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今週のヘッドライン: 2023年03月 2週号

台風15号被害から半年 おいしい茶を作り続ける 復興への思い強く(静岡市内)(1面)【2023年3月2週号】

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 「清く豊かな水があるから、おいしいお茶が生産できる。今年もこの地でお茶を作り、魅力を発信していきます」と、より強い思いで春作業に励むのは、静岡市清水区中河内の「清照由苑(せいしょうゆえん)」代表の鈴木照美さん(63歳、茶1.3ヘクタール、ワサビ3アールなど)。静岡県を中心に記録的な大雨をもたらした昨年9月の台風15号災害からまもなく半年。農地への土砂流入など大きな被害を受けたが、復旧・復興へ歩みを進めている。

 約800年の歴史を持つ本山茶産地にある「山翠園藤田製茶」(静岡市葵区新間、茶約5ヘクタール、ジネンジョ約1ヘクタールなど)を訪ねた。代表の藤田匠さん(37)は「茶価の低迷や高齢化で引退する農家が増える中、本山茶の味を守る担い手として地域の農地を受け継ぎ、経営を発展させていきたい」と意欲を見せる。

(1面)

〈写真上:「お茶の魅力や効能をもっと多くの人に知ってもらえるようPRしていきたい」と「清照由苑(せいしょうゆえん)」代表の鈴木照美さん〉
〈写真下:「山翠園藤田製茶」代表の藤田匠さんは「農業は自分で計画し実行したことに結果が出て、それを次につなげられる面白さがある」と話す〉

農水省 生物多様性戦略の改定案示す 農家の努力を見える化 消費者理解へラベル表示(2面・総合)【2023年3月2週号】

 農林水産省は7日、新農林水産省生物多様性戦略検討会に「農林水産省生物多様性戦略」の改定案を示し、了承された。生物多様性保全に資する農業者の取り組みの「見える化」推進を提起し、消費者に分かりやすい農産物への表示手法などを検討する方針だ。地球温暖化に伴う気候変動などは、生物多様性にも重大な脅威となっており、食料生産など農林水産業への影響が懸念されている。農業者の努力を見える化し、消費者への理解醸成を図ることで、消費拡大や適切な価格形成を促すとともに、農業の持続可能性確保にもつなげたい。

(2面・総合)

ヘルシーで人気 豆腐のお菓子 ―― 野菜と豆腐の料理家の江戸野陽子さんが紹介(5面・すまいる)【2023年3月2週号】

 豆腐を使ったデザート・お菓子が人気を集めている。低カロリーで大豆の甘さやおいしさが楽しめ、「ヘルシーで罪悪感なく食べられる」と好評だ。「野菜と豆腐の料理家」として活動する江戸野陽子さんに、三つの味を紹介してもらう。

(5面・すまいる)

令和4年度家畜診療等技術全国研究集会 獣医師が成果を発表 畜産経営支える技術(7面・特集)【2023年3月2週号】

 畜産の現場で診療に携わる獣医師が研究成果を発表する「令和4年度家畜診療等技術全国研究集会」(主催・全国農業共済協会)が2月21~22日、東京大学安田講堂(東京都文京区)で開かれた。20題の発表を審査した結果、農林水産大臣賞はNOSAI宮崎生産獣医療センターの辻󠄀厚史獣医師らによる「母豚の淘汰〈とうた〉指標として過去3産の分娩〈ぶんべん〉データを用いた成績改善効果」が受賞した。また、農林水産省経営局長賞9点(うち吉田賞1点、奨励賞2点)、全国農業共済協会長賞10点が選ばれた。農林水産大臣賞と吉田賞・奨励賞の報告概要を掲載。また、乳房炎対策をテーマにした帯広畜産大学畜産フィールド科学センターの草場信之准教授の講演、家畜の遠隔診療に関する座談会について概要を紹介する。

(7面・特集)

ヘアリーベッチ、カラシナ、ソルゴーなど緑肥フル活用 経費抑え地力向上 基肥や病害抑制 十分な分解期間で効果 ―― 吉川文さん(三重県鈴鹿市)(9面・営農技術・資材)【2023年3月2週号】

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 白ネギ50アールを中心に野菜を栽培する三重県鈴鹿市追分町の吉川文さん(45)は、ヘアリーベッチやカラシナなど緑肥作物を活用し、地力アップを図りながら肥料代・農薬代の削減につなげている。生育むらなどがみられる圃場ではソルゴーを播種し、深く根を張らせて耕盤を破砕。専用の機械を使わずに排水性を向上させている。吉川さんは「緑肥は次作を考えた適材適所の選択と、すき込みから分解まで十分な時間をとることが重要」とポイントを強調する。

