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今週のヘッドライン: 2022年09月 2週号

SNSでつなぐミカンの輪 販売促進、魅力発信で産地振興に貢献 ―― 小澤光範さん(和歌山県有田川町)(1面)【2022年9月2週号】

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 「消費者とのつながり、生産者同士の連携、SNS(交流サイト)で人の輪が広がっている」と話すのは、和歌山県有田川町で温州ミカンを中心にかんきつ類約60品種を栽培する小澤光範さん(33)。「みかんのみっちゃん農園」の名でインスタグラム、フェイスブック、ツイッターなどのSNSを通じて年間1万人に販売するなどファンを増やしている。また、若手農家でグループを組織し、耕作放棄地の解消を目指すなど「有田みかん」の産地振興に力を注ぐ。

(1面)

〈写真:ミカンの生育を見る小澤さん〉

2021年度シカ・イノシシ 125万3千頭捕獲 対策強化で営農守れ(2面・総合)【2022年9月2週号】

 農林水産省と環境省は8月30日、2021年度のシカ、イノシシの捕獲頭数が前年度7%減の125万3573頭になるとの見通しを明らかにした。生息頭数が減少したとみられるイノシシの捕獲頭数減少が影響した。農作物被害額は同10%減の55億5千万円。近年の捕獲強化によって3分の2程度の都府県で農作物被害額が減少した。しかし、シカの捕獲頭数は九州をはじめ8割の都道府県で増えており、イノシシでは地球温暖化による越冬個体の増加で、東北などで前年度を上回る被害が発生している。生産資材費の高騰などが農業経営を圧迫する中で、営農意欲の減退を招かないよう、鳥獣被害対策の継続・強化が求められる。

(2面・総合)

「総合防除」構築の指針案 対象病害虫は157種に拡大へ(2面・総合)【2022年9月2週号】

 農林水産省は8月31日、植物防疫検討会を開き、改正植物防疫法に基づいた発生予防を中心とする「総合防除」の構築へ向けた基本指針案を示した。指定有害動植物は、発生予察の対象病害虫111種に「総合防除の対象病害虫」を加え、157種(害虫92種類、病菌65種類)に見直すとした。同省は9月24日まで実施する意見募集も踏まえ、今年5月の公布から1年以内に施行する。
 総合防除の対象病害虫の例では、サツマイモ基腐病やスクミリンゴガイなどを挙げた。また、急激にまん延して農作物に重大な損害を与える病害虫にはジャガイモシロシストセンチュウなどを挙げる。施行に合わせて対象病害虫を公表する予定だ。

(2面・総合)

増加する農業法人 経営発展の一歩に(3面・ビジネス)【2022年9月2週号】

 農業経営の法人化が着実に進んでいる。農林水産省によると、農業経営体97万5100経営体(今年2月1日現在)のうち、法人経営体は前年比1.9%増の3万2200経営体となった。法人化は、経営管理の高度化や多様な人材の確保、対外信用力の向上、円滑な経営継承など利点が多い。一方、社会保険の加入が義務化され、経理の事務が増えるなど負担もある。農業経営の法人化について手順や注意点などを整理する。

(3面・ビジネス)

乳牛・肉牛 子牛の体温を首輪で計測 疾病の兆候を発見 ―― 京都府農林水産技術センターなどが開発(9面・営農技術・資材)【2022年9月2週号】

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 京都府農林水産技術センター畜産センターは、乳牛・肉牛の子牛向けに、疾病や体調不良の兆候を発見できるモニタリングシステムを開発した。重さ100グラムと軽量・小型の首輪型装置で体温を自動測定し、異常を検知するとスマートフォンなどにメールで通知する。機能を最低限に抑えたシンプルな設計で、コストを抑えた。今後、実用化に向けて、実証試験を行い、データ解析などの改善を進める。

(9面・営農技術・資材)

〈写真:首輪についた黒い突起が温度センサー。軽量で簡単に着脱できる〉

俳句を詠んでみませんか ―― 本誌「俳壇」の選者で俳人の丸山美沙夫さんに聞く(5面・すまいる)【2022年9月2週号】

 暮らしや農作業などの中で感じた情景や心の機微など、俳句にして詠んでみよう――。年齢や経験にかかわらず、誰もが創作し、親しむことができる俳句。本紙「俳壇」の選者を務める俳人の丸山美沙夫さんに、俳句の基本や魅力などを教えてもらう。

