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今週のヘッドライン: 2022年11月 4週号

全国NOSAI大会 全ての農家に安心を(1面)【2022年11月4週号】

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 NOSAI協会(全国農業共済協会)は24日、東京都内で「『安心の未来』拡充運動令和4年度全国NOSAI大会」を開く。大会には全国のNOSAI関係者らが参加する。頻発する自然災害や依然続くコロナ禍の影響に加え、特に今年は穀物・資材などの価格高騰で多くの農業者が打撃を受けている。大会では収入保険と制度発足75周年となる農業共済で農家経営を強力に支えていくことを確認。すべての農家に農業保険によるセーフティーネットを届ける同運動の完遂に組織を挙げて取り組む旨を決議する。

(1面)


深刻化する酪農危機 離農を防ぐ対策が急務 資材高騰、価格低迷、副産物収入の激減など7重苦に悲嘆の声(2面・総合)【2022年11月4週号】

 酪農家らで組織する「安全安心な国産牛乳を生産する会」(湯浅清春代表)は15日、「最悪の酪農情勢を乗り切るには」と題したセミナーを開いた。酪農家からは「飼料価格の高騰で借り入れた資金も底をついた。経営努力にも限界があり、もう何カ月持つかの瀬戸際だ」「自給飼料の生産でも肥料高騰でコストがかさむ。搾れば搾るほど赤字だ。この状況を放置すれば日本の酪農は成り立たなくなる」など窮状を訴える声が相次いだ。離農による生産基盤の弱体化を何としても食い止める対応が急務だ。

(2面・総合)

G20首脳宣言 ロシアを非難 エネルギー・食料不安の増大が悪化(2面・総合)【2022年11月4週号】

 インドネシア・バリ島で行われた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は16日、首脳宣言を採択し閉幕した。ほとんどのメンバーは「ウクライナにおける戦争を強く非難した」と明記。戦争は人的被害や成長の抑制、インフレの増大、エネルギー・食料不安の増大などを悪化させているとし「今日の時代は戦争の時代であってはならない」と強調した。

(2面・総合)

組合員とNOSAIのパイプ役 地域の農 見守り続ける ―― NOSAI石川のNOSAI部長(石川県農業共済組合)(3面・NOSAI部長)【2022年11月4週号】

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 NOSAI石川(石川県農業共済組合)管内では、地域農業に貢献しながら、組合員の良き相談相手となっているNOSAI部長が活躍する。大雨による建物の浸水被害や、ハウスの雪害など、自身も被災を経験する中で、組合員とNOSAIとのパイプ役を務める2人を訪ねた。

(3面・NOSAI部長)

〈写真上:浸水対策として、羽咋市金丸出町の今井信雄さん(左)は米袋を載せるパレットを2段重ねにした〉
〈写真下:農業共済新聞を開きNOSAI職員と話す白山市上二口町の高田正信さん(左)〉

高温耐性で良食味「にじのきらめき」安定品質で生産急拡大 病害や倒伏も回避(9面・営農技術・資材)【2022年11月4週号】

 高温耐性を持つ多収・良食味米品種「にじのきらめき」の栽培が急拡大している。農研機構が育成し、2021年産の検査数量は8933トンと前年の14倍に増えた。食味は「コシヒカリ」と同等以上の評価で、10アール当たり120キロ多収、縞葉枯〈しまはがれ〉病抵抗性や耐倒伏性も備える。需要が拡大するパックご飯向けや輸出用などに期待される。同機構が東京都で8日に開いたセミナーでは、高品質・安定生産に、施肥の検討や収穫適期の見極めなどが求められるとした。

(9面・営農技術・資材)

2021年度ジビエ利用量 5年前の1.7倍に ペットフード需要が堅調(5面・流通)【2022年11月4週号】

 ジビエ(野生鳥獣肉)の利用量が拡大している。2021年度は2127トンとなり、16年度比で1.7倍に増加した。約7割を占める食用のほか、近年はペットフード用の需要が伸びている。農林水産省は捕獲した鳥獣を地域資源として活用し、農山村の所得に変えるため、25年度までに4千トンとする利用目標を掲げ、処理加工施設の整備などを一層推進する方針だ。

(5面・流通)

心のこもった押し花の年賀状 ―― ワールド・プレスフラワー協会の豊増康生会長に聞く(8面・すまいる)【2022年11月4週号】

 師走が近づき、年賀状を意識する時季となった。印刷だけではない"1枚入魂"で新年のあいさつを伝えてはどうだろう。押し花を使った年賀状を提案するワールド・プレスフラワー協会会長の豊増康生さんに、作り方を教えてもらう。