(9面・営農技術・資材)

〈写真:カラシナが覆う圃場で吉川さん。「白ネギの病気抑制に効果的」と話す〉

規範の確認、実践 農作業の安全性高めよう ルールや手順を具体化 労災加入など備えも記述(3面・ビジネス)【2023年3月2週号】

 1日から春の農作業安全確認運動が始まっている。近年は農作業事故死亡者数は減少傾向にある。しかし、2021年の就業者10万人当たり死亡者数は10.5人と建設業の6人を大きく上回るほか、65歳以上の割合が約85%を占め、事故防止対策は喫緊の課題だ。農林水産省は、労働安全で日頃から留意すべき事項を整理した「農林水産業・食品産業の作業安全のための規範」を策定。事業者などへ活用を呼びかけている。主な内容などを解説する。

(3面・ビジネス)

燃油暖房機取り付け型ヒートポンプ導入 資材高騰を乗り切る【3月2週号 秋田県】

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 【秋田支局】肥料や燃料などの農業資材の高騰が続き、農業経営に大きな影響を及ぼしている。鹿角市十和田岡田の農事組合法人なりた農園では、燃油費を削減するため、燃油暖房機取り付け型のヒートポンプをイチゴと菌床シイタケのハウス1棟ずつに導入した。同法人では冬の間、イチゴの直売出荷と収穫体験を実施する。日中、寒さに当たると成長が遅くなることから、ハウス内を温めなければならない。菌床シイタケも効率的な温度管理が不可欠だ。以前は重油を燃料とする温風暖房機「ハウスカオンキ」だけで温めていたが、12月と1月は一日中稼働するため、膨大な燃油費がかかるという。そこで今年1月に導入したのが、ハウスカオンキに取り付けて利用できるヒートポンプ「誰でもヒーポン」。電気を使って空気中の熱を圧縮・排出し、ハウス内の温度を上げる仕組みで、暖房費の節約につながるという。成田和由代表(45)は「近年の資材高騰対策として導入した。ハウスカオンキの上に付けるだけでよく、追加で置き場を確保する必要がない」と話す。誰でもヒーポンはハウスカオンキと共用できるのがメリット。ヒートポンプから出た熱風をハウスカオンキの送風ファンでハウス内に送る。ヒートポンプでの加温が足りない場合は、ハウスカオンキの暖房機能を稼働させて補うことが可能だ。同法人では、誰でもヒーポンとハウスカオンキの統合制御盤も導入した。ハウス内を一定の温度に調整でき、電気・燃油を余分に使うことがないという。温度は成田代表の経験と調査を基に決め、寒い時期は午前8時から10時までが18度、午後1時半までが25度、午後4時15分までが21度、翌日午前8時までが8度の4段階で設定している。成田代表は「導入して間もないが、燃油の使用量が確実に減った。電気代は以前よりかかるが、燃油費が減った分、コストは抑えられる。温度を制御することで温度設定以外の作業に時間を費やせるため、コストと労力を減らし、時間を有効活用できる」と話す。同法人では、イチゴと菌床シイタケのほか、水稲約30アール、花き約50アール、育苗ハウス6棟でブドウ「シャインマスカット」やホウレンソウを栽培。成田代表は「効果が高ければ、ほかのハウスでの導入を検討したい」と先を見据える。

〈写真:「燃油の使用量が減り、温室効果ガスの排出量が削減できる」と成田代表〉

青色申告を経営に生かす 管理能力向上を実感【3月2週号 岡山県】

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 【岡山支局】「2021年に青色申告を始めてから経営管理能力の向上を実感しました」と話すのは、真庭市北房地域で露地ブドウ50アールを栽培する片沼慶介〈かたぬま・けいすけ〉さん(36)。23年には経営安定のため収入保険に加入した。将来は法人化を視野に入れ、青色申告のさらなる活用を目指す。「1年やってみると慣れるものですね」と片沼さん。妻が一緒にブドウ栽培の作業をすることになり、専従者給与の経費算入のために青色申告を始めた。最初は慣れない用語に戸惑ったが、税務署の無料相談などを活用して勉強。今は申告処理に向けて会計方法の統一や個人販売分の注文様式の作成など、明瞭な帳簿の作成に取り組む。「青色申告を始めたいという人にとって、今は良い環境です。普及所や税務署主催の講座、動画サイトなど無料で勉強できる機会が多くあります。作業の合間の勉強は大変ですが、まずは講座などを受けて、気軽に始めてみてほしいです」。経営の効率化に合わせて栽培環境を改善したいという片沼さん。ハウス栽培の導入で年間作業を分散するとともに、品質向上を目指している。

