ヘッドライン一覧 購読申込&お問い合わせ 農業共済新聞とは? 情報提供&ご意見・ご感想 コラム防風林

今週のヘッドライン: 2022年07月 4週号

超早場米「まゆみ姫」 東北で8月上旬収穫 特産化へ地域と共に ―― 御稲プライマル株式会社(福島県本宮市)(1面)【2022年7月4週号】

220728_1.jpg

 福島県本宮市で水稲40ヘクタールを栽培する御稲(みいね)プライマル株式会社は、8月上旬に収穫できる超早場米「まゆみ姫」のブランド化を進めている。「"東北一早い"新米として、本宮市に愛着を持ってもらう入り口にしたい」と後藤正人代表(42)。市内の農家が育成した極早生品種「五百川」から、さらに出穂・登熟が早い系統を選抜した。田植え後90日で収穫できる。自治体による関係人口創出の事業と連携してブランド名の公募や田植え・収穫体験を実施。地域発祥のストーリー性や希少性を生かし、全国各地にファンを得ている。

(1面)

〈写真:「地域の仲間と米産業を盛り返していきたい」と田植え後のまゆみ姫の圃場で後藤正人代表(6月中旬)〉

東北・九州などで大雨被害 農作物冠水、農地損壊、農業用施設も(1面)【2022年7月4週号】

 7月中旬以降、前線や低気圧に向かって暖かく湿った空気が流れ込んで大気が不安定な状態が続き、西日本から北日本にかけて広い範囲で局地的な激しい雨や大雨に見舞われている。九州など一部地域で局地的な雨が続く線状降水帯が発生したほか、各地で記録的短時間大雨情報が発表され、岩手、宮城、山口、長崎、鹿児島では河川の氾濫が発生した。
 農林水産省によると、20日時点で東北や九州の8県から農作物などの冠水や農地の損壊、農業用施設などの被害が報告されている。調査を継続中で、被害はさらに増える見込みだ。
 被災地域のNOSAIでは、被害状況の把握を急ぐとともに、共済金の早期支払いに向け、迅速、適正な損害評価に組織を挙げて取り組んでいる。収入保険加入者には、つなぎ融資の周知と早期貸し付けに向けた事故発生通知を呼びかけている。

(1面)

関東生乳販連が期中改定 乳価キロ10円値上げ コスト増の吸収には不十分(2面・総合)【2022年7月4週号】

 関東生乳販売農業協同組合連合会(関東生乳販連)は20日、飲用向け、発酵乳等向けの生乳価格をともにキロ当たり10円引き上げる乳業メーカーの回答受け入れを決めた。配合飼料価格の高騰など生乳生産コストの上昇を受け、大手3社と行っていた交渉が妥結した。乳価の期中改定は2013年以来9年ぶり。他の指定団体も期中改定の交渉に入っており、乳価値上げの動きが全国に広がる見通しとなった。危機的な経営状況から脱するには、牛乳・乳製品への価格転嫁なども課題だ。消費者への理解醸成を含め、持続可能な畜産・酪農経営を確立できるよう、政策的な関与も求められる。

(2面・総合)

適切な加入を呼び掛け 安定経営へ備え強調 ―― NOSAIとちぎの共済部長(NOSAI部長)(3面・NOSAI部長)【2022年7月4週号】

220728_2.jpg

 NOSAIとちぎ(栃木県農業共済組合)管内では、在来作物の生産振興や専業で施設栽培を営む農家が共済部長(NOSAI部長)を担当し、産地の維持・発展に努めている。NOSAIと連携し、経営に適した内容で加入を呼び掛ける宇都宮市と上三川町の共済部長2人に話を聞いた。

(3面・NOSAI部長)

〈写真上:NOSAI職員と話す宇都宮市新里町の麦島弘文さん(右)。ドレッシングなど、新里ねぎを使用した加工品を企画・開発する〉
〈写真下:「黄化葉巻病への対策として導入した」とNOSAI職員に小鈴キングを説明する上三川町下神主の増山(ましやま)昌弘さん(右)〉

農家経営の支えに 農林水産省経営局関係業務功績者等表彰(6面・特集)【2022年7月4週号】

 「安心の未来」拡充運動中央推進本部(本部長・髙橋博NOSAI協会〈全国農業共済協会〉会長)は先ごろ、「令和4年度農業保険の推進に係る優良事例に対する経営局関係業務功績者等表彰」「令和4年度『安心の未来』拡充運動中央表彰」の決定を発表。13日に開催した全国参事会議で両賞の表彰を行った。経営局関係業務功績者等表彰は、農業保険の推進において顕著な実績および他の模範となる優秀な取り組みを行った役職員や組合等、支所等を表彰する。「安心の未来」拡充運動中央表彰は、農業保険の推進において、優秀な事業成績をおさめた組合等および顕著な実績を上げた組合等を表彰する。農林水産省経営局関係業務功績者等表彰の1人、4組織と、「安心の未来」拡充運動中央表彰最優秀賞の3組織の取り組みを紹介する。