(8面・すまいる)

全国で評価高い「ワレモコウ」 ブランド守り需要に応える【11月4週号 山形県】

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 【山形支局】「作谷沢〈さくやざわ〉のワレモコウは、首都圏を中心に全国でも高い評価をいただいている。地域の生産者が築き上げてきたブランドを守り続けたい」と話すのは、山辺町作谷沢の渡邊凜太〈わたなべ・りんた〉さん(29)。従業員5人を雇用し、ワレモコウをメインに、ソリダコやチョウジソウなど約10品目30品種の花きを1.5ヘクタールで生産する。就農のきっかけとなったのは、渡邊さんより先に就農した父・知広さんの存在だった。生き生きと取り組むその姿を見て農業に魅力を感じたという。6年間勤めた会社を2018年に退職し、県立農林大学校などで1年間研修を受けた。効率的に作業するため、同町の中心部から畑のある作谷沢地区に転居し、父と同じ花き農家として19年に独立就農した。6月から10月ごろにかけて開花するワレモコウは、主に観賞用として親しまれている。多年草で、株の植え替えは5年に1度ほどでよいものの、うどんこ病やさび病が発生しやすい。2メートルほどまで背丈が伸びるため、ホースを使う消毒が大変なことや、利益率が低いことなどから、同地区の生産者は8人ほどに減少している。渡邊さんは、同地区でワレモコウを栽培するベテラン生産者に指導を受け、技術の向上に努めている。経営面では、冬季に出荷できるバラ科のローズヒップを本格的に導入することで、収入安定を図る計画だ。さらに試験的に栽培する多くの品目の中から、余力のある期間に出荷できる花を選定し、多品目を栽培することも検討している。「今年の冬は東京の生花市場で研修を受け、栽培だけではなく、市場動向を感じ取ることで、生産に生かしたい」と渡邊さん。将来は法人化を視野に入れるとともに、「ワレモコウは品種によって栽培方法が異なるため難しい。需要に応えられるようこれからも頑張っていきたい」と意欲を見せる。

〈写真:「ワレモコウの出荷を今年も無事に迎えられた」と渡邊さん〉

耕作放棄地が「ぎんなんの郷」に【11月4週号 石川県】

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 【石川支局】加賀市高塚町の高塚地区営農組合は、耕作放棄地を活用した大規模なギンナン栽培に取り組んでいる。収穫したギンナンは近隣のスーパーや直売所で「大粒で食べ応えがある」と消費者に好評だ。同地区では茶栽培や養蚕が盛んだったが、高齢化が進み、耕作放棄地が増加した。長年守ってきた農地を生かすため、2000年に始まった県営補助整備事業で大規模集積された畑地を活用することを協議。地権者の同意の下、5.3ヘクタールに約600本のイチョウを植え、「加賀ぎんなんの郷」と名付けた。植栽は02年に開始。3年がかりで植え、出荷に十分な量の実をつけるまで15年ほどかかったという。同組合の組合長・北野長俊さん(73)は「構成員は高齢者が多いため、維持管理になるべく労力のかからないものを選んだ」と話す。イチョウは天候の変化や風雨に強く育てやすい。紅葉の時期には町民の目を楽しませ、ギンナンにはベータカロテンやビタミンCなど体の免疫力を高める栄養素が多く含まれている。同組合では20年に銀杏事業部会を発足し、ギンナン事業に本格的に乗り出した。収穫は10月下旬に開始。町民も参加するギンナン拾いは恒例行事となり、地域交流の場としての役割もあるという。表年と裏年で収穫量に波があり、表年は約8トン、裏年は半量の4トン。収穫後は洗浄し、機械で皮をむいた後、ハウスで天日干しにして出荷する。同組合事務局の森田利与一さんは「手作業が多く大変だが、ギンナンを心待ちにしている人もいる。『おいしい』という言葉を聞くと頑張れる」と笑顔だ。北野さんは「農業の担い手が少なくなる中で、農地を守る方法を模索してきた。臭いの問題があるため、広い面積があるからこそできることだと思う。ギンナン拾いは地域活性化にも寄与できたと感じている」と力強く話す。

