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今週のヘッドライン: 2022年11月 3週号

識者寄稿 食料・農業・農村基本法の検証作業本格化 改正への着眼点は(1面)【2022年11月3週号】

 食料・農業・農村基本法の見直しに向けた検証作業が本格化している。農林水産省は食料・農業・農村政策審議会のもとに基本法検証部会を立ち上げ、国民的な理解・合意形成を意識しながら議論し、約1年かけて見直しの方向性をまとめていく方針だ。日本の農業政策の方向を定めた基本法は"農政の憲法"ともいわれる。食料・農業・農村を取り巻く情勢が激変する中、改正への着眼点を各分野の有識者に寄せてもらった。

(1面)

2023年産の水田活用予算案固まる 水田の畑地化促進 畑作物の本作化へ支援拡充(2面・総合)【2022年11月3週号】

 2022年度第2次補正予算案が閣議決定し、23年産の水田活用予算の概要が固まった。「畑地化促進事業」「畑作物産地形成促進事業」「国産小麦・大豆供給力強化総合対策」の3本柱で、23年度当初予算と合わせて畑地化など作付け転換と定着化を後押しし、主食用米の適正生産量達成を図る。23年産では、22年産と同規模の作付け転換を維持すれば主食用米の需給と価格は安定する見通しだ。ただ、5年間に1度も水張りをしない水田を水田活用の直接支払交付金の対象外とする見直しなど課題もある。持続可能な水田営農の確立に向け、産地ごとの事情にも十分配慮し、対応していく必要がある。

(2面・総合)

2022年産米の作況「100」 予想収穫量は670万2千トン(10月25日現在)(2面・総合)【2022年11月3週号】

 農林水産省は9日、2022年産米の全国の予想収穫量(10月25日現在)は100の「平年並み」と発表した。主食用米の作付面積は前年産比5万2千ヘクタール減の125万1千ヘクタールで、ともに前回(9月25日現在)と同じ。
 ただ、地域別では9月の台風14号などの影響で東北と九州の作況指数が1ポイント下方修正されて98の「やや不良」となった。全国の主食用米の予想収穫量は前回比千トン減の670万2千トンとした。

(2面・総合)

建物総合共済 加入が増加、44万棟超に 自然災害など幅広く補償(3面・農業保険)【2022年11月3週号】

 NOSAIの建物共済では火災などの事故に加え、自然災害も補償対象とする「建物総合共済」の加入が増加傾向にある。近年多発する豪雨災害や雪害、地震などへの備えの意識の高まりに加え、地震の補償割合引き上げなど、給付の仕組み改善も要因とみられる。2021年度の引受実績は仕組み改善前の16年度に比べ、引受棟数は約1万4千棟増の44万4366棟、共済金額は17%増の3兆7467億円となった。NOSAIではニーズに合った補償を選べるよう特約なども含めた加入提案をしている。

(3面・農業保険)

トラクター 故障防ぎ長持ちさせる 格納前に点検整備を ―― 農研機構農業機械研究部門に聞く(7面・営農技術・資材)【2022年11月3週号】

 来年の春作業に備え、長時間使用してきたトラクターの点検整備を格納前に実施してほしい。トラクターが長持ちするほか、作業能率維持に直結し、農作業事故の防止にもつながる。農研機構農業機械研究部門に点検整備のポイントを聞いた。

(7面・営農技術・資材)

カラスの越冬を防ぐ 地域ぐるみで環境管理し被害軽減 ―― (株)CrowLab代表取締役の塚原直樹さんに聞く(5面・すまいる)【2022年11月3週号】

 果実の食害やごみの散乱など、カラス被害に悩まされている地域は多い。人の居住する場所には年間を通して餌場が多く、捕獲駆除だけでは個体数を減らしきれない。根本的な対策には、地域ぐるみでカラスの越冬を防ぐことが重要だという。カラス対策の専門家である株式会社CrowLab(クロウラボ)の塚原直樹代表取締役にポイントを教えてもらう。

(5面・すまいる)