(5面・すまいる)

青枯病対策に成果 パプリカ安定生産【9月2週号 山形県】

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 【山形支局】パプリカの産地化を目指し、2007年に戸沢村で設立された「戸沢村パプリカ栽培研究会」(松坂雄一会長)。現在は同村の認定農業者を中心に7人で栽培を続けている。会員の一人、津谷地区の齊藤輝仁〈てるよし〉さん(53)は、水稲3.3ヘクタールのほか、パプリカ1800株をハウス6棟(17アール)で栽培。「年間8トンの収穫量を確保していきたい」と話す。齊藤さんは家業の稲作を継ぐため、勤めていた職場を38歳で退職した。育苗ハウス2棟を新築した際に、パプリカ栽培を同村産業振興課の担当者に勧められたことがきっかけで研究会に参加。村から紹介された青森県の肥料会社の指導を受けながら栽培方法を確立した。栽培1年目は上々の出来だったが、2年目は青いまましおれてしまう青枯病が広がり、収穫量は半分となった。そこで、同村と研究会メンバーで勉強会を企画し、台木(「台パワー」)を用いた接ぎ木栽培に取り組み、病菌の繁殖を防ぐことに成功。その後は安定した収穫量を確保している。齊藤さんが栽培する品種は、赤い「コダイラ」や黄色の「コレッティ」など。4月下旬と田植え後の6月上旬に株間約45センチで毎年定植する。その後は小まめに芽摘みをして、7月下旬から10月下旬にかけて1株から60個ほど収穫できるという。市場への出荷やインターネットでの販売が中心で、「パプリカは完熟出荷となるため、市場から理解を得ることが難しかった」と齊藤さん。実割れや変形などの規格外品が多く発生するため、その量をいかに抑えるかといった課題がある。同村のパプリカは、化学肥料を使わず、牛ふん堆肥を主体とした有機肥料を施す。研究会メンバーの多くはエコファーマーの認定を取得し、環境に配慮した農業を実践する。

〈写真:水稲とパプリカの栽培を今後も継続していくという齊藤さん。「仕事と趣味のバランスをうまくとって、楽しみながら農業をしていければ」と話す〉

つなぎ融資を再起の費用に 収入保険加入を勧めたい【9月2週号 兵庫県】

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 【兵庫支局】「収入保険に入っていなかったら、農業を続けることができずにやめていたかもしれない。本当に加入していて良かった」と話すのは、豊岡市でピーマンを栽培する能勢明宏〈のせ・あきひろ〉さん(39)。2021年7月、栽培していたピーマンに白絹病や青枯病などが発生した。薬剤を散布したが効果はなく、枯れていくピーマンを見て途方に暮れた。収入保険に加入した4カ月後のことだったという。事故発生をNOSAIに通知したところ、「職員がすぐに対応してくれて、1カ月ほどでつなぎ融資を受けることができた」と能勢さん。ピーマンはほぼ全滅状態となったが、つなぎ融資を資材費や人件費に充てることができ、胸をなで下ろした。収入保険の存在を知ったのは、知り合いの農家から強く勧められことがきっかけだった。当初は「保険料が高額なのでは」と思っていたため、加入するのは躊躇〈ちゅうちょ〉していたが、NOSAI職員の説明を受け、補償の幅広さや保険料の手頃さに魅力を感じた。同時に、もしもの時の備えが必要と思い加入を決意。想像していたよりも制度内容がシンプルだったことが後押ししたという。現在はピーマン35アール、ネギ80アール、水稲35アールを栽培する。「どうすることもできないリスクをカバーしてくれるのが収入保険」と能勢さん。「人生を左右するリスクを手頃な保険料で回避できるならば、加入しない手はない」と未加入者にアドバイスを送る。