(6面・特集)

ひとごとじゃない!被害続出 身近な犯罪 特殊詐欺 ―― 「All About」防犯ガイドで安全生活アドバイザーの佐伯幸子さんに聞く(5面・すまいる)【2022年7月4週号】

 家族や行政職員などを名乗り金銭をだまし取る特殊詐欺。毎年多くの被害が発生しており、「自分はだまされないから大丈夫」との過信は禁物だ。具体的な事例や被害に遭わないためのポイントを、インターネットの生活総合情報サイト「All About」防犯ガイドで安全生活アドバイザーの佐伯幸子さんに教えてもらう。

(5面・すまいる)

伸びる米粉需要 高騰する輸入小麦の代替に(7面・流通)【2022年7月4週号】

 コロナ禍で米粉を利用する家庭が増えたほか、パンや麺など業務用需要も増加傾向にあるという。加えてロシア・ウクライナ情勢などによる輸入小麦の価格高騰を受け、代替可能な米粉に注目が集まっている。農林水産省は食品の高騰対策として、米粉への原材料切り替えを促進。さらにノングルテン米粉の製造工程管理JAS認証を推進し、拡大する海外のグルテンフリー市場の取り込みへ対応を強化し、国内振興と輸出拡大で2030年度までに生産量13万トンを目指している。

(7面・流通)

"基本の徹底"を経営理念に 全国酪農青年女性酪農発表大会 ―― 農林水産省畜産局長賞・審査委員長特別賞を受賞した風間健太さん(熊本県)(9面・営農技術・資材)【2022年7月4週号】

220728_3.jpg

 全国酪農青年女性会議と全国酪農業協同組合連合会は14~15日、第50回全国酪農青年女性酪農発表大会を東京都内で開催。酪農経営発表では、熊本県菊陽町の風間健太さん(40)が農林水産省畜産局長賞・審査委員長特別賞を受賞した。
 風間さん方は、健太さんが酪農全般、妻の由加さん(27)が哺育や搾乳、事務処理を担い、雇用する農業大学校生2人が平日だけシフト制で搾乳に従事。フリーバーン牛舎で経産牛42頭、哺乳牛6頭を飼養する。搾乳方式はアブレストパーラー(4頭)で、経産牛1頭当たり年間乳量は1万741キロだ。2015年に新規就農し、20年度の熊本県牛群検定成績では総合第2位を受賞した。

(9面・営農技術・資材)

〈写真:発表する風間さん〉

流通コスト削減へ地域共同配送「やさいバス」実証実験【7月4週号 滋賀県】

220728_4.jpg

 【滋賀支局】草津市では、農家がウェブサイトに野菜を出品し、注文に応じて配送する青果流通システム「やさいバス」の実証実験を実施した。集出荷を個別で対応した場合の流通コスト削減や取引先拡大など、生産者から期待されている。実験を始めるきっかけとなったのは、「もっと手軽に地元の新鮮な野菜を購入したい」という要望が飲食店から市に寄せられたことだ。市内で生産された野菜の多くは、市場を通じて各地に出荷されるため、飲食店が地元の野菜を入手するには「郊外の直売所へ足を運ばなければならず手間がかかる」「目当ての野菜が売り切れている」などの不満の声があった。そこで関係者の目にとまったのが、静岡県の農業ベンチャー企業「やさいバス株式会社(加藤百合子代表取締役社長)」が開発した地域共同配送システム・やさいバスだ。登録農家が、同社のウェブサイトに出品野菜の写真を掲載し、買い手が付いたら、専用コンテナに入れて最寄りの「バス停」と名付けた共同の集荷場に納品。回収・配送は、地元の配送業者に委託する。コンテナを購入者が希望したバス停に届け、購入者は指定の時間以降に野菜を取りに行くという仕組みだ。
 同社では、販売額の15%を手数料として差し引いて生産者に支払い、購入者が送料385円(1箱当たり)を負担する。「やさいバス草津実証プロジェクト」は、9農家と8店舗が登録し、4月から3カ月間実施した。バス停は、農業の盛んな草津市山田学区と志津学区、飲食店の多いJR草津駅、JR南草津駅周辺など10カ所に設置し、トラックは毎週火、金曜日に巡回。今後、同社は実証結果を分析し、本格実施を目指す。プロジェクトに参加した草津市北山田の農業法人株式会社横江ファーム・横江秀美さんは、注文のあった「山東菜」を出荷した。「ホテルなど、今まで取引のなかったところから注文をいただけるようになった。ぜひ本格実施してほしい」と期待する。市農林水産課の棚橋智晴主査は「今回は葉物農家が多く、偏りがあった。出品される野菜の種類を充実させる手だてを考えていきたい」と話す。

