今週のヘッドライン: 2022年06月 2週号
埼玉県越生(おごせ)町上野東の山口由美さん(54)は、経営する1.5ヘクタールのウメ園地に休憩所を兼ねたカフェを整備し、5月中旬~6月末の収穫体験のほか、しょうゆ漬けや梅酒などの加工品作り、ウメの枝での染色体験などのワークショップを通年で開催する。週1回以上開く梅ジュース作りには、年間200人以上が参加。自ら「梅不二子」と名乗り、ウメの加工などを「梅しごと」と呼び、ウメ産地越生の魅力を発信する。
5月下旬から6月上旬にかけ、東北や関東などの広い範囲でひょうが降り、麦や果樹、園芸施設などに大きな被害が発生した。被災地域のNOSAIは、共済金の早期支払いに向けて被害の把握と迅速、適正な損害評価に全力を挙げている。収入保険加入者には、つなぎ融資の周知と早期貸し付けに向け、事故発生通知を呼び掛けている。
自民党は8日、総合農林政策調査会などの合同会議を開き、5年間水張りしない水田を交付対象外とする水田活用の直接支払交付金の見直しについて、現場の実態を踏まえた確認方法や耕作放棄地の発生防止など現場の課題に対応した対策の検討を求める決議を採択。同日、金子原二郎農相に要請した。農林水産省は、転作作物が固定化した水田を交付対象外とする現行ルールを徹底させたい考えだ。ただ、作付け転換に取り組む農業者や産地からは、5年以内の水張り実施などで営農継続に支障が出るとの声が上がる。水田営農が中山間地域も含め継続していけるよう需要に応じた生産の確立と十分な農業所得が確保できる支援策の構築が喫緊の課題となっている。
農林水産省はこのほど、米を利用した新たな商品開発などを支援する事業をスタートさせた。飲食店情報サイト「ぐるなび」を運営する株式会社ぐるなびを事業実施主体とし、新商品開発に取り組む事業実施者(民間事業者)を公募する。また、新商品アイデアコンテストも開催。受賞アイデアの商品化・事業化を支援する。米の需要拡大と創出を促し、主食用米の需給ギャップ縮小につなげたい考えだ。
静岡県菊川市でニラ22アールなどを栽培する株式会社ベジラボでは、軒高約2メートルの小型ハウスを利用し、昨年は無加温でニラの周年出荷を実現した。基本設計で構造を最低限に絞り、間口4.5メートル、奥行25メートルの小規模から、少ない初期投資で導入できる。風の被害を受けにくく、ビニール展張なども作業しやすい。取締役の地元農家・雲母悟章〈きららのりあき〉さん(52)は「自分で補修や改良もやりやすい。使い道が広く、個人経営の農家にも面白い施設」と話す。
Jミルクは3日、2022年度の生乳と牛乳・乳製品の需給見通しを発表した。全国の生乳生産量は前年度比0.8%増の771万トンとし、今年1月の見通しと同数量に据え置いた。北海道は同2%増の439万9千トン、都府県は同0.7%減の331万1千トンを見込む。全国の生乳生産量は4年連続で増産となる見通し。一方で、低調な家庭内消費や物価高の影響が懸念され、需給ギャップは依然として広がっていると指摘した。
6月は食育月間。大豆から豆乳を作り、豆腐ができ、食べるまでの過程を家庭で楽しんでみよう。国産大豆で豆腐などを製造・販売する愛知県高浜市のおとうふ工房いしかわの石川諒(りょう)さんに、寄せ豆腐の作り方を教えてもらう。
全壊から再起 軽微な損害は特約で
【大阪支局】「災害が起こっても復旧できるように、安心経営のため園芸施設共済に加入している」と話す貝塚市の千百松和匡〈ちおまつ・かずまさ〉さん(35)。21歳で就農し、現在は父母と妻の4人で農作業に励む。園芸施設共済には父の代の2005年から加入し、制度拡充後の21年には、小損害不填補〈ふてんぽ〉特約を付加し補償を充実させた。軽微な損害に備える考えで、「大きな安心につながる」と話す。18年9月の台風では8連棟と3連棟のハウスが全壊した。就農後、これほど大きな被害は初めてで、収穫前のキクナが全滅したという。全壊したハウスは、灌水施設を残すために上部だけを自身で撤去し、再建するまで露地で栽培した。「あのときは大変すぎてあまり記憶がないが、猛暑の影響で収入面が不安なときに共済金を受け取り、本当に助かった」。ハウスの再建が完了したのは全壊の1年後だった。全壊したアーチ型パイプハウスは、強度を上げて大型台風に備えるため、H形鋼フレームの鉄骨ハウス(6連棟と2連棟)を新設した。「近年の異常気象は何が起こるか分からない。多くの人に園芸施設共済を知ってもらい、災害に備えてほしい」と未加入者へアドバイスを送る。農薬抑制を意識して栽培する野菜は、JA大阪泉州や市場、直売所へ出荷。今後は「ブランド化して、しっかりアピールしていきたい」と意欲的だ。〈経営規模=ハウス8棟57アール(キクナ、コマツナ、シロナ)、水稲30アール〉
〈写真:新設した鉄骨ハウスで「おいしいと言ってもらえることにやりがいを感じる」と千百松さん〉