作業量3分の2/反収228キロ/上位等級90%超 大臣賞の大豆栽培【11月3週号 島根県】

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 【島根支局】出雲市斐川町の農事組合法人ふくどみ(佐野芳夫代表理事=66歳、構成農家17戸)では、34ヘクタールで水稲、麦、小豆、大豆を2年3作系で栽培。大豆は、離農者の農地を受け入れたため、4年前の2倍の約14ヘクタールになった。一方で、自動操舵〈そうだ〉トラクターなどスマート農業を推進し、播種から収穫までの作業量を3分の2まで減らした。2021年産は県平均の2.2倍の10アール当たり228キロを収穫し、上位等級比率は90.8%に達した。これらの取り組みが評価され、第50回(令和3年度)全国豆類経営改善共励会で農林水産大臣賞を受賞している。同法人の副代表理事兼機械部長の高橋智和さん(45)は「斐川町では家が点在して、まとまった圃場がないため栽培しにくいです。また、山陰特有の梅雨やゲリラ豪雨に対する排水対策を考えるのが大変でした」と話す。排水性の向上には、根粒菌との付き合い方が重要だという。石灰窒素を深層施肥し、根粒菌の働きが弱まる時期に効果が出るようにした。自動操舵トラクターでの播種は、位置情報の精度を上げる「RTK基地局」を利用した高速高精度作業を実現し、人件費削減や収量増大を図った。除草対策は、播種前に耕うんを2度、カルチ(株式会社キュウホー製)による中耕培土を適期に実施したところ、雑草発生を抑え、作業量は5分の1ほどになったという。ドローン(小型無人機)も導入し、植物活性剤などの肥料や薬剤の散布、生育状況を確認する空撮などに活用している。JAしまね斐川地区本部・狩野直〈かりの・すなお〉営農技監は「高橋さんは圃場の見回りをよくされています。そのような配慮があるので適期に適切な作業が素早くでき、収量増大や高品質につながっています。それに、農業に関するセンスが非常に優れていますね」と評価する。肥料や播種方法などは、圃場ごとに条件を変え、どの組み合わせが最適か試行錯誤を重ねている。今後はさらに栽培面積を増やし、10アール当たり平均300キロ収穫を目指すという。高橋さんは「農業は高齢化が進み、近い将来は人材確保が難しくなります。その対策として、同じ志を持った人たちと次の展開を考えながら、地元に貢献していきたいです」と笑顔で話す。

〈写真:「作物を見るのが好きな人でないと農業は続きません」と話す高橋さん(左)と佐野代表理事〉

土壌診断・水稲直播・可変施肥 ドローンで省力化推進【11月3週号 福井県】

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 【福井支局】「大きな機械での作業が困難な中山間地域だからこそ、スマート農業の普及が必須」と話すのは、あわら市熊坂で水稲や野菜など31ヘクタールを耕作する伊与衛門〈いよえもん〉農園の代表・竜田誠〈たつた・まこと〉さん(50)。今年からドローン(小型無人機)を活用して、土壌診断や水稲の直播栽培、可変施肥を組み合わせた実証を始め、省力化を目指している。スマート農業を導入するきっかけは、他県のドローンを活用した農作業の省力化に関する記事。竜田さんは、自分たちの中山間地域でも同様の取り組みができないかと考えた。2021年、ドローン関連事業を手掛ける加賀市の「創造社」と、約半年をかけて土壌測定用ドローンを共同開発した。土壌診断は、通常は測定点まで人が移動するが、開発したドローンは、水がある測定点に着水し、遠隔操作で測定器のセンサー棒を土中に刺す。フレームに浮きが付いているので、測定器本体がぬれることはない。22年5月には飼料用米の圃場48アールで、ドローンによる直播の実証を開始。7月には空撮で生育を調査し、生育状況に合わせて追肥量を調整する可変施肥の作業に取り組んだ。土壌分析による可変施肥で、従来の施肥量が3割程度軽減された上に、10アール当たり537キロを収穫。従来の栽培方法と変わらない量を確保できた。ドローンで作業効率と省力化が図れたことが実証された。「初めての作業ばかりだったが、作業時間が短縮できたので、かなりの省力化につながった」と竜田さん。「中山間地域では、高齢化に伴い耕地を手放す人が増えている。耕作放棄地を増やさないように、ドローンなどのスマート農業を駆使して作業効率化を図っていきたい」と話す。