〈写真:ギンナンが実ったイチョウの木と北野さん(右)、森田さん〉

備えて安心 特約付きの園芸施設共済【11月4週号 愛媛県】

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愛媛県久万高原町  上村 友範〈かみむら・とものり〉さん(48)
 久万高原町名産のトマト「桃太郎」を栽培したくて、9年前に就農しました。現在はハウス6棟で栽培しています。
 園芸施設共済には就農当初から加入しています。2017年10月に発生した台風で、ハウスの3分の1が倒壊する被害に遭いました。台風が直撃したわけではないのに、山間地域の久万高原町ではものすごい風が吹き、本体ごとつぶされてしまいました。周囲の農家から台風被害の話を聞いていましたが、実際に自分の身に降りかかるとは思っていませんでした。再建に十分な共済金の支払いを受け助かりましたが、万一に備える大切さを実感した出来事でした。加入当初は減価償却型の制度設計に少し不満がありました。でも、復旧費用特約と付保割合追加特約の導入で、新築時の資産価値まで補償が拡充するなど、「あったらいいな」と感じていたことが次々と制度化されて満足しています。私はビニールの破損など小さな被害は自分で修繕することを前提に、10万円を超える被害から補償対象とするプランに加入しています。農家経営に合ったプランを選べるのもありがたいです。台風被害後はハウス内の補強を増やしたり、風の影響を受けやすい谷側を強化したりと、施設造りを工夫し災害に備えています。園芸施設共済には、定期的に制度設計を見直してもらい、より実情に合った仕組みになることを期待しています。
 ▽トマト20アール、水稲105アール
 (愛媛支局)

〈写真:「良質でおいしい農産物を安定して届けられる農業、家族で穏やかに末永く続けられる農業の実現を目指します」と上村さん〉

備えて安心 収入保険+園芸施設共済【11月4週号 山口県】

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山口県阿武町  長嶺 淳〈ながみね・あつし〉さん(76)
 収入保険に加入していることで安心感を得られ、経営に集中して取り組めています。2020年に、ホウレンソウの新芽がケナガコナダニの被害に遭い生育しなかったことや高温障害の影響を受けたことで、約8割が商品にならず、今までにない減収となりました。また、いつも支えてくれる妻が体調不良になり、作業できない時期が重なったため、収入保険に加入していることで減収を補てんすることができ、ありがたかったです。収入保険は、今までの農業共済制度と比べ、対象作物などの補償範囲が広く、基準収入の9割を上限とした補償に魅力を感じて加入を決めました。近年は、とにかくケナガコナダニの対策に困っています。ダニの被害を受け、芯が黒くなってしまったホウレンソウは、商品としての価値がなくなります。専門家の研修を受けて、堆肥の量や状態などを工夫したり、年3回から4回の作付け時期ごとに3種類の薬剤を使い分けたりしますが、耐性を持ったダニが発生します。病害虫、自然災害などさまざまなリスクに備えるためにも、収入保険の加入は必要です。園芸施設共済には、ホウレンソウ栽培を始めたころから20年近く加入しています。過去には、風害や雪害で共済金を受け取った経験があります。近年は、異常気象による災害が各地で発生しています。作物も施設も保険に加入し、安定した経営と面積を維持していきたいです。
 ▽ハウス14棟(ホウレンソウ22アール)
 (山口支局)

〈写真:「収入保険は農業共済制度の対象作物にはないホウレンソウも補償対象となるので助かります」と長嶺さん〉

防風林「消費者にもっと届けたい 農の匠たちの声【2022年11月4週号】」

 ▼「『耕す人々』の世界の入り口が、ここにある。」と案内するドキュメンタリー映画『百姓の百の声』が公開されている。『千年の一滴 だし しょうゆ』などを手掛けた柴田昌平監督の最新作。毎日農作物を食べていても、すぐ隣にいる農家の姿や言葉が分からないと、あぜ道を進み"遠くて近く、近くて遠い百姓国"を訪ね、その声を聞いていく。
 ▼全国に弟子がいる稲作の巨匠や日本のトマト栽培の開拓者、1台の田植機でディズニーランド三つ分の田植えをこなす挑戦者、1房1万円のブドウを東南アジアに輸出する果樹農家など、名前の知られた人たちが語る言葉は経験の裏付けもあり興味深い。その一方、新規就農したばかりの夫妻が登場し「もうけて家族旅行をしたい」と希望に目を輝かせる場面も印象的だ。
 ▼関心を持ったのは、多くの農家が自然や作物を観察する重要性を強調したことと、身に付けた知識や技術を惜しみなく他の農家に伝える姿だ。監督は「百姓国の知」や「知の共有財産」と呼び、特許などで知的財産を囲い込む「グローバル企業の知」とは対極の考えと指摘。危機に直面しても知恵と工夫で克服する底力につながっているとする。
 ▼映画を見て、作り手の言葉を消費者が知る機会が少なく、"近くて遠い"食と農の距離を実感した。ネット社会が到来しているのだから、何か工夫できると思うのだが。

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