〈写真:「類似の制度に加入していたが、収入保険は圧倒的に補償が大きい」と能勢さん〉

餌いらず、傷つけない箱わな【9月2週号 鹿児島県】

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 【鹿児島支局】鳥獣害対策の研究に取り組む日置市の大平正さん(67)は、フェンスなど組み合わせて使う通路型の箱わなを考案。販売先で正確に作動し、現在のところ被害は出ていないという。作物を狙う野生獣は警戒心が強く、耕作地の入りやすそうな場所を探す。この習性に着目して開発したのが「誘導式両開き通路型箱わな」だ。耕作地をフェンスなどで囲み、入りやすそうに見える場所に箱わなを設置。野生獣が侵入すると前後の扉が閉まり捕獲できる仕組みだ。餌付けの必要がなく、管理の手間が少ない。価格は小動物用で6万円台から用意している。サイズは、野生獣がギリギリ通れる大きさにした。「これで箱わな内で暴れなくなり、傷が少ない状態で捕獲が可能。ジビエ(野生鳥獣肉)としての有効活用も見込める」と大平さん。9月には補助金で実証試験をする予定だ。大平さんはこれまで、鳥獣害対策に役立つさまざまな装置を実用化してきた。鳥獣害に関する情報を交換するため、メッセージ通話アプリ「LINE」が提供するチャットを開設している。▽問い合わせは大平さんへ=電話090(9499)0877

〈イラスト:通路型箱わなは耕作地の侵入口に設置(提供=大平さん)〉

米増収へデータ活用、効率化【9月2週号 三重県】

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 【三重支局】伊賀市の合同会社みなみ農園では、圃場情報から乾燥調製履歴までデータ化したクボタのKSAS乾燥調製システムを活用し、水稲27ヘクタールと小麦3ヘクタールを栽培する。水稲は「コシヒカリ」「あいちのかおり」「みのりの郷」など8品種。薬剤散布は小型無人機(ドローン)を使い効率化を図る。従来の「経験や勘」ではなく、数値を品質向上と翌年の作付計画の反映に役立てるという。圃場ごとのデータの解析には、収量と食味を測定しながら刈り取るコンバインを導入。南友照〈ともあき〉代表(39)は「品質のばらつきをなくし、単収を増やすことが目的」と話す。高収益化を目指して、4年前から米を輸出。リスクヘッジとして収入保険に加入する。「作業人員の確保が今後の課題」と南代表。広範囲にわたる耕作受託で地域にも貢献している。

〈写真:ドローンの利用で「防除効果が向上した」と南代表〉

コオロギ養殖で地域に一役【9月2週号 岡山県】

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 【岡山支局】吉備中央町で食用コオロギを養殖する「陸〈おか〉えびJAPAN株式会社」の岡田輝喜〈おかだ・てるき〉さん(43)。地方を盛り上げるための産業をと考え、過去にタイで見た昆虫食が思い当たった。雑食性で飼育に場所を取られず、高齢でも育てやすいことから、コオロギの養殖を決めた。食品残さや規格外品を餌に活用でき、特産品を与えることで地域ごとの特色を出せる。出荷サイクルは40日前後で、通年での対応が可能だ。「養殖業界の中で一番おいしいといわれる。雑味がなく、高級なかつお節のよう」と岡田さん。タンパク質含有量は一般的に100グラム当たり約60グラムだが、同社は75.6グラム。同町産の米ぬかに栄養素を添加した餌で、味、栄養素ともに高品質に仕上がるという。「家畜飼料としても有用で、空き家を飼育場に活用しながら、小規模農家の収入向上が見込める。市場が拡大すれば地方に人を呼び込める」と意欲を見せる。

〈写真:「飼育環境を清潔に保つため、ケース内を定期的に清掃する」と岡田さん〉

防風林「トラクター作業中もシートベルトをしめよう【2022年9月2週号】」

 ▼故郷に帰って実家の農業を継いだ知人が、大雨の日に田んぼの用水路を見に行き、あふれた水を水路に流すため、水位調整用の板を外したそうだ。持参したバールを流れに持っていかれ、水量は相当に多かったはず。彼はトラクターの運転でも転倒しかけ、怖い思いをしている。もっと安全確保に努めてほしい。
 ▼秋の農作業安全確認運動が始まった。春の運動に続き「しめよう!シートベルト」を重点推進テーマとした。農業機械作業に係る死亡事故で最も多い乗用型トラクターの転落・転倒被害を防ぐため、シートベルトの着用を呼びかける。地域など周囲の声かけ運動を基本とし、事故事例の情報提供や指導者の育成など研修の実施を促している。
 ▼転倒事故の分析では、シートベルトの着用で死亡率は8分の1に減るという。公道で発生した農耕車による交通事故の分析では、シートベルトの着用で死亡率は50分の1との調査結果も示されている。
 ▼農繁期は、連日の作業で疲れが蓄積し、どうしても注意力が鈍る。だからこそシートベルト着用を習慣づけることが大事なのだ。

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