今週のヘッドライン: 2023年01月 1週号
宮城県石巻市北上町の一般社団法人イシノマキ・ファーム(高橋由佳代表=58歳)では、心身の不調などさまざまな事情で働くことが難しい人が、農作業を通して就労に向けて準備する中間的就労事業(就労訓練事業)に取り組む。目指すのは誰一人取り残さず、共に支え合う「ソーシャルファーム」の実現だ。同ファームが栽培したホップを使ったクラフトビールの製造・販売を経営の柱とし、地域の雇用創出につなげる。市の委託を受けて運営する農業担い手センターは、農業に関心を持った人が移住・定住を含め気軽に相談できる場として運営。多様な人材が集い、活気を生み出している。
兵庫県丹波市は、全国でも珍しい有機農業を学ぶ農業学校「丹波市立農(みのり)の学校」を設立し、Iターン就農希望者を中心に人材定着に注力する。全日制で1年間の短期集中型カリキュラムを用意し、栽培技術から販売、農業経営まで実践的に学ぶ場を提供。全国の専門家の講義や地元事業者への視察も行い、経営者の育成を目指す。在学中の家賃から就農に関わる資金手当てなどは、市が独自事業などで支援する。学校を核に、市内農家や卒業生同士の交流など信頼関係づくりを後押しし、新たな栽培技術や販路開拓に挑戦しやすい環境につながっている。
島根県邑南町では、独自の農業研修制度「おーなんアグサポ隊」を実施し、新規就農者の確保・移住促進に力を注いでいる。研修生は地域おこし協力隊として同町で3年間生活し、任期中に就農に必要な栽培技術や経営の知識を学ぶ。町では島根県オリジナルのブドウ新品種「神紅」の産地化を目指しており、研修にブドウコースを設定。県やJAと連携した実践的な指導と、園地確保などの各種支援を通じてスムーズな就農をサポートし、研修終了後の定住につなげたい考えだ。
2022年は記録的な大雨や台風など自然災害が全国各地で多発した。農業分野でも大きな被害が相次ぎ、23年も油断できない状況が続く。ICT(情報通信技術)など先端技術を活用したスマート農業に注目が集まる中、NOSAIでもドローン(小型無人機)を導入し、園芸施設や建物の損害評価などに活用する事例が増えている。空撮画像による迅速・的確な評価で共済金の早期支払いにつなげるほか、果樹の植栽図作成や獣害防止による営農への貢献など利用の場面は広がりを見せている。ドローンによる効率的な制度運営や農家サービスの向上に力を注ぐ各地の事例を紹介する。
牛を飼養する女性農業者、酪農を営む北海道釧路市阿寒町の金子睦さん(35)、肉用牛繁殖・肥育一貫生産とレストランを経営する山口県美祢市の西山美貴さん(47)、和牛繁殖経営をする沖縄県石垣市の眞榮城美保子さん(43)が12月、オンラインで交流した。飼料や資材費の高騰など厳しい環境の中で畜産経営を継続し、6次産業化や消費者への情報発信などに取り組む3人が語り合った。
全国各地には、生産だけでなく、自らが農産物や産地の魅力を伝える伝道師として、キャラクターになり、消費者に農を発信している仲間がいる。そんな6人が農業共済新聞に集結した。
国内で昆虫の視覚についての研究が大幅に前進し、発光ダイオード(LED)や色彩粘着トラップによって害虫を効率的に抑える新たな防除技術が、徐々に実用化されつつある。薬剤抵抗性害虫への対策や環境保全型農業の推進など、今後の農業生産を支える技術として期待が大きい。昆虫の視覚の特徴とともに、最新の成果を紹介する。
秋田県では、2022年は前年に続く大雪で始まった。さらに春先の低温や日照不足の影響を受けたほか、記録的大雨による大規模な被害も発生。そんな災害に負けずに農業と向き合い、新年を迎え決意を新たにし、営農を続ける人たちを紹介する。
〈写真:収穫したネギを束ねる能代市の見上隆太さん(39)〉
