今週のヘッドライン: 2022年10月 2週号
輸入飼料価格が高騰する中、水田を活用して省力的に生産できる国産の濃厚飼料原料として子実用トウモロコシが注目を集めている。大豆や麦との輪作で連作障害の緩和が期待できるほか、主食用米に比べ10アール当たりの労働時間が少なく、時間当たりの所得が高水準などの利点がある。米価下落や国の事業による支援拡充などを背景に面積が拡大しており、今年4月には生産者団体で組織する日本メイズ生産者協会も発足した。貯蔵庫や流通網の整備、販路開拓など課題は多いものの、高品質・安定生産へ技術開発が進むなど、生産現場の取り組みが広がっている。
自民党は5日、総合農林政策調査会など合同会議を開き、政府の総合経済対策策定に向けた農林部会の重点事項案を協議し、了承した。物価高騰などの影響緩和対策や食料安全保障の強化などを柱に据え、具体的には肥料など海外に依存する生産資材の代替転換、海外依存度の高い小麦や大豆、飼料作物の国産化などの推進を掲げた。肥料原料の備蓄対策も盛り込んだ。他部会を含めた自民党案を18日にもまとめ、政府に提言する。政府は月内にも総合経済対策をまとめ、2022年度第2次補正予算案として今臨時国会に提出する。
農林水産省は9月30日、2021年の新規就農者は前年比2.7%(1450人)減の5万2290人だったと発表した。49歳以下は同0.2%(40人)増の1万8420人となり、6年ぶりに前年を上回った。新規就農の大半を占める親元就農は3年連続で減少したものの、農業法人への新規雇用と新規参入が増加している。
施設ナス・キュウリ3ヘクタールなどで経営する大阪府富田林市のナカスジファームは、年代・性別の異なる従業員や外国人技能実習生など約40人が共に働きやすい職場づくりに努める。年間で労働時間を調整できる「変形労働時間制」を導入し、月給制と時給制の作業単価を統一するなど、従業員などの意向を尊重し、柔軟に働けるよう対応。「経験レベルや農業・仕事への考え方も違う中、みんなで協力しあえる体制にしたい」と代表の中筋秀樹さん(46)。「コアメンバー」と名付けた従業員が各現場の責任者となり、大人数での作業を効率的に進める。
埼玉県嵐山町古里の愛澤健雄さん(44)は、両親、弟、妻と共に、ハウス26棟(約60アール)でホウレンソウを周年栽培する。基肥に使う豚ぷん堆肥はチッ素の割合が1~2%となるよう調整。市販資材で土壌の成分を毎作分析し、チッ素過多を防ぐ。土壌消毒に充てる梅雨明けから8月半ばの期間を除き、年間4~6回転し、約20トンを収穫。通年での安定生産を実現し、直売所など出荷先の需要に応えている。
コロナ禍は落ち着きを見せつつあるも、海外旅行はいまだ「気軽に」とはいかない。せめて料理で異国の雰囲気を楽しみたい。台湾料理研究家のオガワチエコさんに、手軽で、おいしい台湾の家庭料理を紹介してもらった。
【北海道支局】阿寒・釧路地域で酪農に従事する女性5人のグループ「Becotto(べこっと)」は、「釧路で生きる酪農女性写真展」と「酪農&牛乳あるある川柳展」を、東京都内のモンベル御徒町店で9月23日から開催した。酪農の仕事や牧場での生活、獣医師・家畜人工授精師などの仕事風景を撮影した写真や川柳を展示。酪農の現場を身近に感じてもらうとともに、牛乳の消費拡大に一役買った。同グループは2016年に結成した。「酪農生活を楽しむ」を活動の基本に、交流会や牧場経営の改善に役立つ勉強会に参加。写真展やオリジナルグッズの制作・販売も手掛け、活動の様子は交流サイト(SNS)で発信する。グループの代表・籔内直美さん(35)は、釧路市で乳牛110頭ほどを飼養する浅野牧場で働く。写真・川柳展を開いたのは、関東圏の消費者に釧路管内の酪農と牛乳をPRするためだ。酪農に携わる関係者のモチベーションアップにもつなげたいとする。会場では籔内さん、同グループ副代表の金子睦さんらによるギャラリートークを開催。展示した写真の紹介や川柳の解説などを披露した。写真は、22年6~7月に浅野牧場やモデル協力者の牧場で撮影。カメラマンはメンバーの知人らが担当し、モデルはJA阿寒女性部、NOSAI北海道(北海道農業共済組合)の獣医師、家畜人工授精師らが協力した。酪農が盛んな釧路地域で活躍する女性の働く姿や牧場の暮らしぶりを撮影。搾乳、給餌、哺育などの作業風景だけではなく、牛との距離感や互いの表情を捉えた。川柳展では、酪農に関する愉快な体験や牛との思い出、牛乳にまつわるエピソードを募集。全国から集まった74人192句をすべて展示した。応募作品はメンバーで選考会を開いた。最優秀賞に該当するBecotto賞は、秋田県の酪農家が応募した「蹴らないで 哺乳したじゃん 三年前」に全員一致で決定。ミルクを与えかわいがったのに、大きく成長した牛に蹴られてしまう悲しさにメンバーの共感が集まった。同グループでは「今後、道内各地で展示会を開催できたらうれしいです。たくさんの人に見てほしいです」と意気込んでいる。
〈写真:川柳を紹介する籔内さん(写真提供=農林水産省北海道農政事務所釧路地域拠点)〉