【秋田支局】「収入保険に加入していなければ営農を継続するのは難しかった」と話す小坂町の目時勝則〈めとき・かつのり〉さん(53)。水稲34アールとトマト30アール、アスパラガス75アール、花き20アール、その他野菜10アールを栽培する。昨年、病害や高温による生育不良、最高値で取引される時期の単価下落などが原因となり収入が減少した。就農から13年で、ここまでの収入の落ち込みは無かったが、部分的に被害が発生した年は資材費などの支払いに苦労したという。自然災害や病虫害による減収と品質低下に加え、価格低下も補償される点にメリットを感じ、NOSAI職員の勧めもあって収入保険に加入した。昨年、トマトを作付けていたハウス3棟で被害が発生。廃業を考えるほど深刻だった。「特にトマトのかいよう病による影響が大きかった。苗の段階で病害が一気に広がり、すぐに薬剤で防除したが、阻止することができなかった」。保険金の支払いは翌年6月ごろになるため不安を感じていたが、つなぎ融資のことを思い出し、すぐに申請した。「申請から融資を受けるまでが迅速で良かった。税務申告後に支払われた保険金は春の運営資金に充当でき、補償の厚さに助けられた」。同じ被害に遭わないように、現在は土壌改良や防除対策を徹底する。土壌菌のバランスを整える作業に力を注ぎ、ハウス内に菌や害虫が侵入しないように細心の注意を払う。所属するJAの野菜部会では、収入保険が話題に上ることが多いという。加入初年の納入額が大きいため迷っている人に向け、「安定的な営農を続けるためにも加入をお勧めしたい」と話す。加入条件の青色申告については「青色申告会やJAの税務友の会を通してやると簡単。いろいろな方に教えてもらいながらできる」と勧める。市場価格の下落にも対応する収入保険は、農家の助けになると考える目時さん。「補償限度9割ではなく、10割補償になってくれれば」と期待を込める。
〈写真:「手厚い補償で助かった。加入して本当に良かった」と目時さん〉
【佐賀支局】みやき町で「Nakayama Farm KASAKOYA」を経営する中山菜穂さん(44)は、水稲1ヘクタール、イチゴ13アール、パッションフルーツ6アールを栽培。イチゴは「キンド酵素栽培」(※)に取り組み、良質なイチゴを生産する。農業を始めたきっかけは嫁ぎ先が農家だったこと。最初は勤めながら義父の農作業を手伝っていた。栽培には前職の肥料開発の経験を生かし、技術などは義父や知り合いのイチゴ農家に教えてもらいながら身に付け、義父の経営を引き継ぎ就農した。「ファームの名前の由来は『かさこじぞう』から来ています。家を留守にして帰ってくると野菜などが玄関前に置かれていることがあり、地域の人たちはお裾分けで感謝の気持ちを伝えていたと思います」と中山さん。同ファームではイチゴやパッションフルーツの収穫、パック詰めを家族やパートが作業し、米作りでのトラクターや田植機などの操作は夫が担当。外作業など力仕事は近所の若手農家に手伝ってもらっている。中山さんの育てた作物は客から「おいしい」と評判で、週3日開く直営店には常連の人もいる。商品は同ファームの直営店やインターネットで販売するほか、ふるさと納税の返礼品にもなった。また、加工会社に依頼し、「中山さんちの自然そのまんまアイス」「いちごクレープアイス」「パッションロールケーキ」などを製造。中山さんは「心のこもったおいしい農産物を提供したい」と話す。中山さんは「今後の目標は継続です。経営を大きくすることも大事ですが、まずは継続できるように健康面でも無理をしないようにやっていきます」と意気込む。
※キンド酵素栽培=キンド酵素は124種類の微生物が入った資材。土壌にキンド酵素や堆肥、米ぬかなどを混ぜ合わせることで、土の中の微生物を活性化させ、新たな栄養を作り出す栽培法。
〈写真:イチゴの生育状況を確認する中山さん〉
【和歌山支局】美浜町の田口則男〈たぐち・のりお〉さん(73)は、景勝地「煙樹ヶ浜〈えんじゅがはま〉」の松葉を堆肥にして栽培する「松野菜」のブランド化に、仲間とともに取り組む。田口さんが会長を務める「煙樹ヶ浜堆肥ブランド研究会」では、松林に堆積する松の枯れ葉を堆肥にして利用。田口さん自身は30アールで「松きゅうり」を栽培する。「未使用バイオマス資源の松葉を活用することで、松林の保全、農作物のブランド化による地域農業の振興にもつながる」と田口さん。松野菜はJA紀州に出荷するほか、地元のスーパーやサービスエリアで販売する。シャキシャキとした食感が好評で、県内外にリピーターがいるという。「自治体の協力で機械を導入し、効率よく松葉を回収できるよう取り組んでいるが、まだ足りない状況。この農法を次世代に継承していければ」と話す。
〈写真:松きゅうりの管理に励む田口さん〉
▼消費者トラブルに不安を感じる高齢者の割合が他の世代に比べて低いとの調査結果を消費者庁が発表した。電話勧誘や訪問販売などでのトラブル発生率は、70代は18.3%、80代は15.2%で全世代の16.9%と変わらない。その一方、不安を感じる割合は、全世代の66.1%に対し、70代は52.9%、80代は49.9%と明らかに低い。
▼被害金額は、全世代の約10万円に対し、70代は約14万円、80代は約23万6千円と高額だ。1人暮らしの高齢者に不要な住宅のリフォームなどを持ちかけ、強引に契約を結ぶ業者などもあるという。1人では撃退は難しい。集落単位などで連携する対策を構じておきたい。
▼同じ調査で交流サイト(SNS)の利用状況も紹介された。若年層に比べて利用時間は短いが、60代で過半数が、70代で5人に1人がSNSを利用しているそうだ。
▼スマートフォンなどの操作性は年々向上し、高齢者にも扱いやすくなった。瞬時に情報が行き渡るSNSは、消費者トラブル対策に有効活用できそうだ。