〈写真:共同開発したドローン。県内に設置されたRTK固定基地局(高精度の位置情報配信システム)の利用で、より正確な航行が可能となった(写真提供=竜田さん)〉

雑穀生産を効率的に 除草対策に石灰窒素、吸水させた種を直播【11月3週号 岩手県】

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 【岩手支局】2014年に就農した二戸市浄法寺の田口拓実さん(26)は、現在8ヘクタールの畑で8種類の雑穀を栽培する。昨年は合計2.9トンをJAへ出荷。家族3人で栽培しているため、効率的な作業を目指して先輩農家や二戸農業改良普及センターから学び、独自の雑草防除に取り組む。田口さん方では、雑穀の収穫が終わった10月下旬に粉状の石灰窒素を畑へ機械で散布する。石灰窒素の成分で雑草の発芽が誘発されたところを冬の寒さで枯死させることで、除草効果が期待できるという。雑穀は全種類で移植栽培する。5月にセルトレーに播種し、1カ月ほどハウスで育苗後、畑へ移植。田口さんは「苗の生育を進めているため活着が早い。雑草と区別がつきやすくなり、除草しやすい」と話す。作付面積が広いイナキビやアワは、省力化するため直播栽培にも取り組む。1日吸水させた種を使い、発芽までの日数を短縮している。「吸水させた種を直播すると、発芽と生育が早くなる。雑草との生育の差を広げることで除草作業の手間が軽減した」と田口さん。「今後も移植と直播栽培を組み合わせて作業の効率化を進めたい」と話す。

〈写真:「播種時期や管理方法を毎年変えて、品種に適した栽培を研究する」と田口さん〉

生乳増産へ換気と給餌を自動化【11月3週号 岡山県】

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 【岡山支局】真庭市蒜山で酪農を営む長恒泰裕〈ながつね・やすひろ〉さん(36)は、家業を継ぐため、北海道と米国で大規模酪農経営を学び2009年に就農。現在は乳牛約200頭を飼養する。乳牛のストレス軽減と作業を効率化するため、牛舎の建て直しを計画。国の畜産クラスター事業を利用し、19年3月に新牛舎を完成させた。牛舎には自動換気システムを導入。五つの大型ファンと牛舎内のカーテンをセンサーで自動制御し、常に換気することで新鮮な空気を循環させる。牛舎内を適温に保ち、快適な環境をつくることで牛のストレス軽減を図った。さらに、自動給餌機や餌寄せ機を使用することで作業時間を短縮し、牛の観察に割く時間を多く確保している。長恒さんは「牛の健康が第一。当たり前の仕事を当たり前にこなすことが大切で、頑張った分、牛が乳量で恩返しをしてくれますよ」と話す。

〈写真:「中には1日70リットルほど乳を出す牛がいますよ」と長恒さん〉

防風林「対立、分断を越えて飢餓の危機回避を【2022年11月3週号】」

 ▼世界と日本の食料安全保障をテーマに農林中金総合研究所が開催したフォーラムで、同研究所の阮蔚(ルアン・ウェイ)理事研究員は「世界全体でみれば、食料供給の過剰時代は終わっている。一定部分は国内で生産し、守るべき」と強調した。喫緊の課題はロシアのウクライナ侵攻に伴う穀物・肥料流通の分断やブロック化だが、食料・飼料と燃料の穀物争奪戦や地球温暖化なども重要な問題とした。
 ▼今年の穀物生産量は世界的には減少が見込まれるものの、輸出が停滞しなければ供給できる量はあると分析する。しかし、アフリカ諸国が主に輸入していたウクライナ産小麦は輸出が難航。価格高騰と外貨不足で多くの国が買い付けできず、飢餓の危機に陥っていると指摘した。
 ▼また、トウモロコシや大豆は人口増加を超える伸び率で生産が拡大し、食肉需要に応じた餌用やバイオ燃料用の需要を支えてきたが、昨今は食用需要との競合が起きていると指摘。夏に欧米などを襲った干ばつなど気候変動に伴う減収リスクへの対応も急がれると言及した。
 ▼一方で「(飢餓回避には)ロシアの小麦が必要。開かれた穀物市場を維持すべき」とロシアとの分断回避も訴えた。相当な難題であるのは確かだが、地球の未来に向けて各国指導者の結束を促したい。

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