【大分支局】玖珠町の有限会社サンケンでは9月22日、高圧温水を使ったジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)の駆除テストを同町内の水田と用水路で実施した。生産者、JA、行政機関の職員ら約20人が参加し、農薬を使わず熱湯だけで駆除効果を検証。85~98度の熱水を1平方メートル当たり15秒間噴射し、テスト圃場では卵塊と成貝ともに100%駆除できた。同社は土木系資材を取り扱う商社で、環境事業部を2022年に設置。高圧洗浄機を使用した高圧温水除草事業に乗り出している。同社環境事業部の武石博部長は「農薬を使わない駆除方法は環境への負荷を抑えられます。園芸ハウス近辺のアザミウマなどを駆除していたところ、県西部振興局の働きかけで、ジャンボタニシの駆除に挑戦することになりました」と話す。耐寒性に劣るジャンボタニシは、マイナス3度以下になると多くの個体が死滅する。しかし、1割ほどの個体は厳寒期に地中や用水路などの比較的暖かい箇所で越冬し、水温が上がる田植え時期に稲の食害を引き起こす。その後、初夏に用水路の壁面やあぜの植物に産卵し、10日ほどでふ化。幼貝が秋には成貝となり、また越冬するという生態サイクルを繰り返す。武石部長は「ジャンボタニシの特性や実験結果から、土用干し時期の卵塊と稲刈り後に越冬する成貝を、用水路近辺で駆除するのが最も有効です。駆除効果を高めるためには、水田内の越冬個体数を減らすことが重要です」と話す。
〈写真:ジャンボタニシの卵塊に向けて85~98度の熱水を噴射〉
広島県尾道市 山田 雅之さん(69)
米に保険があるように、野菜にも保険があればと思っていました。ちょうどその頃、NOSAIが収入保険のチラシを配っていて、すぐに連絡し加入しました。キュウリとカブを栽培していて、キュウリは6月から10月にかけて2回転させます。その後、カブを12月から1、2月まで収穫します。2020年は、低温によるカブの生育不良、霜でキュウリの苗が枯れるべと病などの被害が重なりました。さらに、コロナの影響で需要が減り、出荷先が仕入れをストップしてしまい、収入は4割程度に。収入保険に入っていて、ラッキーでした。保険金がなかったら、乗り越えられなかったかもしれません。リスク分散のため、自社での栽培だけではなく、全国各地の生産者から仕入れ、関東へも販売するルートをつくろうと奮闘しています。従業員を守るためにも、安心材料として収入保険には入っておかないといけないと思います。
▽株式会社きよべじ会長▽キュウリ、カブ計1.2ヘクタール
(広島支局)
〈写真:「近年は悪天候が当たり前で、何があるか分かりませんからね」と山田さん〉
【秋田支局】潟上市昭和大久保地区の高橋拓人さん(39)は、父・龍一さん(69)と母・真澄さん(66)と共に果樹栽培に取り組む。ナシは1.5ヘクタールで「幸水」「あきづき」「豊水」「秋泉」を栽培。リンゴは「ふじ」「つがる」「シナノスイート」など20品種を70アールで手がける。ナシは「新一文字型樹形」を25.6アールで採用。棚下50センチで主枝を二分し、2本の主枝を棚下15センチで直線状に配置する。さらに、神奈川県が開発した特許技術「樹体ジョイント仕立て」を43アールで導入。主枝先端部を隣の木へ接ぎ木していき、直線状にする。この二つの仕立てで樹冠の拡大が早くなるほか、早期成園化や管理作業の省力化につながった。授粉は、確実性を高めるとともに、形の良い果実にするため、人工授粉と併せてマメコバチも利用する。ナシの収穫が一段落する11月ころには、園地に穴を掘り、落葉した枯れ葉を埋めていく。「カビによって伝染する黒星病を抑制するために重要な作業」と説明する。リンゴの収穫は12月上旬まで続く。規格外となった果実は、鹿角市花輪の加工場でジュースにする。昨年は500本を販売したという。リンゴジュースは1リットル500円で販売。秋田市土崎の秋田ベイパラダイスのほか、井川町のJAあきた湖東農産物直売所「湖東のやさい畑」に卸す。拓人さんと龍一さんは「早期にすべてを成木にして、収量を上げることが目標。これからも品質の高い果実を効率よく栽培していきたい」と意気込む。
〈写真:樹体ジョイント仕立てによる接ぎ木部分〉
▼肥料や飼料の価格高騰が続く中、耕種農家が飼料を生産し、畜産農家が堆肥を供給する地域循環を基本とした耕畜連携が改めて注目されている。輸入への依存を減らし、互いの経営安定が見込めるほか、水田の有効活用にも寄与するなど利点が多い。
▼今までも耕畜連携のメリットや有効性は示されていた。しかし、実際には事例は点在し、多くの地域に定着するほど広がっていない。事例を知る専門家によると、何のための耕畜連携かという目的意識の共有から互いの労働や経費の負担など細部まで話し合い取り決める関係構築が大前提になる。
▼特に重要と強調するのはお金の問題だ。飼料の価格設定やいつ精算するか、分割か一括払いかなど、補助金の扱いも含め経営者同士として細かく決めた方が不満をためずにすむ。
▼今夏の記録的な猛暑や大雨の要因に、地球温暖化の影響が指摘されている。耕畜連携は、環境負荷の低減にも役立つ。取り組みの拡大・定着で温暖化に歯止めをかける力になれば、その恩恵は多くの人に還元される。