を19年に設立。地域農業の課題解決の一助となる人材育成と情報交換の場を提供している。前田さんは「第5期のスカラー(奨学生)農業者は7月から募集する予定です。日本支部のホームページをご覧いただき、ぜひチャレンジしてほしい」と話す。

〈写真:人気商品の「北海道十勝ポップコーンうま塩味」〉

アパレル業のスキル生かす 直売所を楽しい空間に【4月2週号 島根県】

230413_10.jpg

 【島根支局】安来市久白町でイチゴ6品種をハウス2棟(6アール)で栽培する南真之さん(39)は、アパレル業界から農家に転身し、直売所「いちごの木△」を始めた。神戸でアパレル関係の仕事に就いていた南さんは、家族との生活を楽しみたいと思い、妻の実家がある安来市にUターン。自然に触れながらできる農業を志し、付加価値の付け方や商品の見せ方など前職で培ったスキルを生かせると感じたイチゴ農家を目指した。同市の就農支援の研修を2年半受け、2021年9月に就農。22年1月には直売所を開いた。店内はインテリアやBGMなどで"ビンテージ感"が漂う空間にして、見て楽しめ、くつろげるようになっている。南さんは「インスタグラム(写真共有サイト)を見て来店される方が多いです。気軽に立ち寄っていただければ」と話す。

〈写真:「入りやすく滞在しやすいオープンな空間にしています」と南さん〉

防風林「農業・農村に期待される防災・減災力の発揮【2023年4月2週号】」

 ▼環境省は、「持続可能な地域づくりのための生態系を活用した防災・減災の手引き」を公表した。行政や地域住民、企業などに活用を呼びかけている。特に近年激甚化する台風や集中豪雨による水害リスクの軽減に焦点を当て、水田やため池などの農地生態系などを活用した防災・減災の進め方について、実例を交えて解説している。
 ▼例えば耕作放棄された水田は、あぜが残っていれば雨水をためる機能を持つ。生物多様性保全の取り組みで湿地に戻す際は、水のせき止めが可能な排水路にするなど一時的な貯留ができる構造にすれば防災・減災の機能維持と生物多様性の両方に資するということだ。
 ▼具体的手順では、生態系保全・再生ポテンシャルマップの活用を紹介する。既存の土地利用や生態系の分布を地理情報システムで可視化し、過去の災害例も踏まえて土地利用の潜在的な可能性を評価。地域で効果の高い取り組みや施策を含めた計画を策定、実践する。
 ▼水田の貯水機能を高める田んぼダムや棚田の保全による斜面崩壊防止なども例示する。防災・減災面でも農業への期待は大きい。

» ヘッドラインバックナンバー 月別一覧へ戻る