〈写真:バス停を設置した草津駅前のホテル「ボストンプラザ草津」で野菜を受け取る〉

大豆新品種「えんれいのそら」で実収量の増加へ【7月4週号 福井県】

220728_5.jpg

 【福井支局】「大豆の新品種にチャレンジすることで、品質向上や収量増加に期待している」と話すのは、福井市菖蒲谷町の農事組合法人メガファーム鶉〈うずら〉の理事を務める辻脇俊和〈つじわき・としかず〉さん(73)。今年から16ヘクタールの圃場で大豆新品種「えんれいのそら」の栽培を始めた。同ファームは、2015年に五つの経営体が統合して設立された。農地集約によるコスト削減や省力化を重視した大規模経営に取り組んでいる。えんれいのそらは、莢〈さや〉がはじけにくい難裂莢性〈なんれっきょうせい〉遺伝子をDNAマーカーで選抜しながら、北陸地域の主力品種「エンレイ」を5回戻し交雑させて開発された品種。自然裂莢による減収が少ないのが特徴だ。同ファームでは、これまで晩生の「里のほほえみ」を栽培していたが、収穫適期に長雨に遭うことが多く、刈り遅れによるしわ粒などの品質低下が問題となっていた。栽培する品種の一部を中生のえんれいのそらに替え、成熟期の分散による作業効率化と、難裂莢性を生かした実収量の増加を目指すことにした。辻脇さんは「えんれいのそらの栽培面積を30ヘクタールまで拡大していきたい」と新品種に期待を寄せている。

〈写真:えんれいのそらの栽培圃場は2.5ヘクタールを超える。「天候には勝てないが、新品種の難裂莢性の特性に大いに期待している」と辻脇さん〉

野菜は早々に売り切れ 若手農業団の軽トラ市【7月4週号 福島県】

220728_6.jpg

 【福島支局】本宮市内の若手農家で結成した「本宮若手農業団」では、団員が手がけた農産物を軽トラックで販売する「なないろ市」に取り組んでいる。なないろ市は市内の公園で年4回開催。心待ちにしているファンがいて、今年6月の市では、早々に売り切れてしまう野菜があったという。農業団は、市内の50歳以下の若手有志が地元の農業を盛り上げようと、2020年8月に13人で結成。有識者を講師に勉強会や研修を重ねている。県内外の農産物イベントに積極的に参加するほか、今年は酒造好適米「福乃香」を栽培し酒造りに挑む予定だ。「直接販売を心がけています」と団長の国分進一さん(46)。事務局を担当する本宮市産業部農政課の根本航太主事は「今後も直接販売を積極的に行い、本宮市の農産物をPRしていきたい」と話す。

〈写真:本宮若手農業団のメンバー(前列右端が国分さん)〉

水に浮く栽培棚 浸水被害を軽減【7月4週号 佐賀県】

220728_7.jpg

 【佐賀支局】唐津市でミディトマト27アールを栽培する株式会社Agrish代表取締役の吉田章記さん(43)は、2020年8月、水耕栽培のスチール束や発泡スチロールの棚、ヤシ殻の培地を用いた「軽く新しい栽培棚」を、多くの実験を経て完成させ、昨年の浸水時には被害を軽減させた。豪雨が起きやすい7~8月はミディトマトの定植期で「ハウスの周辺をブロック塀などで囲うことや定植を遅くする対策を考えた。しかし、短期間の豪雨のために資材購入や出荷量を減らすなどのリスクを負うのは避けたいと思い断念した」と吉田さん。「ハウスのある場所は周りより低い立地のため、あえて浸水することを受け入れ、水に浮く軽い栽培棚を作り、被害を軽減するという逆転の発想に至った」と話す。吉田さんの技術は、新聞社の取材や行政の視察など反響は大きく、最近では海外へリモートでミディトマトの栽培技術と共にこの技術を伝えている。

〈写真:発泡スチロールの栽培棚を紹介する吉田さん。建築用スチール束を設置し、高さを調整できるようにした〉

防風林「収穫を喜べる秋を迎えたい【2022年7月4週号】」

 ▼有機農産物などの食材や食品の宅配サービスを提供するオイシックス・ラ・大地は、2022年産米の会員1人当たり新米予約量が前年産比で約1.5倍になったと発表した。特に10月から毎月精米したての米を定額で届けるコースの予約が増えたという。安定価格で定量の「お取り置き」ニーズがあると分析する。
 ▼子供のいる家庭に実施した同社のアンケートでは、価格の値上げを感じる食品の上位に小麦粉・小麦製品、野菜・果物が挙がっており、割安感が出てきたご飯食に回帰する動きもあるだろう。実際、今年の4月以降に米を食べる機会が増えたとの回答が約7割を占めている。
 ▼米農家は、需要と価格の低迷に直面し、米産地は本年産でも必死に作付け転換を進めている。しかし、21年産米の相対価格は低迷。6月の60キロ当たり全銘柄平均価格は、前年産比1678円安の1万2851円となった。
 ▼肥料価格も高騰し、22年産米も現在の価格水準が続けば、採算割れする農家の離農は免れない。再生産が可能な米価の実現も食料安全保障の確保に欠かせない課題の一つだ。収穫を喜べる出来秋を迎えたい。

» ヘッドラインバックナンバー 月別一覧へ戻る