〈写真:「青色申告をさらに活用するため、電子申請や認定農業者の申請もするつもりです」と片沼さん〉

耕作放棄地を活用 地域で生産したホップでビールを造ろう【3月2週号 兵庫県】

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 【兵庫支局】佐用町仁方〈にがた〉地区では、耕作放棄地約4アールを活用してホップを栽培する。町内の江川地域づくり協議会が「地域で生産したホップを使ってビールを造ろう」と呼びかけ、仁方地区が耕作放棄地を生かそうと立候補。2019年に栽培に着手した。管理などに当たるのは、地区住民で構成する「ふるさと保全隊」の役員。保全隊は農地保全を目的に07年に発足した。除草や収穫時期には、阪神地方の住民に向けて参加を募り、地区外から30人ほどが集まった。「交流を通して、地区の人々の作業意欲がかき立てられる」と話す保全隊代表の小林裕和〈こばやし・ひろかず〉さん(69)。栽培3年目となる22年8月の収穫量は約7キロで、ビール約2千本分となった。今後について小林さんは「収穫量の増加と品質の向上を図り、収益につなげたい」と意欲を見せる。

〈写真:左から小林育男さん、登尾光男さん、代表の小林さん〉

コンテナハウスでキクラゲ 温度管理しやすく肉厚に【3月2週号 岩手県】

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 【岩手支局】花巻市笹間地区のキクラゲ専門店「すずのきくらげ」は、2021年12月にキクラゲ栽培を開始。地元の湧き水を使い、700ブロックの菌床で栽培する。岡田雄太郎さん(28)はキクラゲ栽培の発起人。会社員として働きながら、栽培管理を担当する叔父の伊藤一成さん(58)を手伝う。水稲農家の伊藤さんの冬季収入源にキクラゲ栽培を始めたという。キクラゲは長さ12メートル×幅2.5メートル×高さ約2.5メートルのコンテナハウスで栽培する。「ハウスより気密性が高いので温度管理がしやすい」と岡田さん。1カ月半かけて発芽させ、3~4週間にわたって収穫できる。「水やりは手作業。水が均一にいきわたると肉厚なキクラゲになる」と伊藤さん。岡田さんは「今年2月にコンテナを1棟追加購入した。4月から1棟ずつ交互に栽培し、常に収穫できる体制を整える」と話す。廃菌床の活用を模索する岡田さんは「菌床はおがくずでできているので、カブトムシの繁殖に挑戦したい。ふんが混ざった廃菌床は田んぼの肥料にして、循環型農業を実現したい」と意欲的だ。

〈写真:コンテナハウスの前で伊藤さん(右)と岡田さん。「1年かけて安定した栽培ができるようになった」と伊藤さん〉

防風林「適切な価格形成への理解醸成が国産農畜産物の支えに【2023年3月2週号】」

 ▼鶏卵価格の高騰が続き、全国紙やテレビではほぼ連日のように「高い」とか、品薄で卵使用食品の販売が休止されたなどの報道が目立つ。物価の優等生と呼ばれ、潤沢に流通していた鶏卵の異変だ。騒ぐ気持ちも分かるが、もう少し冷静になれないか。
 ▼高騰の要因は、ウクライナ情勢を背景とした輸入飼料価格の高騰に加え、高病原性鳥インフルエンザのまん延で飼養羽数が減少したためと明確だ。政府は、国産飼料への切り替えなど過度な輸入依存からの脱却を図るほか、養鶏場側の対策として、大規模農場の分割管理など被害拡大の回避策も検討されている。
 ▼時間はかかるかもしれないが再度こうした事態を招かないよう関係者も動いている。報道は「高い」「困る」にとどめず、広く国民が問題の要因を知り、解決を考えるきっかけとなる話題も提供してほしい。
 ▼食料安全保障の強化に向けては、消費者の理解醸成と適切な価格形成も課題だ。輸入飼料の価格が下がり、安価な鶏卵の購買行動に戻ってしまえば同じ騒動を繰り返すだけだ。

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