観光や福祉、商工業などさまざまな分野と農業が連携し、新商品の開発や、農村地域の魅力を発信して誘客を拡大しようとする取り組みが広がりを見せ、その効果が注目されている。特色のある県内の事例を紹介する。
〈写真:「農産物を作る難しさと、生産者としての喜びを感じ、毎日が充実している」と話す米沢市の石川潤さん(29)=右=と果樹園を営む島貫繁明さん(54)〉
信州大学では、さまざまな作物の研究が行われている。農学部の伴野潔教授は赤果肉のリンゴを、また、工学部の大井美知男教授は高品質イチゴの開発に力を注いできた。それぞれが持てる技術を尽くして育成した信州発の赤い農産物。2人に、研究の経緯や作物の特徴、今後の抱負などについて聞いた。
〈写真:伴野教授が開発したスーパー赤果肉のリンゴIHR17〉
お節料理は、黒豆や煮物などの定番料理もあれば、その土地の特産品や郷土料理などをふるまう地域もある。定番料理や地域のお節料理を紹介。食材を生産する農家を取材し、話を聞いた。
〈写真:大塚ニンジンを収穫する山梨県市川三郷町の渡邊千雪さん(72)、豊美さん(69)夫妻。長さ40センチ以上がA品となる。重量は80~90センチのもので600グラムほど〉
「農業女子」という単語が浸透してきたように、女性農業者数は増加傾向にあり、女性ならではの視点を生かした取り組みが数多くみられる。女性農業者3人に、経営の工夫や働きやすい環境づくり、農業の魅力などについて話していただいた。
〈写真:カリフラワーを手に富山県入善町の寺田晴美さん(58)。「てらだファームでは野菜の収穫体験を受け入れています」と話す〉
コロナ禍や資材高騰などの逆風に負けず、地域に根差した農業を目指して奮闘する若手農業者。その取り組みや今後の展望を話してもらった。
〈写真:香川県観音寺市の平出嵩典さん(30)は「剪定の仕方など、基本を忠実に守って栽培することが良い実につながります」と話す〉
肉用牛の飼養頭数が全国で上位に位置する本県。「牛が大好き」と愛情を込めて育てている女性農家たちを紹介する。
〈写真:子牛の世話に追われる指宿市の岡元裕子さん(39)。「大好きな一頭一頭を大事に、毎日の目配り・気配りを大切にしている」と話す〉
▼新たな気持ちで新年を迎えたい。しかし、ウクライナ情勢とその影響が大きく、すっきりとしない。燃料や穀物など供給網の混乱と価格高騰は続き、光熱費や食料品の相次ぐ値上げなど日本の国民生活にも影を落とす。燃料や飼料、肥料などの高騰で国内農業の危機的な状況も続く。
▼政府は、影響の緩和と輸入依存度を低減する施策を講じている、食料安全保障の強化を課題とし、食料・農業・農村基本法見直しを念頭に、現行基本法と施策の検証も始まった。輸入依存度の低減方策では、国産飼料の増産、家畜ふん尿や下水汚泥など未利用資源の活用などが示されている。
▼農業に起因する環境負荷の低減を目指す「みどりの食料システム戦略」では、輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量30%低減などの目標を掲げる。有機農業を耕地面積の25%(100万ヘクタール)に広げる取り組みは資源循環が基本だ。つまり農業分野の環境負荷低減は、輸入依存度の低減にもつながるものだ。
▼政府は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げている。自然災害が頻発化、激甚化する要因とされる地球温暖化をくい止め、化石燃料などの有限な資源を大切に扱う意味もある。大きな生産転換となるが、国民理解と十分な支援が伴えば不可能ではないだろう。
▼うさぎ年は、跳ぶ姿から「飛躍」や「景気の好転」「新たな挑戦」の年とされる。まずは侵攻を早期に終結し、世界を覆う閉そく感の打破を。そして飛躍へ。